映画『誰もがそれを知っている』の概要:妹の結婚式を機に帰郷した女性。10代の娘が結婚パーティーの最中に誘拐されるという事件を軸に展開するミステリアスな一作。監督はアカデミー外国語映画賞を2度受賞し、国際的に高い評価を得ているアスガー・ファルハディ。
映画『誰もがそれを知っている』の作品情報
上映時間:133分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、ミステリー
監督:アスガー・ファルハディ
キャスト:ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、リカルド・ダリン、エドゥアルド・フェルナンデス etc
映画『誰もがそれを知っている』の登場人物(キャスト)
- ラウラ(ペネロペ・クルス)
- アルゼンチンで夫と二人の子供と暮らす女性。出身の村では裕福な生活を送っていると思われているため、夫が失業中であることを隠している。
- パコ(ハビエル・バルデム)
- ラウラの幼なじみであり元恋人。ベアと結婚し、ラウラ一家が持っていた土地を買い取ってワイナリーを経営している。
- アレハンドロ(リカルド・ダリン)
- ラウラの夫。事業家であったが、2年前に会社を倒産させてしまっている。無職であることをラウラの家族に隠しているため、結婚式には参加できずにいた。
- ベア(バルバラ・レニー)
- パコの妻。ラウラとパコが以前交際していたことは村の噂で知っていたため、少しラウラに嫉妬していた。事件を機にパコへの信用を失っていく。
- マリアナ(エルビラ・ミンゲス)
- ラウラの姉。病を患っている父親の看病を全て担っている。父親に代わり小さなホテルを経営している。帰郷したラウラ一家を歓迎し誰よりも喜んでいた。
- ロシオ(サラ・サラモ)
- マリアナの娘。家計が厳しいことを知っているため、夫が無職になってしまったが頼れずにいた。ラウラは村を出て優雅な生活を送っていると思っていたため、少し羨んでいる。
映画『誰もがそれを知っている』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『誰もがそれを知っている』のあらすじ【起】
夫・アレハンドロをアルゼンチンに残し、妹の結婚式に参加するため娘・イレーネと息子・ディエゴを連れて故郷のスペインへ帰ってきたラウラ。姉・マリアナが営むホテルに荷物を置き一息ついた頃、ラウラの幼馴染であるパコも結婚式の準備のためやって来た。こっそりと遊びに出ていたイレーネはパコの甥・フェリペとバイクに乗り戻ってくるのだった。
翌日、結婚式は教会で粛々と進行された。イレーネはこの日もフェリペと隠れて遊びに行った。教会の鐘楼に潜り込んだ二人は、壁面に刻まれた恋人たちの名前を見つけ二人も名前を彫る。舞い上がったイレーネが金をいたずらに鳴らした頃、参列者に囲まれた新郎新婦は二次会会場となるラウラの実家を目指し移動し始めるのだった。
ラウラの実家では盛大なパーティーが進行された。パコの妻・ベアが勤める更生施設の少年たちに依頼し、式の様子の一部始終はドローンを使って撮影している。大人たちがお酒を片手に歌い踊ってハメを外す中、子供たちは眠る準備を始める。イレーネも時差による疲れからか調子を崩してしまい、ラウラに寄り添われ寝室へ向かうのだった。
映画『誰もがそれを知っている』のあらすじ【承】
パーティーが大盛り上がりの中、村全体が停電してしまった。大雨にも見舞われ、室内に移って盛り上がり続けていたが寝室に向かったラウラはイレーネの姿がないことに気付くのだった。
不自然にベッドの上に残されたある少女の誘拐事件の記事の切り抜きを見て、ラウラは家中を探し始める。そこへ「娘を誘拐した。警察に知らせたら殺す」というメッセージが届き、ラウラは狂ったように大雨の中へ走り出すのだった。
パコも車を走らせ村中を探すが、犯人らしき姿は見つからなかった。警察には連絡せず、居間で待機する親族たち。フェリペに疑いの目を向けるが、何も知るわけもない。村の停電は誰かが意図的に電線を切ったことが原因と分かり、計画的な誘拐ではないかと憶測だけが独り歩きするのだった。
パコはベアが勤める更生施設に忍び込み、犯人探しをするが証拠は掴めなかった。ラウラとパコが若い頃付き合っていたのは村中の人間が知っているため、パコが熱心にラウラの役に立とうとする姿はベアに嫉妬を抱かせてしまう。
映画『誰もがそれを知っている』のあらすじ【転】
親戚たちもラウラがパコに土地を売ったことを持ち出し、二人の関係性を疑い始める。その矢先、再び犯人から連絡があり多額の身代金を要求された。その連絡はベアにも届いており、不思議に思ったラウラは元警官のホルヘに協力を仰ぐ。犯人は身近な存在だと予測するホルヘは、身代金を用意しているふりをして時間を稼ぐように助言するのだった。
パコは身代金を工面しようとワイナリーの土地を売ろうとしていた。一方でアレハンドロもスペインへ到着する。資産家だと思われていたアレハンドロは、2年前に失業していたことを明かした。
ラウラはパコの自宅を訪ね、土地を売って欲しいと助けを求めた。そして、実はイレーネがパコとの間にできた子供であることも明かしたのだった。動揺したパコはベアにラウラからの頼みを全て明かしたが、ベアは騙されているのではないかとラウラ一家を疑い始めた。
ラウラの元を訪ねたベアは真相を聞き出そうと問い詰めるが、アレハンドロも知っている事実だと突き返した、その後、ホルヘが訪ねてきて事件があった部屋を観察した。イレーネが眠っていた部屋では、幼いディエゴも寝ていたのにあえてイレーネを誘拐したことには理由があり身近な存在ではないかと推測を立てるのだった。
映画『誰もがそれを知っている』の結末・ラスト(ネタバレ)
イレーネを生むと決めたとき、ラウラとアレハンドロは二人の秘密にすることを誓った。しかし、今ではこの秘密を村の誰もが知っていると聞かされ、アレハンドロは落胆する。
パコはベアの反対を押し切り土地を売って身代金を用意した。しかしアレハンドロは「神が救ってくれる」と言い切り受け取らなかった。当然ラウラは激怒しアレハンドロを責め立てた。
マリアナの娘・ロシオは夜な夜な車を走らせ浅い川の手前へ向かった。そこには結婚式に参加していなかった夫・ガブリエルがいる。ロシオは「家族が壊れてしまう」と声を荒げて、パコが農園を手放したことをガブリエルへ伝えた。帰宅したロシオはマリアナにどこにいっていたか聞かれても答えなかった。マリアナはロシオの靴が泥で汚れていることに疑問を抱くのだった。
翌朝、パコにだけイレーネの声が入ったメッセージが届いた。身代金を手に、慌てて家を出たパコ。ベアは止めることもできず、警察に連絡しようとしたが思いとどまった。指示された場所には誰も居なかったが、突然湖の方で物音がした。パコが車を離れたすきに身代金は奪われ、代わりにイレーネが寝かされているのだった。
衰弱したイレーネを保護したパコ。急いで駆けつけたアレハンドロはパコに「金は必ず返す」と伝える。ようやく事が落ち着いたと思ったパコだったが、帰宅するとベアの姿はなかった。
ラウラ一家がアルゼンチンへ戻った後、マリアナは犯人がロシオではないかという不安をフェルナンドに明かすのだった。
映画『誰もがそれを知っている』の感想・評価・レビュー
小さな村で「誰もが知っている」事実が事件をややこしくし、人間味をあぶりだしていた。登場人物の過去を探るというよりも、秘めていることに注目させるような切り口は実に秀逸である。帰郷したラウラが手にした安堵と、生まれ故郷に身を置くパコが手放したものの対比がにくい。アスガー・ファルハディ監督が匂わせるミステリー要素は癖になってくるため、他の作品もぜひ合わせて味わいたい。(MIHOシネマ編集部)
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