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映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

仏教の伝統が根付く、ブータンのブムタン地方の村が物語の舞台となっている。そこには、1000年の歴史を持つ寺院を受け継ぐ家族が暮らしていた。父は将来的に、ゲンボに寺院を継がそうとしていた。

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の作品情報

ゲンボとタシの夢見るブータン

タイトル
ゲンボとタシの夢見るブータン
原題
The Next Guardian
製作年
2017年
日本公開日
2018年8月18日(土)
上映時間
74分
ジャンル
ドキュメンタリー
監督
アルム・パッタライ
ドロッチャ・ズルボー
脚本
不明
製作
不明
製作総指揮
不明
キャスト
ゲンボ
タシ
製作国
ブータン・ハンガリー合作
配給
サニーフィルム

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の作品概要

本作品は若手ドキュメンタリー制作者育成プログラムで出会った、ブータン出身のアルム・バッタライ監督とハンガリー出身のドロッチャ・ズルボー監督が共に作った映画である。仏教の伝統が根付いている、ブータンのブムタン地方の村が物語の舞台となっている。そこに暮らすある家族は、1000年の歴史を持つ寺院(チャカル・ラカン)を受け継いでいた。本作品はその家族の中でも、悩みを抱える16歳と15歳の兄妹にスポットが当てられている。

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の予告動画

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の登場人物(キャスト)

ゲンボ
16歳。1000年の歴史を持つ寺院(チャカル・ラカン)を受け継ぐよう親から言われている。寺院を継ぐには僧院学校に転校する必要があった。そのため、自分の将来について悩むようになる。
タシ
15歳。ゲンボの妹。自分のことを男だと思い、性について悩みを抱えている。ゲンボが唯一の理解者。サッカー代表チームに入ることを夢見ている。

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』のあらすじ(ネタバレなし)

仏教の伝統が根付く、ブータンのブムタン地方の村が物語の舞台となっている。そこには、1000年の歴史を持つ寺院を受け継ぐ家族が暮らしていた。家族は寺院をとても大切にしていた。その家族には、ゲンボと妹のタシという名の仲の良い兄妹がいた。

90年代初めまでに、ブータンの国の基本的施設は整ったと言われている。携帯電話やテレビゲームなども普及していた。他国は何世紀も要したのに、ブータンは30年でそれらを成し遂げた。ブータン国民にとってそのことは誇りだった。

ゲンボはいずれ寺院を継ぐよう家族から言われている。それと合わせて、外国人に寺院の説明をするため、英語の勉強をしておくことも求められていた。さらに、今通っている学校を辞めて、僧院学校に転校する必要もあった。ゲンボ自身は寺院を継ぐべきか悩み、タシに不安や愚痴を漏らした。また、タシは自分の性のことで悩みを抱えており、ゲンボが唯一の理解者となっていた。

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の感想・評価

ブータン王国

物語の舞台となっているブータン王国(通称ブータン)は、インドと国境を隣接している南アジアの国である。この国では、「国民総幸福量」という「功利主義」を採用している。「功利主義」とは帰結主義の考え方の1つで、制度や行動の決定は効用によって決定するという思想である。この思想は別名「最大多数の最大幸福」とも言われている。

日本とブータンは意外と密接に関係がある。1960年代ブータンの農業の収穫は芳しくなかった。その状況を改善するため、海外技術協力事業団(現・国際協力機構)は日本人の西岡京治を技術者として派遣している。西岡は長年ブータンの地に留まり、農業の改善に努めている。

ブータンの経済状況は世界的に比較してあまり高いとは言えず、農業が主要産業となっている。現在は文化や自然を利用し、観光業にも力を入れようとしている。だが、それだけではなく、ヒマラヤ山脈を利用して水力発電を行い、電気を最大輸出商品として販売している。

チベット仏教

ブータンでは主に3つの宗教が信仰されている。チベット仏教(ドゥク・カギュ派)・チベット仏教(ニンマ派)・ヒンドゥー教である。チベット仏教は宗派によって細かい違いがあるが、その中でも国教となっているのはチベット仏教(ドゥク・カギュ派)である。このチベット仏教を国教にしているのは、世界の中でもブータンだけである。

チベット仏教とは、文字通りチベットを中心に広まった仏教である。ブータンに暮らす人々はとても信仰深く、チベット仏教が日常生活にも深く浸透している。ルンタと呼ばれる仏教の5色(天・風・火・水・地)を表す旗を掲げたり、亡くなった人を供養するときに経文が書かれたダルシンと呼ばれる旗を掲げたりしている。

ゲンボと妹のタシ

ゲンボは将来寺院を継ぐことが、ほぼ決まっていると言っても過言ではない。いくら信仰に厚い国と言っても、ゲンボはまだ16歳の少年である。テレビゲームをして遊び、親の小言を煩わしく思う。その姿は日本で暮らす子供達と変わりはない。ゲンボは親から言われているだけで、まだまだ寺院を継ぐ覚悟があるわけではないのだ。

妹のタシはそんな兄の悩める心情をきちんと理解している。無理に僧になる必要はないと励まし、兄の心に寄り添おうとする。実は、タシはタシで悩みを抱えており、その理解者となってくれたのがゲンボであった。タシは自分のことを男だと思っており、性について悩みを抱えていた。2人の悩みは全く別のものだが、お互いの苦しみを理解できる唯一の存在でもあった。そんな2人の深い絆が、見ていて羨ましいなと感じる。

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の公開前に見ておきたい映画

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

子どもが教えてくれたこと

病気を患っている5人の子供達にスポットを当てたドキュメンタリー映画。フランスでは23万人の観客を動員するヒット作となった。監督を務めたアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンは、自分の娘を病気で亡くすという悲しい過去を持っている。そんなアンヌだからこそ、病気を患っているという負の部分だけではなく、愛する人に囲まれて幸せに暮らしている子供達の姿を撮ることができたのである。

5人の幼い子供達は病気と闘いながら、元気に暮らしていた。肌が弱く、薄い紙のように破けてしまう子供、腎不全を患っている子供、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を患っている子供など。子供達は病気について悩むことはあるが、幸せを諦めているわけではなかった。サッカーを楽しんだり自転車を乗り回したり、溢れんばかりの笑顔がそこにはあった。

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うまれる

命に纏わる出来事を通して、4組の夫婦を追ったドキュメンタリー作品。「子供は親を選んで生まれてくる」という胎内記憶をモチーフにしており、命の大切さだけではなく親子の絆や家族の大切さにもスポットを当てている。俳優・タレントのつるの剛士が、主題歌とナレーションを担当している。

31歳の同い年である伴真和・まどかは、夫婦になって1年が経過した。まどかは妊娠しており、現在6ヶ月だった。これが2人にとって初めての子供で、不安に思うことも多かった。まどかは幼い頃母親から虐待を受けていた。お風呂に沈められたり、暴言を吐かれて心が傷ついたこともあった。まどかは母になぜ愛されなかったのか悩んでいた。そこで、思い切って助産師の仕事に就いた。そこでは、様々な親子の姿を見ることができた。一方、真和の方も両親の不仲をずっと見てきて、結婚願望すら持てなかった時期があった。

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東京兄妹

東京の街で身を寄せ合いながら暮らす兄妹の姿が描かれている作品。「第45回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞」など数々の賞を受賞している。ドキュメンタリー風に映像が撮られており、仲の良かった兄妹に少しずつ亀裂が入る様が静かに映し出されている。

日暮健一・洋子兄妹は、両親を亡くした後2人だけで暮らしていた。妹の洋子は家事を行い、兄の面倒をよく見る女性だった。一方、兄である健一は、妹のことを第一に考える心優しい男性だった。2人は幸せに暮らしており、これが一生続くのだと思っていた。健一は妹が成人するまで、結婚を待つつもりでいた。しかし、恋人はそんな健一に愛想を尽かし、別れを選んだ。それでも、健一には妹がいればよかった。だが、洋子は恋人を作り、家に帰って来なくなってしまう。

詳細 東京兄妹

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』の評判・口コミ・レビュー

映画『ゲンボとタシの夢見るブータン』のまとめ

本作品は「幸福の国」と呼ばれるブータンに暮らす、家族にスポットが当てられている。広大な自然や地方の村ならではの暮らしなど、日本とは違う部分も多くある。しかし、口煩い父親のことが嫌になったり将来のことで悩む子供の姿は、日本人であろうと外国人であろうと変わらないと思う。親もただ小言を言うだけではなく、寺院の継承問題で葛藤を抱える息子のことを、性について戸惑う娘のことを気にしている。そんなごくありふれた家族の愛が、この作品には詰まっている。

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