映画『大統領の理髪師』の概要:庶民が国家を象徴する大統領と交流することで変わりゆく様を描く一作。1960年代初頭から1970年代末までに実際に起こった事件などをもとに生々しい現実を捉えている。
映画『大統領の理髪師』の作品情報
上映時間:116分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、青春
監督:イム・チャンサン
キャスト:ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン etc
映画『大統領の理髪師』の登場人物(キャスト)
- ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)
- 下町で理髪店を営む主人公。気分が乗ると喋りすぎてしまう癖があり、偶然にも大統領と近づくチャンスを得て一躍時の人となる。
- キム・ミンジャ(ムン・ソリ)
- ハンモの妻。本当はハンモではなく、地元に居た婚約者と結婚するつもりだったが子供ができたことを機に嫁ぐこととなった。強気でかかあ天下なタイプの女性。
- チンギ(リュ・スンス)
- ハンモの理髪店で手伝う青年。渡米することを目標に、色々なことへ挑戦していた。ひょうきんなタイプであったが、兵役から戻ってくると大人しくなって変わってきた。
- ソン・ナガン(イ・ジェウン)
- ハンモとミンジャの息子。真っすぐで嘘を付けない性格から、子供同士でよくケンカをしてしまう。とある事件に巻き込まれ身体が不自由になる。
映画『大統領の理髪師』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『大統領の理髪師』のあらすじ【起】
理髪師の父・ハンモと髭剃りを担当する母・ミンジャ。二人が経営する理髪店は大統領が暮らす町にある。世は大統領選挙に沸いていた。信用する候補者のチョ・ヨンジンを当選させるべく奮闘する住民たち。しかし結果は落選。当選したのは不正を働いた李候補であった。不満を募らせる住人たちだったが、ハンモとミンジャの間に子供ができたという一大事件に気持ちは移り変わる。ミンジャは一時的に都会に遊びに来たはずが、ハンモとの間に新たな命を授かってしまったというのだ。子供の名前は住人たちの間で勝手に「ナガン」と決められていた。
臨月を迎え陣痛に耐えているミンジャを台車に乗せて病院に運ぼうとしている最中、町中では大きなデモが起こっていた。人だかりに圧倒されたハンモは逃げようとするも、ミンジャの喝が入り無事に子供を出産。住人たちも祝いに集まるのだった。
ナガンが大きくなった頃、理髪店に初めての客が来た。情報機関に勤めているというこの男は、町について詳しいであろうハンモに「今晩、怪しいやつがいたら教えてくれ」と申し出た。その夜、物音で起きたハンモ。おもむろに外に出てみると、屋根の上で見張りをするスーツの男を見つけた。すぐに警察に「スパイがいる」と報告し騒動を起こしてしまったハンモ。しかしその男は中央情報局の職員で総連系の留学生を監視していたのだった。
映画『大統領の理髪師』のあらすじ【承】
招待を受け、大統領官邸に招かれたハンモ。実はこの一件、警備室長が中央情報部長を困らせるために仕組まれていたのだ。この出来事から、少しずつハンモの人生は変わり始める。理髪店には警備室長がよく顔を出すようになった。そのうちに、閣下の髭剃りを依頼されたのである。経験したことのない緊張に追われながらも丁寧に対応するハンモ。口外しないように厳重に口止めされ、翌週も来るように言われたハンモは事の重大さに精神をすり減らすのだった。
髭剃り中に、つい雑談をしてしまうハンモ。閣下に対して無駄話をしてしまったことを後悔し夜な夜な悪夢にうなされるも、翌週には忘れてしまう。そのうち、子供の年齢が近いことから、家族同士集まって昼食を取ろうと閣下に誘いを受けることができた。意気揚々とミンジャとナガンを連れて官邸に出向いたハンモ。しかし子供同士は何気ないことからケンカになり、必死にハンモは謝るも警備室長から盛大に叱りを受けてしまった。この一件で官邸への出入りを禁止されると思ったハンモだったが、逆に官邸に大統領専属の理髪室ができたことで専属の理髪師として指名されるのだった。
映画『大統領の理髪師』のあらすじ【転】
ハンモはいつも大統領の傍にいた。それは閣下が渡米した時も同様。至る所で大統領と一緒にテレビに映るハンモの姿を見た人たちは、運を分けてもらおうとハンモの理髪店に押し寄せた。
この頃世間では「マルクス病」という下痢をもよおす流行り病が広まっていた。ハンモの暮らす町でもお腹を下す人が続出していた。そんな中、情報局の人間がワンさんを連行したという。その情報を皮切りに、続々と出てくる逮捕者。ナガンにも同じ症状が出ていることから、ハンモは心配し必死に隠そうとする。しかしタイミング悪く、理髪店には警備室長が訪ねてきてしまい、仕方なくハンモはナガンを警察に突き出した。他の逮捕者同様、拷問を受けるもナガンは次々と乗り切った。その頃、ナガンを連れ帰そうと必死になるハンモ。中央情報局によるスパイ捜索は10か月に渡り続いたという。一向に戻らないナガンを想い、寝たきりになってしまったミンジャ。後悔と責任感からハンモは俯きがちになっていく。
映画『大統領の理髪師』の結末・ラスト(ネタバレ)
ある日、官邸に呼ばれたハンモ。秘密裏に酒を嗜んでいると、閣下は情報局長にスパイ捜索に関して進捗を訪ねた。なんとか足を引っ張ろうとする警備室長は子供を拷問していることを話題に出した。なんとナガンはずっと拷問を受けていたのだ。大統領の手前、体裁を整えるためにナガンは突如解放された。久しぶりに自宅へ戻ったナガンだったが、拷問の影響で下半身が麻痺し立つことができなくなってしまった。
至る名医を当たり、ナガンのために全力を尽くすハンモ。時には雪の残る山奥まで出向いて治療に専念するも、奇跡は起こらなかった。ナガンは両足に麻痺を抱えたまま成長した。変わらずハンモは大統領専属の理髪師として働いている。警備室長は大統領の側近となり、情報局長との対立は激しくなっていた。とある日、騒々しさに気付いたハンモが外を覗くと多くの戦車が並んでいた。大統領が亡くなったのである。葬儀に参列したハンモは、帰り道に大統領の肖像画の瞳から少しだけインクを削ぎ取った。
世代は変わり、次の大統領になってもハンモは官邸に呼ばれた。しかし次の大統領は散髪する必要がないほど、髪の毛が薄かった。思わず「髪が伸びたらまた来ます」と口走ってしまったハンモ。以後、官邸への出入りは禁止になるも、ナガンが掴まりながらなら歩けるようになるという奇跡を得た。着々とリハビリの成果を出すナガン。ハンモと並びながら自転車を走らせる日が再び訪れるのであった。
映画『大統領の理髪師』の感想・評価・レビュー
手を口に当てて笑うソン・ガンホを始めてみたように思う。フィクションであると言いつつも、韓国の史実でも国民に厳しい時代を取り上げたような題材が印象的であった。登場人物は少なく、いたってシンプルな展開。大統領を取り巻く政治の闇が後半に畳みかけてくるのだが、全体的にユーモアを忘れていないため重々しくなく見ることができた。数々の名画を生み出してきた韓国映画の中でも、静かながら攻めた題材の物語であったように感じた。(MIHOシネマ編集部)
ひょんなことから大統領の理髪師となったハンモ。幸せなことばかりではなく、政府の権力抗争に巻き込まれたりと、苦労しているところが描かれていたのが印象的だった。
大統領の理髪師としての姿だけでなく、家族との掛け合いも見られたのが良かった。息子のナガンの足を治療しようと奮闘するハンモの姿に、父親としての深い愛情を感じた。大統領の理髪師になるのは栄誉なことかもしれないが、それよりも家族が笑顔で暮らしていることが、何よりも幸せなことなのかもしれない。(女性 30代)
手より口が動いてしまったり、調子に乗ってちょっと空気の読めないことをしてしまうハンモと彼を演じたソン・ガンホのイメージがピッタリすぎて笑ってしまいました。庶民っぽい少しダサい役が本当に似合います。
コメディチックに物語が展開されていくのでなんとか見ていられましたが、とても生々しい描写もあり、シリアスな重い空気で描かれていたら最後まで見られなかったかもしれません。
韓国映画にありがちな過激な拷問シーンもあるので苦手な方は注意して鑑賞してください。(女性 30代)
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