この記事では、映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『サイダーハウス・ルール』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『サイダーハウス・ルール』の作品情報
上映時間:131分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:ラッセ・ハルストレム
キャスト:トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン、デルロイ・リンドー etc
映画『サイダーハウス・ルール』の登場人物(キャスト)
- ホーマー・ウェルズ(トビー・マグワイア)
- 孤児院で生まれ育った青年。学校は出ていないが、ラーチ医師のもと産婦人科医と同等の技術を身に付ける。純真無垢で、他者を思いやる優しさに溢れている。
- ウィルバー・ラーチ(マイケル・ケイン)
- 孤児院で産婦人科医をしながら、孤児達の面倒を見る。彼なりの信念のもと、違法な中絶手術も手掛ける。意固地で説教臭いところはあるが、深い愛情の持ち主。
- ウォリー・ワージントン(ポール・ラッド)
- 軍人。実家がリンゴ農園(サイダーハウス)を営んでいて、新天地を求めたホーリーにそこで働くよう薦めるが、間もなくして戦地へ立つ。
- キャンディ・ケンドール(シャーリーズ・セロン)
- ウォリーの恋人。恋人と遠く離れてしまった寂しさゆえに、ホーマーと恋仲になる。
- アーサー・ローズ(デルロイ・リンドー)
- リンゴ農園で働く労働者達のまとめ役。
- ローズ・ローズ(エリカ・バドゥ)
- アーサーの娘。リンゴ農園で父と共に働く。
映画『サイダーハウス・ルール』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじ【起】
アメリカ東部の片田舎にある孤児院セントクラウズ。ラーチ医師はそこで多くの孤児達の面倒を見ながら、望まない妊娠をした女性たちへ出産もしくは中絶手術を行う。
孤児達の中でも、ラーチがとりわけ深い愛情を注いだのは、2度も里親に恵まれなかったホーマーである。ラーチはホーマーの将来を思い、産婦人科医として必要な技術を彼に教え込む。
孤児達の中で一番年長となったホーマー。他の子供たちが里親に引き取られていくことを羨ましく思いながらも、彼は言葉に出さず、ラーチの仕事を手伝いながら孤児院での生活を続ける。
中絶手術をよく思っていないホーマーだが、正しく堕胎することで救える命があると考えるラーチとは、たびたび口論していた。ホーマーは説教じみた彼の言葉に、度々うんざりしていた。
いつもと変わらない日々が続くある日、軍人のウォリーとその恋人キャンディが孤児院に車で乗り付ける。中絶手術のためだ。手術後、物憂げなウォリーにホーマーは声をかけ、彼の気持ちを和らげようとする。その時、ホーマーはふと思い立ったように、ウォリーの車に乗せてもらうようお願いをする。ウォリーは驚きながらも、快諾する。

映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじ【承】
行く当てもなく飛び出たホーマーだったが、ウォリーの誘いを受け、彼の実家が経営するリンゴ農園(サイダーハウス)で働くようになる。アーサーが率いる労働者達は、育ちが良さそうなホーマーに最初は警戒心を抱くが、彼の仕事に励む姿に感心して、彼を受け入れて作業を共にする。
ホーマーが農園生活にも慣れ始めたある日、ウォリーのビルマ出兵が決まる。ウォリー不在で寂しさが募っていたキャンディは、ホーマーをデートに誘うようになり、次第に深い仲になってしまう。ホーマーは初めての恋に胸を躍らせ、農園での生活をずっと続けたいと思うようになる。
一方ラーチは、ホーマーがきっと農園生活に飽きて帰ってくるに違いない、と周囲に言いながら、彼が孤児院に帰ってくることを強く望んでいた。その気持ちを遠回しに伝えるため、手紙を書いたり、医師の診療鞄を送る等をした。しかし、新生活に魅了されていたホーマーは、孤児院へ帰ることを頑なに拒んだ。
映画『サイダーハウス・ルール』のあらすじ【転】
季節が巡り、再びリンゴ農園の収穫時期になる。労働者達と一緒に作業をしていたホーマーだったが、ローズの体調不良から彼女が妊娠していることに気付く。妊娠させた相手は父親のアーサーだと知ったホーマーは、アーサーと言い争う。しかし、アーサーの娘への真剣な気持ちを前に、ホーマーは何もできずにいた。
ある日、ウォリーが1ヶ月後に帰還するという知らせが来る。しかし、その知らせは手放しに喜べないものだった。彼は戦場で病にかかり、下半身不随で歩けなくなってしまっていたのだ。現実に引き戻されたキャンディは、彼の帰還を望みながらも、彼とどう接すべきか悩む。
ホーマーは、決断せずに成り行きに任せていればいいんだと彼女に慰めるように言う。しかしその言葉は、今まで決断を恐れてきた自分自身に向けられた言葉であった。このまま成り行き任せでは何も進まない、その思いが彼を突き動かす。
その夜、ホーマーは覚悟を決めて、アーサーとローズにきっぱりと告げる。「あなた達を助けたいんだ」
映画『サイダーハウス・ルール』の結末・ラスト(ネタバレ)
ホーマーは、ずっと目を背けてきたラーチからの診察鞄を手に取り、中絶手術の準備にかかる。アーサーは手術を手伝ううちに取り乱すが、ホーマーは落ち着きを払い、精錬された技術のもと手術を成功させた。
後日、キャンディは農園から突然いなくなった。農場の宿舎には、彼女に刺されたアーサーが残されていた。しかし、アーサーは警察から娘に疑いがかからないように、何度も自分のナイフで自分を刺していた。そして、彼はホーマーに、娘を失った悲しみで自殺したと警察に言うよう念を押して、息絶える。親としての深い愛情が作った嘘であった。
その後、ラーチの急逝を知らせる手紙にホーマーは涙する。そして、戦地から戻ったウォリーと彼を迎え入れるキャンディの姿は、ホーマーが孤児院に戻る決意への後押しとなった。
ホーマーは帰途に就き、孤児院の皆に温かく迎え入れられる。その時、看護師からラーチの嘘がホーマーを守っていた事実を知り、ホーマーは静かに微笑む。彼はラーチの遺志に応え、孤児院セントルイスでのラーチの務めを引き継いだ。
映画『サイダーハウス・ルール』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
この監督のこの時代の映画は全部いい。そして映画の本題からは少しそれるが、この映画に私が教えられたことを一つ書きたい。主人公が育った孤児院では毎週映画を観られる日があるのだが、この映画が常に同じ『キング・コング』なのだ。それを孤児たちは毎週楽しみに観ている。いろんな映画を知り、見る目を養った自分よりも彼らの方が純粋に映画を楽しんでいる。映画オタクはとかく知識の量を誇りたがるものだが、私は孤児たちの視線の尊さに敬意を払いたい。一重に言えばこういう価値観がそこかしこに現れる映画であり監督なのだ。(男性 30代)
ラッセ・ハルストレム監督らしい、とても温かい作品です。マイケル・ケイン演じるラーチがとにかく優しく温かい。
主人公ホーマーを演じるのはトビー・マグワイア。彼は良くも悪くも「スパイダーマン」の印象が強く残っている俳優だと思います。が、今作での葛藤する青年役はイメージを払拭するほど最高に素晴らしかったです。(スパイダーマンも良かったです。)
孤児、中絶、死・・・など、明るくないキーワードが多いながらも、鑑賞後はきっと温かい余韻が残ることと思います。(女性 20代)
新しい世界で感じる希望や興奮に明るい未来を思い描きながらも、育ってきた環境や教わってきた技術を捨てきれないホーマー。今まで決断から避けてきた彼がどんな生き方をするのか、自然と感情移入しながら見てしまいました。
彼の行動や決断は間違ったものではなかったと思います。しかし、自分が選んだ道で経験した出来事は必ずこれからの人生において忘れずに生きて欲しいと感じました。(女性 30代)
医師として育てられたホーマーが、孤児院を出て初めて知る「現実」に直面し、揺れ動きながらも自分の使命を見つけていく過程に胸を打たれました。中絶という重いテーマを扱いながらも、決して一方的な主張ではなく、人の選択の裏にある葛藤を丁寧に描いていて好感が持てました。最終的にホーマーが孤児院に戻り、ラーチ医師の意志を継いでいく姿に、「選ばれなかった人生」を受け入れる勇気を感じました。(30代 男性)
映画全体に流れる静かで優しいトーンがとても心地よく、それでいて重厚なテーマを扱っている点に感銘を受けました。特に、マイケル・ケイン演じるラーチ医師の「君はここにいるべきだ」という言葉が印象的で、人の役割や存在意義について深く考えさせられました。ホーマーとキャンディの関係は切なく、でも一瞬でも心が通い合った時間があったことに救いを感じました。(50代 女性)
中絶、近親相姦、孤児など重たいテーマがいくつも出てくるのに、不思議と重苦しさが残らないのがこの映画の魅力だと思います。倫理的に答えの出ない問題に対して、それでも登場人物たちが自分なりの「ルール」を持って生きていく姿が誠実でした。ホーマーが医者として、そして人として成長していく姿が静かに胸に響きました。(40代 男性)
ホーマーが「自分の人生をどう生きるか」を模索していく姿に共感しました。若者として、親のような存在であるラーチ医師のやり方に反発し、外の世界を知っていくなかで、自分もまた大きな決断を迫られる。あの流れはすごくリアルでした。ラストの「ここにいるべきだ」という言葉に、ただ涙がこぼれました。生きる意味を優しく問いかけてくれる映画です。(20代 女性)
学生時代に観て以来、久しぶりに再見しましたが、年齢を重ねてから観ると全く印象が違いました。特に、ラーチ医師が自らモルヒネに溺れながらも、ホーマーに未来を託す姿がとても深く、今ならその辛さも理解できる気がします。人生において何を選び、何を背負うのか、その覚悟を描いた物語でした。(60代 男性)
思春期の息子と一緒に観ましたが、彼にとっても印象に残る作品だったようです。中絶の問題や、女性の生きづらさなど、現代にも通じるテーマが多く、親として考えさせられました。サイダーハウスの住人たちの中で、誰も正解を持っていないという描写がリアルで、それでもルールを超えて人を守る勇気が描かれていたのが心に残りました。(40代 女性)
最初は地味な映画かなと思っていましたが、観終わった後の余韻がすごかったです。誰の人生も正解なんてなくて、でも自分で選び取るしかないというテーマが強く伝わってきました。ホーマーとキャンディの関係性は切なくて、でもどこか優しくて、恋愛も人生も思うようにいかないというリアルさが逆に沁みました。(20代 男性)
映画『サイダーハウス・ルール』を見た人におすすめの映画5選
マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ
この映画を一言で表すと?
子どもの視点から描かれる、喪失と成長のやさしい北欧ヒューマンドラマ。
どんな話?
1950年代のスウェーデンを舞台に、病気の母と離れて親戚の家に預けられた少年イングマルが、田舎の人々との出会いを通して人生と向き合っていく物語。大人になることの痛みと優しさが、静かに描かれています。
ここがおすすめ!
『サイダーハウス・ルール』と同様に、子どもが過酷な環境の中で何を学び、どう生きるのかを描いています。過剰な演出を避けた繊細なタッチと詩的な映像が、観る者の心にやさしく沁みわたる名作です。
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
この映画を一言で表すと?
天才青年と恩師の心の絆が描かれる、魂の成長ドラマ。
どんな話?
並外れた才能を持ちながらも心を閉ざして生きる青年ウィルが、心理学者ショーンとの出会いを通じて心を開き、過去と向き合いながら未来へ踏み出していく姿を描く感動作。知性と感情が絶妙に絡み合う物語です。
ここがおすすめ!
『サイダーハウス・ルール』同様、人生の選択や自己肯定がテーマ。ロビン・ウィリアムズの名演が胸を打ち、抑えた演出と深い人間描写が大人の鑑賞に耐える作品。何度も見返したくなる、心の映画です。
ショーシャンクの空に
この映画を一言で表すと?
希望と自由を信じ続けた男たちの、静かで力強いドラマ。
どんな話?
無実の罪で終身刑となった銀行員アンディが、理不尽な刑務所生活の中で希望を失わず、周囲に影響を与えていく。やがて自由を勝ち取るまでの過程を描く、スティーヴン・キング原作の傑作ヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
倫理、希望、友情、再生という『サイダーハウス・ルール』と共通するテーマが詰まっています。人生に絶望しそうなときでも「希望はいいものだ」と思い出させてくれる、静かで強いメッセージが心を打ちます。
リトル・ミス・サンシャイン
この映画を一言で表すと?
ダメ家族がひとつになる、笑って泣けるロードムービー。
どんな話?
ミスコンに出場する末娘を応援するため、崩壊寸前の家族がオンボロバンで旅に出る。道中で家族の問題が次々と浮き彫りになるも、互いに理解を深め、絆を取り戻していくという温かくユーモラスなストーリー。
ここがおすすめ!
『サイダーハウス・ルール』と同じく、家族や社会のルールに疑問を投げかけながら、登場人物たちが成長していく姿が魅力。笑いの中に深い人生の真理がある、後味の良い秀作です。
17歳の肖像(An Education)
この映画を一言で表すと?
夢と現実の間で揺れる少女の、美しくもほろ苦い成長物語。
どんな話?
1960年代のロンドンで、名門大学を目指す17歳のジェニーが年上の男性と恋に落ち、知らなかった世界を知ることで自らの価値観と向き合っていく。純粋さと現実の狭間で揺れる心情が丁寧に描かれています。
ここがおすすめ!
『サイダーハウス・ルール』のように、「何を信じてどう生きるか」を若者が問い直す物語です。キャリー・マリガンの瑞々しい演技が光り、心の痛みと希望を同時に感じさせてくれる静かな傑作です。
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