映画『ばかもの』の概要:芥川賞作家・絲山秋子の同名小説を金子修介監督が映画化。成宮寛貴演じる秀成と、内田有紀演じる額子の出会いと別れ、それぞれの傷を乗り越え、再び巡り会う10年に渡る恋愛模様を描いていく。
映画『ばかもの』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:金子修介
キャスト:成宮寛貴、内田有紀、白石美帆、中村ゆり etc
映画『ばかもの』の登場人物(キャスト)
- 大須秀成(成宮寛貴)
- ごくごく平凡な大学生だったが、額子と出会い人生が変わっていく。額子と別れた後、重度のアルコール依存症になってしまい、更生するまで時間を要してしまう。
- 吉竹額子(内田有紀)
- 秀成より年上の女性。自由奔放で気の強い性格。秀成と別れた後、結婚をするが、夫の運転するフォークリフトに巻き込まれ、片腕を失う。その後、離婚をし、一人で「かたしな高原」で暮らす。
- 山根ユキ(中村ゆり)
- 秀成の同級生。いつも秀成と一緒にいるので彼女と思われがちだが、そうではない。在学中からデイトレで学費を稼ぐ才覚があった。大学中退後、上京するが振興宗教にハマり、その修行中に命を落とす。
- 加藤(池内博之)
- 秀成の友人。大学時代から一緒に連れだって遊ぶ仲だったが、秀成のアル中の症状が酷くなるに連れて、徐々に距離を取るようになる。妻とは大学時代からの付き合い。
- 額子の母(古手川祐子)
- 競馬場近くのおでん屋「よしたけ」のママ。額子の母である。アルコール依存症に苦しむ秀成に、酒をやめたいんだろうと声をかける。退院してきた秀成を優しく迎え、額子のその後を伝える。
- 翔子(白石美帆)
- 加藤の結婚式で秀成と出会い、その後加藤夫婦の紹介で秀成と付き合うことになる女性教師。秀成に捨てられることを恐れ、いつも自分を責めていたが、アルコール依存症が酷くなった秀成を置いて部屋を出て行く。
映画『ばかもの』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ばかもの』のあらすじ【起】
父親が忘れた財布を受け取りに、競馬場近くのおでん屋「よしたけ」に行く、秀成。そこで額子と出会い、これまで飲んだことのなかったビールを無理やり飲まされる。秀成は、平凡な大学生だった。授業やレポートもそこそこ、恋愛もそこそこ、通っている大学もそこそこの平凡な人生。しかし、この額子と出会いが彼の人生を大きく動かすことになる。
ある日、スーパーのバイトが終わった秀成は、額子に声をかけられ、彼女の運転する車に乗せられる。実は、額子も同じスーパーでバイトをしていたのだった。秀成は、初めて飲んだビールのせいか、先日の「よしたけ」でのことをすっかり忘れていた。額子に映画に誘われる。しかし、何故かポルノ映画に連れていかれ、ポルノを観る二人。そして、額子の部屋に連れ込まれ、そこで秀成は童貞を卒業するのだった。
その日以来、秀成は額子の部屋を度々訪れ、セックスを繰り返すようになる。額子に猿と言われながらも、額子の身体を求める秀成。額子との甘い生活が始まったのだ。誕生日プレゼントをもらったり、競馬に一緒に行ったり、そして外でも家でも所構わずセックスをするのだった。
冬のある日、いつものように額子の飼い犬ホシノをベランダに出して、セックスをしようする秀成。しかし、額子に今日は生理だからと拒まれる。先々週も生理って言ってなかった?と問い詰める秀成に、もっと刺激的なことしようと額子は公園に秀成を連れ出すのだった。
冬の夜の公園で、額子は秀成の両手を後ろにして木に縛りつける。手の使えない秀成のズボンを下ろして、彼のモノを咥える。公園の外からカップルが見ている中、秀成はイキそうになる。しかし額子は、そこでフェラチオをやめ、秀成に結婚することを告げる。自分とのことは何だったのか?と問う秀成に額子は、遊びだったと告げ、ズボンを下され下半身丸出しのままの秀成を、木に縛りつけたまま立ち去るのだった。
映画『ばかもの』のあらすじ【承】
大学4年になった秀成は、留年が決まった。友人の加藤は順調に就職が決まり、彼女と呼べるのか微妙な関係の山根ユキは大学を中退する。額子は、秀成の知らない土地で、新しい生活を始めていた。
ユキはデイトレをやっており、中退後に群馬から東京へ引っ越すことが決まっていた。秀成は、ユキが東京に行く前、彼女とお酒を飲み、彼女の部屋に泊まる。ユキの身体を求めようとする秀成だったが、彼女にまだ額子のことを忘れられないでいることを見透かされ、別々の布団で寝るのだった。
ユキは恵比寿の高級マンションで暮らしていた。加藤の結婚式の帰りにユキの部屋に行く秀成。しかし、彼女の部屋には株式の本などはなくなっており、宗教の本があった。そしてユキは、秀成を押し倒す。驚く秀成に、教祖から多くの男と交わることが必要だと教えられたと言うユキ。ユキは新興宗教にハマっていた。
加藤夫妻は結婚後も時々群馬に帰って来て、秀成と飲んでいた。その席に結婚式で出会った翔子の姿もあった。飲み会の話の流れで、テレビが映らないと言う翔子の部屋に行く秀成。テレビの調整をして、そのまま、一晩を共にする。そして二人は、付き合うようになるのだった。
2年間、翔子と付き合っている秀成は、少しずつ酒の量が増えていた。飲み過ぎで会社も休むようにもなり、加藤からも酒癖の悪さを指摘される。しかし、秀成には覚えなかった。
映画『ばかもの』のあらすじ【転】
自宅でも、酒浸りの秀成。二日酔いで仕事もうまくいかない。翔子はそれでも秀成のことを好きでいる。別れを切り出す秀成だが、翔子は別れられずにいた。
姉の結婚式で、親戚から酒を勧められる秀成。初めは断っていたのだが、断りきれず飲んでしまう。一口飲めば止まらなくなり、やがて泥酔して行く秀成。絡み始め、暴れ出し、結婚式を台無しにしてしまう。自宅を追い出され、翔子の部屋へ転がり込む秀成。しかし、酒の量はさらに増え、翔子の部屋のベランダには、山のようなビールの空き缶が積まれているのだった。事態はさらに悪化する。秀成は、風呂も入らず、酒浸りとなり、再度、加藤に諌められる。「アルコール依存症じゃないのか?」と言われる。しかし秀成は、誰の忠告も聞けなくなっていた。会社も辞めさせられ、翔子の部屋に帰って来ると、彼女の荷物はなくなっていた。
秀成は、ユキを頼って振興宗教の門を叩くが、ユキからも拒絶される。行き場もなく公園で酔いつぶれ寝ていると、犬のホシノと出会う。ホシノの後を追いかけ、辿り着いたのはあのおでん屋「よしたけ」だった。「よしたけ」で額子のことを思い出しながら、ビールを飲む秀成に、額子の母は「本当は酒飲みたくないんだろう」と言う。しかし、どうしても酒を手放すことはできず、そしてとうとう、飲酒運転で事故を起こしてしまうのだった。
秀成は、事故をした日に、犬のホシノが死んだことを、「よしたけ」で聞く。そして、酒をやめることを決意して、アルコール依存症専門病院に入院するのだった。
映画『ばかもの』の結末・ラスト(ネタバレ)
禁断症状に耐えながら、治療を受け、秀成は退院する。家に帰ると、真新しいスリッパが用意されているのだった。そして秀成は、中華食堂でバイトを始める。真面目に働き、姉にも結婚式のことを謝り、家族の日常が戻るのだった。
ある日、秀成は「よしたけ」で、実は額子が事故にあっていたことを聞く。そして今、「かたしな高原」にいることを聞き、会いに行く秀成。バス停で額子は待っていた。しかし、その姿は以前の彼女とは違い、髪の毛は白く、片腕がなかった。片手で運転できる額子の車に乗って、彼女の家に行き、彼女の作る料理を食べる秀成。翌週、再び訪れた秀成は、帰りがけに額子から、自分じゃできないから右腕を洗って欲しいと、それから脇の毛を剃って欲しいと頼まれる。
秀成は、一緒に風呂場へ行き、右手をガシガシ洗ってやる。そして、脇を剃ってやる。風呂から出てきて帰ると言う秀成に、額子はいつセックスするんだ?と問う。額子は、セックス以外でどうやって秀成と繋がっていいのか解らなかったのだ。額子は、泣き崩れ、秀成を好きになることが怖かったことを告白し、あの時も今も、うまくできなくてすまないと泣く。そんな額子を秀成は抱きしめるのだった。
秀成は、中華食堂の親父に娘と一緒になって自分の店を継いで欲しいと言われる。額子との付き合いに自信がない秀成は揺らいでいた。しかし、「よしたけ」で額子の母から、額子の髪の毛が白くなってしまったのは、秀成がアル中になってしまったことを聞いた時だと教えられる。
そして、秀成は家族に額子への想いを正直に話し、中華食堂もやめ、額子のいる「かたしな高原」に向かう。そこで、二人で新しい生活を始めるのだった。
映画『ばかもの』の感想・評価・レビュー
原作の小説は未読なのだが、吉竹額子も大須秀成も不器用な人物で、『ばかもの』というタイトルがよく合っているなと感じた。
額子に振り回される秀成が可哀そうだなと思いつつも、人生が一変してしまうほど相手を愛せることができて羨ましいなとも思った。ただ、秀成以上に二人に振り回されて迷惑を被る周囲が大変だなと思った。アル中になってしまった秀成。彼を支えようとする家族も恋人も友人も、それぞれ苦しいだろうなと思いながら見ていた。(女性 30代)
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