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映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』の概要:バイオリニストのナセルは、師匠から貰った思い出のバイオリンを妻に壊されてしまう。代わりのバイオリンを探すが、思うような品は手に入らなかった。ナセルはそのことに絶望し、自殺するための方法を考えた。

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』の作品情報

チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢

製作年:2011年
上映時間:92分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
キャスト:マチュー・アマルリック、エドゥアール・ベール、マリア・デ・メディロス、ゴルシフテ・ファラハニ etc

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』の登場人物(キャスト)

ナセル・アリ・カーン(マチュー・アマルリック)
バイオリニスト。母に決められファランギースと結婚するが、イラーヌに思いを寄せ続けている。
ファランギース(マリア・デ・メデイロス)
数学教師。ナセルの妻。真面目で厳格な性格。子供の頃からナセルに思いを寄せているが、そのことは明かしていない。
イラーヌ(ゴルシフテ・ファラハニ)
ナセルの元恋人。父に結婚を反対され、ナセルと別れることになる。別の男性と結婚した後も、ナセルに思いを寄せ続けている。

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』のあらすじ【起】

1958年の秋、テヘランの街角でナセル・アリはイラーヌと再会する。だが、イラーヌはナセルのことを覚えていない様子だった。ナセルはショックを受ける。家に帰宅した後、購入したばかりのバイオリンを弾いた。だが、酷い音色に感じ、お店に返しに行った。

ナセルはバイオリンを壊されてしまったため、新しいバイオリンを探しにラシュトに行くことにした。妻のファランギースにそのことを話すと、息子キュロスの面倒を見るため一緒に連れて行くよう指示される。夫婦仲は冷え切っており、1人で行きたいナセルはファランギースと口論になった。結局ファランギースに押し切られ、キュロスを連れて行くことになる。

ナセルはバイオリンを購入し、演奏したいと逸る気持ちを抑えて自宅に帰って眠りについた。そして、7時ちょうどに起床し、散髪に行って一番上等の服に着替えた。ファランギースは娘のリリを連れて出かけ、ナセルはキュロスを知り合いに預けた。1人になったナセルはバイオリンを弾いた。バイオリンはナセルが望んでいた音色を奏でなかった。

ナセルは大切にしていたバイオリン以上の物はないと悟り、奏でる喜びが永遠に失われてしまったことに絶望する。ナセルは自殺をすることにした。8日後、ナセルの遺体は母親の隣に埋葬された。葬儀にはナセルを愛した全員が参列した。

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映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』のあらすじ【承】

1日目。ナセルは自殺することを決め、死に方を考えた。1つ目は過激な死に方で、線路の上に頭を乗せて列車に轢かれる方法。2つ目はロマンティックな死に方で、崖から飛び降りる方法。3つ目は古典的な死に方で、拳銃で頭を撃ち抜く方法。どれも痛そうで、ナセルは行動に移すことができなかった。そんな時、科学雑誌で読んだ楽な死に方を思い出す。それは、鎮静剤を飲んでビニール袋を頭に被る方法だった。しかし、当代最高のバイオリニストであるナセルは、醜い死体を発見されるのは嫌だと感じ結局4つ目の方法も却下した。ナセルは死の訪れをベッドの上で待つことにした。

ナセルはリリの行動を見て、顔立ちだけでなく性格も似ていると確信する。ナセルとリリは聡明で、才能に富み、霊的で、絶望的に暗かった。リリは23歳で結婚し、8か月後に離婚した。その後、俳優と激しい恋に落ちた。しかし、不幸にも4年後に恋人は事故死した。それがリリにとって最後の恋となった。リリはカードギャンブルと酒と煙草に溺れ、2度の心臓発作を経験した。命が危ないと忠告されるが、全く聞く耳を持たなかった。3度目の心臓発作でリリは亡くなった。

2日目。ナセルが部屋から出てこないため、ファランギースはナセルの弟のアブディに助けを求めた。アブディはいつもの夫婦喧嘩だろうと思いながらも、家に行くために支度をした。アブディはファランギースのことを気に入らず、兄にはもっとふさわしい人がいると思っていた。愛のないナセル夫妻の結婚を決めたのは、ナセルの母だった。

ナセルとアブディ兄弟の仲は良かったが、全てが対照的だった。兄は反抗的で気まま、弟は素直で真面目。兄は両親の頭痛のタネで、弟は両親の誇りだった。アブディは映画に行こうと兄を誘うが、死にたいと言って断られてしまう。アブディは妻子を放って死のうとするのは無責任だと非難した。だが逆に、家族のことを顧みず、英雄を気取って共産主義者になったことを非難される。アブディが投獄されたとき、母が釈放のために全財産を費やしたのだった。冷静になったナセルは言い過ぎたことを謝罪し、死んだ後の子供達のことを頼んだ。

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』のあらすじ【転】

3日目。ナセルは退屈に苛まれていた。煙草を吸いながら色々と考えを巡らせ、ソクラテスのように子供達に最後の「思想」を伝えることにした。話している途中で、キュロスがおならをしたため、そこで話は終わった。キュロスはナセルとは正反対で、騒々しくて大食いで芸術性の欠片もなかった。

ナセルは22歳で苦労の末、大学に合格して商業を専攻した。そんな時、革命が勃発し、翌年には戦争が起きた。ナセルは渡米を決意し、ワイオミングの大学に入学した。そこで、ナンシーと出会った。ナンシーが妊娠したため、2人は結婚した。その後、3人の子供が産まれ、皆すくすくと成長した。ジミー・ナセルと名付けられた子供が、本人も気づかぬうちに妊娠しており出産することになった。ジミーは200キロの体重があった。

4日目の夜、ファランギースは仲直りを期待して、ナセルの好物である鳥のプラム煮を作った。表面上は冷たかったが、実はファランギースは子供の頃からずっとナセルに思いを寄せていた。数少ない縁談を断り続けていたある日、ナセルがテヘランに戻ってきた。ファランギースが30歳、ナセルが41歳のことだった。ナセルの母は数学教師として働くファランギースのことを気に入り、ナセルの思いを無視して結婚を決めた。母は愛情は後から生まれると考えていたが、ナセルがファランギースを愛することはなかった。

ナセルはプラム煮を口にせず、喜びも味わいも失ったのはお前のせいだとファランギースを責めた。少し前、ナセルの愛用のバイオリンを壊したのはファランギースだった。ファランギースは家族のことを顧みずバイオリンを弾くナセルに腹を立て、衝動的に壊してしまったのだ。ファランギースは謝罪するが、ナセルは許すことができなかった。

ナセルは幼い頃から音楽一筋だった。21歳で州都シーラーズを訪れ、当代一の名匠に弟子入りした。そんな時、イラーヌに出会い、一目惚れをする。

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』の結末・ラスト(ネタバレ)

5日目の明け方。ナセルは死期が近いと悟り、母が亡くなる前の数日間を思い出した。母は死の天使アズラエルを見たと話していた。母の葬儀の日、不思議なことが起こった。遺体を埋葬すると、墓石の上を煙の雲が漂った。皆その雲について色んなことを言い合った。生涯に吸った煙草の煙だと言う者もいた。そんな中、ナセルの前にみすぼらしい男が現れ、煙は魂の存在証明だと教えられる。ナセルの母の魂が濃かったため、物質化したのだ。ナセルは男の話を信じなかった。男はそのことに気づいており、ナセルの生い立ちを詳しく話してみせた。そして、生きて欲しいと祈るのをやめたため、母が逝けたのだと呟いて去っていった。

6日目。ナセルの前にアズラエルが現れた。ナセルは怯えて激しく取り乱しながらも、死ぬことを悟った。7日目。ファランギース達は衰弱するナセルを心配するが、医師でも治すことはできなかった。8日目。ナセルは朦朧とする中、イラーヌのことを思っていた。

ナセルとイラーヌは深く愛し合い、結婚することを決める。しかし、イラーヌの父に反対され、2人の仲は切り裂かれてしまう。苦しみの中にいるナセルは、バイオリニストとしての才能を開花させる。そして、師匠からバイオリンを贈られる。ナセルはバイオリンを弾きながら、イラーヌを思った。ナセルはバイオリニストとして成功し、イラーヌは別の男性と結婚した。

ナセルはテヘランの街角で孫と一緒にいるイラーヌと再会し、声をかけた。だが、知らない人だと言われてしまう。ナセルはショックを受ける。だが実は、イラーヌはナセルのことをずっと思い続けており、ナセルから見えなくなった場所で涙を流していた。その後、イラーヌはナセルの葬儀を離れた場所から見ていた。

映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』の感想・評価・レビュー

コメディ調な部分もありテンポも良かったため、最後まで飽きることなく見ることができた。物語が進むにつれて皆の思いを知り、映画を見終わった後でもの凄く切ない気持ちが沸き上がった。ファランギースはとても厳しくて冷めた人のように見えるが、ナセルから愛されていないことを悲しんでいるのを知った後だと可愛らしくて悲しい人だなと感じた。ナセルの大人達に翻弄された人生を見ていると、ファランギースに愛情を向けない部分を責めることはできなかった。(MIHOシネマ編集部)


本作は、師匠から貰った思い出のバイオリンを妻に壊され自殺を考えるバイオリニストのナセルを描いたコメディーラブヒューマンドラマ作品。
実写とアニメーションを組み合わせたユニークな見せ方が印象的だった。
そして、何故バイオリンが壊れただけで死を選ばなければならなかったのか、ナレーションの声の正体、タイトルの意味などが物語が進むにつれて謎解きのように分かっていくのが面白かった。
決してハッピーエンドではないけれど、ラストが冒頭に繋がるところや切なくて美しさの余韻を残す終わり方が好みだった。(女性 20代)


実写とアニメーションが融合した可愛らしい世界観で描かれるのは芸術家の自殺。正直、かなり偏った考え方をする主人公だったので共感は出来ませんでしたが、後世に名を残すような芸術家になるためには人生の紆余曲折は必要不可欠なのかなと感じました。
私たちが当たり前に聞いている音や、生きていることの証である呼吸などすべてに芸術性を感じさせるようなセリフがものすごく心に残りました。「ため息を掴むための死」というのがとても深かったです。(女性 30代)

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