人はどうして自ら命を絶つことを選んでしまうのか。臨済宗の僧侶である根本一徹は、自殺を防止するため昼夜を問わず苦しむ人々に向き合ってきた。根本自身も、身近な人を自殺で亡くした悲しい過去があった。
映画『いのちの深呼吸』の作品情報
- タイトル
- いのちの深呼吸
- 原題
- The Departure
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年9月8日(土)
- 上映時間
- 87分
- ジャンル
- ドキュメンタリー
- 監督
- ラナ・ウィルソン
- 脚本
- 不明
- 製作
- ラナ・ウィルソン
- 製作総指揮
- サリー・ジョー・ファイファー
リリー・ハートレイ
マイク・ラーナー
ダイアン・L・マックス
レジーナ・K・スカリー
ジェフリー・タラント - キャスト
- 根本一徹
- 製作国
- アメリカ
- 配給
- パンドラ
映画『いのちの深呼吸』の作品概要
臨済宗妙心寺派大禅寺の僧侶である根本一徹は、自殺を防止しようと奔走していた。ブログやSNS等を利用し、悩みを抱える人々の意見や思いに耳を傾けた。彼の行動は世間から大きな注目を集めており、ドキュメンタリードラマとして特集が組まれたり新聞で取り上げられたりした。根本が命を絶とうとしている人々と真剣に向き合っている姿をカメラに収めて映画にしたのは、ニューヨークで主にドキュメンタリー監督として活動しているラナ・ウィルソンである。
映画『いのちの深呼吸』の予告動画
映画『いのちの深呼吸』の登場人物(キャスト)
- 根本一徹
- 46歳。臨済宗妙心寺派大禅寺の僧侶。「いのちに向き合う宗教者の会」代表。身近な人を自殺で亡くしている。昼夜を問わず、自殺を止めるために悩める人の苦悩に耳を傾けている。
映画『いのちの深呼吸』のあらすじ(ネタバレなし)
何をやってもダメだと感じる。1人では何もできないと感じる。人々は様々な苦悩を抱えながら生きている。時には死んではいけないと分かっているのに、人生を終わらせてしまいたいと思うこともある。人はどうして自ら命を絶つことを選んでしまうのか。
臨済宗の僧侶である根本一徹は、自殺を防止するため昼夜を問わず苦しむ人々に向き合ってきた。死ぬことに意味はあるのだろうか。人々は何を思い、自殺を選ぼうとしているのか。根本の母の弟は自殺をしている。根本はなぜ叔父が死を選んだのか、考えを巡らせていた。
悩める人々を助けようと奮闘するあまり、根本自身が体を壊してしまう。しかし、もし自分が話を聞かなければ相手はどんな道を選んだのか考えると、立ち止まることはできなかった。そこには、誰も死なせたくないという思いがあった。
映画『いのちの深呼吸』の感想・評価
根本一徹
根本一徹は臨済宗妙心寺派大禅寺の僧侶として働く傍ら、「いのちに向き合う宗教者の会」の代表としても活動している。そして、悩みを抱える人達の話を聞き、自殺を思い留まるよう言葉を掛けている。その根底には、叔父の他にも身近な人を自殺で亡くしたという辛い過去があり、悩める人々を最悪な結末から救いたいという思いがある。
最近ではブログやSNSなどでも悩み相談を受けており、様々な年代の人の話が聞けるようにしてある。根本のこの活動はフジテレビ系列の番組でも特集が組まれ、放送されたことがある。そして、「第35回正力松太郎賞青年奨励賞」を受賞している。根本は真摯に悩める人と向き合い、自殺防止の取り組みを行っている。
ラナ・ウィルソン
監督・制作を担当したラナ・ウィルソンは、現在アメリカのニューヨークでドキュメンタリー映画の制作を行っている。2013年には、4人の人工中絶医の生活に密着したドキュメンタリー映画が作られた。その作品はアメリカの多くの都市で公開され、「2015年エミー賞・最優秀ドキュメンタリー賞」など数々の素晴らしい賞を受賞している。その他にもナショナル・ジオグラフィック・チャンネルの脚本・制作に携わっており、テレビの現場にも活躍の場を広げている。
『いのちの深呼吸』は既に世界各地の映画祭で公開されており、「2017年アデレード映画祭・ドキュメンタリー部門」や「2018年インディペンデント・スピリット・アワード、ドキュメンタリー賞」など数々の賞にノミネートされている。それだけ、この作品が多くの人々の心に残る素晴らしい映画だったと言える。
日本と世界の自殺について
厚生労働省の調べによると、2016年度の人口動態統計による死亡原因は、1位が癌・2位が心疾患・3位が肺炎で自殺は8位だった。さらに、経済協力開発機構(OECD)は、鬱病関連の自殺により、日本は25.4億ドルの経済損失が起きていると推定している。世界の10~19歳の若者に限定すると、死亡原因の3位に自殺が入ってくる。
日本の戦後では男性の自殺者が多く、バブル崩壊後の金融機関の破たんのときには戦後最大の自殺者数を記録した。この頃は、中高年の自殺者が多く、景気の悪化が自殺の原因になったのではないかと推察されている。2010年以降減少傾向になるが、それでも2万人以上の人が自殺によって亡くなっている。日本で暮らす人の40人に1人は自殺者の遺族と言われており、深刻な社会問題になっている。
映画『いのちの深呼吸』の公開前に見ておきたい映画
精神
精神病にスポットを当てたドキュメンタリー作品。想田和弘が監督・制作・撮影・編集を行っている。顔出しを承諾してくれた患者達だけ撮影を行い、1人1人のありのままの現状を映し出している。関連書籍として『精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける』が出版されており、想田和弘監督の映画に対しての思いや葛藤などが綴られている。
岡山県・精神科クリニック『こらーる岡山』。山本昌知医師は病気に苦しんでいる患者達の話を聞き、診察を行っていった。患者の中には、自傷癖があり、子供のために体を売ってお金を稼いでいる女性がいた。孤独が辛くて生きていることに苦悩している男性がいた。また、我が子を絞殺したことがある女性がいた。彼らは悩んでいる胸の内を、涙ながらに山本医師に明かした。
詳細 精神
1日1ドルで生活
4人のアメリカの学生が、とある小さな村で1日1ドルで生活を送る姿を追ったドキュメンタリー映画。世界中の約11億人以上の人が1日1ドル以下で生活をしていると言われており、満足に病院に行くこともできず貧困に喘いでいる。この現状を解決する糸口はあるのか。世界の悲しい現状について、真剣に悩んでいる若者達の姿が収録されている。
アメリカの大学生4人は、人口300人しかいないグアテマラのペニャブランカ村を訪れた。そこで、1日1ドルの生活を56日間行うためだった。彼らは自分達で火を起こしたり水を汲んだり、慣れないことに戸惑いながらも住環境を整えていった。彼らは村人達に食事について教えてもらい、仕事を行ってお金を稼いだ。彼らはこの生活の間に、どんな思いを抱くのだろうか。
詳細 1日1ドルで生活
私の中のあなた
「命」について描かれたヒューマンドラマ作品。ジョディ・ピコー原作の小説『私の中のあなた』を元に作られており、映画と小説では結末が異なる。キャメロン・ディアスが主人公の女性を演じ、アビゲイル・ブレスリンとソフィア・ヴァジリーヴァが主人公の娘役を演じた。
赤ちゃんは偶然生まれてくるものである。だが、「私」は姉の命を救うために作られた子供だった。アナ・フィッツジェラルドの姉は白血病を患っていた。アナは姉のドナーになるため、遺伝子操作を行って生まれきた子供だった。幼い頃から輸血や骨髄移植などを行い、姉が生きるのを助けてきた。しかし、片方の腎臓の提供を求められたとき、アナはついに耐えられなくなった。アナは両親を訴えて移植を止めることにした。
詳細 私の中のあなた
映画『いのちの深呼吸』の評判・口コミ・レビュー
「いのちの深呼吸」ポレポレ東中野にて鑑賞。
自殺したい人を止める活動に尽力している僧侶さんのドキュメント。個人的に興味深かった所はこの僧侶さんの方が自身の命を度外視して活動されている部分。
あと死にたいと思っている人は生きたいと思っているという当たり前の事に気付かせてくれる良い映画 pic.twitter.com/41VLdddTOB— 襖嶋@映画 (@TiBlc) 2018年9月8日
今日は『いのちの深呼吸』という映画を観てきた。自殺志願者達と向き合う一人の僧侶のドキュメンタリー。「死」の問題をタブーとせず、自殺志願者達の声に心と耳を傾ける姿に、胸が痛くなった。「死にたい」は「生きたい」という叫びなのかもしれないと思った。
— 光坊主 (@nikuniku39hara1) 2018年9月8日
映画「いのちの深呼吸」ポレポレ東中野初日満席の中、大きなスクリーンでしみじみ観ました。今年亡くなった友だちのママも出ていて感慨深かったです。自分の出ている場面は何だか不思議な感じ💦舞台挨拶では、一徹さんご本人登場でした☺︎ 素晴らしいドキュメンタリー映画です。ぜひ劇場へ! pic.twitter.com/wupq9jnm2E
— mine (@mi_ne) 2018年9月8日
映画『いのちの深呼吸』のまとめ
臨済宗妙心寺派大禅寺の僧侶である根本一徹は、身近な人を3人も自殺で亡くしている。だからこそ、強い思いで「誰も死なせたくない」と願い、自殺志願者達を止めようと奔走している。ブログやSNS等を利用して手軽に相談できるようになった分、根本は昼夜問わず追い詰められている人々を止めるために頑張ることになる。普通の人では到底耐えられないような日々を、根本は送り続けている。「生きる意味」とは何なのか。この映画を通して、観客達は自然と考えるようになると思う。
みんなの感想・レビュー