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映画『アリスの恋』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『アリスの恋』の概要:1974年制作、マーティン・スコセッシ監督によるアメリカ映画。主演を務めたエレン・バースティンは本作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。夫の癇癪に耐えながら反抗期の息子と3人での生活を送る平凡な主婦が、夫の事故死をきっかけに歌手として自立を志す。

映画『アリスの恋』の作品情報

アリスの恋

製作年:1974年
上映時間:113分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:エレン・バースティン、クリス・クリストファーソン、ビリー・グリーン・ブッシュ、ジョディ・フォスター etc

映画『アリスの恋』の登場人物(キャスト)

アリス・ハイアット(エレン・バースティン)
カルフォルニア州に生まれ、結婚を機にニューメキシコ州ソコーロで生活をしている平凡な主婦。1児の母。結婚前は歌手として生計を立てていた。結婚後は、よく癇癪を起こし息子と衝突する夫ドナルドの機嫌を損ねないよう日々顔色を窺いながら生活している。夫の事故死に傷心していたが、息子との生活を守るため再び歌手として働こうとモンテレーへ向かう。
ドナルド(ビリー・グリーン・ブッシュ)
アリスの夫。反抗期の息子とよく衝突する亭主関白な男。仕事の最中にトラックで衝突事故を起こして死亡。
トム・ハイアット(アルフレッド・ランター)
アリスとドナルドの1人息子。間もなく12歳を迎えるという時期に父親を事故で亡くす。母アリスがモンテレーを目指す旅に同行するが、その際12歳の誕生日をモンテレーで過ごし、9月には新しい学校に通うことを約束させる。
ベン・エバーハート(ハーヴェイ・カイテル)
母子がモンテレーへ向かう途中、金欠のため仕事を得ようと立ち寄った町で出会った男。27歳。子犬のような可愛らしい笑顔でアリスに近づき肉体関係を持ったが、本性はドメスティック・バイオレンスを振るう粗雑で暴力的な男だった。
デイビッド(クリス・クリストファーソン)
母子が再び金欠のため立ち寄った、2つ目の町で出会った牧場主。2年前に妻が子供を連れて出て行っている。アリスがダイナーで懸命に働く姿を見て彼女に好意を抱く。デイビッドはアリスの息子トムとすぐに打ち解けることになりトムもまた彼に懐くが、アリスが自分に心を開くことへ臆病になっていることに気付き彼女を理解したいと思い悩む。
フロー(ダイアン・ラッド)
アリスが働くことになったダイナーの同僚。口が悪く言葉遣いが下品な気性の荒い女性。仕事はできる。アリスは彼女に対する第一印象が最悪だったが、結果的には打ち解けて親友になる。
ベラ(ヴァレリー・カーティン)
フローと同様、アリスが働くことになったダイナーの同僚。非常にトロい性格で、激務に付いて行けずいつも泣きながら仕事をしている。要領が悪く空気も読めないが、一生懸命でひたむきな娘。
オードリー / ドリス(ジョディ・フォスター)
トムが通い始めたギター教室で出会った個性的な女の子。父親は蒸発し、母親は売春婦だと言う。トムを万引きに誘ったり一緒にワインを飲んだり、彼によくないことを吹き込んでいく。

映画『アリスの恋』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『アリスの恋』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『アリスの恋』のあらすじ【起】

カルフォルニア州に生まれたアリスは歌手を夢見る少女時代から27年が経ち、35歳になった今では結婚して子どもを儲け、ニューメキシコ州ソコーロの一軒家で主婦として暮らしていた。

もう間もなく12歳を迎える息子トムは、ロックミュージックが好きな反抗期の少年。その日も大音量でロックを聴いていると、父ドナルドから大激怒を食らってしまう。ところがドナルドはトムに大声で怒鳴るだけで何もしない。音楽を止めるのも、息子に注意をするのもアリスの役目だ。徹底して亭主関白な夫なのだ。アリスは、そんな夫の機嫌を損ねないように日々生活していた。冷え切った夫婦生活ではあったが、アリスの思う男らしさというのは、黙って付いて来いということだと信じていたのだ。

ある日、アリスは近所に住む親友のビーと、自宅で洋服の採寸をしていた。夫の愚痴や世間話に花を咲かせている最中けたたましく電話が鳴ったので、電話を受けるとアリスは泣き崩れた。ドナルドがトラックの事故で死亡したという知らせだったからだ。

夫の葬式を終え、2千ドルあった貯金の内手元に残ったのは僅か1ドル59セントであった。アリスは息子との生活を守るため再び歌手として生計を立てることを決めた。家財道具を全て売り払い、旅行資金の工面をしたアリスは息子と共に憧れの地モンテレーを目指して車を走らせる。

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映画『アリスの恋』のあらすじ【承】

母子がモンテレーに向けて旅をする車内は非常に賑やかだった。反抗期の息子は今後の生活費の心配や9月には新しい学校に通いたいという希望など、アリスに願望や文句ばかりをぶつけた。アリスも負けん気の強い性格なので二人はよく言い合いになった。そうこうしている内に家財道具を売って得た資金が底を尽いてしまったので、二人は途中の町に立ち寄り職を探すことにした。

歌手として仕事を探すアリスだったが、いくら若作りをして着飾ってみても中々仕事が見つからない。滞在から数日が経ち、最終的にはバーを運営しているオーナーへ泣き落としを仕掛け何とか専属契約を結ぶことに成功した。歌い始めてしまえば、アリスの歌の評判は上々だった。彼女が念願の歌手として働くようになったある日、バーで一人の男から声をかけられる。男はベン・エバーハートと名乗り、薬莢に火薬を詰める仕事をしていると言う。アリスは初めこそ相手にしなかったが、ベンの自分に対する純粋な好意に心を動かされついには体を重ねることになった。

トムは母に恋人がいることを気付いており、いつ紹介してくれるのかと催促する。その内紹介するからと伝えた直後、二人が滞在しているモーテルに女性が訪ねて来た。女性はリタ・エバーハートと名乗った。ベンの妻である。ベンは既婚者だったのだ。彼女の話によるとアリスと出会ってからベンは1週間も働きに出ておらず、いよいよ難病を患っている子供の薬代が払えない状況にまでなってしまったのだと言う。アリスは素直に謝罪をし二度とベンに会わないことを約束したが、タイミングを見計らったかのようにベンがモーテルの戸を叩く。

アリスはリタと自分の身の危険を感じ玄関を開けなかったが、ベンはモーテルの玄関ガラスを割って強引に室内へ侵入すると、妻であるリタにナイフを突き付けて彼女を追い出した。ベンは、帰って欲しいと懇願するアリスにも狂暴な振る舞いをし、ひとしきり暴れた後「お前の仕事終わりに迎えに行く」と言い残し去って行った。

更なる身の危険を感じたアリスはその日の内に息子を連れ大慌てで町を出た。その時の全財産は90ドルであった。

映画『アリスの恋』のあらすじ【転】

母子は慌てて前の町を飛び出して来たので手持ちの金も無く、仕方なくモンテレーへ向かう道中にあるトゥーソンという町で再びモーテルに泊まりながら職探しを始めた。ところがこの町では歌手の仕事が全く見つからず、アリスは不本意ながらウェイトレスとしてダイナーで働くことになってしまった。

アリスが働くことになったダイナーは常に忙しく、仕事量が大変に多かった。ただでさえ希望の職業でなく気乗りしていないというのに、同僚の一人であるフローは口が悪い上に気性も荒く、同じく同僚のベラは非常に容量が悪いので見ているだけでイライラが募る。ストレスに押し潰されそうになりながらもアリスは懸命に働いた。そんなアリスの姿を見ているうちに彼女へ好意を抱いたのが、常連客で牧場主のデイビッドだった。

デイビッドとアリス親子は次第に親睦を深め、特にトムはすっかりデイビッドに懐いていた。一方のアリスも大らかで安心感のあるデイビッドに内心は惹かれていたが、ベンの一件もあったため恋愛に対して非常に慎重になっていた。

そんな中、トムがいよいよ12歳の誕生日を迎える。デイビッドの家で3人は誕生パーティを開いた。楽しい雰囲気のままパーティは終わろうかとしていたが、些細なことからトムとデイビッドが喧嘩を始めてしまった。トムは家を飛び出し、デイビッドは怒りの矛先をアリスに向ける。子育ての仕方や性格のすれ違いから三人は決裂してしまった。さらにアリスはこの日、モンテレー行きの貯金を全額トムの誕生日プレゼントに充ててしまっていたため、勢いに任せて町を飛び出すにしても旅の資金は底を尽いてしまっていたのだった。

誕生パーティの後デイビッドの家を飛び出したトムはその夜、ギター教室で知り合った少女オードリーの元へ駆け込んだ。二人は家にあったワインを煽り、ついには補導されてしまう。迎えに来たアリスは泥酔状態のトムを引き取り、また二人きりの生活に戻らざるを得ない予感に鬱々とした気持ちになっていた。

映画『アリスの恋』の結末・ラスト(ネタバレ)

デイビッドとトムの喧嘩が原因でデイビッドと距離を置くようになったアリスは、今後のことを悩んでいた。デイビッドとこのまま関係を続けるべきか、憧れの地モンテレーへ向かうべきか考えあぐねていたのだ。アリスは悩み過ぎて仕事も手につかなくなってしまい、同僚のフローに連れ出され来客がピークのダイナーからバックヤードへと向かった。

第一印象は最悪だったがフローと打ち解けることができたアリスは、今自分の身に起きていることを洗いざらいフローに告白する。アリスは、自分はもう男に頼らなければ生きていけないのだと悲観して涙が止まらなくなってしまう。そんなアリスの話を真剣に聞いていたフローは「私達の人生は男に捧げるための人生じゃない。望みをハッキリさせて、それを突き詰めるのよ」と励ました。その言葉を受けたアリスは、今後デイビッドはどうしたいのか、本人にしっかり問い質そうと決意する。

ダイナーへ戻ると、デイビッドがアリスと話し合いをしたいがために来店していた。先程のバックヤードでの決意はどこへやら、アリスはデイビッドと目を合わせないように裏へ逃げ込もうとする。フローはそれを引き留めついに二人は本音をぶつけ合う。デイビッドはもう一度関係をやり直したい旨を伝えたが、アリスは自分の夢を諦めきれないのでデイビッドと別れてモンテレーへ向かうと告げた。それでも彼は「君を理解したい」と食い下がる。ついには、牧場経営なんてどうでもいいから一緒にモンテレーへと行くと言い出し、その言葉を聞いてアリスはデイビッドを許したのだった。店中から祝福されて二人はヨリを戻した。

この一件からアリスはモンテレー行きを取りやめ、デイビッドと共にトゥーソンで暮らすことを決めた。アリスはトムに、歌ならどこでもできるからこのままトゥーソンに生活拠点を置いて、モンテレー行きは辞めてもいいかと聞く。トムはそれを聞いて照れ臭そうに、デイビッドと喧嘩するかもしれないけど上手くやるよと返した。母子は互いを理解して、肩を組みながら新しい人生に向かって歩き出したのだった。

映画『アリスの恋』の感想・評価・レビュー

夫の機嫌を損ねないように生活していた主婦の生活から一転、反抗期を迎えた息子と二人きりで人生を見つめ直す女性の強かさが胸を打つハートフルな作品だった。この作品でアカデミー賞を受賞したエレン・バースティンの演技もさることながら、多感な時期にぶつかり合った父親と死別し、母や母を取り巻く周囲の大人達との距離感を掴んでいくトムの成長を演じきったアルフレッド・ラッターの演技も見どころの一つである。

何より、幼き日のジョディ・フォスターを見ることができるという点は非常に貴重である。(MIHOシネマ編集部)


夫を突然亡くし「シングルマザー」となった女性と、その長男の成長や、葛藤を描いたロードムービーです。この作品を通して描かれているのが、まさに「母は強し」ということ。自分自身も夫と言う最愛の人を亡くし、途方に暮れてしまってもおかしくないのに、息子を育てるために、いつも強い母でいる姿に心打たれました。
反抗的な態度をとる息子に対して、母は折れることなく同じ目線に立ったり、すごいなあと感心してしまうシーンがたくさんあります。
ゆっくりとしたテンポで進むので、とても見やすい作品でした。(女性 30代)

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