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映画『御法度』あらすじとネタバレ感想

映画『御法度』の概要:大島渚監督の遺作となった、耽美系時代劇。新選組に新しく入隊した美しい少年が、男達の心を惑わしてゆく。松田龍平のデビュー作。共演は、ビートたけし、武田真治、崔洋一、浅野忠信。1999年日本映画。

映画『御法度』 作品情報

御法度

  • 製作年:1999年
  • 上映時間:100分
  • ジャンル:時代劇、ラブストーリー、ミステリー
  • 監督:大島渚
  • キャスト:松田龍平、ビートたけし、武田真治、浅野忠信 etc

映画『御法度』 評価

  • 点数:65点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★☆☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★☆

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映画『御法度』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『御法度』のあらすじを紹介します。

幕末の京都。新選組の沖田総司(武田真治)は、新選組隊士選抜のため、入隊試験を行っていた。その志願者の中に、美形の少年・加納惣三郎(松田龍平)がいた。彼は、田村彪蔵(浅田忠信)と共に入隊試験に合格した。

やがて、加納惣三郎の妖しい美貌によって、新選組の隊士たちは狂わされてゆく。共に入隊した田村は、衆道(ゲイ)であり、加納を自分のものにしようと狙っていた。加納は、田村に誘われる形で契りを結んでしまう。
ところが、田村だけでなく、他の隊士からも加納に言い寄る者が出てきた。その隊士が湯沢藤次郎(田口トモロヲ)。彼も加納と契りを結ぶのだった。

新選組総長の近藤勇(崔洋一)が、広島にゆくことになり、留守を頼まれた土方歳三(ビートたけし)と沖田総司。その直後、井上源三郎と加納が剣の稽古中、土佐弁の男たちに襲われます。土方はこの件を重くみて、2人に土佐弁の男たちを追うように指示した。
井上と加納は、男たちを追うが、負傷してしまう。やがて、近藤が帰ってくるがなんだか様子がおかしい。加納に懸想していた、湯沢藤次郎が何者かに殺されてしまったのだ。

湯沢を殺したのは誰なのか?土方と沖田は疑いはじめ、探索方に探らせる一方、混乱の源は田村もしくは加納にあるのではと考えはじめます。そして、土方は加納に田村を殺すように命令した。土方と沖田が見守る中、田村は加納の剣に倒れた。
沖田はその帰り、忘れ物があるからと一人で引き返すと、赤い襦袢を着て現れた加納を斬り殺したのだった。

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映画『御法度』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『御法度』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

「ゲイ」の観点から描いた幕末新選組論

異色の時代劇だと言う人もいるが、1人の男によって組織が混乱し、崩壊してゆく様が面白いと思う。本作でデビューした松田龍平のあどけなく不思議な色気も、何だか分からないうちに同性を惹き付ける魔力になっているのかもしれない。

経済活動が流動的なように、組織もまた人によって変化してゆく。闘いの向かい側にあるのが、癒しや肉欲だとすれば、人は簡単に転がってしまうことを本作は教えてくれます。だから、男色(ゲイ)という存在を組織は恐れ、葬り去ろうとします。その葛藤を観るのが楽しい。

新選組に限らず、どんな会社や組織にだって、マイノリティな存在の人はいます。ただ、活用するのが難しいだけ。殺すのではなく、生かす道を考えたい。孫子の兵法によれば、スパイをして敵の情報を探るのも勝利の秘訣だから、Aの組織とBの組織をつなぐような仕事をするのはどうだろうか。

沖田総司と加納惣三郎のミステリー!

「御法度」には謎があふれています。まずは、加納惣三郎が”前髪を切らない理由”。土方に前髪を指摘された際、「願掛けをしております。」と答えています。日本では、古来から元服しているのに、前髪を切らないのは男を求めているからだとか。加納の想う相手が誰なのか気になりますね。

次に、加納惣三郎に懸想していた湯沢藤次郎は誰に殺されたのか?田村が殺したのではないでしょうか。殺すことで自分にだけ気持ちが向くように仕向けたのでは。

最後のミステリーは、沖田総司はなぜ加納惣三郎を殺したのか?自分の中にある男を求める気持ちを消してしまいたかったのだと推測します。彼の心情は映画の中では詳しく述べられていないため、分かりません。

ただ、男色を嫌っている風な態度やわざと井上源三郎と剣の稽古をさせたりするイジワルな一面が気になります。その裏返しの気持ちが、殺しに結びつくのではないかと思います。もしかしたら、加納惣三郎もまた、沖田総司に斬られることを望んでいたのかもしれない。
ラスト・シーンの加納惣三郎の赤い襦袢がとても印象的で、甘い死の香りがするのです。


大島渚監督は、同性間にある愛の描き方が本当に上手いです。彼の作品の映像に対するこだわりは計り知れないものですが今作は、『戦場のメリークリスマス』でジャックに言いようのない感情を抱いてしまったヨノイのような、同性に対する複雑な感情を非常に美しく描いています。
加納の姿は妖艶で美しくて、それを魅力に感じる人もいました。しかし、その言いようの無い感情は一体何なのかと恐怖を感じる人もいたのでしょう。
加納は同性の間に愛が芽生えるはずがないと切られてしまったのか…?はっきりと答えが出ないので謎が残りますが、かなりエモい作品でした。(女性 30代)

映画『御法度』 まとめ

大島渚監督の作品では、「愛のコリーダ」(76)や「戦場のメリークリスマス」(83)が有名です。彼が一貫して描きたかったのは、人間の性の危うさや弱さではないでしょうか。

長回しやコラージュといった映像技法を用い、人の奥底にある感情をあぶりだすのが上手い。本作の見どころとして、夜の殺陣シーンに注目して下さい。
闇の中で、新選組隊士の熱い息遣いが、剣を交える一瞬のうちにはじけます。周囲の音がなくて、ただ剣の打ち込む音が聞こえてきます。

耽美な映像はもちろんのこと、こだわりは新選組の衣装や坂本龍一の音楽と見どころがいっぱい。出演している俳優も豪華なのですが、イメージや演技が固定されていて松田龍平以外に新しさがないのは少し残念です。

新選組ファンとして配役を見ると、沖田総司役の武田真治はイケメンだし、近藤勇役の崔洋一の存在感もズシンと響いてくるのです。

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