映画『あやしい彼女』の概要:73歳のヒロインは、ある夜に写真館で写真を撮ってもらう。すると、不思議なことに自分の姿が20歳に変貌。仕事に子育てにと青春を費やして来たヒロインは、自分の素性を隠して青春を謳歌。彼女の行動と言動により、周囲の心をも次第に変えていく。
映画『あやしい彼女』の作品情報
上映時間:125分
ジャンル:ファンタジー、コメディ、ヒューマンドラマ
監督:水田伸生
キャスト:多部未華子、倍賞美津子、要潤、北村匠海 etc
映画『あやしい彼女』の登場人物(キャスト)
- 大島節子(多部未華子)
- 瀬山カツが20歳になった姿。だが、中身は73歳。透き通るような歌声を持ち、翼のバンドでボーカルを務める。可愛らしい容貌。ファッションは70年代が中心。
- 瀬山カツ(倍賞美津子)
- 73歳。毒舌で派手好きな女性。若い頃に妊娠、出産したため、青春時代を子育てと仕事に費やした。夫は病で早逝しており、以降はシングルマザーで幸恵を育て上げる。
- 瀬山幸恵(小林聡美)
- カツの娘。何かと自分のせいにするカツとは、意見が合わない。しかし、母親のことを心配している。雑誌編集長だったが、加齢とともに役を下ろされてしまう。
- 小林拓人(要潤)
- 音楽プロデューサー。ソウルフルな歌手を探しており、節子の歌声に心を打たれ、彼女に惹かれていく。
- 瀬山翼(北村匠海)
- カツの孫でバンドマン。祖母思いの優しい青年。節子のお陰で音楽の方向性を決めることができる。
映画『あやしい彼女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『あやしい彼女』のあらすじ【起】
瀬山カツ73歳は、商店街でも有名な毒舌婆さんである。派手な服を身に着け、ばあちゃんと呼ばれると激怒するほど、気の強い性格。彼女は銭湯でパートをしながら生計を立てていた。1人娘は雑誌編集長で、20歳で男の子の孫が1人いる。
カツと娘の幸恵は、似た者同士でいつも意見が合わない。2人の緩衝材として一役買っているのが、孫であり息子でもある翼だった。彼はバンドを組んでいる。その件に関して幸恵は反対しているが、カツは歌が好きなので賛成していた。
翼のバンドはライブハウスでも人気のないバンドだった。音楽性が一貫していないためだ。しかしある日突然、ボーカルの女の子が就活するというのでバンドから抜けてしまう。
そんな折、カツがオレオレ詐欺に引っかかってしまい、全てを娘のせいにしてしまう。すると幸恵は傷ついて、自分の好きなようにすればいいとカツを冷たく突き放すのだった。
カツはその夜の内に家出。神社の境内で泣いていると、オオトリ写真館という写真スタジオが目に入った。
彼女は誘われるように写真館へ。カツは娘を育てるために自分のすべてを犠牲にしてきた。故に、青春というものに強い憧れを抱いている。彼女は若い頃に戻ったような気になって、唇に紅をひき写真を撮ってもらった。
その後、スタジオから出てすぐ、ひったくりに遭うカツ。彼女はバイクを追いかけてバッグを取り返した。犯人を叱りつけていると、ヘルメットに自分の姿が映る。その顔に驚愕したカツ。この若い女は誰だ。
映画『あやしい彼女』のあらすじ【承】
1晩経っても戻らないカツを心配した幸恵は、朝になってカツの幼馴染である銭湯の主人に相談へ向かっていた。
その頃、カツは公園の滑り台で目を覚ます。若返った身体は、年寄りとは大違い。俄かに嬉しくなり、はしゃぎまわるカツ。
彼女は銀行から貯金を下ろし、美容院へ向かった。雑誌で見たオードリー・ヘプバーンの髪型に整えてもらう。次は服だ。『ローマの休日』のヘプバーン風に整え、靴を購入。
その後、幼馴染の銭湯で寛ぐも、入浴中にのぼせてしまう。しかし、介抱してくれる幼馴染は、若いカツに気付かない。彼女は口から出まかせの経歴を話し、幼馴染の家に居候させてもらうことにした。
商店街のお祭りがあり、カツもそこへ参加。会場ではのど自慢大会が開かれていた。厚化粧のシニアであるライバルが高得点をたたき出したため、カツの負けず嫌いに火が点く。
彼女はそこで『見上げてごらん夜の星を』を歌い上げる。彼女の歌声は、透き通った美しいものだった。
通りがかった音楽プロデューサー小林でさえも、カツの歌声に誘われて会場へ。そこには、たまたま翼も来ていた。
咄嗟に逃げ出したカツだったが、翼に捕まってしまい食事を共にする。彼女は大島節子と名乗り、話の流れでバンドのボーカルをすることになった。
翌日、バンド練習の見学に来たカツ。孫はビジュアル系を目指しているのか、とにかくうるさいばかりの音楽を奏でる。呆れてしまったカツは、歌というのは魂を震わせるものが本物なのだと説教。
カツをボーカルとした翼のバンドは、70年代のカバーバンドとして路上ライブを行い、かなりの額を稼ぐことになる。
映画『あやしい彼女』のあらすじ【転】
小林はカツの歌声に心を打たれ、彼女を歌手デビューさせたいと考えていた。そんな折、ネット動画でカツの歌を発見した小林。翼のバンド「怪しい彼女」にデビューの話を持ち掛ける。
自宅へ戻ったカツだったが、自分の持ち物を餌に網を掛けられる。犯人は幼馴染だった。すかさず、やり返したカツは幼馴染に説教する。傍から見たら、孫が爺さんを虐めているようにしか見えない。紆余曲折の果て、幼馴染は目の前にいる節子がカツであることに気付いた。
心配している幸恵に幼馴染がカツの手紙を届けた。その後、カツは節子として幸恵と会話。娘の心情や現状を初めて知る。
「怪しい彼女」が歌番組に出演。カツは歌が流行った頃の生活を思い出し、泣きながら熱唱。この放送が話題となり、ロックフェスへの出演オファーが入る。ただし、フェスに出演するには、オリジナル曲を披露しなければならない。
小林を含めたバンド仲間とアウトドアに向かったカツ。彼女は20歳の若さで大変な働き者、且つ母親のような面倒見の良さを発揮。そして、若さを堪能する。だが、山道で転んだ際、足に傷を負ったカツは自分の足に、ある発見をする。傷ができて流血すると、その部分だけ歳が戻ってしまうのだ。
幼馴染とその実験をしていると、幼馴染の娘が勘違いしてしまい、家を出て行って欲しいと言われてしまうカツ。行く宛てもなくさまよっているところへ、小林からメールが入り彼女は一時、彼の家へ避難した。
映画『あやしい彼女』の結末・ラスト(ネタバレ)
幼馴染は幸恵に節子の素性を明かしたが、幸恵は容易に信じなかった。
そうしている間にも、小林と距離を縮めていくカツ。若さを謳歌し、小林へ密やかな恋心を抱く。
「怪しい彼女」はオリジナル曲が作れずに思い悩んでいた。カツは翼を励ますが、その時のしぐさにはっとする翼。節子は誰だという疑念が頭を過る。その後、励ましもあって必死にオリジナル曲の制作に勤しむ翼。
そんな息子をそっと見守る幸恵だったが、翼のPCにバンドメンバーで撮った画像を目にし、はっとして昔の写真を引っ張り出す。自分が幼い頃、母親と撮った写真だ。幸恵は若い頃の母親の姿を目にし、愕然とする。節子と同じ姿だ。嘘だと思っていた話は本当だったのだ。
翼が必死になって作った曲にオッケーが出た。喜んでいる最中、カツの携帯に着信がある。それは、厚化粧シニアの訃報だった。彼女は通夜に参列せず、そっと遠目から見送った。
ロックフェスにて順番待ちしていた「怪しい彼女」。翼は修理に出していたギターの受け取りに行っていた。だが、もうじき出番だというのに、翼が戻らない。ようやく来たと思ったら、意識も朦朧としており傷だらけの血塗れだった。どうやら戻る際、交通事故に遭ったらしい。すぐさま救急車が呼ばれる。しかし、翼は出演すると言い張るも、それどころではない。節子の説得もあって「怪しい彼女」は、翼抜きでロックフェスに出演した。
病院へ搬送された翼だったが、輸血が必要だと言う。彼の血液はRH-型だった。同じ血液型を持つのは、祖母のカツだけである。そこへ節子が姿を現し、自分から血液を抜いて欲しいと言う。節子から血を抜けば恐らく、73歳のカツに戻ってしまうだろう。幼馴染の制止を振り切るカツ。自分の容貌よりも、孫の命の方が大切に決まっている。
輸血へ向かう節子に声を掛けた幸恵。彼女は節子が母親のカツであることを知り、今まで育ててくれた礼を言う。そして、節子としての人生をやり直せと話した。翼は自分の息子だから、自分がどうにかすると。
だが、カツは幸恵がいたから母親になれたと言い、万病に効くツボを娘に教えた。母子はようやく、仲直りする。そして、カツは覚悟を決めて、翼に輸血をするのだった。
1年後、73歳に戻ったカツは幸恵とライブのリハーサルを見学していた。
「怪しい彼女」は元のボーカルが戻りこの度、ライブが行われる。カツの小林への淡い恋心は破れてしまったが、これで良かったのだ。彼女は風に吹かれてくると言い、会場を出て行く。
同じ会場にいた小林は、記者に1年前のボーカルのことを聞かれ、一緒に撮った画像を見直す。だが、不思議なことに画像から彼女の姿だけが消えていた。一体、何者だったのか。
歩道を歩くカツの前に若い男が現れる。その顔を見たカツは、幼馴染の名前を呼んだ。彼もどうやら例の写真館へ行ったらしい。2人は笑いながらバイクに乗って、ドライブへ向かった。
映画『あやしい彼女』の感想・評価・レビュー
韓国映画を日本版にリメイク。自分の思っていた人生を歩んでいる人は、ごく僅か。後は、何処かで道を間違えてしまった人たち。それでも、人は一生懸命歩んで行く。そして、一度でいいから人生をやり直したいと願うはず。
もし、そんな事を望んでいるのなら1度この映画を観て見るといいかもしれません。思っていた通りの人生もいいかもしれませんが、今の人生も悪くない事がきっと分かるはず。(女性 30代)
1970年代風のファッションが古臭くなくて、むしろ可愛くておしゃれだった。オードリー・ヘプバーン風の髪型が、多部未華子さんによく似合っていた。自分の人生よりも孫の命を優先するカツがカッコいいなと思った。青春を取り戻し、歌や恋を楽しむ彼女がとても素敵だった。小林との恋愛が実らなかったことは残念だが、73歳の姿に戻った後、若返った幼馴染と一緒に無邪気に楽しむ姿が見られたので良い終わり方だったと思う。(女性 30代)
どことなく懐かしい風景や昭和の雰囲気を漂わせる、一昔前の日本を思わせる作品。それもそのはず、主人公の目線で見れば昔の日本が懐かしいだろう。
一生懸命生きてきて、過去に置いてきてしまったはずの夢をもう一度実現できた喜びや、それにも勝る家族愛。素朴な毎日を生きる不器用な人々の心が少しずつ通い合うところは、見ていて心が温かくなる。実は本当に身近な場所にある大切なものに気づけていなかったり、大切な人がいるということを改めて感じさせてくれる。(女性 30代)
多部未華子さん演じる若返った主人公のファッションや髪型がとにかく可愛いいです!彼女の行動や発言はとってもパワフルで、観ていてとても元気が出ます。しかもその強さの裏には壮絶な過去と苦労があり、それを知った上で改めて観ると抜群の笑顔もとても切なく感じてしまいました。
劇中ではロック調にアレンジされた昭和の歌謡曲が沢山出てくるのですが、それらがどれも素敵で聴き惚れてしまいます。家族の絆や周りの人たちの支えなど、身近だけれども大切なものに改めて気がつかせてくれる、元気と笑顔がもらえる作品です。(女性 20代)
韓国映画のリメイク版。日本だけでなく、中国やベトナムでもリメイクされています。韓国版では元B1A4のジニョン、中国版では元EXOのルハンなどアイドル出身のイケメンが出演していることでも話題になり、韓国版を先に視聴しました。
リメイク版なのでストーリーはほぼ同じ。1970年代の懐かしいファッションがとても可愛く、雰囲気がいいです。日本版では北村匠海が出演。顔も良くて演技もうまい。そしてヒロインの多部未華子はものすごくハマり役でした。
レトロな雰囲気がとてもかわいい作品です。(女性 30代)
消化不良の青春を送ってしまったおばあちゃんが不思議な力で若返り、やりたかったこと(夢)、やったこと(人生)を見つめ直す物語。以外にも哲学的な要素がありました。おばあちゃんの時は取っつき難い性格に観ていて嫌気が差しましたが、若返ってからは気にならなくなりました。レトロな服装と、おばあちゃんを宿した(演じた)多部未華子さんの組み合わせがとても素敵です。歌はとりわけ上手なわけではないですが、嫌ではなく寧ろ癖になります。(男性 20代)
若返ってからのカツのファッションが、物凄く魅力的でした。ノスタルジックでカラフルな数々の衣装は、見ているだけで元気をもらえました。また、多部未華子の歌う懐メロに何度も感動しました。殊に、ザ・フォーク・クルセダーズの『悲しくてやりきれない』は、繊細なメロディに透明感溢れる歌声が響いて、涙なしには聴けません。もし自分が若返ったらとつい想像してしまう作品だと思うので、今までの人生について振り返る丁度良い機会になります。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
多部未華子さんの衣装や髪形が、レトロでかわいかったです。二度目の青春を全力で楽しむ主人公は、明るくて表情豊かで魅力的でした。20代の自分より、中身はよっぽど若々しくて羨ましいです。
若い姿を本当に楽しんでいたのに、孫のためにきっぱり捨てられるのはかっこよかったです。何が大切なのかを迷わず判断できるのは、やはり長く生きている人の強みなのかなと感じました。
北村匠海さんも、優しい雰囲気が役柄に合っていて、作品のあたたかい空気にぴったりでした。