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映画『運び屋』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『運び屋』の概要:90歳になるアールはデイリリーの農園で生活していたが差し押さえを食らってしまう。金に困った彼の元に、町から町へと品物を運ぶだけで大金を手にできるという情報が舞い込む。アールはその仕事を受けるが、その品物とは麻薬だった。

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映画『運び屋』の作品情報

運び屋

製作年:2018年
上映時間:116分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ etc

映画『運び屋』の登場人物(キャスト)

アール・ストーン(クリント・イーストウッド)
デイリリーの農園を営む男。若い時は全米を車で移動する運送業をしていた。デイリリーの栽培に時間と金をつぎ込み、家族はほったらかし。そのせいでメアリーとアイリスからは呆れられている。特にアイリスからは結婚式をすっぽかしたことで口すら聞いてもらえなくなっている。デイリリーを育てる腕は一流で賞ももらっている。運転技術も高く、今まで違反切符は一度も切られたことがない。
コリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)
DEA麻薬取締局にやってきた凄腕捜査官。優秀な成績からイリノイ州での麻薬密輸を早急に解決してほしいと期待されている。
メアリー(ダイアン・ウィースト)
アールの元妻。今でもアールのことを愛しているが、さんざん裏切られてきたため素直になることができない。病魔に侵されており、余命いくばくもない。
アイリス(アリソン・イーストウッド)
アールの娘。再婚した際、式に参列してほしいと願ったがアールは来ず、そのことが原因で12年もの間、彼を避け続けることとなる。
ジニー(タイッサ・ファーミガ)
アイリスの娘でアールの孫。アイリスの再婚から12年後、大学在籍中にフィアンセと結婚する。アールに対してはメアリーやアイリスほど嫌悪しておらず、良い祖父という認識を持っている。

映画『運び屋』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『運び屋』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『運び屋』のあらすじ【起】

アール・ストーンは自分の農園でデイリリーを育てており、品評会でも賞をもらうほど見事な花を咲かせる手腕を持っていた。若い頃は全米をトラックで走り回り家族を養ったが、遊び惚けることも多く、いつしか家族とは疎遠になってしまった。

仕事を優先するアールは娘のアイリスの再婚式をすっぽかす。今までもそういったことには全く関心を示さなかったので妻のメアリーは慣れっこだったが、今度こそは参加してくれると思っていたアイリスは酷く傷ついてしまう。

それから12年後、今度はアイリスの娘のジニーが結婚することになった。アールは孫の結婚式のために援助をする予定だったが、インターネットの普及によりアールの農園のデイリリーは売れなくなり差し押さえを食らってしまう。結婚の前祝いをするジニーの家を訪ねたアールはそこでアイリスたちと顔を合わせる。未だに父を許せないアイリスはその場を去り、行く所が無くなったのだと気がついたメアリーは、今度は孫を失望されるのかと呆れた。

立ち去ろうとするアールに前祝いに来ていたリコという男が話しかける。アールは長いことトラックで運送業をしていたが違反は一度もなかった。それを聞いたリコは、もし金に困っているのなら、町から町へ走るだけで金になる仕事があるとアールに告げた。

リコからもらったメモを頼りにテキサス州エルパソのタイヤ屋を訪ねたアール。そこには銃を手にした屈強そうな男たちがいた。携帯電話を渡され、あるホテルまで荷物を載せて運び、その場に車とキーを置いて1時間後に戻れと言われる。荷物は絶対に開けるなと言われたが、アールは最初からそんなつもりはなかった。

アールはテキサス州からイリノイ州へと入り、目的地のホテルの駐車場に車を停めた。1時間後にトラックに戻ってみるとグローブボックスに大金が入っていた。そこに男が現れ、また仕事がしたくなったら連絡しろとメモを渡される。

大金を得たアールはジニーの結婚式後のパーティの金を払うことができた。アールはメアリーと昔のようになれないかと話しかけたが、彼女の心はすっかり閉じてしまっていた。家族がバラバラになってしまったのはアールがデイリリーに夢中になってしまったためだった。アールは、美しいが難しい花で時間もお金もかかるものなのだと言ったが、メアリーは、家族だって同じだ、なのにあなたは家族よりも花を選んだと言って嘆くばかりだった。

農園を取り戻したくなったアールは、再び運び屋の仕事を引き受けることにする。今まで乗っていたオンボロのトラックは売り払い、新車のゴキゲンな黒いトラックに乗り換えたアールは、荷物を積んで前回と同じホテルへと向かった。荷物を無事に届けたアールの手には大金が舞い込み、その金で農場と自宅を取り戻した。

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映画『運び屋』のあらすじ【承】

アールが何十年も通っている退役軍人クラブがボヤ騒ぎを起こし、当面の間は営業できないと言われる。誰かが金を工面してくれればという言葉で、三度目の運び屋の仕事を受けるアール。しかし、今度の荷物はかなり大きかった。気になったアールはつい荷物を開けてしまう。中身はなんと大量の麻薬だった。

焦るアールに警察犬を連れた警官が話しかけてきた。アールは気がつかれないように警官と犬をやり過ごすと、速やかにホテルへと荷物を運んだ。今回の仕事の報酬は今までよりも更に高額だった。アールはその金で退役軍人クラブの営業を再開させる。集まった者たちは皆、アールに感謝の言葉を贈った。

運び屋の仕事に慣れ始めたアールは、安全運転でのんびりと麻薬を運び、受け取った後は毎回渡された携帯電話をちゃんと捨てることも学んでいった。アールの活躍はメキシコの組織のボス、ラトンの耳にも入った。ラトンはアールにデカいブツを運ばせろと部下のフリオに指示し、監視のために同行しろと言った。

フリオは仲間のサルを連れてアールの前に現れた。彼はアールを自分の制御下に置こうと凄んだが、アールは常に自分のやりたいようにマイペースを崩さなかった。アールはタイヤ屋の男たちとすっかり馴染み、携帯のメールのやり方を教わる。

270万ドル相当のブツを積んでいるにも関わらず、アールはパンクした車を助けたり、ブツをトラックに載せたまま、ホテルで美女たちと寛いだりした。フリオは冷や冷やしっぱなしだ。イリノイ州に入ったがアールは目的地のホテルへと向かわず、別の場所へとやってくる。そこは組織の隠れ家だった。メールのやり方を聞いた時にここの住所を打ち込んでしまったのが原因だった。現れたフリオは苛立ったがアールはお構いなしだった。

DEA麻薬取締局にやってきたコリン・ベイツは優秀な成績から上司に期待されていた。彼はトレビノ捜査官と組み、イリノイ州での麻薬密輸を取り締まろうと息巻いていた。ブツを売り捌く男を抱き込み、組織の内情を聞き出したコリンは“タタ”と呼ばれる運び屋が大量に麻薬を運んでいることを突き止める。そのタタとはアールのことだった。

運び屋の仕事も9回目を数えようとしていた。アールはフリオとサルを誘い、ポークサンドで有名な店で一緒に食事をした。サンドは美味しかったが、もう勝手に車を停めるなとフリオは言った。その時、警官がフリオたちに尋問してきた。緊張した空気が流れたが、アールがそこに割って入り、警官を追い払ってくれた。

コリンは運び屋の車といつも通るルートについての情報を得る。車の色は黒で55号線を走るのだと。上司に許可を取ったコリンは黒い車を調べ、組織が知る前に逮捕しようと考える。フリオたちは黒い車ばかりが停められていることに焦りの色を見せたが、アールは気にもせず、282キロという大量の麻薬を難なく運びきってしまう。それがラトンに評価され、アールはメキシコの彼の屋敷へと招待された。

映画『運び屋』のあらすじ【転】

ラトンから盛大な歓待を受けたアールは美女と楽しみ最高の時間を過ごした。酔って浮かれるフリオにアールは組織を辞めるべきだとアドバイスをした。ここの連中はお前のことをなんとも思っていないからと。しかし、フリオはラトンには恩義があるし、彼らは俺の“家族”なのだと言って聞かなかった。

DEAのお偉方は結果を出せないことに苛立ちを見せ始めた。コリンは近く大量のブツが運び込まれる情報があるので、必ず摘発まで持っていくと作戦を実行。だが、そこではごくわずかな麻薬しか発見できなかった。

ジニーの卒業式に参列したアールだったが、アイリスからは相変わらず避けられていた。ジニーの卒業には金が必要だったが、それをアールが立て替え、無事に卒業することができた。それを知ったメアリーからは久しぶりに笑顔が出る。だが、会話している最中、体調が悪そうな雰囲気を感じたアールは少し心配を募らせた。

メキシコのラトンが部下のグスタボが裏切られて射殺されてしまう。組織のボスになったグスタボはフリオを呼びつけ、これからは時間厳守できっちりと仕事をしろと命令した。アールにもそれを教え込むため、別のチームに引き渡せと指示される。別チームは見せしめにサルを殺し、アールを脅した。銃を突きつけられたアールには頷く以外に選択肢はなかった。

今度こそ“タタ”を捕まえようと躍起になるコリンとトレビノ。55号線を走り、怪しげな黒いトラックを停めて尋問を繰り返していく。抱き込んだ男から、運び屋はエイブ・モーテルに泊まるとの情報を得た二人はそこを監視する。

モーテルには確かに運び屋であるアールが宿泊していた。だが、彼らは老人が運び屋だとは思わず、屈強な男が運び屋だと思い、踏み込んでしまう。捜査は失敗に終わり、コリンたちは明日から再び55号線を張ることにした。その様子を、アールはカーテンの隙間からこっそりと見つめていた。

翌朝、ダイナーで顔を合わせたアールとコリン。アールは昨夜の捕り物について見事だったと感想を述べたが、コリンはうなだれた。仕事のせいで妻との記念日をうっかり忘れてしまったと言うコリンに、家族は大切にしたほうがいいとアドバイスするアール。仕事は2番でもいいが、家族は1番でなくてはならない。俺はそれで後悔していると心境を吐露。アールは店を出て行き、コリンは彼が運び屋だと気がつかずに去って行った。

映画『運び屋』の結末・ラスト(ネタバレ)

ジニーから電話があり、メアリーが倒れたと教えられる。病魔に侵されたメアリーはあと数日生きられるかどうかの瀬戸際まで来ていた。今すぐに来てほしいと言われるが、ブツを運んでいる最中だったため予定を変えることはできない。無理だと言うとジニーは喚き、母の言う通りの人だったと嘆いた。

アールは仕事を中断してメアリーに会いに行った。力なく笑う彼女にアールは、俺は今まで家の外で評価されたいと思っていた。家では俺は役立たずだったからと思いを告げた。それを聞いたメアリーは、不思議だけどあなたがここにいてくれることが嬉しいと優しく言った。

メアリーは最近のアールの金払いの良さが気になり、どうやって大金を手にしているのかと尋ねた。アールは最初こそ冗談を言っていたが、麻薬の運び屋をやっていると真実を伝えた。だが、メアリーはそれもジョークだと思って信じてはくれなかった。彼女は、そばにいるためにお金など必要ないと言い、その言葉はアールに深く突き刺さった。

家の庭にはデイリリーの花が植えられていた。それを眺めていたアールにアイリスが話しかけてきた。アールは、今まで良い父親でも夫でもなかった、俺は身勝手で最低な男だと謝罪した。しかし、アイリスは、そんなことはない、遅咲きなだけだと言って笑ってくれた。

アールは何日もメアリーの看病を続けたが、遂に別れの時がやってきた。葬儀は滞りなく行われ、式場はアールが育てたデイリリーの花で埋め尽くされた。葬儀後、アイリスはアールを呼び止め、今度の感謝祭を一緒に過ごさないかと言った。アールはもちろんだと答えた。

だが、その帰り道、組織の男たちに発見されてしまう。グスタボは今すぐにアールを殺せと言ったが、妻の葬儀の帰りだと知った男たちはアールが気の毒になり、運び屋としての腕も良いので殺さないでおこうと提案。グスタボは承知し、今すぐに荷物を運ばせろと指示した。

その会話をコリンたちは盗聴していた。55号線に“タタ”がいることを知った彼らは、大急ぎで現場へと向かった。アールの車に追いついたコリンは車を停車させてアールを降ろさせた。手錠を掛ける時に顔を見たコリンは、ダイナーで会った男だとすぐに気がついた。アールは、今日、あんたに逮捕されてよかった。家族と過ごせたから。それが何よりも大切なことだとコリンに告げ、連行されていった。

裁判が開かれたが、アールは弁護士の弁論を遮り、自分は有罪だ、全ての罪を認めると発言。アールの罪はその場で確定し、刑務所に戻されることになった。傍聴席に来ていたアイリスとジニーは涙ぐみながら、面会に必ず行くとアールに告げた。去り際、アールは二人に言った。時間が大切なんだ、何でも買えるのに時間だけは買えなかった、と。

アールは刑務所の庭で土をいじりながら汗を掻いていた。花壇には、美しいデイリリーの花が咲き乱れていた。

映画『運び屋』の感想・評価・レビュー

クリント・イーストウッドの見事な演技を堪能できる。アールがやっていることは犯罪なのだが、イーストウッドが演じたことでどこか悪いことに見えないから不思議だ。『グラン・トリノ』から続く差別的台詞は相変わらずで、彼の信条が本作からも垣間見える。時間が大切なのだというセリフは、90歳を迎えるイーストウッドが言うと強烈なメッセージとなり、今からでも悔いなく、真っ当に生きようと思わされる。ただ、未だに彼はイケイケなのだと新車のトラックを見て思ったりもした。(MIHOシネマ編集部)


クリント・イーストウッド監督・主演、実話をもとにしたということで期待した作品です。ストーリーはクライム(犯罪)映画でしたが、映像はロードムービーの印象で、無理なく観ることができました。あまりにも簡単に大金が手に入るような錯覚に陥りますが、よく考えたら相当タフでないと務まらず、本当ならすぐに見つかるか、耐えられなくなって自首するだろうなと思いました。

この作品のモデルとなった主人公の光は、最後まで奥さんに愛されたことだと思います。そこから逃げずにいればもっと違った人生があったのかもしれないと感じました。(女性 40代)


どういう視点で見るかにもよるが、主人公のアールに同情した私にとってはバッドエンドだった。
運び屋という仕事は確かにいいことではない。どんな事情があってもだ。しかし家族が嫌いなわけではないが疎遠になってしまい家族との仲を取り戻すため、孫にプレゼントしたい一心で渋々運び屋になってしまったのは同情してしまった。やはり人は悪いと思っていても目の前に蜜があるとどうしても吸いたくなってしまう。常に人の良さが出ていたからこそのコリン捜査官の表情に涙を誘われた。(男性 20代)


90歳の老人が麻薬の運び屋をするというのはショッキングですが、クリント・イーストウッド演じるアールからは弱々しいものは感じません。粋も甘いも知り尽くした深みのある人間の魅力にあふれていました。
アールにとっては、危険な仕事をすることよりも家族を失うことのほうが怖かったのだと思います。家族を顧みず自由奔放に生きてきた彼には、それでも人を魅了する人間性があり、彼を非難していた家族もそれを感じていたのでしょう。
今までの生き方を悔やむアールに娘が言った「遅咲きなだけよ」という台詞が良かったです。
デイリリーを栽培してきたアールにはこれ以上ない言葉だったのではないでしょうか。(女性 40代)


クリント・イーストウッドの作品は、毎回今回が最後かもと思いながら視聴するが、その度に次の作品が発表されて胸をなでおろす。

脚本重視ではなく、演技重視の物語が映えるのはクリント・イーストウッドの魅力あってこそだ。主人公は偏屈なおじいちゃんなのに、何故かカッコいい。眺めていて憎めない「クソジジイ」という感じだ。家族との確執を、最後の最後に後悔して歩み寄ろうとしている姿に、自分の人生と重ね合わせるほど涙が流れる。(男性 30代)

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