映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の概要:「ザ・フライ」や「イースタン・プロミス」のデビッド・クローネンバーグ監督のバイオレンス・サスペンス。リアルな暴力シーンが見所。主演はヴィゴ・モーテンセン。共演にエド・ハリス。2005年のアメリカ映画。
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 作品情報
- 製作年:2005年
- 上映時間:96分
- ジャンル:サスペンス、アクション、ヒューマンドラマ
- 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
- キャスト:ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、ウィリアム・ハート etc
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のあらすじを紹介します。
インディアナ州の田舎町、ミルブルック。小さなレストランで働くトム・ストール(ビィゴ・モーテンセン)は、弁護士の妻エディ(マリア・ベロ)と2人の子供に恵まれ幸せに暮らしていた。
ある日、トムの働くレストランに2人組の強盗が現れた。リーランド・ジョンズ(スティーブン・マクハティ)とウィリアム・オーサー(グレッグ・ブリック)に襲われて、店は滅茶苦茶になるが、トムは銃で応戦。なんとか2人を撃退するが、トムは勇敢だと田舎町の英雄となってしまう。
数日後、今度はフィラデルフィアのマフィアである、カール・フォガディ(エド・ハリス)が手下と共にトムの前に現れます。カールは目に傷のある男。親しげにトムに話しかけると、トムの本名はジョーイ・キューザックで、マフィアのボスの弟だと言うのです。
トムはマフィアと面識などないと否定するが。マフィアたちはしつこく、通ってきます。
トムは身の危険を感じるようになり、高校生の息子ジャック(アシュトン・ホームズ)も荒れるようになります。ある日、ジャックは不良仲間に暴力をふるい、高校を停学処分になってしまう。トムは息子に対して、”暴力で解決するな!”と諭すが、ジャックは聞かずに家を飛び出していく。
ジャックはあろうことか、フィラデルフィアのマフィアのフォガッティ達に拘束されてしまう。フォガッティ達は、トムに”ジョーイ・キューザックである事を認め、フィラデルフィアまで来なければ息子を殺す!”と脅します。
トムは過去の自分、ジョーイ・キューザックへマフィアと闘ってゆくうちに戻ってゆく。ところが、フォガッティに殺されそうになってしまう。絶対絶命のジョーイを救ったのは、息子のジャックだった。
トムは深手を受け、病院へ。そこで家族に自分の過去を告白します。家族はトムの恐ろしい一面を知り、受け入れることができない。このままでは再び、マフィアに襲われるだろう。トムはジョーイとしてけじめをつけるため、フィラデルフィアへ向かう。
フィラデルフィアのマフィアの館では、リッチー・キューザック(ウィリアム・ハート)が手下と共にジョーイを待ち受けていた。ジョーイは過去を清算できるのか?今後の家族の関係はどうなるのか?暴力の連鎖は終わらない!
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
暴力を断ち切るのは家族の絆
暴力の歴史、という題名から想像するのは、人類の歴史であり争いの繰り返しを意味しているのだと思う。クローネンバーグ監督がすごいのは、多くのハリウッド映画が暴力を魅力的に描くのとは違い、暴力を否定し内側まで切り込んでゆく姿勢である点です。
暴力映画であるが、一つの家族の物語として考えたい。主役を演じる、ビィゴ・モーテンセンは、大ヒット作「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役とは真逆の暗い過去を持つ男を演じています。前半は、どこにでもいるような平凡な男だが、昔の仲間(マフィア)が訪ねてくるようになってから変わってゆく。
二重人格なのか?と思うほど、変化が激しい。強靭な精神がなければ演じきれないのではないか。後半になると、マフィアらしい強烈な存在感を放っています。注目すべきなのは、身近な視点でいえば、暴力と性が密接に関わっている点です。
前半では、妻から誘い、「高校時代に会いたかったわ」と好意的に愛の営みをしますが、トムがジョーイとして覚醒すると神経をとがらせ、衝動的に階段で妻を抱くのです。このように同じ行為をしていても意味は全く違います。ジョーイは果たして家族に受け入れられるのでしょうか。
最強の者たちのドラマ!
ヴィゴ・モーテンセン目当てで観た人にも、充分な程のおつりがくる映画です。なぜなら、最強の男たちが揃っているのですから。フィラデルフィアのマフィア、カール・フォガッティを演じるエド・ハリス。強面で凄みがあります。「アポロ13」(95)や「トルーマン・ショー」(98)に主演した個性派俳優です。
またジョーイの兄で、マフィアのボスを演じる、ウィリアム・ハート。単身、ボスの館へ乗り込んできたジョーイを殺そうとして返り討ちに遭ってしまいます。わずか数分、出演しただけなのに、ボスとしての存在感を見せつけ、恐怖にちびりそう。最強の者たちとジョーイの死闘をぜひご覧下さい。
首を絞めつけられても身のこなしが軽く、無敵の男ジョーイを演じる、ヴィゴ・モーテンセンのアクションにも溜息がこぼれます!とても激しく動いたのに息一つ乱れた様子なく、涼しい顔をしているのです。こんな顔ができるのは、ヴィゴ・モーテンセンだけ!
映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 まとめ
少し前に、「倍返し」という言葉が流行ったのを覚えているでしょうか。本作では、暴力の連鎖が止まらない現実を元殺し屋の視点から描いています。暴力を永久に絶やすことはできないけれど、家族という存在があれば歯止めになるのではないでしょうか。折しも、この原稿を書いている間にフランスで再びテロが起こりました。多くの人が亡くなることが本当に悲しいです。
話を元に戻しますが、マフィアとの死闘から生還したジョーイは、家族の元へ帰ります。息子や娘はそんな父を受け入れますが、妻の心はジョーイ(夫)をどう受け止めるのでしょうか?全てを受け止めることはできなくても、1部分は許容するであろうと想像します。重く辛い物語ですが、家族という存在が光です。
マフィア同士の抗争だけが暴力ではなく、性の在り方も時に暴力的であると表現した、デビッド・クローネンバーグ監督の考え方にも共感します。フィルム・ノワールな雰囲気も生かされており、マフィア映画としても秀逸です。
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