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映画『グラン・トリノ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『グラン・トリノ』の概要:孤独な偏屈老人が隣家で暮らすモン族の娘スーと弟のタオと交流を深めていき、心の安らぎを取り戻す。そして彼らの未来を守るため、老人は大きな決断をする。クリント・イーストウッド監督が自ら主演を務めて、武骨だが心優しい元軍人の生き様を描く。

映画『グラン・トリノ』の作品情報

グラン・トリノ

製作年:2008年
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー etc

映画『グラン・トリノ』の登場人物(キャスト)

ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)
朝鮮戦争に出兵し、多くの敵を殺して勲章を授与された過去がある。口の悪い偏屈オヤジで、2人の息子ともうまくいっていない。引退前は自動車修理工をしており72年型のヴィンテージ・カー「グラン・トリノ」を大切にしている。
タオ・ロー(ビー・ヴァン)
アメリカ生まれのモン族の少年。ウォルトの家の隣で暮らしている。頭はいいが内気で、同じモン族の不良グループから嫌がらせを受けている。
スー・ロー(アーニー・ハー)
タオの姉。しっかり者で社交的な性格をしており、不良グループに絡まれてもひるまない。ウォルトの優しさを一番に見抜く。
ヤノヴィッチ神父(クリストファー・カーリー)
地元の教会の27歳の神父。亡くなったウォルトの妻からウォルトのことを頼まれ、何かとウォルトを訪ねてくる。

映画『グラン・トリノ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『グラン・トリノ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『グラン・トリノ』のあらすじ【起】

ウォルトの愛妻ドロシーが亡くなり、教会で葬儀が行われていた。しかしヘソ出しルックで葬儀に出席する孫娘を見て、ウォルトは顔をしかめる。短気で口の悪いウォルトは息子夫婦ともうまくいっておらず、孫たちからも嫌われていた。

教会のヤノヴィッチ神父は、ドロシーから“私が死んだら主人に気を配ってやってほしい”と頼まれており、ウォルトを訪ねてくる。ドロシーは“懺悔に行かせてほしい”とも頼んでいたが、ウォルトは若い神父をバカにして追い返してしまう。

ウォルトが暮らす地域には移民が多く暮らしており、隣の家にもモン族の一家が住んでいる。何かと同族で集まって賑やかにお祝いをするモン族の人々をウォルトは嫌っていた。移民が住み始めてから地域の治安も悪くなっており、ウォルトはいつも不愉快だった。

隣家のタオは気の強い祖母や母親や姉のスーの言いなりになる気弱な少年だ。モン族の不良たちはそんなタオを悪の道に誘い込むため、ウォルトが大切にしているグラン・トリノを盗んでこいと命令する。タオはそれを断れなかった。

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映画『グラン・トリノ』のあらすじ【承】

夜、ウォルトは何者かがガレージに侵入していることに気づき、銃を持ってガレージへ向かう。驚いたタオはウォルトを突き飛ばして逃走する。

タオはもう二度と泥棒する気はなかったが、不良グループはしつこくタオに絡んでくる。隣家の庭先でもみ合っていた少年たちが自宅の敷地内に入ったのを見て、ウォルトは銃を突きつけ気迫で不良グループを追い返す。

モン族の人々は不良を追い払ってくれたウォルトに感謝し、次々とお礼の品物を玄関先へ置いていく。ウォルトは迷惑がっていたが、モン族の人々には通じない。姉のスーはタオに泥棒したことを謝罪させ、それを許したウォルトに親近感を持つ。

ある日、ウォルトは街角で黒人の不良少年たちに絡まれているスーを目撃する。気の強いスーは少年たちに反発し、連れ去られそうになっていた。ウォルトは車から降りてスーを助け、スーに気をつけるよう注意する。

ウォルトの誕生日。老人ホームの資料を持ってきた息子夫婦を追い返し、ウォルトはひとりぼっちだった。スーはウォルトを自宅パーティーに招待する。ウォルトは賢いスーのことを認めるようになっており、初めて隣家を訪れる。最初は警戒していたモン族の人々とも徐々に打ち解け、ウォルトは久しぶりに楽しい時間を過ごす。この日を境にウォルトは隣家と交流を深めていく。

映画『グラン・トリノ』のあらすじ【転】

母親とスーはいろいろと迷惑をかけた償いをさせてほしいと言い出し、ウォルトの家へタオをよこす。ウォルトは断るがモン族の女はしつこくて気が強い。何か仕事をくれと困っているタオに、ウォルトは自宅前の空き家の修理をやらせてみる。まじめなタオはよく働き、ウォルトもだんだんタオが可愛くなってくる。

タオやスーのおかげで日々は充実していたが、ウォルトは最近咳をして血を吐くようになっていた。病院で検査をしてもらった結果、ウォルトは自分がそう長くは生きられないことを知る。しかし息子にそれを打ち明けることはできなかった。

貧困のため大学へも行けず、働き口もないタオの将来をウォルトは真剣に心配する。タオもウォルトの体調が良くないことに気づいており、タバコを吸うウォルトを本気で注意する。毎日顔を合わすうち、2人は強い絆で結ばれていく。

ウォルトは友人にタオを建設現場で雇ってくれるよう頼んでみる。現場監督をしている友人は賢明なタオを雇ってくれる。ウォルトは必要なものを買ってやり、自分の大切な工具も貸してやる。

映画『グラン・トリノ』の結末・ラスト(ネタバレ)

ところがモン族の不良たちはしつこくタオに絡み、タオの顔に根性焼きをする。タオの火傷を見てウォルトは激怒し、不良少年を痛めつけ、二度とタオに手を出すなと脅しつける。

不良たちは報復としてタオの家にマシンガンを撃ち込み、外出先から帰宅途中だったスーをレイプする。タオは軽傷で済んだが、スーは酷い暴力を受けており、心身ともに深い傷を負ってしまう。不良たちは警察で無言を貫き通し、証拠不十分で早々に釈放される。ウォルトは自分の行動がこんな結果を招いたのだと自戒し、タオやスーが安心して暮らせる方法を考える。

ウォルトは密かに身辺整理を始め、教会で懺悔を済ませる。復讐心に燃えるタオを落ち着かせ、地下室で自分の戦争体験を話して聞かせる。ウォルトは戦争で人を殺した過去に苦しみ続けており、タオには絶対にそんな思いをさせたくないと考えていた。ウォルトはタオを地下室に閉じ込め、愛犬を隣家に預けてひとりで不良たちの家へ向かう。

不良たちとウォルトは睨み合う。近所の人々は恐々とその様子を見ていた。タバコをくわえたウォルトは思わせぶりに懐へ手を入れ、何かを取り出す。それを見た不良たちはウォルトを撃ち殺す。しかしウォルトの手に握られていたのは銃ではなくライターだった。警察は現場へ駆けつけたタオとスーに目撃者も多数おり、丸腰のウォルトを撃ち殺した不良たちは全員長期刑になるだろうと話す。

ウォルトは自らが犠牲になることでスーやタオの将来を守った。そして大切なグラン・トリノは友人タオに譲るという遺書まで残していた。ウォルトは死んでしまったが、彼の魂は愛するタオやスーの心の中で生き続けていく。

映画『グラン・トリノ』の感想・評価・レビュー

クリントイーストウッドが演じる主人公の男気が、目がうるっとする程かっこいい映画です。
堅物の元軍人が、ベトナム戦争後に移民としてやってきたベトナム人家族と心を通わせていく様も素敵ですし、その家族を守るために命を賭してヤクザ連中に立ち向かっていくところは、まさに名シーンです。移民に対しては偏見や嫌悪感もあったろうに、個々の人間性を見て接しているところは、我々も見習わなければいけない点ですね。
遺産をベトナム人家族へ譲渡し、海岸沿いをグラントリノで颯爽と走る少年のラストカットが印象的です。

この映画を見る際は、字幕をお勧めします。なぜならベトナム人少女スーの吹き替えが、あまりにもアニメ風の喋り方で聞いていられないからです。(女性 20代)


社会派とまではいかないものの、クリント・イーストウッドの作品は「不条理」だとか「理不尽」などの言葉がしっくりくるように思います。
非常に「哲学的」ともいえるかもしれません。問題提起があって、観る者それぞれがしっかりと考えさせられる、今作もそのひとつです。
俳優としてのクリント・イーストウッドももちろん大好きですが、監督としてその才能を開花させた彼の技量は素晴らしいものがあります。唯一無二の存在です。
年老いた彼はなにを思って今作を撮ったのか、そんなことに思いを馳せながら、ゆっくりと、じっくりと観ていただきたい一本です。(女性 20代)


自由の国アメリカが目指したものが何であったか。を問う映画。素晴らしすぎる品質で心ある映画ファンの誰もが、クリント・イーストウッド御大の遺書であると受け止めた。まさか90前でこんなに作品を作るとは。アメリカの白人の理想像を絵に描いたような男が、アジア人の少女と心を通わせ友人になる下りを、違和感なく作り出せるのは彼の精神性が達人の域にまで達しているからこそできる芸当ではあるが、彼の描く理想がけして無理でないことを思わせる。できないのはお互い様なのだ。例え幻想だとして追い求める価値のある世界だ。(男性 30代)


イーストウッド監督が作り出した作品の中で、1番いい作品だと個人的には思った。人生が分からなくなり迷っている少年と少年を導く老人の交流や、家族との会話などが心地よい雰囲気で流れていくが、それだけではなく社会問題になっていることも取り上げているので、鑑賞後は色々考えさせられる作品だった。

登場人物の身勝手さが妙にリアルで、観ていて身近に感じることができたので良かったと思う演出になっていた。(女性 20代)


心を閉ざし余生を暮らすお爺ちゃんと、隣人の少年とその家族との付き合いが描かれています。物語自体は目新しさがなく、淡々と進んでいきます。社会問題であろう貧困地域の生活や危険が丁寧に映され、非常に理不尽な現実があることを、突きつけられた気がします。

ラストがあまりにも辛い。人を殺める痛みを知っているウォルトから、暴力や理不尽に対し抵抗せず堂々と立つ姿に、胸を打たれ涙が止まりませんでした。(男性 20代)


頑固者で人を寄せ付けないウォルトだが、本来はきっと優しい人なのだろうと思う。戦争で人を殺してしまったことをずっと忘れることができず、重い記憶を抱えながら生きる日々は、自分では想像もつかないほど辛いものだったのだろう。タオやスーがウォルトに助けられていたが、ウォルトもまた純粋な心を持つ二人の存在に救われていたのだと思う。クリント・イーストウッドの演技が素晴らしく、気迫のようなものを感じた。(女性 30代)


「俺のハートが宿るグラン・トリノ」クリント・イーストウッドが監督、主演のこの作品。一言で言うと、あまりによく出来た最高傑作です。クリント・イーストウッド演じるウォルトが乗るのはアメリカのフォード社が作る72年型グラン・トリノという車。車が男のステータスだった70~80年代を象徴する名車です。人付き合いが苦手なウォルト。家族とも疎遠で唯一愛車のグラン・トリノだけが相棒のような存在。そんな頑固で偏屈なウォルトを変えたのがお隣に住むモン族の姉弟。
孤独に生きてきたウォルトが、やっと心を開いた姉弟のために自分の命をかけて正義を貫く姿。いい作品と言うには苦しすぎるラストですが、クリント・イーストウッドの男らしさを感じられる作品でした。(女性 30代)


ウォルトが懺悔した後に自分が戦争で犯した暴力を回収するかのように全身で浴びる弾丸のシーンが、やっぱりアウトローを演じてきたイーストウッドらしくて好きだ。

気難しいお爺さんが友人のために復讐するというだけの単純な映画ではないことが、やっぱりクリント・イーストウッドだと思わさせられた。一つの映画にいくつもの普遍的な問題が散りばめられるから一筋縄にはいかないのだけれども、それでこそ彼の集大成だと思う。(女性 20代)


主人公ウォルトを演じるクリント・イーストウッドは、おじいちゃんと呼ぶにはカッコ良すぎます。ウォルトは偏屈なところはありますが、子供や孫達の態度もどうかと思いました。気難しく人を寄せつけない性格のウォルトは、隣に住むベトナム人のタオとスーには心を開いていきます。単に人が嫌いなわけではなく、人を見る目がある純粋な心の持ち主なのだと思います。

不良たちのところにひとりで乗り込んでいったウォルト。丸腰だったのは不良たちが今後タオとスーに近づけないようにするためと、戦争中の自分の罪を償うためだったのかなと思います。悲しいけれど、男らしい選択に心を打たれました。(女性 40代)

みんなの感想・レビュー

  1. 森田 より:

    クリント・イーストウッドらしい余韻の残る映画。
    とにかくクリント・イーストウッドが渋くてかっこいい。差別発言連発の偏屈頑固ジジイっぷりが時にコミカルで憎めない。彼の人生にすっと入り込んでくる若き隣人とのやりとりも微笑ましい。このまま心温まるお話として終わって・・・とは残念ながらならない。なってもいいと思うけど、ならないからこそこの余韻が出せるのだろうか。
    何故そこまで?と思う部分もあるが、そこはもしかするとアメリカに住んでいないと分からないことなのかもしれない。

  2. 匿名 より:

    ①イーストウッドの表現する哀愁感

    どんなに良い映画も説得力の無い人物が演じていたり、作っていたりするとそれだけで何だか感動出来ない。
    特に本作のような、人生の最後を探している気難しい老年の男の役は尚更である。

    近年クリント・イーストウッドという俳優は深みを増している。
    そして彼の作る映画はこんなに良かっただろうか?と、はっとさせられることも多い。
    これは単純に彼の才能という訳ではなく、恐らく彼自信の人生経験の豊かさやそれに伴う感情の変化がそうさせているのだろうと勝手に思っている。
    ミリオンダラー・ベイビーからの主役の哀愁が絶妙で、死に場所を探している男の悲しさと誇りのようなものが見事に表現されている。
    これこそがイーストウッドが作る映画の説得力なのであろう。

    ②バランスの良い社会派シリアス

    本作品は一言で言うとヒューマンだが、感動を誘うだけではなく現代のアメリカにおける社会問題を随所に取り入れリアルに描きあげている。
    祖母の葬儀でさえ携帯をいじっている血が繋がっているのに愛着のわかない孫。
    何の繋がりも無かったのにほだされた隣人のモン族一家の家庭の温かさ。
    そしてちょっとしたことで命の危険にさらされる銃社会。
    どれをとっても今のアメリカを想像させる出来事であり、背景としては決してドラマティカルでは無いがその等身大の描き方が妙に心地よい。

    また薄暗い映像と映画の内容がマッチしていて、何とも言葉にしづらい心のやるせなさが付きまとう。
    一貫して男のまっすぐさを貫いた主人公に羨ましささえ感じてしまうのだが、やはり老年の寂しさを感じずにはいられないのだ。
    でもこれもイーストウッドだからこそできる技なのである。

  3. 匿名 より:

    クリント・イーストウッドは晩年に芽が出たアーティストであると言っても過言では無い。
    もちろん若い頃から人気はあったが、良さが全面に出てきたのが晩年である。
    作風が変わったと言うのか、心の中の葛藤や人の老い、生きていく悲しみのようなものを映画のなかで表現するようになったのだ。
    ウェスタン映画で拳銃を使ってどんぱちやるのも魅力的ではあるが、個人的には最近の重いテーマを作らせたら右に出るものはいないと思っている。
    監督としてももちろん、俳優だからこそわかるアングルや台詞回しなど全てが彼の経験が物を言っているのである。
    随分歳を重ねたが、今だからこそ魅了させてくれる素敵な俳優の一人である。