この記事では、映画『一枚のハガキ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『一枚のハガキ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『一枚のハガキ』の作品情報
上映時間:114分
ジャンル:戦争、ヒューマンドラマ
監督:新藤兼人
キャスト:豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、柄本明 etc
映画『一枚のハガキ』の登場人物(キャスト)
- 松山啓太(豊川悦司)
- 第二次世界大戦を生き残った男性。戦地に赴く定造に、友子からのハガキと彼女へのメッセージを託された。
- 森川友子(大竹しのぶ)
- 定造の嫁。女郎として売り飛ばされそうになったところを、定造に救われた過去がある。定造の帰りを、彼の実家で待っていた。
- 森川定造(六平直政)
- フィリピンの激戦地に配属が決まった男性。自らの死期を悟り、啓太に妻、友子への想いを託した。
映画『一枚のハガキ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『一枚のハガキ』のあらすじ【起】
昭和19年、日本は戦争真っ最中であった。男性は次々と徴兵され、抗うことも許されずに戦地へと送られる。そんな中、天理教本部に100名もの男性が招集されていた。そして、彼らは見事、全員が中年ばかりのいわゆる中年部隊だったのだ。
彼らの赴任先は、自分達よりも年下であろう上官がくじ引きでそれぞれ決めることになっていた。そして、10名が後に予科棟が入ることになる宝塚歌劇壇の掃除、30名が潜水艦の乗船員、60名が激戦区であるフィリピンに派遣されることとなった。
そして、そこで松山啓太と森川定造は知り合った。啓太は赴任先の中でも比較的安全だと思われる、宝塚歌劇壇に運良く配属が決まる。しかし、定造は最も激しい戦いになることが予測される、フィリピンの内陸戦への赴任が決まってしまったのだった。
その夜、定造は啓太を呼び出すと、彼にとある物を託した。それは、自分の妻から届いた一枚のハガキであった。そのハガキには、「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので、何の風情もありません」と記されていた。
映画『一枚のハガキ』のあらすじ【承】
しかし、戦時中は検閲のために、ハガキの返事を書くことすら許されないのだ。そのため、定造は妻に自分がハガキを見たことすら伝えることができなかったのだ。そして、フィリピンへの赴任が決定した定造は自らの死を覚悟していた。そこで、そのハガキを啓太に託し、もし啓太が生き残ったならば、そのハガキを持って妻に会い、定造がハガキを見たことを伝えて欲しい、というのだった。
定造の妻である友子は、家が貧しいために女郎として売り飛ばされそうになっていた過去があった。そんなところを定造の家族に救われ、彼女は定造の妻となったのだった。そして、戦争の最中、友子の元に訃報が届く。それは、定造がフィリピンで戦死したという知らせだった。
定造を失った友子だったが、彼女はそのまま定造の家族と一緒に生活をすることとなる。そして、彼女たちが暮らす村にはとある習わしがあった。それは、長男が亡くなった場合、次男が後継になるというものだった。長男であった定造が亡くなったことで、次の後継は次男である三平に決定した。
映画『一枚のハガキ』のあらすじ【転】
そして、なんと、夫を亡くしたばかりの友子は三平と再婚させられることになるのだった。彼女はそれを了承しながらも、内心は嫌で仕方がなかった。そして、何で死んだ、と定造を思いながら一人涙するのだった。
しかし、なんと再婚相手である三平も、その後すぐに徴兵されてしまう。そして、「きっと戻ってくる」と言い残し、三平もまた、戦争で命を落としてしまうのだった。息子二人の訃報を受けて、心労が祟り父親、勇吉が倒れ亡くなってしまう。そして、勇吉の妻、つまり友子にとっての姑であるチヨは、勇吉の後を追うことにした。「このうんのわるいいえをすてて、にげてつかあさい」、そう友子に書き残し、60円を彼女に残したチヨは、そのまま一人首を吊ったのだった。
こうして、友子は一人取り残されてしまった。しかし、友子に行くあてはない。彼女は一人になっても、定造と過ごした家に留まり続けるのだった。そして、それから少しして広島に原爆が落とされたのだ。
映画『一枚のハガキ』の結末・ラスト(ネタバレ)
そして、原爆投下によって、多くの被害者を生んだ戦争は終結を迎えた。100名いた中年部隊で生き残ったのは、たったの6人だけとなっていた。そして、幸運なことに啓太はその内の一人だったのだ。しかし、彼も幸運なことばかりではなかった。戦時中、啓太が亡くなったという訃報が流れていた。そして、なんと啓太の妻と、あろうことか啓太の父親が肉体関係を持ってしまい、啓太を置いて大阪に駆け落ちしてしまっていたのだった。
一人になってしまった啓太は故郷にも居づらく、いっそのことブラジルへ移住しようかと考える。しかし、啓太には定造から託された、例の頼みがあるのだった。そこで、彼はハガキを手に友子の元を訪ねた。何故夫が死に、啓太が生きているのか。一度は遣る瀬無い怒りを啓太にぶつけてしまった友子だが、啓太の気持ちも理解し謝罪をした。二人は定造の思い出話を交わしているうちに、少しずつ距離が縮まっていく。そして、戦争によって一人になってしまった二人の男女は、共に生活をすることになるのだった。
映画『一枚のハガキ』の感想・評価・レビュー
広島に生まれた監督が戦争映画を自分の最後の作品にするという事の重大さを感じながら観ようと決めた作品。
戦争というテーマは映画にする中でもとても重いテーマなのだが、重くさせすぎないような所々少し笑える場面もあったのでよかった。
戦争で夫を亡くした女性の役を大竹しのぶさんが演じていたが、未亡人の悲しみや強さを表現した演技が素晴らしかった。
戦争に行って死んでしまった人を想う側を描き、戦争の悲しさを訴えかけてくれる作品だった。(女性 20代)
何もかも、すべて「戦争が悪い」戦争によって人生が変わってしまった人達のお話。戦争映画と言うと、戦いのシーンや兵士たちの心情が描かれる暗く、重いものが多いですが、この作品で描かれていたのは戦争によって「人生」を変えられてしまった「周り」の人たちのストーリーでした。
くじ引き一つで決められてしまった人生。そのくじ引きで死んだ夫と生き残った男。夫にもその弟にも、義理の父や母もみな戦争のせいで無くしてしまった女。とにかく全ての人が悲しくて、苦しくて「戦争のせいで」と思いながらも、生きていくしか無かった時代に胸が締め付けられる思いでした。(女性 30代)
戦争の悲劇を、あえて静かで地味な日常の中に落とし込んだ名作。たった一枚のハガキが、人の運命を決定づけるという展開に胸が詰まりました。ラスト、良多と友子が言葉少なに生きていこうとする姿が深く心に残ります。新藤兼人監督の遺作にふさわしい、骨太な一本。(20代 男性)
この映画は「戦争」そのものを描かず、その爪痕を受け止める“残された者たち”の物語。女性の立場から観ても、夫を戦争で失った友子の痛みがリアルに響いてきました。日常の静けさの中に潜む苦しさと、それでも生きていく強さが美しく描かれていました。(30代 女性)
モノクロームのような映像美と、抑制された演出が素晴らしかった。言葉よりも表情や間で語る映画。戦争映画と聞くと過激な描写を想像しがちだけど、これは逆。戦争が終わっても苦しみが続く現実を淡々と描いていて、観終わったあと深い余韻が残りました。(40代 男性)
女性目線では、友子という女性の強さと優しさに感情移入せずにはいられませんでした。彼女の中にある怒り、諦め、そして最後の微かな希望。それらを全て受け止める姿に、自分の中の何かが揺さぶられました。丁寧な作りで、時間をかけて味わいたい映画です。(50代 女性)
一見地味な展開だけど、細部に詰まったリアルな感情表現に引き込まれた。良多が生き残ったことへの葛藤と、戦地に送られた者たちの無念。それを背負ってなお、人として生きることの意味を問いかけてくる映画でした。現代にこそ観られるべき作品。(30代 男性)
戦争に巻き込まれた女性たちの人生が、こんなにも深く静かに描かれる映画は貴重です。友子の立ち居振る舞いから滲み出る感情に何度も胸を打たれました。表現は控えめなのに、心に残るシーンばかり。ラストの“希望”が、すごくささやかで愛おしいです。(20代 女性)
役者の芝居が素晴らしくて、特に豊川悦司の演じる良多の“生きづらさ”が痛いほど伝わってきました。一枚のハガキが命を救い、そして呪いにもなる。そんな物語を通して、戦争のもたらす理不尽さと、人間の再生力を感じられる作品でした。(40代 男性)
本当に静かな映画。でも、その静けさの中に、言葉にならない怒りや哀しみが凝縮されている。女性としては、戦争によって奪われた時間や感情をどう抱えていくかがとてもリアルでした。生き残った者の苦しみがひたすら丁寧に描かれていて、忘れられない映画になりました。(30代 女性)
映画『一枚のハガキ』を見た人におすすめの映画5選
『母と暮せば』(2015)
この映画を一言で表すと?
「母の想いは死を越えて息子に寄り添う、祈りの物語」
どんな話?
長崎で原爆により命を落とした息子と、残された母が不思議な再会を果たす。やがて心の中で語り合いながら、失われた日常を取り戻そうとする切なく温かい人間ドラマ。
ここがおすすめ!
戦争の悲劇を背景に、母と子の深い絆を描いた作品。『一枚のハガキ』同様、死者と生者が心を通わせる“静かな感動”に満ちており、観終わったあと優しさに包まれます。
『この世界の片隅に』(2016)
この映画を一言で表すと?
「戦時下の暮らしの中に、確かに存在した“普通の幸せ”」
どんな話?
広島・呉に嫁いだ少女すずが、戦争の影響を受けながらも懸命に生きていく。食卓、家族、ささやかな日常――何気ない営みの中にある尊さを丹念に描くアニメーション映画。
ここがおすすめ!
戦争を大きく描くのではなく、“個人”の視点で描くことで、よりリアルに、深く心に響く作品。『一枚のハガキ』が持つ“語られなかった戦争”を見つめ直す一本です。
『東京裁判』(1983)
この映画を一言で表すと?
「記録映像が語る“戦後日本”の出発点」
どんな話?
戦後、日本の未来を大きく左右した極東国際軍事裁判(東京裁判)の様子を、実際の映像と資料をもとに再構成。あの時代の“正義”と“罪”の意味を静かに問い直すドキュメント。
ここがおすすめ!
戦争を終えたあとの人々が何を背負い、どう生きたかを映し出す重厚な一作。『一枚のハガキ』の背景にある時代を、より深く理解したい人におすすめです。
『火垂るの墓』(1988)
この映画を一言で表すと?
「戦争が奪ったのは、命と共に“未来”だった」
どんな話?
戦火の神戸で孤立した兄妹が、生きる術を模索しながら懸命に暮らしていく。空腹と孤独の中、彼らが見つめたものは、優しさと絶望が交錯する日本の現実だった。
ここがおすすめ!
感情を抑えた描写だからこそ深く突き刺さるアニメーション映画の金字塔。『一枚のハガキ』同様、戦争の“影”を描きながら、見る者の心に静かな涙を残します。
『黒い雨』(1989)
この映画を一言で表すと?
「“生き延びた人々”の苦悩が語る、戦争の“その後”」
どんな話?
広島で被爆した女性が、差別や誤解、病に苦しみながらも懸命に生きる姿を描く。戦争が終わっても癒えない“心と体の傷”に、深いまなざしを注ぐヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
『一枚のハガキ』のように、戦後の社会や人々の“その後”に焦点を当てた貴重な作品。生きることの意味を問い、見終えたあと、静かな余韻が心を包みます。
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