映画『エデンより彼方に』の概要:2002年制作ながら、1950年代北東部アメリカの雰囲気を忠実に再現。コネチカットの美しい紅葉や、女優陣を飾るノスタルジックな衣装が哀愁を誘う。当時は許されなかった人種を越えた愛情や同性愛をテーマに、ジュリアン・ムーア演じる完璧な主婦の苦悩を描く。
映画『エデンより彼方に』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:トッド・ヘインズ
キャスト:ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド、デニス・ヘイスバート、パトリシア・クラークソン etc
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映画『エデンより彼方に』の登場人物(キャスト)
- キャシー・ウィテカー(ジュリアン・ムーア)
- 上流階級の主婦。美しく、会社役員の夫と二人の子に恵まれ、周囲も羨む理想の妻。人当たりが良く優しい性格で、その優しさは黒人達にも向けられる。
- フランク・ウィテカー(デニス・クエイド)
- キャシーの夫。一流企業の重役。家庭がありながら男性にばかり惹かれ、自分でもその性癖を問題視してきた。ストレスを酒でごまかすが、カッとなる事も多い。
- レイモンド・ディーガン(デニス・ヘイスバート)
- ガーデニング用品店を営む、庭師の男。黒人。父の代からウィテカー家の庭を管理。教養が高く、物事の表面に囚われない考え方を心がける。妻を亡くしてからは、一人で娘を育てている。
- シビル(ウィオラ・デイヴィス)
- ウィテカー家のメイド。黒人。いくつもの教会に通う、信心深い女性。落ち着いていて余計な事を言わず、冷静にウィテカー家を見守っている。
映画『エデンより彼方に』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『エデンより彼方に』のあらすじ【起】
1957年、アメリカ北東部・コネチカット州。上品な郊外の町ハートフォードに住むキャシー・ウィテカーは、誰もが羨む理想的な専業主婦だ。趣味の良い家に住み、夫フランクは会社役員。一男一女の子供達をきちんと躾け、敬虔な黒人メイドのシビルはてきぱきと良く働く。キャシー自身も社交上手で、奥様同士の付き合いではいつも中心人物として大切にされている。一般人の専業主婦であるにも関わらず、雑誌の取材を受けるほどだ。
その取材中、家の庭に見知らぬ黒人男性を見つけたキャシー。記者は警察を呼ぼうとするが、キャシーは女主人らしく毅然とした対応をした。すると、男は老齢の庭師の息子だった。父親が亡くなり、跡を継いだこの男はレイモンドと名乗る。キャシーは素直に無礼を詫び、父親の冥福を祈る。その姿を見た記者の手で、キャシーの名は「黒人にも優しい」ウィテカー夫人として雑誌に載り、ますます話題の人となった。
そんなキャシーにも、周囲には知られていない悩みがある。夫のフランクが最近家を空けがちで、酒を飲んで帰ったり、警察と揉めたりと心配ばかりかけるのだ。仕事でストレスが溜まっているのか、キャシーが誘っても寝てしまう。ある日、彼は仕事帰りに一人で映画に行き、劇場にいた二人組の男達を追って怪しいバーに行く。そこは、同性愛者の男達が隠れて集うバーだった。
そうとは知らず、日々主婦業をこなすキャシー。友人達とお茶会をすれば、話題になるのは夫婦生活の事だ。順調そうな他の家庭の話を聞き、居心地の悪い思いをするキャシー。そんな折、風に飛んだスカーフを追って庭に出ると、作業中のレイモンドがそこにいた。彼はラベンダー色のスカーフを褒め、二人は他愛無い会話をする。レイモンドは早くに妻を亡くしていて、11歳になる娘サラを一人で育てていた。キャシーは娘の写真を褒め、レイモンドもキャシーの丁寧な対応に心を開くのだった。
映画『エデンより彼方に』のあらすじ【承】
キャシーとレイモンドの距離が近づいたその晩、フランクが夕食に帰ってこなかった。最近多忙の夫を心配し、会社まで夕食を届けに行くキャシー。夫のオフィスに入ると、そこでは、フランクが男と情熱的なキスを交わしているではないか。キャシーは驚き、涙をこぼしながら家へ逃げかえる。
遅れて帰宅した夫は、昔から悩んでいたと告白する。しかし、それは自分だけの秘密だった。キャシーは病院での治療を勧め、二人はボウマン医師の元を訪ねる。医師はフランクにカウンセリングと投薬をし、必要に応じて電気ショックやホルモン注射をするという。キャシーは夫に優しく接し、励ますが、その理解ある態度が余計にフランクの心を荒ませていくのだった。
フランクとの仲は緊張状態になり、キャシーは友人が開いた絵画の展覧会にも一人で行く事になってしまう。そこでは、大勢の白人に混ざって、レイモンドと娘のサラが絵画を楽しんでいた。キャシーは彼らに声をかけ、共に絵画を楽しむ。レイモンドは博識で、考察も面白い。夢中になって話を聞いていたキャシーは、周囲の白人たちから好奇の目で見られている事に気づかなかった。
その夜、ウィテカー家では毎年恒例のパーティーが開かれる。ゲスト達は黒人びいきのキャシーをからかい、黒人蜂起のあった他の町を噂する。黒人の給仕の前で、ハートフォードには黒人など大していないから大丈夫だと笑う紳士達。キャシーがそっとその場を離れると、今度は悪酔いしたフランクが絡んでくる。友人のエレノアの機転でパーティーは無事に解散するが、フランクの機嫌は直らなかった。彼は妻に迫り、体が反応しないと言ってヒステリーを起こす。その時キャシーを殴ってしまい、キャシーの額には大きな痣が残ってしまった。
翌日、額の痣を見て、エレノアもレイモンドもキャシーを心配する。キャシーが本当に心を開ける相手は、友人ではなくレイモンドただ一人だった。彼はキャシーを仕事先に連れて行き、気分転換をさせてやる。そして、白人社会で一人飄々と生きるレイモンドに興味を持ったキャシーを、レイモンドは黒人社会へ連れ出した。黒人用のダイニングレストランで酒を飲み、ダンスをする二人。白人女性を連れたレイモンドを、白い目で見つめる仲間達。そして、二人の様子は噂好きの白人女性の目にも止まり、キャシーとレイモンドはあっという間にハートフォード中の噂の的となるのだった。
映画『エデンより彼方に』のあらすじ【転】
それからというもの、キャシーの周囲には不穏な空気が漂っていた。娘のバレエ教室に行っても、どの母娘もキャシー達に近づこうとしない。エレノアが、噂話の電話がひっきりなしに飛び交っていると教えてくれた。フランクもやたら早くに帰宅し、噂の真相を問いただす。キャシーは、ただ話していただけだし、噂をする方がろくでもない人間だと言い返すが、フランクのいら立ちは収まらない。彼は、会社から1ヵ月の休職を言い渡されていた。どうやら、医者にかかっている事が会社に知られたらしい。キャシーはレイモンドを解雇すると決め、お互いが立ち直るために有意義な休みにしようと夫に寄り添った。
キャシーはレイモンドを呼び出し、別れを告げる。二人は町のカフェにすら居場所がなく、街角で立ち話する姿も目立ってしまう。レイモンドは、外見でなく本質を見るようキャシーに訴えかける。しかし、キャシーは彼の元を去るしかなかった。咄嗟にキャシーの腕を掴むレイモンド。すると、通りがかりの白人男性がレイモンドを怒鳴り、腕を離させる。道行く人々全てが、レイモンドを睨みつけていた。
クリスマスシーズンが始まり、キャシーとフランクは年越しの為バミューダを訪れていた。子供達は家に残し、夫婦水入らずで過ごす仲直りの旅行だった。二人は仲睦まじく過ごすが、同じホテルに滞在していた若い青年と視線を交わし合うフランク。青年はフランクに近づき、フランクは、遂に愛する相手を見つけてしまう。
休暇が終わり、フランクは、涙ながらに恋人ができた事をキャシーに打ち明ける。青年から同棲を持ちかけられ、これ以上妻に隠していられなくなったのだ。望みは、離婚だった。夫に、初めて人を愛したと言われ、打ちひしがれるキャシー。エレノアに夫との事を相談すると、親身になって応援してくれる。しかし、キャシーがレイモンドにも心の内を明かしていたと知るや否や、表情を硬くするエレノア。彼女にとっては、同性愛者の夫よりも、黒人の庭師に心を開く白人女性の方がよほど汚らわしい存在だったのだ。
映画『エデンより彼方に』の結末・ラスト(ネタバレ)
夫が家を去りしばらくして、メイドのシビルがキャシーにある情報を打ち明けた。少し前に、白人の性悪な少年が黒人の少女に石を投げ、退学になったという話題が出た事があった。息子の同級生の少年で、今後は付き合うなと言って終わった話だったが、石を投げられた少女がサラだと言うではないか。まだ夫がいた頃の話で、キャシーの気持ちを気遣い黙っていたシビル。案の定、この話を聞いたキャシーは、夜遅くだというのに一人家を飛び出していく。
レイモンドの家を訪ねるキャシー。彼が語るには、彼とキャシーの関係は白人を刺激しただけでなく、黒人もまた彼の家に石を投げ込むようになったという。レイモンドとサラは、この町を去る決意をしていた。金曜に、ボルティモアの兄を頼って引っ越すらしい。キャシーは、落ち着いたら会いに行くと提案する。その頃には、自分もミセス・ウィテカーではなくなっているだろう。しかし、レイモンドにとって一番大切なのはサラだった。彼は重ねた手にキスをして、キャシーに別れを告げる。
夫も友人も、何もかも失ったキャシー。ホテルで恋人と暮らすフランクから電話があったが、それは会社の都合で夫婦のふりをする依頼だった。長年共に過ごしたのに、キャシーの毎週のスケジュールを一つも覚えられなかった夫。キャシーは、淡々と予定を木曜に決め、電話を切った。
金曜日、キャシーは子供達を車に乗せて駅へ向かう。出発前、シビルは懸命にテーブルを磨いていた。他にもやる事が山ほどあるだろうに、と言うキャシーだが、シビルにとって、テーブル磨きは金曜の決まった仕事だ。何があっても変わらないシビルに励まされたキャシーは、ラベンダー色のスカーフを頭に巻き、しっかりとした足取りで家を出た。
子供達を車に残し、一人プラットフォームを急ぐキャシー。列車に乗り込むレイモンドとサラの後ろ姿を見つけた。レイモンドも彼女に気づき、二人は見つめ合う。言葉を交わすことなく、微笑み合い、小さく手を振る二人。そのまま列車は出発し、キャシーは、小さくなっていくレイモンドの顔を見送った。そして車へ戻り、子供達と共に、寂しい冬の景色が広がるハートフォードの町へと戻って行くのだった。
映画『エデンより彼方に』の感想・評価・レビュー
1957年は今よりももっと同性愛者差別や人種差別に苦しんでいた時代だと思う。キャシーがフランクに病院での治療を勧めている場面は、結構ショックだった。でもそれは今だからこそ感じられる思いで、この当時はそれが普通のことだったのだろう。フランクのことは自分勝手だと思うが、同性に惹かれる思いに一人で相当悩んだのではないかと思うと、そんなに嫌いにはなれなかった。ただ、キャシーの孤独が悲しいなと思う。(女性 30代)
1950年代を舞台に、同性愛と人種差別をテーマとして描いた作品。映像の鮮やかな色彩が印象的で、紅葉の美しさや50年代のカラフルなファッションがとても素敵である。
それに反して内容は重々しい。当時の社会は、白人と黒人が友人になることすら許されなかった時代。周囲からの冷たい眼差しと張り詰めた空気に息が苦しくなる。
自身の同性愛を否定できない夫と別れ、互いに心を開いた相手であるレイモンドにも別れを告げられ、キャシーの寂しさを思うと辛くて仕方がなかった。(女性 30代)
本作は、人種差別が強く残る1950年代のアメリカ北東部を舞台に、上流階級の夫婦と黒人庭師の交流を描いたラブヒューマンドラマ作品。
人種差別や同性愛といった偏見や嫉妬など、世間体や階級間で起こる人間心理が描かれていて人間の怖さを再認識した。
そして、キャシーが一人きりになってしまったのは辛かった。
特に目を引いたのが、1950年代のファッションやインテリア、車や街並み。
品の良いレトロな色遣いがとても好みで目が養われた。(女性 20代)
同性愛や人種差別、不倫など様々なテーマをぎゅっと詰め込んだ濃厚な作品でした。主人公のキャシーはエリート会社員の夫と子供に恵まれ、周りが羨むような環境にいます。一見幸せそうに見える家族でしたが、どこか悲しく「幸せ」を心から感じられない様子は見ていてつらくなりました。
夫の「秘密」は簡単に受け入れられる物ではなく、知らなければ幸せだったのではないかと思いつつ、知らずに生きていくのはとても悲しいことだとも感じました。(女性 30代)
景色、内装、服装どれをとっても色合いが絶妙で美しく、観ていて癒されます。また音楽も古い雰囲気で耳触りがよく、とても気持ちがいいです。昔ならではの人間関係や、”普通”の価値観が良く分かります。近年のLGBT問題が、昔に比べると大分改善されたのではと思えてきます。ゲイが病気なんていったい誰が吹き込んだのか…主人公演じるジュリアン・ムーアの容姿が美しいことは勿論ですが、真っすぐ生きるキャラクターにとても良くハマっていると思いました。(男性 20代)
みんなの感想・レビュー
レイモンドがキャシーに贈るとある台詞(詩?)がキーとなるこの映画。
この後二人は結ばれたり、「普通の家庭」の様に一緒なれないであろうことがその詩からも、エンディングからも見てとれます。
50年代、そしてアメリカ、この後も長らく人種戦争は続きますよね。
と言ってもいつの時代にもある嫉妬やおばさん達の噂話の方が怖い映画なんですけど…笑
この世はやりきれないけれど、far from Heavenでまた出逢おう、みたいな詩はルーミーっぽい。
「天はすべて許し給う(1955)」へのオマージュ作品でもあるので、それらしいシーンがちらほら出てきます。
ちなみにコネチカットは南部ではなく東部アメリカ。
紅葉が有名なので劇中でも美しい木々の色合いが再現されています。50年代ファッションも可愛い。
この後二人は一緒になるのか、観客は別れ際の二人の様子で判断せよみたいだが、作者の意図は?こういう終わり方は中途半端で腹が立つ