映画『炎のランナー』の概要:ユダヤ系英国人のエイブラハムズと、スコットランドの宣教師リデル。偏見と戦い、信仰心を貫こうとする2人が、オリンピックの陸上競技に出場し、金メダルを獲得するまでを描いた作品。アカデミー賞の作品賞、作曲賞、衣装デザイン賞など複数の賞を受賞。原題の“Chariots of Fire”は、劇中に出てくる賛美歌「エルサレム」の一節。
映画『炎のランナー』の作品情報
上映時間:124分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:ヒュー・ハドソン
キャスト:ベン・クロス、イアン・チャールソン、イアン・ホルム、ナイジェル・ヘイヴァース etc
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映画『炎のランナー』の登場人物(キャスト)
- ハロルド・エイブラハムズ(ベン・クロス)
- 英国の名門ケンブリッジ大学の学生で、ユダヤ人を父に持つ。その俊足をもって陸上競技で勝ち続けることが、英国人のユダヤ人に対する偏見と闘う武器だと考えている。ロンドンの大会でリデルに敗れて目標を見失うが、新たなコーチの元で短距離の走力を磨き、英国代表としてオリンピックに臨む。
- エリック・リデル(イアン・チャールソン)
- スコットランドの宣教師。ラグビー代表選手として活躍したが、自分の俊足は神から与えられたものだと考え、布教活動の一環として陸上競技の大会に出場。多くの大会で優勝して注目を集め、エイブラハムズらと共に英国の代表選手としてオリンピックに参加。しかし、100m競争の予選が安息日の日曜日と知り、出場を辞退しようとする。
- サム・ムサビーニ(イアン・ホルム)
- エイブラハムズのコーチ。エイブラハムズがリデルに敗れた後、彼の指導に当たり、100m競争の走法を徹底的に叩き込む。しかし、ケンブリッジの学長たちは、エイブラハムズが、アラブ系イタリア人からコーチを受けていることを快く思わなかった。そのためムサビーニは、エイブラハムズがオリンピックで走る会場には姿を見せなかった。
- アンドリュー・リンゼイ(ナイジェル・ヘイヴァース)
- エイブラハムズの学友で、障害競走の選手。「リンゼイ卿」とも呼ばれるほど格式高い家柄の御曹司。金髪で容姿端麗、ファッションセンスも抜群。陽気な性格で仲間からも好かれている。
- バーケンヘッド卿(ナイジェル・ダヴェンポート)
- 1924年のパリオリンピックの際の、英国選手団の団長。100m競争への出場を辞退するというリデルを説得して、なんとか出場させようとする。
- ジェニー・リデル(シェリル・キャンベル)
- リデルの妹で、兄と一緒に布教活動をしている。リデルが伝道師としての道を進むことを望んでいるため、彼が陸上競技にのめり込んでいくことに不満を抱き、つい厳しい言葉を口にしてしまう。
- オーブリー・モンタギュー(ニック・ファレル)
- エイブラハムズの学友で、ケッブリッジ入学の際に、タクシーに相乗りした時からうち解けた最初の友人。中長距離と障害競走の選手。彼が母に送る手紙の内容から、このストーリーの背景を知ることができる。
- シビル・ゴードン(アリス・クリーグ)
- オペラ歌手。弟がエイブラハムズのファンだったことから、オペラの観劇に来た彼と知り合い、交際を始める。エイブラハムズがユダヤ人であることの偏見も持たず、彼が競技を続ける上での心の支えとなる。
映画『炎のランナー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『炎のランナー』のあらすじ【起】
英国・ロンドンの教会では、かつてのオリンピック金メダリスト、ハロルド・エイブラハムズを追悼する式典が行われていた。壇上でエイブラハムズの功績を称えるアンドリュー・リンゼイ卿は、かつての仲間が、自分とオーブリー・モンタギューだけになってしまったことを寂しく語るとともに、走ることに青春を燃やした頃の記憶をたどり始める。
1924年6月、英国ケント州のカールトンホテルでは、パリオリンピックに出場する陸上競技の選手たちが合宿を張っていた。浜辺を走る選手たちの中には、ケンブリッジ大学のハロルド・エイブラハムズ、アンドリュー・リンゼイ、オーブリー・モンタギューのほか、スコットランドのエリック・リデルの姿もあった。
練習後、ホテルでクリケットに興じる選手たち。突然、エイブラハムズがゲームに難癖を付け始める。それを笑いながら眺める他の選手たち。エイブラハムズがこんなふうに攻撃的な態度を取るのは昔からのことだった。
1919年。英国の名門、ケンブリッジ大学に入学したエイブラハムズは、同大学のキーズ・カレッジに向かうタクシーに相乗りしたモンタギューと意気投合する。2人は寮でも相部屋だった。
カレッジでは、新入生に対してクラブの勧誘が行われていた。そんな中でエイブラハムズは、カレッジ・ダッシュに挑戦する。それは、周囲約200mの中庭を、12時の時計が鳴り終えるまでに1周するというもので、700年も成功者がいないという難関レースだった。
大勢の学生が見守る中、スタート直前に飛び入り参加したリンゼイと共に、スタートを切るエイブラハムズ。はじめリンゼイがリードするが、途中でエイブラハムズが抜き返し、大歓声を浴びながら2人はゴールに飛び込む。先着したエイブラハムズだけが、時計が鳴り終わる前にゴールし、700年ぶりのカレッジ・ダッシュの成功者となった。
学窓からその様子を眺めていた学長たちは、「ユダヤ人は神に選ばれた子なのか?」と呟く。エイブラハムズはユダヤ人であった。そのため、常に英国人から偏見の目で見られていると思い込み、その偏見と葛藤してきた。彼にとって、走ることで勝利を収めるのは、その偏見と戦う武器であった。
映画『炎のランナー』のあらすじ【承】
1920年、スコットランドのハイランズ。ラグビー・プレーヤーとして有名なエリック・リデルは、地元の子供たちの運動会に、賞品授与係として参加していた。宣教師の家系であるリデルは、父の布教活動のため中国で生まれたが、故郷のスコットランドの美しい風景を称えるスピーチを行い、地元の人たちの共感を得る。
リデルの友人マクミランが、この大会の最後に行われる200ヤード・オープンレースに出場するよう、リデルを促す。そして、私服のままレースに参加したリデルは、集団の最後尾からスタートし、楽々優勝をものにする。
リデルの走りを見た彼の父は、リデルが各地の陸上競技大会で勝てば、それが布教活動にもつながるとして、リデルに走り続けることを勧める。その目論みどおり、リデルは次々とレースに勝って名声を高め、布教の輪を広げていった。
しかし、一緒に伝道を行っている妹のジェニーは、走ることにのめり込んでいくリデルに不安を覚えていた。リデルが純粋に伝道師として活動していくことを望んでいたジェニーは、リデルとしばしば対立してしまう。
リデルは、スコットランドとフランスの陸上競技の対抗戦に参加する。エイブラハムズも見学に来ていた。トラックの短距離競走に出場したリデルは、スタート直後に他の選手と交錯して転倒する。しかし、すぐに起き上がって走り出し、誰もが無理だと諦めかけたそのレースで、奇跡的な勝利をものにする。
スタンドでリデルの走りを見ていたエイブラハムズは、彼の走りに驚愕すると同時に、感動すら覚えていた。しかし一方で、強力なライバルの出現に脅威も感じていた。
エイブラハムズがこの競技を見に来たもう一つの目的は、サム・ムサビーニに、自分のコーチになってもらうことだった。エイブラハムズの要望を聞いたムサビーニは、すぐには彼の依頼を受けなかった。そして、自分がエイブラハムズを観察して、気に入ったら自分からコーチになることを頼みに行くと告げた。
映画『炎のランナー』のあらすじ【転】
エイブラハムズは、モンタギューやリンゼイたちとオペレッタ「ミカド」の観劇に来ていた。モンタギューは、エイブラハムズにオペラグラスを渡し、舞台上の美しい女優を指さす。エイブラハムズもその美しさに一目で惹かれてしまった。劇が終演し、「ブラボー」と喝采を送るエイブラハムズに気付いた女優は、彼に微笑み返した。
女優の名はシビル・ゴードン。彼女の弟がエイブラハムズのファンだったことがきっかけで、エイブラハムズは彼女を食事に誘うことに成功する。リンゼイたちは、エイブラハムズの石のような精神が溶け出したと言って、冷やかす。
シビルの行きつけのレストランで、彼女と幸せそうに語らうエイブラハムズ。2人の会話が、なぜ彼がそこまで勝利にこだわるのかという話題に至り、エイブラハムズは自分がユダヤ人であり、周囲の偏見と戦っている身の上を打ち明ける。
シビルは、ユダヤ人であることなど、誰も気にしていないというが、エイブラハムズは首を横に振る。そのとき、シビルの注文した料理が運ばれてきて、2人は苦笑する。それはユダヤ人にとって禁忌である、豚の足だった。
パリオリンピックを翌年に控えた1923年、エイブラハムズは初めて100m競走でリデルと対決する。結果はリデルの圧勝だった。目標を見失い、打ちひしがれるエイブラハムズには、シビルの励ましの声も届かなかった。
しかし、そこにムサビーニが現れ、彼のコーチを引き受けると申し出る。ムサビーニはエイブラハムズに、アメリカの短距離ランナー、パドックやショルツの映像を見せる。その上で、彼のオーバーストライドが短距離走に不利であることを指摘し、フォームの徹底的な改造に取り組み始める。厳しい訓練の末に、エイブラハムズは徐々に自信を取り戻していった。
ある日、ケンブリッジの学長たちに呼び出されたエイブラハムズは、プロのコーチを雇っていること、そして、そのコーチであるムサビーニが英国人でないことについて、注意を受ける。しかし、エイブラハムズは、そんな学長たちの意見を、子供じみたものだと一蹴する。
一方、リデルは妹のジェニーに、中国に戻って伝道活動を行うことを打ち明ける。喜ぶジェニーだったが、その前にオリンピックで走るという兄の言葉を聞いて、彼女の顔色は再び曇る。しかしリデルは、自分の速い足は神から与えられたものであり、それによって人々に福音をもたらすことが自分の使命であると信じて疑わなかった。
1924年、エイブラハムズたちケンブリッジの陸上チームにリデルらを加えた英国の選手団は、パリオリンピックに向かう船に乗る。その際、記者から、「日曜日の100m予選に出場するのか?」という質問を受け、リデルは愕然とする。日曜日は安息日であり、その日に走ることは、神の意思に反することを意味していた。
映画『炎のランナー』の結末・ラスト(ネタバレ)
いよいよオリンピックの競技が始まった。しかし、リデルは日曜日に行われる100mの予選を棄権する決意をしていた。選手団長のバーケンヘッド卿はリデルをなんとか出場させようと説得するが、リドルの気持ちは変わらない。そこで、観戦に来ていた皇太子からもリドルを説得してもらうが、それでもリドルの意志は動かなかった。
そこへリンゼイが現れて、ある名案を提案する。それは、自分の代わりに400m競走にリデルを出場させるという案だった。400mが行われるのは木曜日なので、信仰にも影響はない。リデルはリンゼイに申し訳ないと考えるが、リンゼイはすでに障害競技でメダルを取っているので、構わないと言う。リデルは400mに出場することになった。
競技では、前評判どおりアメリカ選手のレベルは高く、ケンブリッジの選手たちは次々に敗れていった。エイブラハムズも200mでメダルに手が届かず、100mも決勝までは進んだが、準決勝でのアメリカ選手との対戦では苦杯をなめた。
エイブラハムズのコーチ、マサビーニは、英国貴族たちの間で自分の評判が良くないことを知っており、エイブラハムズの決勝が行われる会場には現れなかった。その代わり、エイブラハムズに、決勝に臨むための最後のアドバイスを書き残し、お守りとともに残していった。
スタート直後には顎を引き、あとは一気に100mを駆け抜けろ――。マサビーニのアドバイスとお守りを胸に、決勝のスタートラインに着くエイブラハムズ。号砲が鳴り、エイブラハムズはマサビーニの言うとおり、一気に直線を駆け抜け、トップでゴールのテープを切った。
歓喜に湧くスタンドの応援団。その中にマサビーニの姿はなく、彼は一人、ホテルの窓から競技場を眺めていた。ユニオンジャックの英国旗が一番高く掲揚されるのを確認したマサビーニは、部屋で雄叫びを上げる。そして、勢い余って拳で帽子の底を打ち抜いてしまい、苦笑いをするのだった。
400m競走決勝。リデルの突然の参戦を、アメリカ選手も少なからず警戒していた。しかし、アメリカチームのコーチは、もともとリデルは短距離選手であり、予選から400mを何回も走って、もう体力は残っていないと言い、自国の選手を鼓舞する。
レースがスタート。リデルの「神から与えられた足」は、アメリカチームの予想に反して、後半になっても全く速度が落ちない。ラストスパートで顎を上げ、両腕を振り回す独特の走法のまま、リデルはトップでゴールした。
リデルの力走を、妹のジェニーもスタンドで観戦していた。あれほど陸上にのめり込む兄を叱咤したジェニーが、兄の最後の勇姿を見て、笑顔を浮かべていた。
イギリスに凱旋した選手たちを、大勢の国民が駅で迎えた。そして、リデルやリンゼイたちがオープンカーに乗って人混みの中に去って行った後、エイブラハムズはひっそりと列車から降りてきた。それを迎えるシビル。2人は、エイブラハムズの栄誉を称えるポスターを見て微笑む。エイブラハムズと偏見との戦いは、もう必要ないと思わせる安らかな笑顔だった。
その後、史実によれば、エイブラハムズは足のケガで翌年に引退。リデルは妹との約束どおり、布教のため中国に渡り、その地で生涯を閉じた。
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