映画『ある戦争』の概要:平和維持活動のためにアフガニスタンに駐留するデンマーク軍の隊長が部下を救うために下した決断により戦争犯罪に問われる戦争ドラマ。第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
映画『ある戦争』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
監督:トビアス・リンホルム
キャスト:ピルー・アスベック、ツヴァ・ノヴォトニー、ソーレン・マリン、ダール・サリム etc
映画『ある戦争』の登場人物(キャスト)
- クラウス(ピルウ・アスベック)
- アフガニスタンに駐留しているデンマーク軍の隊長。自ら現場に赴いて部隊を指揮している。部下の命を大事にしているが、その判断の是非が裁判で問われてしまう。
- マリア(ツバ・ノボトニー)
- デンマークで暮らすクラウスの妻。3人の子供を育てているが、父親が不在なことから長男の素行が悪くなっており、手を焼いている。
- ラッセ(ダルフィ・アル・ジャブリ)
- クラウスの部下。自らのせいで仲間が爆死したと感じ、罪悪感に悩まされている。久しぶりに現場に復帰して、重傷を負う。
映画『ある戦争』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ある戦争』のあらすじ【起】
アフガニスタンでデンマーク軍が隊列を組んで巡視活動を行っていた際に、爆弾が爆発し、兵士1人が死亡してしまう。このことで兵士達に動揺が広がる。クラウスは任務の意義を説き、自らも巡視活動に加わることにする。デンマークでマリアは学校に長男を迎えに行く。長男は父親が不在なことから素行が荒れてきていた。マリアは子供達と共にクラウスからの電話を待ちわびるが、電話は子供が寝てからようやく掛かってきた。クラウスは兵士の死について説明し、マリアは家族の近況を話す。
ラッセがクラウスに帰国したいと申し出る。自分と持ち場を交代したことで兵士が死に責任を感じていたのだ。クラウスはラッセを落ち着かせるためにデンマークにいる妹に電話させ、しばらく巡視任務から外すことにする。クラウスが部隊を率いて巡視活動を始めると、アフガニスタン人の男が火傷した子供の治療を頼みに現れる。クラウスはその求めに応じ、男の家まで向かう。そして、衛生兵に子供を治療させ、男から感謝される。
映画『ある戦争』のあらすじ【承】
クラウスは家に電話して長男の様子を確認する。長男は電話口では普通に振る舞うが、マリアは長男を学校に行かせるのに苦労していた。部隊は巡視活動中に遠隔操作できる爆弾が道端に仕掛けられているのを発見する。クラウスは部隊を岩場に隠れさせ、様子を見守る。ほどなくして武装した男がオートバイに乗って爆弾の側にやって来る。男が爆弾を手にしたことを確認し、狙撃手が男を仕留める。
マリアが長男の世話をしている間に、幼い次男が薬を誤飲してしまう。マリアは慌てて子供達を連れて病院に向かい、次男に医師の処置を受けさせる。火傷した子供を助けてあげたアフガニスタン人の男が家族を連れて基地にやって来る。男はタリバンが徴兵に現れると訴えて、助けを求める。クラウスは翌日に巡視に向かい、タリバンを一掃すると約束して家族を送り帰す。翌日、クラウスは部隊を率いてアフガニスタン人家族を捜しに向かう。そして、家で家族全員が殺されているのを発見する。タリバンの襲撃を受けたのだ。
映画『ある戦争』のあらすじ【転】
家を出た途端に部隊は銃撃を受ける。現場に復帰したばかりのラッセが負傷してしまい、クラウスは上空からの援軍を要請する。しかし、空爆には敵の居場所の確認が必要だと指示させる。クラウスは敵の姿の確認は不要だと怒鳴り、通信兵に敵を確認したと言わせて空爆を実行させる。攻撃が収まり、クラウスはラッセを搬送ヘリに乗せる。ラッセはイギリスで手術を受けて、一命を取り留める。
クラウスの元に法務官がやって来る。クラウスが指示した空爆で民間人が死亡したのだ。クラウスは尋問に対し、敵の位置を確認したと主張する。しかし、部隊の全員が聴取された結果、クラウスは民間人11人の死亡に関わった罪で起訴される。クラウスはデンマークに帰国することになり、空港でマリアや子供達に出迎えられる。クラウスはマリアに事情を打ち明け、弁護士に会う。弁護士は懲役4年になる可能性があることを説明する。クラウスは自分の行動の責任を取ろうと考えるが、マリアは家族のことを考えるように言って反対する。
映画『ある戦争』の結末・ラスト(ネタバレ)
裁判が始まり、法務官は通信兵のカメラの映像を示す。そしてクラウスが法順守の意識を欠いていると主張する。空爆で殺害された民間人の写真が示され、クラウスは動揺する。クラウスはタリバン兵がいると報告を受けたが、報告した兵士が誰かは覚えていないと尋問で主張する。クラウスは自宅で長女の算数の勉強を見てあげるが、長女は事件のことを気にかける。兵士が次々に証言台に立つが、皆が敵を確認したことを否定する。
最後に通信兵が証言台に立ち、自分が敵の銃口を確認したと主張する。その言葉にクラウスは驚く。突如として新しい供述がなされたことに法務官は疑義を唱えるが、通信兵は事前に供述を行った時には具体的に質問されなかったと主張する。判決の日を迎え、裁判官は無罪を言い渡す。その理由はクラウスの行動が理解できるものだったからだ。クラウスは涙を浮かべて喜ぶ。クラウスは自宅で長男を寝かしつける。長男はクラウスが戻ったことで精神状態も安定していた。夜中にクラウスは中庭でタバコを吸いながら考え込む。
映画『ある戦争』の感想・評価・レビュー
戦場において正しいと思ってした決断が最悪の結果を生み出す様子を描いた重厚なドラマ。軍の交戦規程に縛られるがために、兵士の命を守るためのクラウスの行為が犯罪に問われるのが理不尽と感じる反面、空爆で亡くなった民間人への正義はどうなるのかと疑問に感じざるを得ない。そうした戦争が抱える不条理、矛盾を的確に描いており、考えさせられる。こうした作品がアメリカではなく、デンマークで作られた点にも注目したい。(MIHOシネマ編集部)
戦地で戦う男の物語の言うよりは、戦争においての責任や正義を考えさせられる裁判のお話でした。実際にこのような事例は多くあるのだと思いますが、とにかく理不尽で腹立たしかったです。誰が正しいとか、誰の責任とかそんなの関係無いと言ってしまえば簡単ですが、大きな組織に属するという事はそれなりの責任が伴い、時には理不尽で自分の正義感とは反するものにも従わなければならないのだなと、もどかしい気持ちになりました。
このような戦争映画は初めて見たので、とても勉強になったし違った視点から描かれた今作はものすごく心に残りました。(女性 30代)
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