映画『追憶と、踊りながら』の概要:「007 スカイフォール」のベン・ウィショーが主演した人間ドラマ。共演は、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン。初老の女性とゲイの青年の交流を描く、ホン・カウ監督の長編デビュー作。2014年イギリス映画。
映画『追憶と、踊りながら』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:86分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
- 監督:ホン・カウ
- キャスト:ベン・ウィショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン、モーヴェン・クリスティ etc
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映画『追憶と、踊りながら』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『追憶と、踊りながら』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『追憶と、踊りながら』のあらすじを紹介します。
イギリス在住のカンボジア系中国人のジュン(チェン・ペイペイ)は、英語が上手くしゃべれない。老人施設で暮らし、息子のカイ(アンドリュー・レオン)の訪問が唯一の楽しみだった。
ところが、事故で息子のカイを突然、亡くしてしまう。悲しみに暮れる中、ある日、息子の友人だというゲイの青年リチャード(ベン・ウィショー)がジュンを訪ねてきます。
しかし、通訳を介さなければ2人の会話は進まない。そのため、リチャードは中国語の分かるヴァンに通訳を頼み、少しずつ会話を重ねてゆく。リチャードは大きな秘密を抱えていた。それは、リチャードとカイが恋人同士であった事。
その事実を生前、ジュンに打ち明けることができないでいたのだ。カイはゲイである事を母親に打ち明けるべきか悩んでおり、リチャードはそんな2人の愛の日々を思い出しては涙を流した。
2人は徐々に打ち解けてゆくが、ある日、些細な事でけんかをしてしまう。しかし、2人にはカイに対する愛と思い出があった。カイとの時間や思いを共有してゆくことで、彼の死を共に乗り越えてゆこうとします。
そして、リチャードはついにジュンに2人の秘密を打ち明けようと心に決めるのだった。
映画『追憶と、踊りながら』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『追憶と、踊りながら』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
静謐な映画、悲しみの温度を共有してゆく
人に限らず、突然訪れる死は苦しい。筆者が愛犬の死を体験した時、ほぼ1年くらいは何を見ても愛犬を思い出し、涙に暮れる日々でした。彼の存在が消えたように見えても、匂いや彼の好きだった物が確かにあるのです。
本作は、いつか訪れる死に対して、私達が無力であること。そして、思い出や祈りの中に愛する人を見つめながら生きていかねばならないことを教えてくれます。
情感たっぷりにカイの母親を演じたチェン・ペイペイ、繊細さと情熱のベクトルが悲しみを包み込むようにあったリチャード役・ベン・ウィショー。ラストで、登場人物がパートナーを替えて踊るシーンが必見です!
言葉を介さない交流や思いが映像からひしひしと伝わってくるので、号泣してしまいます。
また、カイの母親が、”今日とは違う朝は来る”と窓辺で言い、力強く生きようとする姿にも涙が止まりません。ホン・カウ監督は、自身の母親を巡るコミュニケーション、通訳、世代の違いなどを感じており、本作にその思いが反映されています。
言語を超えた、音楽やダンスを通して紡がれるシーンに注目して下さい。
マイノリティであることを軽やかに生きる俳優、ベン・ウィショー
「007 スカイフォール」のQ役で人気になり、「パフューム ある人殺しの物語」のような、繊細さと狂気の狭間の演技が心を惹きつけてやまない俳優です。彼は、ゲイであることを公表し同性婚をしています。
本作に出演した理由として、”脚本に描かれた物語に胸を打たれたから”と語っています。自然体で演技に集中できるからこそ、同じように性で悩む人の力になれるのかもしれません。そう思うと、リチャード役はベン・ウィショー以外、考えられませんね。
1番の見どころは、リチャードとカイのラブ・シーンです。とても短いのですが、濃密な愛が切なくて胸が締め付けられます。男同士の愛がこんなにも美しいなんて!
恋人カイとの思い出に浸りながら、リチャードがカイの匂いがするって言うと、母親もそうだと答えるシーンも泣けます。なぜか匂い、という要素に敏感に反応してしまうのです。
愛する恋人を失ったリチャードと、愛する息子を失ったジュン。どちらも深い悲しみを抱えていたからこそ、最後は通じ合うことができたのかなと思った。
年齢を重ねていることもあり、ジュンの言葉には重みがあって胸に響いた。自分が愛する人を失ったときどうするのだろうと、深く考えさせられた。
リチャードやカイが真実を打ち明けるべきかどうか悩む姿が、見ていて辛かった。同性同士でも当たり前のように暮らせる世の中だったら、三人は今頃幸せに暮らしていたのかもしれない。(女性 30代)
リチャードを演じたのがベン・ウィショーだったからマイノリティをテーマにした作品でも抵抗なく、すんなりと受け入れることができました。
ハリウッドでは、トランスジェンダーの役をシスジェンダーが演じたことで批判を受けることもあるようです。どんな役でも演じられる幅の広さは俳優に不可欠だと思いますが、リアルにこだわるとトランスジェンダーの役はトランスジェンダーの俳優が演じるのが「当たり前」な世の中になってくるのかなと感じました。
そのきっかけとしても、多くの人にこの作品を見てもらい知ってもらいたいなと思いました。(女性 30代)
映画『追憶と、踊りながら』 まとめ
ただのメロ・ドラマに終わらず、情感豊かに紡ぎだす物語に今年最高の評価を与えたい。ベン・ウィショーの演技には、泣かされてばかり。繊細すぎて、壊れてしまうんじゃないかと思うほどです。
言葉の壁、世代の違いがあっても、理解しょうという気持ちがあれば、心を通わせることが出来ます。カイの母親を演じた、チェン・ペイペイの演技も素晴らしく、彼女の感情が沁みこんできました。
これほどの映画をしかも低予算で作れるなんて!ホン・カウ監督のゆったりとしたカメラ・ワークと映像でのシンプルな語り口が魅力です!なんといっても素晴らしいのは、リチャードとカイのラブ・シーン。
思わず、息を止めるくらいの美しさなんです!また、ラストに、登場人物がパートナーを替えて踊るシーンも素敵。言葉じゃない、コミュニケーションの進化形というべきものを魅せてくれた作品です。
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