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映画『おとうと(2009)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『おとうと(2009)』の概要:主演に吉永小百合、弟役に笑福亭鶴瓶を迎え山田洋次監督が『十五才・学校IV』以来10年ぶりに手掛けた現代劇。1960年に公開された市川崑監督の『おとうと』に捧げるオマージュ作品である。

映画『おとうと』の作品情報

おとうと

製作年:2009年
上映時間:126分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:山田洋次
キャスト:吉永小百合、笑福亭鶴瓶、蒼井優、加瀬亮 etc

映画『おとうと』の登場人物(キャスト)

高野吟子(吉永小百合)
夫に先立たれ、女手一つで娘を育て上げてきた女性。手のかかる弟・鉄郎の面倒を幼い時から任せられてきた。鉄郎をかばいすぎるため、娘・小春からも心配されている。
丹野鉄郎(笑福亭鶴瓶)
吟子の弟。早くに夫を亡くした吟子に甘えっぱなしの存在。酒癖が悪く、親類の中で爪弾きにされていた。小春の結婚を機に親族の前に姿を現すが何度も問題を起こしてしまう。
高野小春(蒼井優)
吟子の一人娘。エリート医師の元へ嫁ぐことになったが、結婚式で鉄郎が大失態を犯してしまい結婚生活は破綻してしまう。実家へ戻るが鉄郎の身勝手さに腹を立てている。
長田亨(加瀬亮)
離婚後、実家に出戻った小春と恋仲になる青年。地元の商店街の住人で、吟子に頼まれドアの建付けを直しに来た日に、偶然小春と再会し交友を持ち始める。

映画『おとうと』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『おとうと(2009)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『おとうと』のあらすじ【起】

日本が独立国として世界的に認められた頃、大阪で母親・吟子は生まれた。「寅さん」が日本で大ブームが起きた頃、東京で両親は結婚。しかし、体の弱かった父親は早々に亡くなり吟子は小さな薬局を営みながら一人娘・小春を育ててきた。

小春の名付け親である叔父・鉄郎は親類の中で問題児である。吟子の夫の十三回忌で酒を飲み大暴れしてしまい、親族から爪弾きにされていた。結婚を控えている小春は鉄郎にも招待状を送るも、宛先不明で返ってきてしまった。

結婚式当日、近所の人から聞きつけて鉄郎が会場に駆け付けてしまった。吟子の兄・庄平は「酒だけは一滴も飲むな」と約束させ、渋々入場することを許可した。調子のいいことを言い続けた鉄郎だが、人の目を盗んで酒を嗜んでしまう。

結婚相手のエリート医師に悪絡みをする鉄郎。挙句の果てにマイクを奪い独壇場で浪曲を歌い上げた鉄郎は、制御され暴れはじめてしまう。なんとか結婚式は終えることができたが、吟子と庄平は新郎側の親族に酷く叱られてしまった。

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映画『おとうと』のあらすじ【承】

激怒した庄平は鉄郎と絶縁すると言い切った。ひとり酔いつぶれた鉄郎は何も覚えておらず、翌朝吟子からすべてを聞かされ平謝りを続ける。役者業では食っていけず、たこ焼き屋で稼ぎを得ているという鉄郎。職業病の腱鞘炎を吟子に自慢げに話すのだった。

呑気に散歩をして帰宅した鉄郎。吟子は亡き夫の衣類を鉄郎に譲ろうと準備していた。借り物の晴れ着にほつれを作ってしまった鉄郎を気にかける吟子。たこ焼き屋を一緒に営む女性がいると知り、吟子は詳しく聞き出そうとするが鉄郎は逃げるように大阪へ戻っていくのだった。

鉄郎の大失態をきっかけに、小春の結婚生活はすぐに冷めきったものになった。気を落として小春は実家へ戻ってきた。小春に代わり吟子は小春の夫へ会いに行った。忙しさを理由に話し合いから逃げる様子に、吟子は返す言葉を失う。その後すぐ、小春は離婚を決断する。

小春が近所に住む亨と交友を深める中、薬局に鉄郎の恋人という女性が訪ねてきた。鉄郎に貸し出した130万を立て替えてほしいというのである。借用書や写真を見せられた吟子は銀行へ走る。薬局の改装資金として貯めてきた預金を引き出し、全額肩代わりをするのだった。

映画『おとうと』のあらすじ【転】

気を落とす吟子の元にふらりと鉄郎が訪ねてきた。調子のいい鉄郎に対して、今までになく厳しい追及をした吟子。言い訳ばかり並べる鉄郎に対して、吟子はしびれを切らし遂に絶縁をした。それ以降、鉄郎は行方知らずとなってしまう。

最後に顔を合わせたとき、体調が優れないのではないかと勘繰っていた吟子はこっそりと鉄郎の捜索願を出していた。しばらくして大阪の警察から救急車で病院に運ばれたと連絡を受ける。吟子は小春の反対を押し切って大阪へ向かった。

民間のホスピス「みどりのいえ」に引き取られたという鉄郎は、末期がんに侵されていた。面会を拒絶する鉄郎だが、吟子が想像するよりも元気な姿で過ごしている。口達者な鉄郎はみどりのいえでも、よく話を聞かせているという。支払いを心配する吟子だが、生活補助や国からの補助金で賄われていると所長から説明を受けるのだった。

吟子は3か月間空き家にしていた鉄郎の家も訪ねた。大家から鉄郎の暮らしっぷりを聞き、吟子が好きなインコを放し飼いにしていたことを知るのだった。

映画『おとうと』の結末・ラスト(ネタバレ)

吟子が大阪に宿泊した日、小春は亨から改めて気持ちを聞かされる。バツイチであることを気にかけていた小春だが、亨との再婚を決意するのだった。

鉄郎は死期が近づいているにも関わらずユーモアに溢れた日々を送っている。余命宣告を受けた頃、鉄郎は「4月7日」を自分の命日にすると言い張っていたことを吟子は知らされた。翌日、吟子は鉄郎のインコを引き取り東京に戻った。

一つの季節を跨ぎ、みどりのいえから鉄郎の容態が悪化したという連絡が吟子の元に届く。すぐに大阪に駆け付けた吟子は、鉄郎の好きな鍋焼きうどんを食べさせてあげた。互いの手首にピンクのリボンを巻き付け、存在を確認できるようにしてあげた吟子。鉄郎の容態が山場を迎えた頃、小春と亨も駆け付けるのだった。

鉄郎は吟子たちとみどりのいえの人たちに見守られ息を引き取った。しばらくして落ち着いたころ、小春は亨との結婚式を控えていた。痴ほうが始まった義母が「あの人だけのけ者だと可哀そう」だと鉄郎の心配をし始めた。これまで白い目で見られてきた鉄郎への優しさに吟子は涙をこらえ、小春は「今からでも呼ぶわ」と声高らかに返答をするのだった。

映画『おとうと』の感想・評価・レビュー

邦画らしいというと偏見はあるかもしれないが、とても穏やかに人の温かみを伝える物語である。東京が舞台ながら、人情劇が会話と目線で伝わるのは山田洋次監督の手腕によるものか、吉永小百合などの演者の実力か。淡々とした展開ながら、家庭における普遍的な問題がたくさん提起されている。ベルリン国際映画祭のクロージング作品に選ばれていることからも、世界共通の「家族像」が伝わる一作であることは間違いないだろう。(MIHOシネマ編集部)

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