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映画『教誨師』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

牧師の佐伯は、死刑囚専門の教誨師として、6人の死刑囚が心から改心して安らかに死んでいけるよう導いていく。しかし、そこには深い苦悩と葛藤があった。2018年2月に急逝した大杉漣にとって最後の主演映画であり、初プロデュースを務めた作品。

映画『教誨師』の作品情報

教誨師

タイトル
教誨師
原題
なし
製作年
2018年
日本公開日
2018年10月6日(土)
上映時間
114分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
佐向大
脚本
佐向大
製作
松田広子
製作総指揮
大杉漣
狩野洋平
押田興将
キャスト
大杉漣
玉置玲央
鳥丸せつこ
五頭岳夫
小川登
古舘寛治
光石研
製作国
日本
配給
マーメイドフィルム
コピアポア・フィルム

映画『教誨師』の作品概要

重大な罪を犯して死刑判決を受けた6人の死刑囚と教誨師の心の交流と苦悩を描いたヒューマンドラマ。2018年2月に急逝した大杉漣が主演とエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。監督・脚本は『ランニング・オン・エンプティ』(10)で商業映画監督デビューを果たした佐向大。大杉と対話を重ねる死刑囚役には、光石研、古舘寛治、鳥丸せつこ、五頭岳夫、玉置玲央、小川登がキャスティングされている。

映画『教誨師』の予告動画

映画『教誨師』の登場人物(キャスト)

佐伯(大杉漣)
牧師として、死刑囚専門の教誨師をしている男性。対話を通して死刑囚の心に寄り添い、彼らが改心して安らかな死を迎えられるよう導いていく。一方で、自分のしていることは正しいのかどうか悩んでいる。

映画『教誨師』のあらすじ(ネタバレなし)

牧師の佐伯は、死刑囚専門の教誨師として、死刑判決を受けた6人の死刑囚と向き合っている。拘置所の独房で孤独な日々を送っている死刑囚にとって、佐伯との対話の時間は重要な気分転換になる。佐伯は、様々な過去を持ち、死刑宣告を受けるような重大な罪を犯してしまった死刑囚と真摯に向き合い、彼らの心の救済に努めていた。佐伯の役目は、彼らと対話を重ねて改心させ、安らかな死を迎えられるよう導いていくことだった。しかし、彼らを改心させることは容易ではなく、佐伯は自分の言葉が届いていないような虚しさを感じていた。そして、死刑囚を心安らかな死に導くことが果たして正しいことなのか悩む。心の葛藤を続ける佐伯は、自分自身が抱える忘れたい過去とも向き合うことになる。

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映画『教誨師』のネタバレあらすじ結末と感想
映画『教誨師』のネタバレあらすじと感想。ストーリーを結末まで起承転結で分かりやすく簡単に解説しています。映画ライターや読者による映画感想も数多く掲載。

映画『教誨師』の感想・評価

大杉漣の突然の死

2018年2月21日、俳優の大杉漣はロケ先のホテルで腹痛を訴え、急性心不全により搬送先の病院で息を引き取った。大杉のあまりに突然の死は、家族や仕事関係者のみならず、日本中に衝撃を与えた。大杉は亡くなる前日までテレビ東京系の人気ドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』の撮影に参加しており、現役の売れっ子俳優のまま急逝した。そのため、大杉の没後も、すでに撮影済みだったドラマやテレビ番組の放送が続き、彼が亡くなったことを実感できずにいた人も多かっただろう。66歳での早すぎる死はあまりに残念で、その喪失感は筆舌に尽くしがたいものがあるが、俳優としての大杉漣は数え切れないほどの出演作の中で生き続けている。これから何年経っても、私たちはありとあらゆる作品の中で、俳優・大杉漣に会える。

大杉漣の遺作となった主演作品

そんな大杉漣の遺作となったのが、この『教誨師』という深みのあるヒューマンドラマだ。大杉は主演に加えて、エグゼクティブ・プロデューサーにも初挑戦しており、この作品に賭ける並々ならぬ意気込みが感じられる。

佐向大監督のオリジナル脚本であるこの作品では、死刑囚専門の教誨師をしている佐伯という牧師と6人の死刑囚の人間模様が描かれている。3年前、佐向大監督は『教誨師』の企画をまず大杉に話した。そこで大杉が「いいね、やろうよ」と言ってくれたことで、この企画は映画化に向けて動き始める。大杉の方は、重たいテーマと膨大なセリフの書き込まれた脚本を見て、「役者にケンカを売ってるのかと思った」と語ったそうだ。佐向監督の情熱が大杉の役者魂に火を点け、この作品が生まれたということだろう。

大杉は、観客だけでなく、仕事仲間からも愛されていたことで有名な役者だ。そんな大杉の内面からにじみ出てくる人柄が、きっと今回の役作りにも反映されている。役者として人間と向き合い続けてきた大杉が、どんな教誨師を演じているのか、劇場で見届けたい。

死刑囚と向き合う教誨師

死刑囚というのは、どれだけ自分の罪を悔い改めても、再び社会に戻ることは許されない。そのため、自暴自棄になる死刑囚も多く、被害者や被害者遺族への謝罪を一切口にしないまま、死を迎えることも珍しくない。教誨師は、そんな彼らの心に寄り添い、教誨室でひたすら彼らと対話を続ける。本作も、佐伯と6人の死刑囚の会話劇のような構成になっており、彼らの会話を通して、人間の本質や“死”と向き合うことで見えてくる“生”を暴き出していく。

ここで死刑制度の是非について語ることはできないが、現状の日本の法律では“極刑”として死刑が存在し、凶悪な犯罪を犯した被告人に対しては死刑判決が下る。死刑が確定すると、死刑囚は拘置所に収容され、刑の執行を待つことになる。死刑囚は外部との交流が極端に制限されるため、親族以外の面会はなかなか許可されない。そんな環境の中で、定期的な面会と刑の執行への立会いまで認められている教誨師というのは、死刑囚にとって特別な存在だ。教誨師は、どんな凶悪な死刑囚でも人間として認め、彼らの話に耳を傾ける。そして、彼らの刑の執行まで見守る。それがどれほど苦しいことなのか、想像することは難しい。

映画『教誨師』の公開前に見ておきたい映画

映画『教誨師』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『教誨師』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

13階段

刑務官の南郷(山崎努)は、樹原(宮藤官九郎)という死刑囚の冤罪を晴らす仕事を引き受けた杉浦弁護士(笑福亭鶴瓶)の依頼で、元受刑者の三上(反町隆史)を相棒にして、10年前に起きた凄惨な殺人事件について調べ始める。事件の真相を探るうち、南郷は三上の悲しい過去を知ることになる。

高野和明の同名ミステリー小説を長澤雅彦監督が映画化した作品。主軸となるストーリーは、10年前に起きた殺人事件の真相に迫っていくミステリーなのだが、この作品で最も印象に残るのは、東京拘置所の刑務官だった南郷と宮迫博之が演じる死刑囚の交流を描いた回想シーンだ。この回想シーンでは、自暴自棄になっていた死刑囚が少しずつ改心していく姿や死刑執行時の様子が丁寧に描写される。刑務官も人間なので、死刑囚の刑の執行には、精神的負担を感じる。仕事とはいえ、絞首台の作動ボタンを押すのは嫌なものだろう。南郷は、ボタンを押した自分に罪悪感を感じ、深く苦悩する。山崎努と宮迫博之も鬼気迫る演技を見せており、死刑制度について改めて考えさせられる。

詳細 13階段

凶悪

雑誌記者の藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)から、「自分にはまだ発覚していない3件の殺人事件の余罪がある」と告げられる。須藤は“先生”と呼ばれる不動産ブローカー・木村(リリー・フランキー)の依頼で、自殺に見せかけた保険金殺人を実行していた。藤井は独自で取材を重ね、須藤の告発が事実であることを確かめていく。

新潮45編集部編のノンフィクション小説『凶悪 ある死刑囚の告発』を原作とした犯罪サスペンス映画で、実際に起きた「上申書殺人事件」が基になっている。死刑が確定した死刑囚が、自ら余罪を告白するという衝撃的な内容が話題となり、原作のノンフィクション小説はベストセラーとなった。

映画では、須藤の告発に基づいて事件の詳細が回想シーンとして描かれるのだが、その犯行の手口があまりに冷酷で、背筋が寒くなる。ピエール瀧とリリー・フランキーが、凶悪な犯罪者を驚くほどリアルに演じ、人間の残酷性を余すことなく表現している。彼らの残忍な犯行を目の当たりにすると、死刑以外はあり得ないと思えてしまう。

詳細 凶悪

グリーンマイル

1932年のアメリカ。死刑囚監房の看守をしているポール(トム・ハンクス)は、不思議な力を持った大男のジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)という死刑囚と出会う。コーフィは幼い双子の姉妹を殺した罪で死刑が確定していたが、ポールはコーフィを電気椅子へ送ることにためらいを感じ始める。

スティーヴン・キングの同名ファンタジー小説を『ショーシャンクの空に』(94)のフランク・ダラボン監督が映画化した作品。刑務所を舞台にしたファンタジーという珍しい設定で、癒しの力を持った心優しい死刑囚・コーフィの存在が胸を打つ。コーフィを好演したマイケル・クラーク・ダンカンは、この役でアカデミー助演男優賞にノミネートされた。物語は、主人公のポールが過去を回想していく形式で進んでいく。後半、あまりに切なくて、涙が止まらなくなる。電気椅子での死刑執行シーンはかなりショッキングだが、人間の根底にある優しさや尊いものが描かれており、鑑賞後は何とも言えない余韻が残る。

詳細 グリーンマイル

映画『教誨師』の評判・口コミ・レビュー

映画『教誨師』のまとめ

2018年7月、一連のオウム真理教事件で死刑が確定していた13人の死刑囚の刑が執行された。この死刑執行により、改めて死刑制度の是非について議論される機会が増え、死刑に対する国民の関心も高まっている。必然的に、教誨師と死刑囚の交流や葛藤を描いたこの作品も大きな話題になるだろう。大杉の遺作であることやタイムリーなテーマを扱っていることで、この作品は必ず注目される。そんなあれこれを考えるにつけ、大杉が「劇場でお待ちしています」と言っているような気がしてしまう。

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