映画『グリーンブック』の概要:実話を元にし、第91回アカデミー賞で作品賞を受賞した話題作。ピアニストの黒人と、その運転手となった白人という性格も境遇も異なる2人が、人種差別が根強く残る米国南部を巡るツアーに出るロードムービー。
映画『グリーンブック』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ、音楽
監督:ピーター・ファレリー
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ、ディミテル・D・マリノフ etc
映画『グリーンブック』の登場人物(キャスト)
- トニー・バレロンガ(ビゴ・モーテンセン)
- イタリア系で、腕っ節の強さが自慢の大食漢。黒人に対する偏見を持っているが、シャーリーと接することで、気持ちに変化が生まれるようになる。
- ドクター・ドナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)
- ホワイトハウスでの演奏経験もある著名なジャズピアニストで、数々の博士号を持つ。黒人への差別意識が根強い南部で敢えてツアーを行う不屈の精神の持ち主。
- ドロレス(リンダ・カーデリニ)
- トニーの妻で、2児の母。トニーを心から愛し、家族をまとめる中心的存在。
映画『グリーンブック』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『グリーンブック』のあらすじ【起】
1960年代の米国。トニーは、ニューヨークのナイトクラブで用心棒として働いている。しかし、ナイトクラブは改装工事をすることになり、トニーは短期間ながら失業してしまう。
トニーは知人からドクターが運転手を探していることを聞き、面接に行く。カーネギーホールの上階にある部屋に通されたトニーの前に、シャーリーが現れる。ドクターを医者と勘違いしていたトニーは黒人であるシャーリーを見て驚く。シャーリーは自分がピアニストで2ヶ月間に渡り南部にツアーに行くので、世話役になれる運転手を探していると説明する。しかし、トニーは召し使いをする気はないと言って仕事を断る。
トニーとドロレスが自宅で寝ているところに、シャーリーからの電話が鳴る。トニーが長期間不在となることについてドロレスの了解を得たシャーリーは、トニーの求める条件で雇うことを申し出る。
レコード会社の担当者がトニーの元に車を届け、南部で黒人が泊まれるホテルを記したガイドブック「グリーンブック」を手渡す。ドロレスは、料金の高い長距離電話をする代わりに手紙を書くようトニーにお願いする。トニーはシャーリーを迎えに行き、シャーリーの演奏仲間と共に南部へのツアーに出発する。
映画『グリーンブック』のあらすじ【承】
車中でシャーリーは、ツアー先に着いたらピアノがスタインウェイであることを必ず確認するようにトニーに指示する。
最初の演奏会でトニーは初めてシャーリーのピアノを聞き、その腕前に驚愕する。その夜、トニーは約束通りドロレスに手紙を書き、シャーリーの演奏が素晴らしかったことや、食べた食事のことなどを説明する。
大学にある演奏会場に着いたトニーは、ピアノがゴミだらけで、しかもスタインウェイでないことに気付く。トニーは担当者に詰め寄り、ピアノを交換させる。演奏会は大盛況で、トニーも満足する。
南下していくに連れ、2人は黒人に対する差別を目の当たりにすることになる。南部では黒人が泊まれないホテルが多く、シャーリーだけが安モーテルに泊まらされてしまう。更に、1人でバーに行って白人に絡まれてしまうが、駆けつけたトニーに助けられる。
豪華な邸宅での演奏会で、トイレに行こうとしたシャーリーは家主から屋外の黒人用トイレを案内される。シャーリーはそれを拒否し、宿のトイレを使いに戻る。侮辱的な待遇を受けながらもツアーを続けるシャーリーの気持ちがトニーには不思議でならない。
映画『グリーンブック』のあらすじ【転】
道中、トニーとシャーリーは徐々に打ち解けていき、2人の間に絆が生まれ始める。ある時シャーリーは、疎遠になった兄弟がいることや、かつて結婚していたことなどをトニーに打ち明ける。また、トニーはシャーリーが同性愛者であることや、母からピアノを習い、本当はクラシック音楽をやりたかったことなどを知る。
シャーリーはトニーに愛と情感の籠もった手紙の書き方を指南していく。それを受け取ったドロレスは感激し、親族らにも読んで聞かせる。
大雨の中をトニーが運転していると、途中で警察に止められてしまう。警官に中傷されたトニーは思わず相手を殴ってしまい、2人は留置所に収監される。シャーリーはトニーに対し、暴力ではなく威厳を保って物事に対処することが大事だと説く。そして、司法長官に電話して留置所から出られるように力添えをしてもらう。
その後、車内でトニーとシャーリーは口論になってしまう。トニーは貧しい自分の方がより黒人に共感ができると主張するが、シャーリーは逆に、黒人としても白人としても扱われず孤独に苦しんでいることを吐露する。
映画『グリーンブック』の結末・ラスト(ネタバレ)
2人は最後の演奏会場に着くが、そこで用意されていたのは物置に机を置いただけの楽屋だった。しかも、黒人は入れないとの規則を盾にレストランでの夕食を拒否されてしまう。怒った2人はここでの演奏を中止し、車で去ってしまう。
途中で、2人は食事のために黒人のバーに立ち寄る。シャーリーはそこでピアノを演奏し、大いに盛り上がる。バーを出た2人は、トニーがクリスマスを家族と共に過ごすためにニューヨークを目指す。雪が降る道中で2人は再び警察に止められてしまう。しかし、警官はタイヤのパンクを知らせてくれただけだった。2人は、北部に戻ってきたことを実感する。
トニーは運転を続けるが、遂に眠気に負けてしまう。シャーリーが運転を代わり、トニーを家まで送り届けてあげる。トニーが家族に温かく迎えられた一方、豪華な装飾に満ちた自宅に戻ったシャーリーは、自らの孤独をかみ締めるような表情を浮かべる。
トニーの家の呼び鈴が鳴り、トニーがドアを開けるとそこにはシャーリーが立っていた。トニーはシャーリーを招き入れ、家族に紹介する。ドロレスは夫に手紙の書き方を指導してくれたことを感謝し、皆でクリスマスを祝う。
映画『グリーンブック』の感想・評価・レビュー
定番の感動作と言ってしまえばそれまでだが、予想通りの展開を安心して見ることができる。何より主演2人の好演が光り、終始飽きさせることがない。『メリーに首ったけ』など下ネタ満載のラブコメを作ってきたピーター・ファレリーが本作の監督というのは驚きだが、トニーとシャーリーによる間合いを心得た掛け合いに、笑いのセンスを感じ取ることができる。人間愛を感じさせる最後には、ほろりとさせられた。(MIHOシネマ編集部)
60年代の人種差別というヘビーな題材ながら、実話をベースにこんなにも明るく描ける技量に感服。差別とその構造を指摘しながらも、笑いと感動のバランスも非常に良く、観終わった後はじんわりと幸せな気持ちになれる。ただ、わかりやすい一方で誇張が目立つ部分もあり、少し残念だった。
主演2人の演技も素晴らしく、性格も考えも正反対のバディが繰り広げるロードムービーとしてもとても楽しめた。(女性 20代)
実在したピアニストと運転手兼ボディーガードが1962年に実際に行ったコンサートツアーにインスパイアされた作品で、第91回アカデミー賞で作品賞・助演男優賞など三部門を受賞している。
主演のヴィゴ・モーテンセンの演技も良かったが、個人的には共演のマハーシャラ・アリの演技がとても印象深かった。2人が徐々に友情を育む様子が面白おかしく描いており、なかなか充実した内容になっている。人種差別による非情さはさることながら、一番印象に残ったシーンはやはり終盤のバーでピアノを演奏するシーンである。黒人だけが集まるバーにはトニーだけだが、誰も彼を厭うことなくシャーリーのピアノを楽しんで聞く。その様子を目にしたシャーリーが笑みを浮かべる様子がとても素敵だった。(女性 40代)
いろんな映画を観てきたが、鑑賞後こんなにもあたたかく幸せな気持ちになれる映画は他にない。何度でも観返したくなるし、誰かにおすすめしたくなる、文句なしのアカデミー賞作品賞だと思う。
本当に好きな作品なので、あまり余計な事は言いたくないが、とにかく良い映画だから観てほしい。きっとほっこりと幸せな気分でケンタッキーを買いに行きたくなる筈だ。
“こういう作品に出会えるから、映画鑑賞はやめられない。”そう思わせてくれる名作だった。(女性 30代)
この作品を見たのは『最強のふたり』を見た直後でした。どちらも実在の人物を描いた作品で、人種や立場の違う2人が同じ時間を過ごすことで心を開いて絆を深めていくストーリーなのですが、今作に出てくる2人はとにかく「自分」と言うものをしっかり持っていてとても強い人間でした。
その強さは優しさから来るもので、自分の知識や才能をひけらかすわけでは無いけど、知識や才能があるからこそ強くいることが出来たのだと感じました。
何度も見たくなる素晴らしい作品です。どんな人にもオススメ出来ます。(女性 30代)
まだ人種差別が残る時代のアメリカを舞台に、黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーと運転手として雇われた白人男性トニーの友情を描いた作品です。現代の日本に住む私には想像できない社会で、タイプの違う2人が徐々に心を通わせていくやり取りを楽しく見ることが出来ます。
1つの作品の中で高貴な印象の演奏会と差別的な社会が混在している社会背景に多くの疑問が感じられましたが、最後は人の心が繋がることで世界はもっと美しくなると思える作品です。見終わったあと、気持ちが温かくなりました。(女性 40代)
想像以上に感動して心が温かくなりました。
黒人差別はあまりにひどく悲しいものですが、その中で生まれた熱い友情には人間の純粋さや希望が感じられ、ラストは涙があふれました。
最初はトニーが子供っぽく、シャーリーは人格者といった感じでしたが、シャーリーの弱さが現れるにつれ立場が変わり、子供のようなシャーリーをトニーが守ろうとしている様子が切なくもあり微笑ましくもありました。まるで正反対の二人の男がお互いの存在によって成長していく姿が感動的です。シャーリーのピアノも素敵でした。(女性 40代)
“名誉ある黒人”の苦悩をこれまで考えたことの無かった自分にとって、シャーリーの叫びは衝撃的でした。居心地の良い黒人バーではなく、差別主義者のいるバーや、白人レストランに足を運ぶのは物凄く勇気のいることでしょう。ただ、シャーリーの旅先での行動は闇雲で、明確な意図は感じません。本人もそれを自覚しています。彼の最も懸命だった勇気ある選択は、トニーを雇ったことです。ナイーブなことにもズカズカ踏み込んでくるトニーによって、シャーリーの緊張が和らいでいく様子に心が温まりました。トニーもまた大切なことをシャーリーから学んだようで、表情の変化にほっこりさせられます。(男性 20代)
秀逸なバディ・ムービーであり、ロード・ムービー。
どこまで史実に忠実なのかは、この際問題ではない。差別的な発言をしていた人が、その差別の対象となる人と深く知り合う中で、相手も自分と大差ない人間であることに気づいて差別をしなくなっていく。これが重要だし、このことをエンターテイメントとしてさらりと見せている点が素晴らしい。「みんな違って」ではなく「相手も同じ」と知ることが、誰にとっても住みやすい世界への第一歩なのだから。(男性 40代)
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