800人以上の奴隷を解放し、黒人兵士を率いて南北戦争を戦った女性・ハリエット。彼女の姿は、アフリカ系のアメリカ人として初めて紙幣の図柄に採用された。ハリエットの一生を追うノンフィクション。
映画『ハリエット』の作品情報
- タイトル
- ハリエット
- 原題
- Harriet
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2020年6月5日(金)
- 上映時間
- 125分
- ジャンル
- 伝記
- 監督
- ケイシー・レモンズ
- 脚本
- グレゴリー・アレン・ハワード
ケイシー・レモンズ - 製作
- グレゴリー・アレン・ハワード
デブラ・マーティン・チェイス
ダニエラ・タップリン・ランドバーグ - 製作総指揮
- ジョシュ・マクラフリン
シェイ・カマー
ビル・ベネンソン
ペン・デンシャム
ジョン・ワトソン
クリスティーナ・ケンドール
チャールズ・D・キング - キャスト
- シンシア・エリボ
レスリー・オドム・Jr.
ジョー・アルウィン
ジャネール・モネイ
ボンディ・カーティス=ホール
マイケル・マランド
ザカリー・モモー - 製作国
- アメリカ
- 配給
- パルコ
映画『ハリエット』の作品概要
第92回アカデミー賞にて主演女優賞と主題歌賞にノミネートされた話題作。黒人開放運動家のハリエット・タブマンをモデルにしたノンフィクション映画で、奴隷だった幼少時から様々な活躍をし、アフリカ系アメリカ人初の紙幣に採用されるまでの激動の人生を描く。主演はミュージカル女優のシンシア・エリボ。その他、『ドリーム』(16)のジャネール・モネイ、『女王陛下のお気に入り』(18)のジョー・アルウィンなど、話題の俳優たちが脇を固めている。
映画『ハリエット』の予告動画
映画『ハリエット』の登場人物(キャスト)
- ハリエット・タブマン(シンシア・エリボ)
- 奴隷解放に命をかけた女性。生涯をかけて戦い続け、英雄となった。
- ギデオン・ブロデス(ジョー・アルウィン)
- 奴隷だったハリエットを追う白人の男。彼女の命を狙っている。
- マリー・ブキャナン(ジャネール・モネイ)
- ハリエットの恩人。自由へと突き進むための鍵となってくれる。
映画『ハリエット』のあらすじ(ネタバレなし)
アラミンタ・ロス(通称ミンティ)は、幼い頃から奴隷として過酷な労働を行っていた。ある時、家族と離され、自分だけが売りに出されることを知ったミンティは農場から脱走し、奴隷制度の廃止されたペンシルバニア州を目指した。奴隷解放活動を行いながら、いつか自分の家族を救い出すことを決意する。
奴隷たちを次々と解放していくミンティは、やがて自分の名前をハリエット・タブマンと改名した。活動に賛同する人々からの協力を受けながらも、自らも賞金稼ぎから命を狙われ続ける。そんななかで多くの奴隷を失敗なく解放し続けた彼女はやがて、「女モーセ」「黒人のモーセ」などと呼ばれるようになり、伝説となっていくのだった。
映画『ハリエット』の感想・評価
ハリエット・タブマンという女性の生涯
2020年に発行されるアメリカ紙幣で、ハリエット・タブマンが起用されることが決まった。これはアフリカ系のアメリカ人では初の快挙となる。
彼女は自らも奴隷出身であり、同じく奴隷の者たちを脱走させるために「地下鉄道」と呼ばれる組織で暗躍していた。生涯を通して800人を超える奴隷たちを解放することに成功し、その間奴隷は誰ひとり捕まることがなかった。彼女は4万ドルを超える懸賞金をかけられることになる。
また、南北戦争の際も様々な任務についたが、どの任務においても失敗がなかった。彼女が捕えられたことは最後まで一度もなかった。奴隷解放運動において、最も危険で困難なことを成し遂げた人物として現在も評価をされている。
紙幣になるまでの経緯
60万人超の希望で、新紙幣のデザインとして1位を獲得していたのがハリエット・タブマンだった。この結果から、大統領と財務長官が彼女を起用することを計画。2020年発行開始予定の20ドル札にて、デザインがされることが決定した。
元々は、20ドル札は2030年に発行を予定されていたが、2020年はアメリカで女性に参政権が与えられてから100年の年となるため、2020年の変更を希望する声が大きかった。このために、20ドル札の発行が繰り上げられることになった。
当時この件を進めていた大統領はオバマであったが、トランプ大統領が就任後はあまり肯定的に捉えられておらず、ポリティカル・コレクトネスだとして停滞している。現在もデザインは公表されていない。
制作上の苦難
当初、ハリエット・タブマン役として起用されていたのはヴィオラ・デイヴィスだった。ところが、彼女を据えて進んでいた企画がなくなり、制作期間が先に伸びてしまう。
2016年に新たにシンシア・エリボが主役に起用されて企画が進み始めたものの、さらに監督も交代となる。その上シンシア・エリボはイギリス人だと話題になってしまった。アメリカの英雄を描く映画なのに、イギリス人が主演をするという是非がネット上で議論になったのだ。
シンシアは自身のインスタでこの件についての釈明を行う。また、彼女が起用されたのはハリエット・タブマンとして顔が似ていたからだ、ということで再び制作は進められていった。画面に映る部分のリアリティを優先した結果であると言えるだろう。
映画『ハリエット』の公開前に見ておきたい映画
ジャンゴ 繋がれざる者
クエンティン・タランティーノ監督による、ジェイミー・フォックスとクリストフ・ヴァルツの2人が出会い、黒人と白人という枠を超えて友情を育んでゆくストーリー。
ジェイミー・フォックス演じるジャンゴは奴隷だったが、クリストフ・ヴァルツ演じるシュルツに自由を与えられる。まだ囚われたままのジャンゴの妻を助け出すために、ジャンゴはキャンディ・ランドと呼ばれる農園を目指す。
キャンディ・ランドの使用人のスティーブンは奴隷だが、長年主人に仕えてきており、白人の味方でもある。奴隷制度が深く根付いている世界において、黒人たちと白人たちがどういう生き方をしていくのかを描き出す、社会派エンターテインメント大作映画。
詳細 ジャンゴ 繋がれざる者
ホテル・エルロワイヤル
主演のシンシア・エリボが出演する2018年のアメリカ映画。ジェフ・ブリッジスやクリス・ヘムズワースなど、人気俳優が集結する長編クライム映画である。
秘密を抱えた個性豊かな者達がホテル「エルロワイヤル」に集うことになり、そこで次々とホテルに関する衝撃の事実が明らかになってゆく。シンシア・エリボはこの映画のなかで見事な歌を披露しており、その上手さが絶妙なスパイスとなっている。音楽が重要なこの映画において、作中で彼女が歌っている部分はどれも重要である。どの歌も本人が歌っており、差し替えられているシーンは存在しない。
日本の劇場では公開されていないが、現在は各サブスクリプションサービスにて視聴することができる。
詳細 ホテル・エルロワイヤル
映画『ハリエット』の評判・口コミ・レビュー
『ハリエット』
遣る瀬ない想いを鎮めるように黒人奴隷達が魂の叫びを歌に乗せる。そんな霊歌による祈りも届かぬ時代、奴隷制度という悪しき宿命に挑んだハリエット・タブマンの精神は神に見初められ革命に生かされる。彼女の類稀な女傑感に啓示まで加わり窮地も割と淡白ながら鋼の信念に心打たれた! pic.twitter.com/N0aSGYKt8h— コーディー (@_co_dy) June 7, 2020
『ハリエット』観た~。残酷な描写や大袈裟なスリル、アクションは抑えて作られた印象で万人が観やすい映画。エンドロールで流れる曲『Stand Up』が本当に素晴らしい!普通に聴いても超カッコ良いんだけどエンドロールで聴くとさらに良いぞ‼ pic.twitter.com/wWuxRIUmZa
— トモヤミ@映画好き夫婦 (@yauyu_tomoyami) June 7, 2020
『#ハリエット』
自由か死か。それしか選ぶことのできない、黒人奴隷たち。白人のご主人様、過酷な労働、引き裂かれた家族、家畜の豚と同じ扱い。
奴隷の立場から北へ逃げ切り、奴隷解放の活動に尽力を尽くした実在の人物、ハリエット・タブマンの生涯を描いた本作。逃げ切った先の景色の美しさ! pic.twitter.com/47frsjlSOi— (@xx3sss) June 6, 2020
『ハリエット』
元奴隷であり南北戦争期に奴隷解放運動家として活躍したハリエット・タブマンの伝記映画。黒人で初めて米国紙幣に採用されることも決まってる大偉人。彼女がどれだけの偉業をやってのけたか社会授業の教材として使われてもおかしくないシンプルだけどソウルフルな意義深い作品でした。 pic.twitter.com/48lwYZcd8N— ketsuya (@cristofornu) June 7, 2020
『ハリエット』鑑賞。南部の奴隷解放に尽力した黒人女性の生き様を綴った、誇り高き英雄伝説。題材的に幾らでも重くシリアスな内容に出来たはずだが、主人公の勇気と脚力を軸に沿えた、逃亡劇としての面白さを優先したのが勝因か。主演のシンシア・エリヴォが放つ「導く者」の輝きに、惹き付けられる。 pic.twitter.com/cxlFtcYFqr
— Takeman (@takeman75) June 7, 2020
映画『ハリエット』のまとめ
英雄と呼んでも差し支えない実在の人物に関して丁寧に描いた本作は、歴史を知る上で資料としてもかなり私たちの役に立つものとなるはずである。アカデミー賞の獲得にはいたらなかったものの、ノミネートされたシンシア・エリボの演技力と、歌曲には注目して鑑賞したい。既存のノンフィクションらしいセオリーに則った描き方をされている堅実な映画でもあるため、内容に集中して見ることができそうだ。まさに時代に沿っている、今見るべき映画でもあるだろう。
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