映画『ダージリン急行』の概要:『ムーンライズ・キングダム』や『グランド・ブダペスト・ホテル』といった名作を世に送り出しているウェス・アンダーソンによる、兄弟の絆を描いた感動のストーリー。ウェス・アンダーソン監督の持ち味である、色鮮やかな色彩の使い方も魅力。
映画『ダージリン急行』の作品情報
上映時間:91分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:ウェス・アンダーソン
キャスト:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン etc
映画『ダージリン急行』の登場人物(キャスト)
- フランシス・ホイットマン(オーウェン・ウィルソン)
- 長男。ダージリン急行での旅を企画した張本人。
- ピーター・ホイットマン(エイドリアン・ブロディ)
- 次男。臨月の妻がいる。
- ジャック・ホイットマン(ジェイソン・シュワルツマン)
- 三男。旅を途中で抜け出し、元彼女と旅行に行こうと考えている。
映画『ダージリン急行』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ダージリン急行』のあらすじ【起】
フランシスには他に2人の兄弟がいたが、彼らの仲は良好とは言えず、一年間以上全く連絡を取っていない状態だった。しかし、ある日フランシスはバイク事故にあってしまい、それを境にとある計画を立案する。それは、兄弟三人でダージリン急行という寝台列車で、聖地巡礼の旅をするというものだった。この旅を通して様々な体験をすることで、兄弟間の絆を縮めようと考えたのだ。また、2人には伝えていなかったものの、現在彼らの母親がヒマラヤの修道院におり、彼女に会うこともプランの一つだった。
次男のピーターには現在臨月の妻がいて、三男のジャックはちょうど彼女と別れたところだった。彼らはそれぞれ妻と元彼女を地元に残し、フランシスの声かけに答えた。しかし、彼らはそれぞれこの旅に乗り気というわけではなかった。ピーターは妊娠中の妻が気になり、ジャックは元彼女とイタリア旅行の予定があった。特にジャックは、初めからこの旅を途中で抜ける気で参加していたのだった。
映画『ダージリン急行』のあらすじ【承】
ダージリン急行は一時停車する。三人はその合間に、有名な千牛寺を訪れた。しかし、それぞれの思惑が交差する旅行がうまくいくはずもない。ジャックがピーターの秘密をフランシスにバラしてしまったのだ。そのことに激怒したピーターは、反対にジャックの秘密、途中で旅を切り上げて元彼女と旅行をするつもりだということをバラしてしまう。そして、本当にジャックの荷物からイタリア航空のチケットを見つけてしまい、フランシスは怒り出す。兄弟を逃さないように、フランシスは2人のパスポートを奪ってしまったのだった。
しかし、一度拗れた兄弟関係がすぐに回復するはずもなかった。彼らの喧嘩は激化の一途をたどり、なんとジャックが先ほど立ち寄った際に購入したペッパースプレーを噴射したのだ。あまりの威力に、喧嘩は一時的に収まった。
しかし、翌日ピーターが先日購入した毒ヘビが昨日の喧嘩の途中逃げ出してしまったことが判明する。車掌が毒ヘビを捕まえたため、誰も噛まれることなく済んだが、問題を起こした彼らは客室に閉じ込められてしまう。そして、次の駅で降りるようにと命令されるのだった。
映画『ダージリン急行』のあらすじ【転】
しかし、なんと途中で列車が運転ミスを犯し正規のルートとは違った道に入ってしまう。目的とは違った場所へと連れて行かれた兄弟たち。それでも構わず、三人は次の駅で列車から投げ出されてしまうのだった。
やむをえず野宿をすることになった3人だったが、途中、川で流されそうになっている少年達を見つける。少年達は川を越え荷物を運ぼうとしていたのだった。慌てて助けに入る兄弟だったが、少年のうち1人が、助けに入ったピーターと共に流されていってしまった。その川の流れは早く、堰にぶつかり少年は命を落とし、ピーターも大怪我を負うのだった。
3人は、その子供を抱きかかえ少年の村へと向かった。子供達を命がけで救った3人は温かく迎え入れられ、3人は村で疲れを癒したのだった。翌日、村を去ろうとした3人を住民達が引き留める。昨日亡くなった少年の葬式を執り行うため、3人にも出席して欲しいというのだ。そして、3人はその少年を、村に伝わる方法で弔ったのだった。
映画『ダージリン急行』の結末・ラスト(ネタバレ)
村での葬式も終え、3人は空港へ向かっていた。結局不仲になってしまったため、旅を途中で切り上げ家へ帰ろうとしていたのだった。そして、空港に着いた3人はそれぞれ大切な人に電話をかける。あとは飛行機に乗るだけ。しかし、彼は村の人々との交流を通し、考え方に変化が生じていた。そして、3人は飛行機に乗るのをやめ、修道院にいる母親に会いにいくのだった。
母親はその修道院で、毎日を楽しく過ごしていた。しかし、彼女はかつて3人の育児を放棄しここにやってきたのだ。そんな母との再会に、3人は嬉しくも複雑な気持ちを覚えるのだった。母親は「この美しい場所で楽しみなさい」という言葉を残し、彼らの前から消えた。
母親との再会を果たし、3人は再び列車に乗り込んだ。フランシスは、最初に奪い取っていたパスポートを2人に返そうとする。しかし、2人は「兄が持っていた方が安全だ」とそれを受け取らない。3人は顔を見合わせ、満足げに笑った。そして、列車はどこまでも走っていくのだった。
映画『ダージリン急行』の感想・評価・レビュー
ウェス・アンダーソンという監督の映画は何から何までスタイリッシュで、一見するとおしゃれ映画と思われてしまいがちですが、実のところ話の内容も素敵なのですよね。
この映画も仲が微妙な3兄弟がインドを旅するロードムービー。
紆余曲折ありながら、最後にはきちんと感動させてくれます。
いい年をした男3兄弟が仲良しじゃないなんてある意味当たり前な感じだし、いっしょに長旅に出るなんて無理じゃないかなとは思いますが、そこには共通の痛みである母親の存在があったのですね。(女性 40代)
父の死をきっかけに疎遠になっていた三兄弟が、長男の発案でインドを旅するロードムービー。
列車の中の風景や寺院で祈る人々、美しく鮮やかな色彩、音楽もインドっぽくて、インド独特のゆっくりとした時間が流れていて、思わずインドに旅立ちたくなる。
ウェス・アンダーソンの色彩感覚がインドの雰囲気にマッチしていて、その映像美にうっとりした。
それと、三人の変人っぷりや男兄弟っぽい絶妙な距離感が何とも良かった。
特に、母に再会するシーンは意外にもさっぱりしていたけれど、何故だか安心した。(女性 20代)
ウェス・アンダーソン監督の世界観が溢れること作品。色彩美とカメラワーク、静止画としても美しい1コマの連続だった。亡くなった父の遺品と共に、疎遠になっていた3兄弟がダージリン急行に乗って心の旅に出る。最初はお互いに信頼する事ができなかった彼らは、旅を通して絆を深めていく。エンディングで列車を追いかけ、これまで執着していた父の遺品が入った複数のトランクを何の躊躇もなく放り投げて乗り込む3人。父の思い出と引き換えに、大切な何かを得た彼らの旅の終わりに心が和んだ。(女性 30代)
とにかく粋。画面に映るアイテムがいちいち凝っている。舞台である寝台列車はもちろん、重要な意味を持つ鞄は絶対超高額なルイ・ヴィトン。しかもそれを惜しげもなく捨ててしまう。やっぱり粋だ。
ストーリーはある意味王道のロードムービー、旅の行程が唯一の筋。旅をしている登場人物の変化に意味を感じても良いのだけど、難しいこと考えずなんとなく浸るだけで十分心地良い。それが「旅」だし。
気がつけば繰り返し観ている一本。(男性 40代)
父親の葬式後、疎遠になっていた三兄弟が旅に出る。
出発直後は、兄弟だからこそお互いを煙たがるような関係性に、旅の雲行きは怪しくなるばかり。しかし、移動手段だった列車を追い出されたり、思いがけず現地人の水難事故に遭遇し死と向き合うことになったりと、様々な困難を共に乗り越えたことで、母親との問題に向き合おうと三兄弟が同じ方向を向くようになる。ラストの荷物を放り出して列車に乗り込み旅を続けることにしたシーンは、あらゆるしがらみから解放された姿がとても清々しい。
また、お土産をいっぱい身につけ現地観光したり、凄くローカルなバスでの移動、雄大な自然を駆け回ったり、野営する姿が魅力的で旅に出たくなる。(女性 20代)
シュールな笑いと、なんだかほっこりする物語、ウェス・アンダーソン監督の作品はこの独特な雰囲気が癖になりますね。3兄弟が真顔で何かを観ていたり、カメラ目線で時々困った表情を見せられたりするだけのことに、なぜか笑ってしまいます。そしてインドの魅力がたくさん詰まってます。寺院や儀式に焦点を当てた、厳かで荘厳な雰囲気が伝わってきました。現地の人と接して生活や優しさに触れる場面もあり、観るだけでインド旅行をしたくなります。(男性 20代)
エイドリアン・ブロディが出演しているということで気になって見たのだが、予想以上におもしろかった。舞台がヨーロッパでもなくアメリカでもなく、インドというのが良かったと思う。ちょっとコミカルで複雑な物語とインドの風景がマッチしていた。
兄弟だからこそいがみ合ってしまうし、少しのきっかけで仲良くなれるんだというのが伝わってくる物語だった。三兄弟の絆が、素敵だった。ジャックがペッパースプレーをかけるところは、思わず笑ってしまった。(女性 30代)
ウェス・アンダーソン作品特有のポップで色鮮やかな色彩はまるで絵本の中の世界に飛び込んだかのような、優しい気持ちにさせてくれます。今作も彼らしさが存分に引き出されていて、映像、ストーリー共に大満足の作品でした。
疎遠になってきた三兄弟のインド旅行。クスッと笑えるシーンや、え?なんだったの!?と思ってしまう驚きのシーンもありワクワクしながら見られました。ホッコリしながらも涙がこぼれそうになったりと、様々な感情が沸き起こる素敵な作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
ウェス・アンダーソン監督の「ダージリン急行」は、ダージリン・ヒマラヤ鉄道をモデルに描かれています。オレンジ色のポップでかわいい車体で車内もとてもおしゃれ。このダージリン急行は、監督オリジナルのデザインだそうで、実際には走っていないのだそう。ダージリン・ヒマラヤ鉄道について紹介しましょう。
ニュージャパイグリから乗車し、ダージリンまでの88kmを7時間15分で走ります。美しいヒマヤラ山脈の景色を楽しむことができます。「インドの山岳鉄道群」として、「ニルギル登山鉄道」と「カルカ・シムラ鉄道」と共に世界遺産に登録されています。また、ダージリン鉄道は610mのナローケージを使用しているため、「トイ・トレイン」とも呼ばれています。
本作では、旅する3人兄弟がギリギリで列車に飛び乗るシーンがありましたが、インドの鉄道はスピードが遅いので乗り降りが可能です。「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」は、登山鉄道であり、蒸気機関車として運行されています。インドは日本の9倍の国土を持ち、鉄道網が整備された鉄道大国なんです!ただ、実際に映画を撮影した場所はラージャスタ州のジャイプルと言われています。
ジャイプルでは、ジャンタル・マンタルと呼ばれる天文台やアンベール城が有名です。鉄道に乗って、インドを旅してみませんか?
インドは心の旅がよく似合う。生と死が身近にあり、誰もが祈りを捧げることができる場所。大事なのは、3人兄弟がダージリン急行を降りてから、インドをどう歩くかだったのです!大人の自分探しと見せて、実は家族の形を模索するストーリー。長年、会えなかった母親に再会したシーンが面白い。次の朝、母親は失踪するのだ。だけど、3人兄弟は母親らしいと笑っています。
そんな絶妙な距離感と3人兄弟の個性が本作の魅力です。またダージリン急行の車体や内装などが凝っている点と兄弟が持つ小道具に至るまでのセンスの良さに何度も観たくなります。特に3人兄弟が持っているマーク・ジェイコブズ製のスーツ・ケース。かわいくて欲しくなります。ウェス・アンダーソン監督独特の色遣いが、インドの風土と合っていて、違和感なく成立するのが素晴らしい。
3人兄弟の変人ぶりばかり前半は気になったけど、こんな心の旅もたまにはいいんじゃないかなと思わせてくれます。旅行者役で、ビル・マーレイが出演しているシーンも少しだけど注目です。3人兄弟と絡みがないのが残念でした。
インドに行きたくなる映画です。インドの雰囲気とウェス・アンダーソン監督の独特の色遣いがはまっています。ダージリン・ヒマラヤ鉄道に乗って旅ができたら最高!実際の映画撮影地になったジャイプルも素敵な町で、インドで最も有名な映画館ラージ・マンディルもあるんですよ。この映画をインドの人が観たらびっくりするかもしれませんね。
ロードムービー系の本作は、ただの自分探しではありません。兄弟の絆と家族を取り戻す物語です。大事なのは、ダージリン急行を降りて3人兄弟が歩いてみて分かること。母親との絶妙な距離感と兄弟の絆が紡がれてゆく過程に注目して下さい。”人生は何事もなさぬにはあまりに長いが、何事かをなすにはあまりに短い”という、小説家・中島敦の言葉があります。
本作を観ていて、ふとその言葉が浮かんできました。映画で心の旅をしよう。また「ダージリン急行」を楽しむ前に、3男ジャックの元恋人の物語を描いた、「ホテルシュバリエ」も収録されています。恋人役でナタリー・ポートマンが出演。併せてご覧下さい。