映画『蝉しぐれ』の概要:市川染五郎主演で藤沢周平の同名小説を映画化。共演は、緒方拳、木村佳乃。文四郎とふくの純愛を描く時代劇。黒土三男監督の2005年日本映画。TV版の脚本も手掛けた。
映画『蝉しぐれ』 作品情報
- 製作年:2005年
- 上映時間:131分
- ジャンル:青春、ラブストーリー、時代劇
- 監督:黒土三男
- キャスト:市川染五郎、木村佳乃、ふかわりょう、今田耕司 etc
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映画『蝉しぐれ』 評価
- 点数:65点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『蝉しぐれ』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『蝉しぐれ』のあらすじを紹介します。
山形県鶴岡市、海坂藩。15才の牧文四郎(石田卓也)は、幼馴染のふく(佐津川愛美)の存在が気になっていた。ある朝、川でやまかかし(蛇)に指を噛まれたふくの傷口から毒を吸い出すと、ふくは恥ずかしそうにしていた。
夏祭りの夜、2人は一緒に花火を見た。しかし、文四郎はふくを置いて、親友の与之助を助けるために飛び出してゆく。
16才の夏。父・助左衛門(緒方拳)は、藩のお世継ぎ問題に関わる騒動に巻き込まれてしまう。助左衛門以外にも数名が龍興寺に送られ、切腹せよと言い渡されたのだ。文四郎は、父と面会を果たすが、本当の気持ち、父を尊敬しているという想いを伝えることができなかった。
助左衛門は、「わしは恥ずべきことをしていない。私ではなく、義のためにしたこと。文四郎はわしを恥じてはならん。」と最後の言葉を残した。
文四郎は、蝉しぐれが響く中、父の遺体を荷車に乗せて家路まで運んでゆく。途中の坂で、ふくが運ぶのを手伝ってくれなければ、1人では無理だっただろう。こうして、文四郎の家は禄を減らされ、ぼろ長屋へ母と共に移ることになった。
それから、数年が経ち、文四郎(市川染五郎)は、親友の与之助(今田耕司)と逸平(ふかわりょう)と再会した。与之助は学者に、逸平は城務めとなったらしい。2人から、ふくが13才の時に江戸に行ってからの話を聞く。
ふくは、殿の子を身ごもったが流産してしまったというのだ。ふくが江戸にゆく前に会えなかったことを今更ながら、激しく後悔する文四郎。
その後、禄高が元に戻り、藩内の見回りの役職を任されることとなった文四郎。秘剣村雨の伝授を受け、剣士としても成長。ある日、父・助左衛門を切腹させた家老・里村(加藤武)に呼び出されます。そして、ふくと旧知の仲である文四郎に、ふくの御子を盗んでこいという藩命を下すのだった。
すぐに罠だと悟った文四郎だが、断ればお家断絶だと脅されてしまう。そこで、考えたうえ、ふくと御子を連れて横山様のお屋敷に駆け込むこととした。文四郎は、危険な橋を渡りつつも、5年ぶりにふくと会えることにときめいていた。
親友2人と共に、文四郎はふくと御子を助けた。小舟で逃げる間、2人はそっと抱き合う。ふくと御子を助けた功績により、里村派は粛清された。これでようやく、父の無念を晴らせたのだった。
それから20年が経った。ある日、文四郎は、お福様から手紙をもらう。藩主が亡くなって1年。お福は尼になるが、今生の未練があり、もう1度文四郎に会いたいという内容だった。文四郎とお福は美濃やで会う。
「文四郎様の御子が私の御子で、私の御子が文四郎様の御子であるような道はなかったのでしょうか」「それが出来なかったことをそれがし、生涯のくいとしております。」と2人は互いの想いを打ち明けるのだった。
映画『蝉しぐれ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『蝉しぐれ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
「蝉しぐれ」の映画版VSテレビドラマ、どちらが観たいか?
黒土三男監督は、「蝉しぐれ」の原作ファンで、映画版とTV版の脚本を担当しています。2つの作品の完成度について考えてみたい。まず、映画版だが、主人公を市川染五郎、ふくを木村佳乃が演じています。
主人公の牧文四郎は、下級武士の息子だが秘剣村雨の達人。市川染五郎の歌舞伎で培った所作や佇まいは、気品と落ち着いた印象を与えてくれます。ただ、ふくとの情感があまり感じられなかったと思う。幼い頃の恋の伏線が上手く機能していないのです。
ただ四季の移り変わりといった自然描写が美しい。原作に忠実であろうとする気持ちは伝わったが、後半では話をまとめることを急ぎすぎた感があります。1番残念だと思ったのは、牧文四郎の親友、与之助と逸平の配役ミス!どうして芸人を使うのかが分からない。
しかも、知的な人物であるハズの与之助を今田耕司が演じるのに無理があります。誰が見ても知的に見えないでしょ!完成度は55%です。
次に2003年にNHKで放映されたドラマ版を見てゆきましょう。ドラマ版では、主人公を内野聖陽、ふくを水野真紀が演じています。回想形式で、20年に及ぶ牧文四郎とふくの純愛を描いています。
筆者は、テレビ版の配役の方が原作のイメージに近いと感じました。しかし、1番重要な”蝉しぐれの中、父・助左衛門の遺体を荷車に乗せて坂を上がるシーン”を子役が演じていない点に不満が残ります。
だが、ラストの2人が再会し、互いの想いを遂げるシーンには感動しました。ふくとのシーンに情感があり、台詞が生きています。内野聖陽が演じると、強さの中に純粋さが光ります!また下級武士の清貧さもよく表現されていると思います。
ただ、原作を読まずにドラマだけ見たら、回想形式は少々分かりにくいかもしれません。よって、完成度は65%です。筆者なら、ドラマ版の方を観たいと思います。
おふくという理想の女性
控え目でありながら、凛とした美しさを持つ女性だと想像しています。だから、映画版の木村佳乃演じる、ふくを観た時、気品と美しさを感じました。目の前に初恋の女性が現れたような感じでしょうか。
残念なのは、2人のラブ・シーンが少なかったことです。決して、濡れ場ということではなく、情感を丁寧に描いてほしかった。上映時間が超過してしまうと思うなら、2部作にしても良かったのでは?
青春篇と純愛編という形でなら、原作ファンも納得したと思いますよ。
芸人を起用したキャストや、BGMに賛否あるようですが、個人的には私はそれらは「見やすさ」だと取りました。時代劇はあまり見慣れていませんが、難しいと感じることも無く、更に四季の移り変わりや切ない恋心など観客が感情移入しやすい展開になっていたと思います。
何気ないことのように描かれているシーンが本当に切なくて文四郎が後悔している気持ちがひしひしと伝わってきます。きっと私も、父親の死を目の当たりにした時には伝えたいことが上手く言葉に出来ず、それを後悔するのだろうなと感じました。(女性 30代)
映画『蝉しぐれ』 まとめ
いつか行ってみたい場所は、山形県の鶴岡市です。藤沢周平の、時代小説の舞台・海坂藩のモデルとして描かれています。原作を読んだ方は分かると思うのですが、自然描写が上手い!それから、登場人物がほとんど下級武士なのがいい。
貧しい中で懸命に生きる姿が、現代のサラリーマンに共感できる点が魅力。ドラマの方が観たいと書きましたが、映画版もおすすめです!時代劇にこそ、日本映画の魅力がたっぷり詰まっていますよ。
今回、あまり詳しく紹介できませんでしたが、殺陣のシーンや四季おりおりの風景など見どころがいっぱい。文四郎が放つ、秘剣村雨を使った対決シーン。その神秘性が能の舞で表現されているところがありましたが、もっとシンプルに見せて欲しいですよね。
原作の持つイメージに監督自身が囚われすぎたのではないかと思います。時には、原作から離れて映画を楽しむことが大事です。
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