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映画『無伴奏』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『無伴奏』の概要:学生運動が盛んな時代を生きた女性の愛と成長を追う物語。直木賞作家・小池真理子の半自伝的恋愛小説を実写化した一作。出会いのきっかけであり、タイトルである喫茶店「無伴奏」は実在した店である。

映画『無伴奏』の作品情報

無伴奏

製作年:2015年
上映時間:132分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:矢崎仁司
キャスト:成海璃子、池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜 etc

映画『無伴奏』の登場人物(キャスト)

野間響子(成海璃子)
当時世間を賑わせていた学生運動に感化され、同級生たちと委員会を結成し意思表示することで生きた感覚を得ていた。しかし、年上の渉と出会い違った形の青春を手に入れ始める。
堂本渉(池松壮亮)
哲学的で大人しい大学生。幼い時に親を亡くし、心を病んだ姉と一緒に生きている。響子出会い、新たな感情に戸惑い葛藤しながらもきちんと向き合おうとする。
関祐之介(斎藤工)
渉の同級生。落ち着いた雰囲気で、響子と同じ年の恋人・エマを大切にしている。友人であるはずの渉のことになると、熱くなってしまう。
高宮エマ(遠藤新菜)
関の恋人。響子と同じ年でありながら、大人びている容姿の持ち主。精神的には少し子供な部分が多く、関ときちんと話し合えずにいる。
堂本勢津子(松本若菜)
渉の姉。幼い頃に母親を亡くし、二人で生きてきたため少し渉に依存気味である。恋人の響子に関してもすぐに受け入れたが、実は心を病んでいる一面もある。

映画『無伴奏』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『無伴奏』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『無伴奏』のあらすじ【起】

高校生の響子は「制服廃止斗争委員会」と称して意思表示を始めた。大学生の学生運動に感化され同級生のジュリ・レイコと立ち上げたのである。制服という縛りに対峙する少女たちは、「無伴奏」という喫茶店に出向いた。その店で偶然相席することになった青年・渉と出会う。渉は響子が持っていた詩集に目にとめた。その詩集を街頭で手売りしていたのは渉の大学の同級生だというのだ。渉と一緒に来店していた関とエマも詩集を読み、自己満足の塊であることに唖然とする。ムッとした響子ではあったが、渉との心地よい会話に内心安堵していた。

学生運動は社会的に問題視されていた。響子の両親ももちろん反対派である。厳しい両親の前では優等生を演じている響子は、自宅へ戻る前に制服へ着替えていた。しかし門限はとうに過ぎており、父親から平手打ちされてしまうのだった。響子が我慢できているのは、父の転勤が決まり、両親と離れて暮らすことが決まっているからだ。響子は叔母と一緒暮らし始めた矢先、全校集会中に委員会の活動を公にした。見事に学校から罰則をくらった響子。「自宅謹慎」という通知は離れて暮らす父親にもすぐに伝わり、電話でこっぴどく叱られてしまうのだった。

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映画『無伴奏』のあらすじ【承】

父親への反抗心から、学生運動に積極的に参加するようになった響子。想像よりも過激化している現実に打ちのめされた響子は、一人で無伴奏に立ち寄った。偶然にも渉と関もおり、きちんと自己紹介をするのだった。関は迎えに来たエマとデートに向かい、残された響子と渉も一緒に過ごした。当時17歳の響子は「変わらないもの」を追い求めていた。渉は「人を愛すること」と何気なく答えたが、その様子が響子には大人びて見えるのだった。

誘いを受け渉の家に出向いた響子。実は関が渉の家に居候していたため、二人っきりのデートではなかったと落胆したが、母親を亡くしていることを知るきっかけとなった。夜を迎え、酔いも回った関は渉と響子を前にエマを抱こうとした。気まずくなった響子は一人帰ろうとするが、渉は咄嗟に追いかけ「君が好きだ」と告白するのだった。

グループでのデートを重ねた二人。響子は二人っきりでデートがしたいと願い出る。渉はすぐに動物園でのデートを企画した。しかし当日、待ち合わせ場所には姉の勢津子も同行した。彼女として認めてもらえたものの、兄弟間の距離と接し方が異様に近いことに違和感を覚えるのだった。

映画『無伴奏』のあらすじ【転】

響子の誕生日には、サプライズで自宅に訪ねてきた渉。叔母が居ないことから、二人は夜まで響子の部屋で一緒に過ごすことができた。恋人である以上、渉は身体を重ねようとしたが、勢津子のことが頭によぎり響子は拒否してしまう。きちんと話し合おうとした矢先、関から響子の家に電話があり、勢津子が自殺未遂をして入院したという知らせを受けた。実は、勢津子は恋人と別れ心を病んでいたのだった。勝手に先走った想像をしていたと気づいた響子は、自ら立ち上げた委員会の運動もおろそかになっていくのだった。

大学受験を控えた頃、父親が浮ついた響子の素行を正しに戻ってきた。しかし響子は聞く耳など持たない。渉が風邪をひいたと知り家を訪ねた。両親の住む東京の大学ではなく、渉のいる仙台に残ろうと思っている意思を伝えた響子。その素直な気持ちが嬉しかった、渉は響子を抱くのだった。二人は愛し合ったのち、響子はふと視線を感じた。入口に目をやるとなんと覗いていたのは関。怯える響子を渉は抱きしめるが、関をかばうのであった。

映画『無伴奏』の結末・ラスト(ネタバレ)

響子は高校卒業後も渉と交際を続けていた。仲はどんどん深くなり、一緒に暮らすことも視野に入れていた。その週末は叔母がいないため、一緒に過ごす約束をした二人。しかし当日は、大雨と雷が鳴り響く悪天候で、いつまでたっても家に来ない渉を心配した響子は家を訪ねてみた。すると、小さな入り口から中を覗いた響子の目に入ってきたのは、身体を重ねる渉と関の姿であった。信じがたい現実に動揺をした響子。響子の存在に気付いた渉は、咄嗟に追いかけるが響子はどう接していいか戸惑いを隠せない。「女性」として好きなのは響子だという渉。関との関係に揺らぎずっと葛藤しながら過ごしていたという。響子は告白を受けてもなお、渉への感情は抑えきれなかった。関との距離を置きながら関係を続けることになった二人。しばらくは4人で集まることもなかったが、突然エマが訪ねてきた。実は関の子供を妊娠していたのだ。子供を産む気のエマに対して、二人は事実を知りながらも伝えることができなかった。

再び、4人で集まる機会ができ始めた矢先、関は感情のぶつけ先を見失いエマを殺してしまった。渉は目の前で逮捕される関を救うことができなったと、自分を責め続けた。響子に最期の電話を残し、渉は自らの意思で海に身を投げた。浜辺には彼がいつも持ち歩いていたスケッチブックが残され、そこにはたくさんの関のスケッチと眠る響子の姿、そして自画像が描かれていた。「これでゆっくり眠れる」と書き残された渉の最期の言葉。響子は、渉と関の関係性を決して誰にも明かさず、両親の住む東京に身を移すのであった。

映画『無伴奏』の感想・評価・レビュー

パッヘルベルの「カノン」の柔らかく美しい音色が似合う物語であった。時代の流れが作った意思表示方法。1969年という時代には、同性を意識することはどうとらえられていたのだろうか。「女子高生」から卒業するのは、女性の多くが経験するターニングポイントだが、この時期にどんな恋愛をしたかはその後の人生にも影響は大きい。ドラマチックな喪失は響子のその後に何を残すのだろうか。池松壮亮、斎藤工は体当たりな作品が本当に多いように感じるが、古めかしい言い回しでも嫌味ない巧みな存在である。(MIHOシネマ編集部)


直木賞作家・小池真理子の半自伝的小説を映画化した作品で、淡々とした中に揺らぐ心と彼らの成長、そして悲劇を描いている。
無伴奏という喫茶店は実在していたそうで、今作でも忠実に再現したらしい。そのアンティーク調で色合いの良い落ち着く喫茶店でヒロインは恋人となる大学生と出会うのだが、彼が親友と関係を続けていたというシーンがとても印象的だった。その後の展開も予想外で衝撃的。淡々とした流れで物語が進むので、途中でちょっと退屈になってしまったところもあるが、彼らの心情の揺らぎがしっかりと描かれており深みのある作品になっている。(女性 40代)

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