12000作品を紹介!あなたの映画図書館『MIHOシネマ』

映画『イン・ザ・スープ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『イン・ザ・スープ』の概要:『パルプ・フィクション』『ファーゴ』など、名脇役として数々の大作に出演するスティーヴ・ブシェミの貴重な主演作。皮肉に満ちた、彼の愛らしいモノローグと共に進む本編は、コメディながら白黒調で撮られており、独特の深みを感じられる。

映画『イン・ザ・スープ』の作品情報

イン・ザ・スープ

製作年:1992年
上映時間:93分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:アレクサンダー・ロックウェル
キャスト:スティーヴ・ブシェミ、シーモア・カッセル、ジェニファー・ビールス、パット・モーヤ etc

映画『イン・ザ・スープ』の登場人物(キャスト)

アルドルフォ・ロロ(スティーヴ・ブシェミ)
映画監督を志し、職を転々とする青年。ジョーという陽気な老人との出会いが、くすぶっていた人生を大きく変える。隣人のアンジェリカを、自分の映画のヒロインにするのが夢。
ジョー(シーモア・カッセル)
陽気で破天荒な老人。アルドルフォの脚本に惹かれ、共に映画を作りたいと申し出る。怪しい仕事を請け負ってはアルドルフォを巻き込み、稼いだ金を遊びに注ぎ込んでしまう。素性や職業など、その正体は不明。
アンジェリカ・ペーニャ(ジェニファー・ビールス)
アルドルフォの隣人。その美貌からアルドルフォに好意を寄せられるも、相手にしない。ビザの取得のために結婚したが、夫とは不仲。
ダング(パット・モーヤ)
ジョーの家に出入りする若い女。ジョーの自宅で半裸だったり、彼と脇目も振らずキスしたりと、大胆な性格。
スキッピー(ウィル・パットン)
ジョーの弟。ジョーを思う気持ちからか、アルドルフォに対して初めは辛辣に当たる。ジョーたちの詐欺などに頻繁に携わる。
ルイス(スティーヴン・ランダッゾ)
アルドルフォのアパートに通う借金の取り立て屋。ジョーから脅されたことで、アルドルフォへの態度を一変させる。

映画『イン・ザ・スープ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『イン・ザ・スープ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『イン・ザ・スープ』のあらすじ【起】

映画屋を自称するアルドルフォは、一流の映画監督として出世することを夢見ているが、実際は愚にもつかぬ脚本家としてくすぶっていた。料理の片手間に母と電話をしながら、仕事をクビになったと話し、来たるクリスマスには家賃が欲しいとねだる。憧れのニューヨークでの暮らしは厳しく、生活費さえも儘ならない。苦しい現実から逃れるように、生前に報われなかった偉大な芸術家たちを引き合いにして安心している。

アルドルフォは美しい隣人のアンジェリカを、いつか自分の映画に出演させようと目論んでいた。アンジェリカが働くカフェに何時間も滞在し、その天使のような美貌を見つめるが、彼女の反応は冷たいものだ。

アルドルフォがアパートに戻ると、二人の取り立て屋が待ち受けていた。家賃を払う様子のない彼に、取り立て屋のひとりであるルイスはついに業を煮やす。納金を迫られたアルドルフォは、下克上する日を想像して彼らを心で罵倒しながら、その場を後にする。

とある会合に出向いたアルドルフォは、胡散臭いプロデューサーから「ゲイリークーパーに似ている」と持て囃され、怪しい撮影の出演を引き受ける。鼻高々のアルドルフォだったが、その実態は「裸の真実」というヌード撮影だった。下半身に三角コーンを当てただけの情けない姿で、映画監督としての志などを質問され、彼の心は折れてしまう。精神的に追い詰められたアルドルフォは、僅かな金を工面するため、自分の脚本を売る決意をする。新聞に広告を載せたところ、一週間後にジョーという男から電話がかかってくる。

映画『イン・ザ・スープ』を無料視聴できる動画配信サービスと方法
映画『イン・ザ・スープ』を無料視聴できる動画配信サービスと方法を分かりやすく紹介しています。

映画『イン・ザ・スープ』のあらすじ【承】

アルドルフォはジョーの自宅に招かれる。ジョーは陽気で気さくな老人だが、二本の指が欠けていたり、詳細も聞かずアルドルフォに1000ドルを抛ったりと、堅気の雰囲気ではない。ジョーはアルドルフォを気に入ったようで、共に映画を作りたいと持ち掛ける。友好の印に、隣室にいたダングという半裸の女を呼びつけて、アルドルフォにキスをさせる。映画制作の資金源を獲得したアルドルフォは、脚本と金を持って逃げるように部屋を出る。そんな彼に、ジョーとダングは口を揃えて「メリークリスマス」と声をかける。

夜中の2時にも関わらず、アルドルフォはジョーに呼び出される。そこにはジョーの他に、彼の弟のスキッピー、ダングがいた。アルドルフォの過去の映画作品を見て、ジョーは舌を巻く様子を見せるが、素直なダングは無理解を隠さない。また、スキッピーは終始威圧的な態度を崩さず、アルドルフォを車で送ると言って振り回す。散々な目に遭ったアルドルフォだが、アパートでアンジェリカの姿を見かけると、彼女を映画に出演させる夢を嬉々として語る。だが、アンジェリカは「裸の真実」を見たかのような発言をし、アルドルフォを追い払う。

翌朝アルドルフォが目覚めると、ジョーが無断で自宅に上がり込んでいた。ジョーの強引ながらも人懐こい性格に、満更でもない様子のアルドルフォ。早速、難解な脚本の説明を始めるが、ジョーは不服な顔だ。知識に凝り固まった排他的なものでなく、分かりやすいラブストーリーを描くべきだと主張するジョーに、アルドルフォが難色を示したところで、ルイスたちが取り立てにやってくる。ジョーは彼らを脅して易々と丸め込むと、さらに隣室のアンジェリカの借金まで清算してしまう。

映画『イン・ザ・スープ』のあらすじ【転】

映画制作の資金集めだと言い、アルドルフォを連れ出したジョーは、白昼堂々他人の車を盗む。さらにアルドルフォを携えて、不法侵入さえ行う。アルドルフォは住人の男と鉢合わせてしまうが、彼は高齢のせいか惚けており、二人は難なく目的を果たす。破天荒なジョーに参ってしまうアルドルフォだが、実子と引き離されて暮らす彼の悲しい境遇を知ったことで、同情を寄せるようになる。

詐欺を繰り返す日々が続いたが、集めた金を浪費するばかりで、肝心の撮影は全く進んでいなかった。そんな中、アルドルフォとアンジェリカの距離は急接近する。アルドルフォは、家を追い出されたというアンジェリカの夫を一晩泊めたことで傷心していた。だがアンジェリカの結婚は、生活のためのビザが目的であると知った矢先、彼女の部屋から不審な叫び声がする。子供たちが暴れていただけだったが、すぐさま駆けつけたアルドルフォに、アンジェリカは初めて笑顔を見せる。晴れて、彼女は撮影に加わることになる。雪の舞う中、カメラに捉えられたアンジェリカの姿は、アルドルフォの思い描いていた天使そのものであった。

ジョーの作戦に乗せられ、アルドルフォはアンジェリカをディナーに誘う。ダンスの練習までして備えるアルドルフォだが、ドライブの途中、アンジェリカが体調を崩してしまう。ディナーは中止になったものの、ジョーの粋な振る舞いによって、一同は和やかな雰囲気を取り戻す。しかし調子付いたジョーが、アンジェリカに無理やりキスをしたことで、彼女は怒りの矛先をアルドルフォに向ける。

映画『イン・ザ・スープ』の結末・ラスト(ネタバレ)

ジョーは相変わらず遊び呆けていた。二人の女を連れてアルドルフォの家に押しかけると、片方の女とアルドルフォを勝手にペアリングし、自分たちも部屋に篭ってしまう。アルドルフォは女の誘いを拒み、ジョーへの苛立ちを爆発させる。

翌朝女を帰すと、ジョーは資金集めの一環として、アルドルフォにドラッグの売人をさせる。だが計画は失敗し、スキッピーは殺害されてしまう。ジョーを疑い始めたアルドルフォは、アンジェリカがジョーの車に乗り合わせているのを目撃し、彼らに裏切られていたと思い込む。ジョーの実子だと聞かされていた子供を人質として誘拐すると、その車に乗り込んで脅すが、ジョーはどこ吹く風という様子だ。実は彼は嘘をついており、その子供と彼には何の関係もなかったのだ。怒りで興奮するアルドルフォと、呆れ顔のアンジェリカを乗せたまま、ジョーは次の仕事のために車を走らせる。

海辺に到着すると、ジョーはスキッピーへの復讐心に燃え、銃に弾を詰める。一方のアルドルフォは、ジョーに騙されていたと確信し、映画作りへの希望を失っていた。アルドルフォとアンジェリカは帰りたがるものの、ジョーは映画のためだと聞かず、次の仕事に移ろうとする。見兼ねたアンジェリカは銃を奪おうとし、揉み合いの末、ジョーに向けて発砲してしまう。ジョーは何ともない顔で立ち上がると、アルドルフォを連れて岸辺に座る。

ジョーはいつになく慎重な口振りで、映画への熱意を語る。アルドルフォは、もう金など要らないと告げ、代わりに自分たちのことを映画にしようと言う。アルドルフォの話に耳を傾けながら、ジョーは息を引き取っていた。先ほど発砲された腹部からは、真っ赤な血が流れている。

最後までジョーの本心を見抜けなかったアルドルフォだが、彼に捧げるラブストーリーを作ることを決心する。

映画『イン・ザ・スープ』の感想・評価・レビュー

映画に心酔し、ゴダールなど巨匠の名前を連ねて知識武装するアルドルフォが、とても愛らしい。彼を演じるスティーヴ・ブシェミは、アウトローな脇役の印象が強いが、本作では捻くれた未熟な青年の顔を見せており、ファンとしてはたまらない。また、天使を彷彿とさせるアンジェリカのシーンは、白黒の世界に花を咲かせたように明るく美しい。最後まで天真爛漫で、正体が明かされなかったジョーに、誰もが不思議な魅力を見出だすだろう。(MIHOシネマ編集部)


本作は、映画監督を目指すアルドルフォ(ステーヴ・ブシェミ)が隣に住む好きな女性をヒロインに映画をつくる過程を描いたコメディーヒューマンドラマ作品。
主人公が周囲に翻弄されながらもその困ったような表情にはどこか可愛げがあり、またその他の登場人物たちの個性も豊かで、彼らの存在感も強く印象に残っている。
沢山笑って、切なさに胸が締め付けられ、大いに楽しめた。
また、モノクロの画面が独特な世界観を醸し出し、美しくとても魅力的な作品である。(女性 20代)


心の広い青年とそれにつけ込んでぐいぐいくる老人と青年のお隣に住む美女の三角関係のお話。三角関係と言うと恋愛をイメージしますが、恋愛ではない人としての繋がりがとても面白く、ユニークに描かれていました。
もし自分だったらこんなおじいちゃん本当に嫌だし最悪だと思うのですが、なぜか憎めないキャラクター。お隣の女性も本当に綺麗でこの作品はキャストが最高です。
モノクロでオシャレな雰囲気がクセになる素敵な作品でした。(女性 30代)


これぞ愛されるべきコメディ。愉快だけじゃない、愛も哀切もありの物語で、ずっと浸っていたくなるような空気感が絶妙だった。自分には時間が短すぎたし、何回も観たくなる作品である。

クレイジーでも憎めないジョーと、可愛いアルドルフォが最高だ。若い時のサム・ロックウェルが出ていたのと、ジム・ジャームッシュも出演しているレア作品で、DVDはあまり市場に出回っていないが、35mmフィルムの質感とクラッシック感をぜひ味わってみてほしい。(女性 20代)

みんなの感想・レビュー