映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の概要:クロエ・グレース・モレッツ出演作「モールス」のオリジナル版。スウェーデン郊外の雪深い町で、孤独な少年オスカーと謎めいた隣人エリが出会い、恋に落ちていく。しかしエリには恐ろしい秘密があった。
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ラブストーリー、サスペンス、ホラー
監督:トーマス・アルフレッドソン
キャスト:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー、ヘンリック・ダール etc
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の登場人物(キャスト)
- オスカー(カーレ・ヘーデブラント)
- 12歳の少年。学校でいじめられていて、友達はいない。両親は離婚していて、常に孤独を感じている。母親と暮らしているが、週末は父と過ごす約束をしている。ナイフを隠し持っていて、いじめっ子への復讐を想像することもある。猟奇的殺人事件の新聞記事をスクラップするのが趣味。隣に越してきたエリに惹かれ、恋するようになる。
- エリ(リーナ・レアンデション)
- オスカーの住んでいるアパートの、隣の部屋に越してきた子供。父親と暮らしているが、本当の父親ではない様子。ずっと昔から12歳のままで、他人の血を吸って生きている。外見は少女のようだが、エリ本人は男の子だと言っていて、真実は不明。部屋に入るときは、その部屋の住人の許可を必要とする。寒さを感じないため雪の中でも薄着で過ごし、超人的な身体能力を持つ。
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のあらすじ【起】
雪深い、ストックホルム郊外の田舎町。
いじめられっ子のオスカーが暮らすアパートの隣の部屋に、1組の親子が引っ越してきた。
ポスターやダンボールで窓を塞ぐ彼らは、どこか様子がおかしい。
オスカーは、夜のアパートの中庭で、隣に越してきたエリと出会う。
雪が降る中、エリは信じられないほど薄着だった。
アパート近くで、猟奇的殺人事件が起こり始める。
被害者の血を集めようとしていた犯人は、エリの父だった。
アパートの中庭で、オスカーとエリは再び会う。
エリと仲良くなりたいオスカーは、ルービックキューブを貸した。
その後、空腹に耐えきれなくなったエリは、通りすがりの男性を襲った。
男性の死体は、エリの父が隠した。
エリの殺人現場を目撃していたイェースタは、殺されたのが知り合いだったこともあり、共通の友人たちにその話をする。
現場を確認しに行くが、血の跡だけが残っていた。
中庭で、完成したルービックキューブを見て驚くオスカー。
エリとオスカーは、次第に仲良くなっていく。
オスカーはモールス信号を使い、壁越しにエリと会話することを思い付く。
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のあらすじ【承】
学校でいじめられたオスカーは、顔に傷を作る。
それに気付いたエリは、オスカーがいじめられていると知り、やり返す事を助言する。
そして、もしもの時は助けに行くと約束した。
その言葉に勇気をもらったオスカーは、トレーニングセンターに通い始める。
夜、エリと一緒に出かけたオスカー。
一緒にお菓子を食べようとするが、エリの体はお菓子を受け付けない。
オスカーが父と過ごしている間、エリの父は人を殺して血を集めようとするが失敗。
塩酸をかぶって顔を焼き、エリのために身元がばれないようにした。
殺人犯として、病院に運ばれたエリの父。
ニュースを聞いたエリは全てを察し、父の病室へと向かった。
エリの父は、エリに血を吸われる事を望み、願いを叶えて死んだ。
その足でオスカーの部屋に行き、入っていいか尋ねる。
許可されると部屋に入り、服を脱いでオスカーのベッドに入った。
オスカーはエリに告白するが、女の子じゃないから付き合えないと断るエリ。
それでもオスカーの押しに負け、エリはオスカーと付き合う事にした。
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のあらすじ【転】
課外授業で、オスカーの学校の生徒たちは凍った湖に行った。
そこでオスカーは、いじめっこのコンニに反撃して怪我を負わせた。
その湖の氷の中からは、エリの父が隠した遺体も発見された。
イジメは止まり、オスカーはエリに報告する。
そしてエリに、血の契りを交わすことを提案して、手のひらをナイフで切る。
だが、床に落ちたオスカーの血に飛びついたエリは、そこから逃げ出す。
通りかかったヴィルギニアに噛み付くが、彼女の連れのラッケが止めに入る。
ヴィルギニアの体には、異変が起こり始める。
イェーツの友人でもあるヴィルギニアは、イェーツの飼っている猫たちに襲われ、病院に運ばれた。
その後、日光を浴びたヴィルギニアは焼け死んだ。
父と過ごしていたオスカーは、エリの事が気になってしまい、エリの部屋へ行く。
ヴァンパイアだというエリは、永遠に12歳のままだった。
エリへの反抗心が芽生えたオスカーは、エリと距離を取るようになる。
そして、エリに許可を与えないまま、部屋に入ればいいと挑発する。
するとエリの体中から血が出てきた。
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の結末・ラスト(ネタバレ)
エリは、オスカーに受け入れられる事を望む。
エリの顔は一瞬、老婆のように変化した。
その頃ラッケは、ヴィルギニアを襲った子供を捜して復讐しようとしていた。
エリのアパートに侵入し、バスルームで寝ていたエリを殺そうとするラッケ。
しかしオスカーがエリを起こし、ラッケは血を吸われて殺された。
人を殺しすぎたエリは、町にいられなくなった。
オスカーと血にまみれたキスをして、エリは町を去っていった。
コンニとは縁を切ったといういじめっこマッティンに誘われ、トレーニングを再開することにしたオスカー。
しかしそれは、コンニの兄の罠だった。
担当の先生をセンターの外におびき出し、他の生徒たちをプールから追い出すコンニの兄。
そして、プールの中にオスカーを沈めた。
突然開放され、プールから引き上げられたオスカーの前には、約束を守ったエリがいた。
コンニ、コンニの兄、マッティンは死んでいた。
その後、オスカーは大きなスーツケースを持って、電車に乗っていた。
スーツケースの中からはモールス信号のノック音が聞こえ、オスカーは嬉しそうに返事をした。
映画『ぼくのエリ 200歳の少女』の感想・評価・レビュー
オスカーもエリもお互い孤独だった印象を受ける。オスカーは学校で数人の男子からいじめを受けており、家にいても心が休まることがない。エリは長い年月を子供の姿のまま過ごし、誰かに依存することで今まで生き延びてきた。そんな寂しい境遇の二人が出会ってしまったのだから、意気投合しないはずがなかった。オスカーはエリの性別にあまり関心がなく、吸血鬼という種族に対してもさほど嫌悪感がないように感じる。それは、二人で一緒にいられるなら何でも良いというオスカーの純粋な想いであり、エリへの好意の表れなのだと感じた。例え二人の行きつく果てがどのような結果であれ、オスカーにとってエリは出会うべくして出会った運命の相手だったのであろう。(女性 20代)
スウェーデンの美しい街の風景が印象に残る作品。
北欧だからこそ雪景色に映える建物は作品の持つ雰囲気をより引き立てています。
主人公の少年は居場所もなく、オカルトに傾倒していくが、そので出会った不思議な少女と心を通わせていきます。
両者は社会から逸脱した存在として共通する部分があって惹かれ合うが、少女の秘密を知った時の衝撃は大きい。
一度は主人公が離れてしまうが、やはり、少女を見捨てず助けるシーンでは、お互いに求めているモノは同じだとわかります。
それでも主人公が彼女と歩み出す姿に色々考えさせられる作品である。(男性 30代)
もともとタイトルによりすでに何かしらヴァンパイア系のお話であるのはわかっていて、こそばゆいはかないラブストーリーなのかな、と想像していました。
しかし、思ったより静かで残酷な映画だと感じました。というのも、12歳の少年オスカーが200歳のエリを受け入れたこの先に何が待っているのか、というのが見れない。
それが観客の想像に委ねられていて、色々な解釈を持てるからこそ、私の中では美しい、というよりも怖さとむごさが残る映画でした。(女性 30代)
本作の原題は『Let the light one in』で、「正しき者を招き入れよ」という意味。
とても哲学的で、深みのある作品であることを表していて、こちらの原題の方が好みである。
スウェーデンの美しい自然や土地柄の雰囲気、フレーミングや余白といった空間感が美しく、その映像美に感動した。
彼女は女の子ですらなくヴァンパイアだったという実態は衝撃だった。
2人の純粋な愛は素晴らしいが、今後どのように時を重ねるのだろうか。
2人の行く末を想い、切なさの残る作品だ。(女性 20代)
みんなの感想・レビュー
原作は、あのモダンホラーの巨匠スティーヴン・キングも絶賛したという「モールス」。その原作を忠実に映画化したのが今作の「ぼくのエリ 200歳の少女」である。ヴァンパイアとして生き続けている少女エリと、いじめられっ子の少年オスカーが恋に落ちるというよくありがちなラブストーリーではあるが、今作は幾重にも張り巡らせた設定により、いまだかつてないほど残酷で切ないヴァンパイア映画に仕上がっている。
当然の如くヴァンパイアは不老不死の存在である。エリと呼ばれる少女は数百年もの間、生き続けて来た。しかしその代償として人間を殺してその血を飲まなくてはならない。
しかしこの映画のヴァンパイアは強い存在とは描かれてはおらず、むしろか弱い存在として描かれている所が特徴的だ。日光に当たったら死滅してしまうため、日中はいつも部屋に籠りっきりの無防備な状態である。そんな彼女を守り、また彼女のために血を手に入れて来る存在が彼女には必要となる。それが人間の守護者である。
人間の守護者は、エリに惚れた男である必要がある。何年も、何十年ものの間エリに尽くし続けなくてはならない。だがいつかは男は老衰で死んでしまう。それでもエリは永遠に生き続け、新しい守護者を探し続けないとならない。
主人公の少年オスカーにはそのからくりがわかっていながらも、家族全員を捨ててでもエリを守り続けようと決意する。この美しくも残酷なエンディングに胸が締めつけられる事は間違いないだろう。冒頭に登場する、守護者である老人とエリの姿は、数十年後のオスカーとエリの姿を予見しているだけに余計切ない。
この映画にはさらなる秘密が隠されている。それは日本版DVDでは確認するのが不可能なのだが、実はこのエリという少女は男である事が判明するシーンがある。エリは劇中に何度も「私は女の子ではないけど大丈夫なの?」とオスカーに聞く。これは「普通の女の子ではなくヴァンパイアである」という意味にもとれるのだが、実際に「女の子ですらなかった」という衝撃の告白でもある。恐らくエリは、男性器を去勢された少年がヴァンパイアと化した存在なのだろう。つまりエリとオスカーは男女として結ばれる事すら許されないのだ。「それでも大丈夫なの?」と聞くエリに、オスカーが「うん」と即答する姿には感動すら覚えてしまう。思春期の愛とはどこまでも一途なのだから。
「ぼくのエリ 200歳の少女」は、ネタバレした上で考えてみるとこのタイトルはおかしいだろう。「ぼくのエリ 200歳の少年」であるべきだ。とはいえそこに突っ込むのは野暮というものだろう。北欧を舞台とした、静かに忍び寄るようなホラー映画の傑作。トーマス・アルフレッドソンの演出は手堅く、後にスパイ映画の傑作「裏切りのサーカス」の監督を担当する事になったのも当然の結果と言える。ちなみに2010年にマット・リーヴス監督により「モールス」としてハリウッド・リメイクもされている。こちらもなかなかの出来栄えなので、見比べてみるのも一興かもしれない。