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映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の概要:天才作家太宰治と正妻、愛人の2人との関係を描きながら、歴代のベストセラーとなった『人間失格』の誕生秘話をドラマチックに描き出す。正妻がいながら多くの愛人と逢瀬を交わし自殺未遂を繰り返す太宰治。やがて彼は肺病を患い徐々に追い詰められていく。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の作品情報

人間失格 太宰治と3人の女たち

製作年:2019年
上映時間:120分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:蜷川実花
キャスト:小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ etc

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の登場人物(キャスト)

太宰治(小栗旬)
多くの作品を世に発表した天才作家。正妻がありながら多くの愛人と逢瀬を交わし、何度も自殺を図っては小説を書いている。非常に口が上手く自堕落な生活を送っている。そのためか女性には酷くモテる。
津島美知子(宮沢りえ)
太宰の正妻。『ヴィヨンの妻』のモデル。夫の文才を誰よりも認めており、多くの愛人や自殺騒ぎを黙認する。そうすることで太宰が書きたい小説を書くことができるのなら、と悟っている様子もある。3人の子持ちで思慮深く気丈な女性。
太田静子(沢尻エリカ)
太宰の愛人。『斜陽』のモデル。裕福な家の美しい女性。文才があり太宰の弟子でもある。太宰に子供を強請りまんまと手に入れ、その後の生活費も無心。
山崎富栄(二階堂ふみ)
太宰の愛人で最後の女。美容師として働いていたが、太宰と出会い心酔していく。自殺願望があり命を懸けて太宰を愛し、秘書や看護師のような役もこなしていた。
佐倉潤一(成田凌)
太宰をリスペクトする若手編集者。太宰の側で次々と愛人を作り作品を書く様子を見ていたが、次第に自堕落な生活に反感を覚え人間失格だと指摘する。
三島由紀夫(高良健吾)
若手の作家でありながら、大蔵省の役人としても勤めている。太宰を酷くこき下ろし、太宰に首を絞められるという騒動に発展する。律義で固い印象を持つ。
坂口安吾(藤原竜也)
破天荒な作家で太宰とは同士。狂気じみた爆発的な性格で、多くの作品を世に送り出している。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』のあらすじ【起】

1946年、東京。正妻の津島美津子との間に2人の子を儲けていた太宰治は、これまで何度も愛人を作り心中を図ってきた。だが、ことごく失敗し生き延びている。そして、現在。彼はまたも新たな愛人、太田静子と恋仲になり恋文のやり取りを行っていた。

そんなある時、静子が自宅へと突然やって来る。太宰は美津子に出掛けて来るとだけ告げ外へ。美津子は夫から静子のことを弟子だと聞いており、黙して送り出すのであった。

静子は裕福な家柄のお嬢様だった。彼女は美津子が妊娠中だと聞くと、自分も負けじと子供が欲しいと言い出す。これには太宰もほとほと困り果てた。
行きつけのバーで酒を飲み、静子との関係に思い悩んでいた太宰。そこへ酔っぱらった坂口安吾がやって来る。彼は破天荒な作家として名を馳せており、太宰へと今も地獄を見ながら書いているのかと聞いてくる。坂口とは一種、似たような習性を持っており2人は同士のような関係だった。坂口はもっと堕ちろと言って床に転がって寝てしまうのだった。

翌年の春になっても、静子との関係を続けていた太宰は、彼女の家を訪ね静子が書いた小説に目を通す。そして、彼女に甘言を説き一夜を明かした。翌朝、太宰は静子に真珠のネックレスをプレゼントし去って行こうとしたが、欲望を止めることができず連日、泊まり込んで静子と堕落した日々を送るのであった。

その後、作家が集まるいつものバーで騒いだ太宰。彼はそこへ来ていた山崎富栄にモーションをかける。彼女は眼鏡をかけた美容師だったが、知的で大人しい女性だった。太宰はその日の内に彼女を口説き、濃厚な口付けを交わす。

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映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』のあらすじ【承】

深夜に帰宅した太宰は、この頃から軽い咳をし始めている。彼は美津子が作り置きしてくれたおにぎりを食し、わざと大声を出して妻を起こす。美津子の腹は大分大きくなり、じきに子供が生まれようとしていた。

一方、太宰の子供を妊娠した静子もじき出産を迎えようとしていたが、あれっきり太宰からの連絡が途絶えやきもきしていた。静子の弟は姉をとても心配していたが、姉は一族の面汚しだとも零す。

そんなある夜、太宰と会うため、弟と共にバーへやって来た静子。太宰は静子をモデルに『斜陽』という作品を発表しており、仲間達は誰もが彼女を斜陽の人だと噂する。そこへ、富栄がバーへと訪れ静子へと声をかけるのだった。太宰はその前にも正妻、美津子をモデルに『ヴィヨンの妻』を発表しており、妻の鑑だと評していた。妻への気持ちは愛だが、愛人相手には恋だと語る太宰。

その帰り、太宰は咳をした際に喀血。自分が肺病を患っていることを知る。彼はその後、富栄へと死ぬ気で恋愛をしないかと声をかけた。すると、富栄もまた恋愛するなら死ぬ気でしたいと返答し、2人は愛人関係を結んだ。

太宰と富栄が甘い蜜月を過ごしてからしばらくして、美智子が出産。太宰はいつものバーで坂口と酒を酌み交わしながら、『斜陽』について語り合う。坂口は自らの腸を引き摺り出しながら書いた作品こそ、読むに値すると言う。その過程で死ぬなら本望だと断言した。

それから時を待たず、静子が女の子を出産。太宰はその子を認知し、治子と名付ける。そのことに酷くショックを受けた富栄は、深い嫉妬の念を燃やし自殺を図ろうとする。すると、太宰は取っ組み合ってでも彼女の自殺を止め、絶対に1人では死ぬなと諭した。富栄は泣きながら子供が欲しいと話し、静子の元へ行くなら死んでやると太宰を脅すのだった。

これまで太宰の行いを見てきた若い編集者の佐倉は業を煮やし、堪忍袋の緒が切れる。不倫をして作品を書くネタにするなど、間違っていると指摘。だが、太宰は自分などこんな人間だと深く受け止めない。そこで、佐倉は太宰に対し人間失格だと告げ、自分のことを小説に書くべきだと告げる。それでも太宰はまともに取り合わず、その場を去ってしまう。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』のあらすじ【転】

肺病は刻一刻と太宰を苛む。それでも彼は喫煙をやめることもしない。巷は祭りで賑わっており彼はふと人込みの中、沢山の風車と大勢の子供達に笑われる錯覚を見る。太宰は富栄に声をかけられ飛び上がると、建物の暗がりへ逃げ酷く咳き込む。富栄が心配して近寄ると、恐怖を払拭するかのように濃厚な口付けを交わすのだった。

しかし、その時たまたま子供達と美津子が通りかかる。美津子は夫と愛人の富栄を目にすると、何も言わずに子供達を連れて去って行く。すると、太宰は富栄を置いて妻の後を追って行ってしまうのだった。

帰宅して休む準備を終えた美津子は、子供達を寝かしつけながら涙に暮れる。長男はダウン症で育てるのに多少の苦労はあったが、美津子にとっては愛すべき子供達である。彼女は子供達を相手に父は立派な小説家なのだと語って聞かせた。

太宰はその話を聞きながら部屋にも入れず、項垂れる。そして、彼は絶望して睡眠薬を多量に摂取し自殺を図ってしまう。幸い、美津子がすぐに気づいて医師を呼んだため、助かったが、診察によると肺病の方が酷いとのことで、美津子は医師に叱られてしまうのだった。

このことから、太宰の『斜陽』は更に飛ぶように売れ、ベストセラーを記録。太宰は相変わらず富栄の家で半同棲生活を送っていた。ベストセラーを祝う会に参加した太宰の元へ若手の作家で大蔵省の役人をも勤める三島由紀夫が現れる。彼は太宰が書く小説を酷くこき下ろした。そのせいで太宰と激しい口論を展開。三島はなぜまだ生きていられるのかと捨て台詞を吐いて去った。このことで、激しく咳き込んだ太宰が喀血。すぐさま富栄がハンカチでそれを受け止めた。周囲の人々は愕然として、2人が去って行くのを見送るのだった。

それからも富栄は太宰へと一心に尽くした。だが、美津子が迎えに来るといそいそと帰ってしまう。これが愛人と正妻の違いなのだとまざまざと思い知らされる。佐倉は富栄を不憫に思い、太宰と別れることを進言したが、彼女は太宰に心酔しており聞く耳を持たなかった。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の結末・ラスト(ネタバレ)

太宰が散財するせいで多額の請求書が届く。そのため、家の家計は常に火の車で、いつでも貧乏だった。だが、美津子は太宰が満足な小説が書けるならば、家庭に戻らなくても良いと告げる。太宰にはもっと良いものが書けるはずだ。進んで家庭を壊し本当に書きたいものを書けと重ねた。そうして、彼女は亡くなった妹を弔うために末の子を連れてしばらくの間、家を離れる。

それから太宰の病状は悪化。2人の子の面倒を見ながら、彼は自分の最後の罵詈雑言だと言って『如是我聞』を発表する。
冬になり雪がちらつく頃、美津子が家に帰って来た。自分がいない間、子供の面倒は富栄が見ていたと娘から聞き、美津子は思わず涙。長男が絵の具をぶちまけたのをきっかけに、彼女は子供達と泣きながらじゃれ合った。

深夜になり太宰が帰宅。彼は相変わらずでわざと大声を出して美津子を起こそうとする。激しい咳は止むことがなく、喀血の量も増えていた。血塗れになった夫に恐れを抱いた美津子。太宰は妻子を確認すると笑って家から飛び出して行った。

深々と雪が舞う中、喀血しながらふらふらと歩を進める。どんなに苦しくても簡単に死ねないものだと呟く。やがて彼は喀血で窒息し、道端で意識を失ってしまう。死にかけた彼を助けたのは富栄だった。意識を取り戻した太宰は全てを壊す決意を固め、そのための小説を書くと断言。タイトルはすでに『人間失格』と決まっていた。

それから彼は執筆に没頭。その小説は正に自らの内面を抉ってひけらかすかのような、そんな内容だった。それから、太宰はそれぞれに遺書を残し、富栄と共に玉川上水の急流へと入水心中。2人の遺体は大分流され下流で発見された。

美津子は夫が残した遺書に目を通し滂沱の涙を流す。遺書の最後には「お前を誰よりも愛していました」と書かれていた。記者が自宅へと殺到する中、ヴィヨンの妻は気丈にも家事に励む。そして、静子は我が子を抱き太宰は夢を見させてくれたと語るのだった。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の感想・評価・レビュー

監督に蜷川実花を迎え、7年の構想を経て制作された作品。主演に小栗旬を据え、新たな太宰像を描き上げた。

音楽や色彩、演出が非常に面白く蜷川実花監督の特色がより生かされている。小栗旬が演じる太宰は、非常に軽く口が上手くふわふわとしていながらも暗い面をも見せる。違う意味での人でなしを演じることでイメージを払拭し、新たな太宰治を演じ切ったと思う。史実どおりでありながら、別の角度からの視点が面白いと感じた。(MIHOシネマ編集部)


太宰治のどうしようもない男感が興味をそそりました。
題名のとおり、女性目線での太宰治を描いた作品です。
映像は監督ならではの派手な色彩で、それが太宰治の破天荒な性格とうまくマッチしていました。
3人の女性との掛け合いも面白く表現されています。
ストーリー自体は単純なので、小説の「人間失格」を読んでいない人も楽しめる作品です。
太宰治の「文学」が好きな人は、この映画はそれとは別物と捉えていただければと思います。(女性 40代)

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