映画『サイダーハウス・ルール』の概要:孤児院で生まれ育ったホーマーは、ラーチ医師からの期待と心配をはねのけ、外の世界に飛び出した。新しい生活の全てに感動するばかりの無垢な青年が、葛藤と苦悩の末に大人へと成長する物語。第72回アカデミー最優秀助演男優賞、最優秀脚色賞受賞。
映画『サイダーハウス・ルール』の作品情報
上映時間:131分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:ラッセ・ハルストレム
キャスト:トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン、デルロイ・リンドー etc
映画『サイダーハウス・ルール』の登場人物(キャスト)
- ホーマー・ウェルズ(トビー・マグワイア)
- 孤児院で生まれ育った青年。学校は出ていないが、ラーチ医師のもと産婦人科医と同等の技術を身に付ける。純真無垢で、他者を思いやる優しさに溢れている。
- ウィルバー・ラーチ(マイケル・ケイン)
- 孤児院で産婦人科医をしながら、孤児達の面倒を見る。彼なりの信念のもと、違法な中絶手術も手掛ける。意固地で説教臭いところはあるが、深い愛情の持ち主。
- ウォリー・ワージントン(ポール・ラッド)
- 軍人。実家がリンゴ農園(サイダーハウス)を営んでいて、新天地を求めたホーリーにそこで働くよう薦めるが、間もなくして戦地へ立つ。
- キャンディ・ケンドール(シャーリーズ・セロン)
- ウォリーの恋人。恋人と遠く離れてしまった寂しさゆえに、ホーマーと恋仲になる。
- アーサー・ローズ(デルロイ・リンドー)
- リンゴ農園で働く労働者達のまとめ役。
- ローズ・ローズ(エリカ・バドゥ)
- アーサーの娘。リンゴ農園で父と共に働く。
映画『サイダーハウス・ルール』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじ【起】
アメリカ東部の片田舎にある孤児院セントクラウズ。ラーチ医師はそこで多くの孤児達の面倒を見ながら、望まない妊娠をした女性たちへ出産もしくは中絶手術を行う。
孤児達の中でも、ラーチがとりわけ深い愛情を注いだのは、2度も里親に恵まれなかったホーマーである。ラーチはホーマーの将来を思い、産婦人科医として必要な技術を彼に教え込む。
孤児達の中で一番年長となったホーマー。他の子供たちが里親に引き取られていくことを羨ましく思いながらも、彼は言葉に出さず、ラーチの仕事を手伝いながら孤児院での生活を続ける。
中絶手術をよく思っていないホーマーだが、正しく堕胎することで救える命があると考えるラーチとは、たびたび口論していた。ホーマーは説教じみた彼の言葉に、度々うんざりしていた。
いつもと変わらない日々が続くある日、軍人のウォリーとその恋人キャンディが孤児院に車で乗り付ける。中絶手術のためだ。手術後、物憂げなウォリーにホーマーは声をかけ、彼の気持ちを和らげようとする。その時、ホーマーはふと思い立ったように、ウォリーの車に乗せてもらうようお願いをする。ウォリーは驚きながらも、快諾する。
映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじ【承】
行く当てもなく飛び出たホーマーだったが、ウォリーの誘いを受け、彼の実家が経営するリンゴ農園(サイダーハウス)で働くようになる。アーサーが率いる労働者達は、育ちが良さそうなホーマーに最初は警戒心を抱くが、彼の仕事に励む姿に感心して、彼を受け入れて作業を共にする。
ホーマーが農園生活にも慣れ始めたある日、ウォリーのビルマ出兵が決まる。ウォリー不在で寂しさが募っていたキャンディは、ホーマーをデートに誘うようになり、次第に深い仲になってしまう。ホーマーは初めての恋に胸を躍らせ、農園での生活をずっと続けたいと思うようになる。
一方ラーチは、ホーマーがきっと農園生活に飽きて帰ってくるに違いない、と周囲に言いながら、彼が孤児院に帰ってくることを強く望んでいた。その気持ちを遠回しに伝えるため、手紙を書いたり、医師の診療鞄を送る等をした。しかし、新生活に魅了されていたホーマーは、孤児院へ帰ることを頑なに拒んだ。
映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじ【転】
季節が巡り、再びリンゴ農園の収穫時期になる。労働者達と一緒に作業をしていたホーマーだったが、ローズの体調不良から彼女が妊娠していることに気付く。妊娠させた相手は父親のアーサーだと知ったホーマーは、アーサーと言い争う。しかし、アーサーの娘への真剣な気持ちを前に、ホーマーは何もできずにいた。
ある日、ウォリーが1ヶ月後に帰還するという知らせが来る。しかし、その知らせは手放しに喜べないものだった。彼は戦場で病にかかり、下半身不随で歩けなくなってしまっていたのだ。現実に引き戻されたキャンディは、彼の帰還を望みながらも、彼とどう接すべきか悩む。
ホーマーは、決断せずに成り行きに任せていればいいんだと彼女に慰めるように言う。しかしその言葉は、今まで決断を恐れてきた自分自身に向けられた言葉であった。このまま成り行き任せでは何も進まない、その思いが彼を突き動かす。
その夜、ホーマーは覚悟を決めて、アーサーとローズにきっぱりと告げる。「あなた達を助けたいんだ」
映画『サイダーハウス・ルール』の結末・ラスト(ネタバレ)
ホーマーは、ずっと目を背けてきたラーチからの診察鞄を手に取り、中絶手術の準備にかかる。アーサーは手術を手伝ううちに取り乱すが、ホーマーは落ち着きを払い、精錬された技術のもと手術を成功させた。
後日、キャンディは農園から突然いなくなった。農場の宿舎には、彼女に刺されたアーサーが残されていた。しかし、アーサーは警察から娘に疑いがかからないように、何度も自分のナイフで自分を刺していた。そして、彼はホーマーに、娘を失った悲しみで自殺したと警察に言うよう念を押して、息絶える。親としての深い愛情が作った嘘であった。
その後、ラーチの急逝を知らせる手紙にホーマーは涙する。そして、戦地から戻ったウォリーと彼を迎え入れるキャンディの姿は、ホーマーが孤児院に戻る決意への後押しとなった。
ホーマーは帰途に就き、孤児院の皆に温かく迎え入れられる。その時、看護師からラーチの嘘がホーマーを守っていた事実を知り、ホーマーは静かに微笑む。彼はラーチの遺志に応え、孤児院セントルイスでのラーチの務めを引き継いだ。
映画『サイダーハウス・ルール』の感想・評価・レビュー
この監督のこの時代の映画は全部いい。そして映画の本題からは少しそれるが、この映画に私が教えられたことを一つ書きたい。主人公が育った孤児院では毎週映画を観られる日があるのだが、この映画が常に同じ『キング・コング』なのだ。それを孤児たちは毎週楽しみに観ている。いろんな映画を知り、見る目を養った自分よりも彼らの方が純粋に映画を楽しんでいる。映画オタクはとかく知識の量を誇りたがるものだが、私は孤児たちの視線の尊さに敬意を払いたい。一重に言えばこういう価値観がそこかしこに現れる映画であり監督なのだ。(男性 30代)
ラッセ・ハルストレム監督らしい、とても温かい作品です。マイケル・ケイン演じるラーチがとにかく優しく温かい。
主人公ホーマーを演じるのはトビー・マグワイア。彼は良くも悪くも「スパイダーマン」の印象が強く残っている俳優だと思います。が、今作での葛藤する青年役はイメージを払拭するほど最高に素晴らしかったです。(スパイダーマンも良かったです。)
孤児、中絶、死・・・など、明るくないキーワードが多いながらも、鑑賞後はきっと温かい余韻が残ることと思います。(女性 20代)
新しい世界で感じる希望や興奮に明るい未来を思い描きながらも、育ってきた環境や教わってきた技術を捨てきれないホーマー。今まで決断から避けてきた彼がどんな生き方をするのか、自然と感情移入しながら見てしまいました。
彼の行動や決断は間違ったものではなかったと思います。しかし、自分が選んだ道で経験した出来事は必ずこれからの人生において忘れずに生きて欲しいと感じました。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー