映画『怒り』の概要:「信じる」がテーマのミステリー。夫婦惨殺事件をめぐり三カ所の土地にそれぞれ、得体の知れない男がいた。本当の容疑者は誰か。三カ所での接点は無く、その土地ごとにストーリーが進む異色の映画。
映画『怒り』の作品情報
上映時間:141分
ジャンル:ミステリー
監督:李相日
キャスト:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛 etc
映画『怒り』の登場人物(キャスト)
- 槙洋介(渡辺謙)
- 千葉県。漁港で働く朴訥な男性。愛子の父親。娘を守りたいと強く願っている。
- 田代哲也(松山ケンイチ)
- 千葉県。二カ月前にふらりとやって来て、漁港で働く事になった青年。
- 槙愛子(宮崎あおい)
- 千葉県。槙洋介の娘。どこかふわふわとしており天真爛漫。家出した際、ソープで働かされていた。
- 藤田優馬(妻夫木聡)
- 東京。末期がんの母を看病しつつ、ゲイライフをそれなりに満喫している男性。
- 大西直人(綾野剛)
- 東京。ゲイ専門の盛り場で優馬と出会い、そのまま優馬の自宅へ住む事になる。寡黙で大人しい。
- 田中信吾(森山未来)
- 沖縄。無人島で世俗社会から離れて暮らす青年。真面目な面もありつつ、どこか浮世離れしている。素性が知れないバックパッカー。
- 小宮山泉(広瀬すず)
- 沖縄。那覇から母の都合で引っ越して来た女の子。高校生。
- 知念辰也(佐久本宝)
- 沖縄。泉の事が好きな男の子、純朴で優しい性格。高校生。家は旅館を営んでいる。
- 南條邦久(ピエール瀧)
- 刑事。八王子夫婦事件の捜査をしている。
- 北見壮介(三浦貴大)
- 刑事。八王子夫婦事件の捜査をしている。
映画『怒り』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『怒り』のあらすじ【起】
ある年の夏、八王子のとある住宅で夫婦が惨殺された。犯人はまず妻を殺害後、遺体を浴槽へ。その後、浴室で半日を過ごし、帰宅した夫を殺害。血塗れの家の壁には、血文字で「怒」の一文字だけが残っていた。調査によって犯人の名前は山神一也と判明。男は逃走し行方をくらました。
千葉県の漁港で働く槙洋介は家出した娘、愛子の行方をようやく発見し迎えに行く。娘は歌舞伎町の風俗店で働かされ満身創痍だった。列車で地元へ。駅には愛子の従姉が迎えに来ていた。外は土砂降りで陽も暮れている。カンカンに怒る従姉に愛子はからりとした様子で謝った。その途中、合羽を着て自転車を漕ぐ青年と会う。彼の名前は田代哲也。愛子が家出して1ヵ月後にふらりと現れたと言う。素性は知れないが真面目に働くので、それでよしとされていた。
同じ頃東京。藤田優馬は昼間忙しく働き、夜はゲイナイトを楽しんでいた。そんな彼には末期がんの母親がいる。定期的に見舞いに行っているが、自分がゲイである事はカミングアウトしていない。ある日、盛り場で慣れない様子の大西直人と出会う。事後に夕食へ誘うと、直人は大人しく着いて来る。彼は東京に来たばかりで住む所が無かった。優馬は直人に自分の部屋へ来るよう誘う。その時、ラーメン屋のテレビで公開捜査番組が流れる。約1年前の事件。八王子夫婦殺害事件の犯人について情報を募っていた。新宿2丁目での目撃情報から、変装していると思われる写真が公開。優馬はそれを見て笑う。馬鹿にしていると。直人もテレビを見るが、別段変わった様子はなかった。
沖縄。知念辰哉と小宮山泉は無人島へ向かっていた。辰哉は浜辺で休憩。泉は島をぶらぶらと歩く。島には廃屋となった小屋があった。探検してみると人の気配がする。彼女はそこで素性の知れないバックパッカー田中信吾と出会う。彼はこの辺りをふらふらと旅しているらしい。田中は自分がここにいる事を誰にも言わないで欲しいと頼む。泉は頷き帰って行った。
警察は山神一也のアパートを捜査。部屋は非常に汚れており、浴室の洗面台では髪を切った後がそのまま残されていた。窓一面に貼られたチラシの裏には、無数の言葉が書かれている。思った事を何でも書く癖があるようだ。
映画『怒り』のあらすじ【承】
愛子は父親の食事の世話をしていた。洋介の仕事場へ行くと、田代が1人で昼食を摂っている。声をかけられた愛子は彼と会話。彼女は田代の隣に座って父親の弁当を披露。唐揚げを1つお裾分けした。愛子は田代の分も弁当を作る事にした。田代と愛子は親愛を深め合う。ある日、洋介は彼へ正社員になる事を勧めるが、田代はもう少し考えさせて欲しいと話す。愛子が歌舞伎町で何をしていたか町中の噂になっている。陰口や嫌味を言われても、洋介はじっとそれに耐えて来た。父は娘を守ってやりたいのに、どんなに頑張っても結局、損をするのは本人。愛子はちょっと普通と違う。それは分かっているのだろうと。田代は愛子と一緒にいるとほっとすると話す。2人は仲良く出掛けて行った。
コンビニで買い物を済ませた直人は、荷物を抱えて優馬の家へ向かう。その姿を帰り道で見つけた優馬は、そっと後ろをついて行く。直人の不器用な様子が垣間見られ優馬は失笑。2人で部屋へ帰る。優馬は直人に、お前を信用していないと断言。直人は彼に信じてくれてありがとうと礼を言う。直人と優馬は体の関係を深める。優馬は仕事の帰りを早めるようになり、直人と居る時間を徐々に増やした。直人が優馬の母親に会いたいと言い始めた。優馬は最初拒否していたが、結局母親の元へ連れて行く。直人は優馬の母親をまるで自分の母親であるかのように連日、見舞っていた。優馬は2人の姿を微笑ましく見守る。そこで直人の右頬に、黒子が縦に3つ並んでいるのを母親が指摘。彼はその特徴があまり好きではないと答えた。ある夜、直人から連絡がある。母親が急変したのだ。優馬は気持ちの整理がつかず彼が見守る中、一息ついてから部屋へ入った。
泉はまた無人島へ来ていた。廃墟から這い出て来る田中に食料を持って来たと言う。泉と田中は度々会って話をした。無人島へ行く時は辰哉に船を運転してもらう。
那覇に来た泉と辰哉は、辰哉の父親が参加している辺野古基地のデモへ参加。那覇で田中の姿を見かけた泉が彼に声をかけ、皆で居酒屋に入った。泉の母親は男にだらしなく問題を起こす度に、娘を連れて沖縄へ戻る。気さくな田中に自分の経歴を語る泉。辰哉は飲み過ぎて酔っぱらっていた。田中を見送って振り向くと、辰哉がいなくなっていた。泉は辰哉を探して夜の町を走り回る。米兵の溜まり場を通り抜けて走って行くと人気のない公園へ出た。彼女はそこで2人の米兵に押えつけられる。必死で逃げるが相手は体格の良い兵隊だ。抵抗も虚しく米兵に犯された。陰から見ていた辰哉は怖くなり、彼女を助けに行けなかった。誰かがポリスと叫ぶ声に兵隊が逃げて行く。辰哉は泉へ駆け寄り、誰かへ助けを求めようとするが、彼女は誰にも言わないでと泣きながら訴えた。
映画『怒り』のあらすじ【転】
愛子は変わらず弁当を届ける。彼女は近所のアパートで田代と一緒に住みたいと父へ話す。すでに田代は了承していると言う。洋介は自分の名義で部屋を借りた。前はどこに居たのかと聞かれた田代は、軽井沢のペンションで働いていたと答える。その前は富山の方に。洋介は田代の紹介状を出して、軽井沢のペンションに車を走らせた。父は娘に田代が偽名である事を話す。愛子は急に泣き出し、どうしてそんな事を調べるのかと問う。愛子は明らかに何かを隠していた。洋介は娘の話を聞く。田代が大学生の頃、彼の父親が借金をして返済が出来なくなった。貸付人はその権利をヤクザへ売却。返済を迫るヤクザに追い詰められた田代の両親は、思い詰めた挙句に自殺。借金は息子の田代が払う事になった。本来ならば返さなくても良いはずだが、ヤクザは許してくれず。警察にも相談したがどうにもならなかった。だから、彼は逃げたのだ。どこへ行っても見つかる為、本名を使う事が怖くなり、生きて行くには偽名で働くしかなかった。助けて欲しいと懇願する娘。だが、洋介はどうも田代の事を信じ切れずにいた。別の日、父は娘の引っ越しを見送る。
優馬は直人と墓を見に来ていた。彼は優馬に一緒の墓へ入るかと言ってみる。戸惑いつつも了承する直人に冗談だと笑う優馬。直人となら一緒の墓でも良いと思ったのだ。ある日、優馬はゲイ仲間から空巣の話を聞く。ふと、目にしたカフェには直人と女性が楽しそうにしている姿があった。次の日の夜、優馬は直人へ一緒にいた女性は誰かと聞くが、言いたくないと拒否。優馬は彼が例えバイだったとしても、それを信じるかどうかは、結局自分次第なんだよなと呟く。
辰哉は1人で無人島へ向かう。そこには田中がいるはずだ。運良く出会えた彼に、コーヒーをご馳走になりながら世間話をする。辰哉は田村を自分の家へ手伝いに呼んだ。器用に仕事をこなす田村は、母親からも絶賛された。辰哉は米兵の話をする。泉の名前は伏せ、クラスの友達が米兵に酷い事をされたと。一番苦しんでいるのは本人。だが、彼女は公にしたくないと泣くのだ。それほどまでに強く思う気持ちとはどんなものなのか。辰哉は彼女の怒りを知りつつ、どうする事も出来ずに悩む。田村は彼へ、沖縄の味方にはなれないけれど、お前の味方にはいつでもなれると話す。
映画『怒り』の結末・ラスト(ネタバレ)
八王子夫婦殺害事件について新たな情報が報道された。容疑者の山神は昨年の秋に新潟市内で整形手術をしていた事が判明。エレベーターの監視カメラ映像が公開された。マスクをする前の顔は田代と瓜二つだった。洋介は走る。山神の利き手は左で猫背。田代も左で猫背だった。一気に疑いが強くなる。姪は愛子に例の殺人犯に田代が似ていると話してしまった。だがその時、愛子は田代の事を確かに信じていた。雨が降った日。ずぶ濡れの愛子が父親の元へやって来る。娘は警察に通報したと言う。彼女は結局、田代の事を信じ切れずに通報したのだ。愛子は警察へ電話する前に田代へ電話していた。彼はそれっきり帰って来なかった。警察が指紋鑑定を行った。結果、田代は犯人ではなかった。愛子は酷く泣き叫ぶ。しばらくして、愛子の電話に田代から着信があった。彼は優しくしてくれた愛子と洋介の事を、どうしても忘れられなかった。愛子は急いで彼を迎えに行く。そうして、彼を連れて帰った。
優馬はテレビの報道で、犯人の右頬に黒子があると知り直人を疑う。彼は洗面所で髪を切っていた。そんなある日、自宅へ帰ると直人が姿を消していた。何度電話しても繋がらない。優馬はネットで指名手配犯の顔写真を見ていた。そこへ着信がある。駒沢警察署の刑事課からだった。刑事は直人の名前を口にする。優馬は怖くなり、知らないとしらを切った。その後、急いで直人の痕跡を片付ける。しばらくして、以前直人を見かけたカフェで、あの女性を見つけた。事情を話して彼女から話を聞く。彼女と直人は同じ施設で育った。血は繋がっていないが、兄妹のような関係だった。直人は昔から心臓が弱く、その病気は手術して治るものでもなかったらしい。あの日、公園の繁みで倒れていた彼を警察が見つけた。あの電話は身元確認の電話だったのだ。直人にとって優馬は唯一の存在だった。本当に大切な物は増えるのではなく、減って行くのだと彼は言っていたらしい。優馬は逃げた自分を恥じ、直人の為に涙した。どうして彼を信じなかったのだろう。悔しさが募る。泣いても泣いても、涙は止まらなかった。
田中は辰哉の旅館で働いていた。事件の特集で顔写真を目にした母親は、田中を見つめて首を捻る。まさかね。ある朝、お客さんの荷物を乱暴に出している田中を見つけた。辰哉はそれを注意する。彼はすぐに謝ったが、不貞腐れた様子で嫌になったと言う。自分ではどうにもならない事が嫌になったと。田中はぽつりと続ける。泉の事を知っている。あの晩の事を。ポリスと叫んだのは自分だ。誰にも言っていない。これからも言うつもりはない。辰哉は悔しさに呻く。俺がしっかりしていれば。辰哉は罪の意識に足掻いていた。その夜、田中が厨房で大暴れした。一体どうしたというのか。荷物を持った田中は、一目散に逃げ出した。朝、辰哉は無人島へ向かう。田中を探して廃屋へ。中へ入ると寝泊りしている寝具があった。その突き当りの壁には大きく書かれた「怒」の文字。田中はあの夜の晩、泉の事をずっと見ていた。ポリスと叫んだのは彼ではなく、どこかの男だと言う。その後も田中は泉の様子をずっと伺っていた。自殺されてはつまらない。そして、人を簡単に信じる辰哉を笑った。田中は辰哉を投げ飛ばして逆立ちをした。その行動は常軌を逸している。辰哉は泉を思い、ハサミを握って田中へ突進。ハサミは奴の腹へ深く刺さった。田中が逃げた後、辰哉は他の壁に泉の事が書かれているのを見つけ、それを必死に消そうとした。彼は泉の事を守りたかった。
事件後しばらくして、泉は無人島へ向かう。辰哉が消そうとした文字と「怒」の文字を眺めた。そして、海へ向かって言葉にならない声で叫んだ。
別件で逮捕した容疑者が、八王子夫婦殺害事件の事について語り出した。男は大阪の土木現場で、山神らしき人物と一緒だったらしい。日雇いの土木現場がある場所に派遣で向かった山神は、八王子の住宅街へ来ていた。真夏の暑い日、いくら歩いても現場は見つからず、彼は派遣会社へ連絡。すると、担当者は先週の現場だったと言う。電話の向こうで担当者は笑っていた。暑いし、どこかも分からない場所でバス停も見つけられず、山神はふらふらと家の玄関へ腰を下ろした。すると、その家の奥さんが帰宅。奥さんはただの善意だったはずだ。人を見下す事でやっと平静を保っていた彼へ、冷えたお茶を差し出した。たったそれだけの事で、男の神経を逆撫でしてしまった。奥さんを殺害後、浴室へ入れたのは、本気で生き返ると思っていたかららしい。そうしている内に夫が帰宅し、悲劇が起こった。
沖縄の無人島で容疑者の山神が殺害された。殺害した少年は、信じていたから許せなかったと供述した。
映画『怒り』の感想・評価・レビュー
3人のそれぞれの恋のベクトルが全く違うという複雑な構成の中で話の流れのテンポも良く、キャストさん達の演技力も非常に高くて最後まで食い入る様に見てしまう作品でした。
特に最後の泉が辰也の消そうとした「怒り」の文字を見つけ泣き叫んだシーンは、自分の中でもいろいろな感情が込み上げ鳥肌が立ってしまいました。
自分の恋人を信じたいという強い期待と、もしかするとという弱い不安が入り混じる中での最後の結末は、今まで見てきたバットエンド映画の中でも良い意味で後味が悪く記憶に残るような作品でした。(男性 20代)
自分の身近にいる人が凶悪事件の犯人なのかもしれない。そんな状況に陥った時の人々の様子を出演者の方々の演技ですごくリアルに表現されていてとてもよかったです。全員がそれぞれみんな怪しく思えてきて、最後まで本当に誰が犯人なのか分かりませんでした。
結末もまたすっきりせず、最後まで信じることが出来なかった自分に怒りを感じながら生きていく後味が悪い終わり方でした。しかしだからこそ胸のどこかに残る作品でした。(女性 20代)
これほどまでにストレートに、題名が物語全体を表している映画は今までに観たことがなかった。物語の中で、確かに登場人物たちが持ち続けている感情は「怒り」であった。
信じている人が凶悪犯かもしれないという疑念の気持ちは、他の何よりも恐ろしいものであり、精神状態を狂わせるものであると感じた。
この作品は全体を通して登場人物の一人一人に焦点を当てるのが上手く、全員が主人公のような、それぞれが主人公の短編小説を読んでいるかのような感覚になる映画だった。(男性 20代)
ある未解決凶悪事件を軸に、三つの物語がそれぞれ展開されていきます。どのストーリーでも、ある人物が犯人かもしれないと思わせるところ、そしてその人を疑う気持ちと信じる気持ちに葛藤する人々が見事に描かれています。一つの作品の中に、複数のストーリーが各々ここまで充実した形で織り交ぜられているのは、あっぱれです。
特に優馬と直人の話は、後悔や切なさがすごく伝わってきて涙が止まりませんでした。ラストは衝撃的すぎて、未だに受け止めきれていません。観た後、それぞれの登場人物の心情を想い心にズシンと重みを感じてしまう、見応えのある作品です。(女性 20代)
2時間超えの邦画で、こんなにも目を離せなかった作品は久しぶりだ。飽きることなく最後まで惹き込まれる映画だった。人間の、より人間臭い部分にスポットを当てていて、一つの事件をきっかけに動き出す人間関係が事細かに切り取られている。
ゆっくりと進んでいた物語が次第にスピードを早めていき、人間関係の変化とともに歯車が噛み合っていく感じがして気持ちがいい。人によっては苦手に感じる表現があるため、観る人を選ぶ作品ではあるものの、とても考えさせられる作品だと思う。
「怒り」というタイトル通り、登場人物各々に、それぞれの「怒り」が存在している。「怒り」に至るまでの過程は違うものの、様々な苦しみや悲しみ、やるせなさなどが丁寧に表現されていた。
じっくりと2時間、腰を据えて観て欲しい映画だ。(女性 20代)
緊張感がずっと続いて、一瞬も目が離せませんでした。出演している俳優さん全員演技が上手く、ストーリーの重さも加わり、見終えた時は疲労感を感じました。自分もこの映画のように、身近な人が罪を犯しているか疑うような状況になった時、どんな行動をするのか、受け止められるのか、いろいろ考えさせられました。
広瀬すずさんの演技をあまり見たことがなかったのですが、周りのベテランの方に全く劣らぬ実力で存在感が強く、驚きました。(女性 20代)
「信じる」ということ。信じるべきものと、信じるべき人を自ら選ぶということ。何を理由にその選択をするのかを考えさせられる作品でした。
ある事件から1年がすぎた頃、その事件の容疑者らしき3人の男が別々の場所に現れます。この作品はその3人の男と彼と出会ってしまった人達のドラマが描かれています。
映画を見ていると「愛の力は何にも勝る」と感じることがよくありますが、この作品はいい意味でも悪い意味でも「愛」を感じる作品でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
一見よくあるサスペンス映画だが、この作品の本当のメインテーマはそこではないと思う。自分の身近にいる人が、愛する人が、凶悪な殺人事件を起こした犯人かもしれない。そんな恐ろしい可能性に直面したとき、人は誰かを信じ抜くことができるのだろうか。
同じ不安を抱えた3組の人間関係が同時に映し出され、物語は進んでいく。不安と葛藤する様や精神的に追い込まれていく様がとてもリアルで、観ているだけで苦しくなってしまう程であった。もしも自分だったらどうしただろうか、最後まで信じることができただろうか、そう考えずにはいられない作品であった。
夫婦惨殺事件から始まり東京、千葉、沖縄で暮らす三人の男性を追う物語。構成が味わい深いですから、一時も目を離せません。さらに、豪華すぎるキャストたちの本気の芝居に、鑑賞後しばらく放心しました。綾野剛演じる直人が非常に儚く、忘れられません。ストーリーは単なる犯人探しに留まりません。愛する人に疑いの気持ちを抱いてしまった葛藤が思い切り表現されています。人を信じることは、かなりのリスクであることを思い知りました。
タイトルである「怒り」と同時に、人を信じることの大切さと難しさも一つのテーマになっていると感じた。
3つのエピソードが同時進行していく緊迫感が素晴らしく、原作も読んでみたくなった。最後の最後までハラハラさせられ、鑑賞後どっと疲れてしまうほどだった。
豪華俳優陣がひしめき合う中、本作が映画初出演の佐久本宝がひときわ輝いていて、迫真の演技に目を奪われた。今後が楽しみ。
原作が吉田修一、「悪人」を撮った李相日監督がメガホンを取り、豪華キャストが集結ということで期待して観た。
全体的に暗い雰囲気を纏う映画だが、心に訴えてくるものは絶大。登場人物それぞれの怒りによる葛藤が痛いほど伝わってくるのである。
はじめは殺人犯「山神一也」が誰なのかという、犯人当てのような感覚で観てしまうのだが、登場人物それぞれの背景がわかるにつれ、自然とそれぞれの人間性、人生に引き込まれてしまうのだ。
気軽には観られないほど重厚だが、本格派が好きな方なら必ず心に響く作品である。
個性が強い演技派の出演者が多く、どの場面も非常に見応えがあった。誰が犯人なのか、或いは全員同じ人物なのか…。疑いを持ちながらの鑑賞は、まさにこの作品の意図にはまった気がする。日々を過ごす中で、出会った「人」を見抜くには何が必要か。
信じること、疑うこと、はたして日常で自分も今正しい選択をできているのか、とても考えさせられる作品だった。
様々な方向に向けられた『怒り』というタイトルは、この作品を観終わったとき、想像より深く心に刺さった。もう一度違う視点で鑑賞したくなる、そんな作品でもある。
3つのストーリーが、それぞれの場所に現れた身元不明の男を中心に同時進行していく。
交わりそうで交わらないそれぞれの物語。
3人とも犯人の特徴と一致しており、最後まで誰が犯人か分からず、緊迫感があり混乱させられた。
人間の欲望や愛、エゴ、信頼、そして怒りが交差し、とてもリアリティーがあった。
当事者にしか分かりえない感情が繊細に描かれていて、非常に感情を揺さぶられる作品だ。
もし身近な人が犯人だったら、自分ならどうしただろうか。
悲しさとか怒りとか愛おしさとか、色んな感情が揺さぶられる作品で、見ているだけで体力が奪われるような熱量がある物語だった。登場人物が多いのだが、演技の上手い俳優がキャスティングされているだけあって見やすかった。親子であっても恋人であっても、相手のことを心から信じるというのは難しいことだなと思う。誰が殺人犯であってもおかしくなかったため、最後までハラハラしながら見ていた。物語のラストを見て、何とも言えない苦さが残った。