映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』の概要:世界的チェリスト、ヨーヨー・マ。様々な有能あるアーティストを集めて活動を開始。「シルクロード・アンサンブル」として演奏し、33ヵ国のライブ公演で200万人を動員した。国も文化も違うメンバー達はどのような経緯で集まったのか。
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』の作品情報
上映時間:95分
ジャンル:ドキュメンタリー、音楽
監督:モーガン・ネヴィル
キャスト:ヨーヨー・マ、キナン・アズメ、ケイハン・カルホール、クリスティーナ・パト etc
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映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』の登場人物(キャスト)
- ヨーヨー・マ
- 中華系アメリカ人の世界的有名なチェリスト。音楽家の両親の元、パリで生まれる。4歳からチェロを弾き始める。現在も「シルクロード・アンサンブル」のプロジェクトを率い、精力的に活動を続けている。
- ジョン・ウィリアムズ
- アメリカ、ニューヨーク生まれの世界的有名な作曲家。今まで作曲した映画音楽は140作以上に及ぶ。今作ではヨーヨー・マの友人としてインタビューに応じている。
- キナン・アズメ
- シリア出身のクラリネット奏者。ダマスカスで育つ。革命やテロを経て、音楽の意味を模索している。友人の画家と一緒に難民キャンプを訪れ、子供達に音楽の素晴らしさを教える活動を行っている。
- ウー・マン
- 中国出身の女性琵琶(ピパ)演奏者。北京にある中央音楽学院でアメリカのオーケストラの演奏を鑑賞し、国を出る覚悟を持つ。アメリカへ渡ってからは数々のオーケストラに参加する。現在は中国の伝統技能を伝承する活動も行っている。
- ケイハン・カルホール
- イラン出身のケマンチェ奏者。イランにて演奏会を開こうとした際、安全上の問題という理由で中止するに至り、今後一切国で演奏をしないと公言した。ヨーヨー・マからは「双子の兄弟」と紹介される。
- クリスティーナ・パト
- スペイン北西部のガリシア地方出身のバグパイプ(ガイタ)奏者。18歳の時にバグパイプ奏者としてデビューする。エキゾチックな音色が評価されている。
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』のあらすじ【起】
ヨーヨー・マは物心つく前から音楽と共にあった。7歳の時、レナード・バーンスタインの紹介でヨーヨー・マはチェロと共にテレビ出演を果たす。ヨーヨー・マの息子、ニコラス・マは、父親に対し、度が過ぎるほど何かに長けていると、内省がおろそかになる、と口にした。友人で作曲家のジョン・ウィリアムズは、幼少期に芸術を完全に習得した場合、多くの神童が直面する問題がある、と話す。それは「どう興味を持続させるか」だと言った。ヨーヨー・マは、彼自身も、何かと共に育つと選択をしなくなる。音楽家になろうと思ったことはなく、自然の流れでなっただけだと答えた。しかし、ヨーヨー・マは現代作曲家のレオン・キルヒナーに言われたひと言がずっと引っかかっているという。「君には自分の声がない」という言葉。それ以降ずっと「自分は一体何者で、世界にどう適応するのか」考えているのだという。
シリア。「シルクロード・プロジェクト」のメンバーであるキナン・アズメは、ダマスカスで多くの家族と友人と共に育った。両親は今もダマスカスに住んでいる。アズメは故郷とは何かと考えるという。友人や家族がいる場所か、育った場所か、それとも死にたいと思う場所か。今実感しているのは、純粋に貢献したいと思える場所こそが故郷なのではないかと話した。シリアは2011年3月に革命が始まった。その時に経験したのは、音楽では表現できないほどの複雑な感情だった。音楽が無力に思え何も作れなくなった。音楽は銃弾を止められないし、だれの腹も満たせないとアズメは感じた。音楽の役割とは一体何なのか。
サンディエゴ。プロジェクトの女性メンバーで中国出身のウー・マンは既存の枠に囚われたくないと言った。自分を中国人音楽家や琵琶(ピパ)演奏家に限定したくない。中国では1966年に文化大革命が起こった。両親は国の状況から逃れるため、ウー・マンに音楽を学ばせることにした。そして革命後、彼女は最初の学院の生徒として中央音楽学院に入学し、一夜で有名となる。文化大革命直後、アイザック・スターンが学院の講堂で講義をし、ウー・マンは新たな考えに触れ、中国から出て行く決意を固めた。
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』のあらすじ【承】
2000年の7月。才能ある音楽家を求めてベネチアからイスタンブールへ。中央アジアやモンゴル、中国まで探し回った。シルクロード・プロジェクトの理事を務めたセオドア・レヴィンはこのプロジェクトを音楽のマンハッタン計画だと称する。シルクロードの地から約60名の演奏家や作曲家がワークショップに集まった。そこで何が起こるか。2000年の夏、彼らはマサチューセッツ州バークシャーに集結した。音楽評論家のニールス・スウィンクズは、1つ気になることがあった。ヨーヨー・マはもちろん才能があり万能であると誰もが知っている。しかし、果たしてアフリカ人や中国人が異文化の繊細さに気付けるだろうか。
結成時からプロジェクトに参加しているケイハン・カルホールはケマンチェ奏者としてイランでは有名な人物である。私の国の文化を代弁したい、と彼は言う。ケイハンの人生はとても悲劇的であった。革命が起き、17歳の時、両親は彼を逃げさせた。歩き続け、渡り歩く国々で農作業をしながら生活をした。所持品は小さなシュックとケマンチェのみ。国を出て、各国の音楽家と巡り合う。国を出て何かをしたかったケイハンとってこの時期はとても大切なターニングポイントだったと語った。
プロジェクト始動から1年経った2001年。9.11の同時多発テロ事件時、ヨーヨー・マはホテルの部屋にいた。外国人に対する嫌悪感が広まる中、プロジェクトの続行は不可能に思えたとレヴィンは語る。誰もが大惨事を目の当たりにし、自分の存在意義を再度自問した。このプロジェクトも異質な要素の組み合わせ。敵対国人同士のグループも存在する。一体どうすれば、深い悲しみや永遠の愛を表現できるだろうか。ヨーヨー・マは悩んだ末にプロジェクトの継続を決めた。しかし、彼らには困難が待ち受けていた。
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』のあらすじ【転】
ヨーヨー・マ達はプロジェクトの記者会見を初めて行うことにした。しかし、マスコミ側は批判的であった。伝統的な音楽同志をごちゃ混ぜにして伝統を希薄化させるのではないかと。ヨーヨー・マは、確かに批判は辛い。しかし、本物の力を信じることが大切だ。だからこそ、わかってもらうためにはとにかくやるしかない、と決意を新たにした。
スペインの北西部に位置するガリシア州出身のクリスティーナ・パトはガイタ(バグパイプ)演奏者。彼女は、同世代のガリシア人にとって人生の選択肢は2つ。サッカーをするかバグパイプを吹くかだと言って笑った。ガリシアは言語も文化も独特で、この地の全てを凝縮しているのがバグパイプである。当時18歳だった彼女はガイタ演奏者として活動していた。しかし、彼女の演奏スタイルは好き嫌いが分かれ、保守派からは始め酷評された。ある時、嫌気が差したクリスティーナは楽器も持たずに地元を離れる決意をし、この「シルクロード・アンサンブル」に参加することとなる。彼女は言う。ガリシアの直面する問題は全世界に当てはまる。どうルーツを保つか。伝統が生き続けられるのは、創意があってこそ。伝統が発展し続けない限り、当然衰退の一途を辿る、と冷静に語る。
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』の結末・ラスト(ネタバレ)
ヨーヨー・マは考える。政治的な独自性は続かない。しかし文化は継続する。文化の一部である言語や文化も継続する。芸術とは自分の可能性を切り開くものだ。そして可能性は希望へとつながる。誰の人生にも悲劇は存在する。誰であれ、幸福も不幸も起こりうる。そして、常に自分に問いていること。それは、疑念をどう解決させるか。進みたい道か。何かのエゴを排除し、誠心誠意を込めて全力を尽くせるか。初めての場所に行くのは誰でも恐ろしい。けれども、仲間と十分な信頼関係が築ければ、恐れを喜びに変えることもできる。メンバーの1人は言う。皆様々な形でキャリアを積んできた。楽団が違うし、活動の場も違う。だが、ここに集結し、唯一無二の音楽を奏でる。自分は間違っていないと再確認できるのがこの「シルクロード・プロジェクト」であると。
ヨーヨー・マが4歳の時、将来の夢は「理解すること」であった。中国音楽の音色とフランスの作曲技法の融合について研究していた父親はフランスへと旅立つ。そして長い年月が経ち、子であるヨーヨー・マも親と同じ道を進んだ。T・S・エリオット曰く「我々は探求をやめない。探求の終わりは始まりの場所に辿り着き、その場所を初めて知ることだ」と引用した。結婚生活35年の内、22年は旅をしているヨーヨー・マ。ニコラス・マは、父は家へ帰るのではなく、離れようとしていると言う。音楽からも1つの曲からも離れることで、再び故郷に回帰できるのであると信じていると語った。
映画『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』の感想・評価・レビュー
文化も言語も、信じている宗教も違う。少しでも亀裂が走ったら一気に崩れてしまう関係。その中で、お互いのアイデンティティを尊重し、音楽という言語で会話する。マスコミがこのプロジェクトを批判したと放映されていたが、何と浅はかなのだろうと感じた。政治的な事柄によって翻弄されるアーティスト達。それでも、ヨーヨー・マ含め、彼らが続ける覚悟を持ってくれたおかげで、私達は政治的解決以外の解決策を信じることができる。音楽の持つ素晴らしさを今一度実感したいと感じた。(MIHOシネマ編集部)
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