『白いリボン』『ファニーゲーム』のミヒャエル・ハネケ監督が描く、愛と老いについての映画。パルムドール受賞作品。ある日突然病に倒れた妻と、それを介護する夫の姿を描く。ジャン=ルイ・トラスティニャン、エマニュエル・リヴァ主演。
映画『愛、アムール』 作品情報
- 製作年:2012年
- 上映時間:127分
- ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
- 監督:ミヒャエル・ハネケ
- キャスト:ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リバ、イザベル・ユペール、アレクサンドル・タロー、ウィリアム・シメル etc…
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映画『愛、アムール』 評価
- 点数:100点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『愛、アムール』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『愛、アムール』のあらすじを紹介します。
パリに住むジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・エヴァ)は共に音楽家であり、満ち足りた生活を送る老夫婦であった。しかしある朝、アンヌは突然全ての動きを止めてジョルジュの呼びかけにも応じなくなる。暫くして元に戻るアンヌだが、それは病による発作であることが分かる。手術に臨むも失敗し、アンヌは半身麻痺に陥る。ジョルジュは入院を薦める娘のエヴァ(イザベル・ユペール)を制止して、「病院に戻りたくない」というアンナの望みを聞き入れる。老いた2人だけの生活は困難なものだったが、尊厳を保とうとするアンヌをジョルジュは支えるのだった。
しかしアンヌの病状は次第に悪化していき、介護無しでの生活が不可能になっていく。身体の不自由に加えて痴呆症も進行していた。それでも献身的な介護を続けるジョルジュ。いつしか2人はヘルパーや娘をも遠ざけ、2人だけの世界に入り込んで行く。苛立ちから互いを傷つけながらも愛し合う2人だが、最着々と後の時は近づいていた。死を望むアンヌに対し、ジョルジュは昔話し終えるとアンヌの顔面に枕を押し付ける。息絶えたアンヌに花を手向けると、ジョルジュもまた旅立つのだった。事件が発覚してしばらくした後、2人が暮らしたアパートには物思いに耽るエヴァの姿があった。
映画『愛、アムール』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『愛、アムール』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
共依存から愛へ
老老介護を描いた作品ではあるが、決して社会派の作品ではない。2人は裕福な暮らしを送っているし助けてくれる娘もいる。介護自体は極めてリアルに描写されるが、物語の本質はそこではない。ハネケが描くのは極限状態に追い込まれた2人の愛の形だ。
尊厳を保とうとするアンヌを献身的に介護するジョルジュの姿に、周囲の者は胸を打たれ理想の夫婦だと言う。しかしこの時アンヌとジュルジュは共依存の関係にあると言える。介護する者、される者という関係はジュルジュに、アンヌは自分がいないと生きていけないという錯覚と独占欲を引き起こす。それ故に他者を2人の空間から排除していくのだ。だがこの歪んだ愛は物語のラストで真の愛へと姿を変える。尊厳死を望むアンヌの願いを叶える際、2人の愛は共依存からより崇高なものへと昇華されるのだ。
鳩の意味するもの
作中で鳩が部屋に迷い込む印象的なシーンが2度ある。1度目は物語の前半に、2度目は全てが終わった後だ。1度目の鳩は2人の空間への侵入者を現す。だからジョルジュは娘やヘルパーにするのと同様にすぐさま外へ追い出す。だが2度目の鳩は捕まえると優しく撫でる。まるで死んだばかりのアンナが鳩になって戻ってきたかのように。その慈しむ姿からは彼が真の愛に達したことが伺い知れる。
本作は、ある日突然病気で倒れた妻と、妻を介護する夫を描いたヒューマンラブストーリー作品。
高齢化社会の今、とても映画の中の話とは思えないくらい身近に感じられる現実的な題材で、長年連れ添った妻を介護する姿は壮絶で観ていてなかなか苦しいものだった。
しかし、2人の間にある深い愛が感じられて、涙なしには観れなかった。
監督の作り出す世界観に見事に惹きつけられ、またラストも私にとっては幸せな終わり方なのだと解釈したい。(女性 20代)
究極の愛を目にした気がします。妻を献身的に介護する夫と言ってしまえば、素敵な夫婦として人々の目に映るのかもしれませんが、今作のジョルジュとアンヌはお互いに依存しあっていて、周囲の人間の手を借りられる状況にありながらも、それを拒みました。アンヌの意志を尊重してともとれますが、私にはジョルジュの自己満というか少し歪んだ愛にも見えました。妻を誰にも渡したくない、2人だけの世界で生きていきたいという、束縛にも感じられる依存関係をどう感じるかでこの作品の見方は大きく変わるでしょう。(女性 30代)
この作品には、ピアノ以外のBGMがない。その演出が、妻の病気が進行していく老夫妻の生活の様子をリアルに感じさせる。
なんとも美しいピアノの音色と、上質な映像が印象的だ。
夫のジョルジュの介護疲れによる行動ではないかと思わせる、衝撃のラストではあるが、本当にそうだろうか。
妻の辛そうな姿を見ることが苦しかったのか、それとも自分を頼ってくれない妻に嫌気が差したのか。
真相は分からないが、「愛とは何か」を深く考えさせられる作品である。(女性 20代)
映画『愛、アムール』 まとめ
ミヒャエル・ハネケは間違いなく世界で最も優れた映画監督の1人だ。人間の心理を暗部まで見事に曝け出す。今作では事細かに描写されたリアルな介護シーンの上に、老夫婦が真実の愛に至るまでを丁寧に描いている。2人だけの静謐なひとときに生まれる愛は観る者の心を揺さぶる。不安を煽る演出も相変わらず巧みだ。特に今作では水を効果的に使っており、アンヌが初めて発作を起こすシーンでは流しっぱなしの水道がジョルジュの焦りを表現する。後の彼の悪夢でもこの水のイメージが反復され、床に溜まった水が追いつめられたジョルジュの心情を表現している。大ベテランのジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・エヴァは長年連れ添った本物の夫婦のようで、テーマをまさに一言で現したタイトルも観賞後に心に刺さる。
みんなの感想・レビュー
かなり泣ける映画です。
祖母が亡くなった時の気持ちを思い出しました。
介護をされた方なら分かるようなシーンも多く、美しいだけじゃないのが愛なのだと感じさせる映画です。愛する人がいるなら是非観てみてください。
ちなみに、BGMはなく、カメラも固定で長回し。アンヌ・ジョルジュ老夫妻の生活を覗いている感じを表現したかったのではないでしょうか。