この記事では、映画『いつか読書する日』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『いつか読書する日』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『いつか読書する日』の作品情報
上映時間:127分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:緒方明
キャスト:田中裕子、岸部一徳、仁科亜季子、渡辺美佐子 etc
映画『いつか読書する日』の登場人物(キャスト)
- 大場美奈子(田中裕子)
- 高校生の時に交際していた相手との別れを機に、男性に恋することをやめた女性。50歳を迎え、変わらず仕事に勤しみ寂しさを忘れている。ある日、想いを寄せる相手の妻と話したことで人生が変わり始める。
- 高梨槐多(岸部一徳)
- 美奈子と互いに想い合いながら避け続けている男性。父親が美奈子の母親と不倫中に事故死し「平凡」に生きることを目標にしている。末期がんの妻を自宅療養で支えていた。
- 高梨容子(仁科亜季子)
- 槐多の妻。末期がんを患い病床で槐多の介護を受けて生活していた。自分の余命を見込んで美奈子と槐多に新しい人生を用意した存在。
- 皆川敏子(渡辺美佐子)
- 美奈子の母親の親友。美奈子が生まれたときから成長を見守っている存在。槐多に想いを寄せていることも知りながら、結婚の良さを伝えている。
映画『いつか読書する日』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『いつか読書する日』のあらすじ【起】
ずっと同じ町に住み、50歳を迎えた大場美奈子。彼女が15歳の時に書き起こした未来への手紙は、その通りになった。早朝に牛乳配達をして、昼間はスーパーでレジ係をする忙しない日々は予想外であったが。町のことはおおよそ把握し、親しくする亡き母の友人・敏子もいる。
高梨槐多は自宅療養中の妻・容子の介護に献身的である。結婚して長いものの、本音の見えない槐多が飲めない牛乳を取っている理由を知り、容子は初めて人間味を覚えた。体調や出来事を日々書き留めている容子のメモには、「全て判った」と書き残されていた。
美奈子と槐多は同じ町に住みながら、特に交流は持たなかった。スーパーで働く若い同僚・マリが店長と朝からキスしている現場を見てしまった美奈子。冷静な表情で「犬や猫じゃあるまいし」と見守る。一方で槐多は役所務めだ。帰り道に美奈子が働くスーパーによることはあるが、他のレジに並ぶ。互いの存在に気付きながらも交わらない二人だが、実は高校時代に交際していた。しかし、美奈子の母親と高梨の父親が不貞を起こし引き裂かれてしまったのだ。

映画『いつか読書する日』のあらすじ【承】
敏子の夫・真男の通院に付き合った美奈子。敏子は高校生の時に両親を亡くした美奈子の成長をずっと見守ってきた存在だ。当然、槐多と付き合っていたことも知っているが「結婚」について頑なに考えを変えない美奈子を心配している。
スーパーに時折万引きをする子供が現れる。槐多が役所の児童課に勤めていることを知っている美奈子は、不意に槐多の名前を出してしまった。元々この子供を気にかけていた槐多はすぐにスーパーへ引き取りに来た。二人は言葉を交わすことなく、会釈だけをしてすれ違うのだった。
職務としてこの子供のことを気にかけていた槐多。小さな子供二人がゴミだらけの環境で身を寄せ合う姿を目の当たりにした槐多は言葉を失った。その頃店長にフラれたマリを慰めていた美奈子は「くたくたに疲れてしまえば寂しくはならない」とアドバイスをする。その帰り店長に「処女か?」と聞かれた美奈子は何も答えられず店を出るのだった。
久しぶりに槐多と目を合わせた美奈子は、秘めた思いを匿名の投稿に載せてラジオに投稿した。その翌日、美奈子は珍しく寝坊をしてしまうのだった。
真男の痴ほうが急速に進んだ日があった。何度もトイレで眠っては時間の経過に動揺する。元英文学者である真男は敏子なしでは生活もままならなくなった。小説家である敏子は真男との生活をコラムにして欲しいと依頼を受けたが、美奈子の純愛を題材にしたいと考えているのだった。
映画『いつか読書する日』のあらすじ【転】
美奈子のはがきがラジオで読み上げられた。偶然にもこの投稿とリクエスト曲を聞いた容子は、美奈子だと勘づいてしまう。自分の余命が長くないと予感している容子は、出せる力を振り絞り牛乳箱に「会いたい」と書いたメモを残した。
槐多の熱心な声掛けで、スーパーに来ていた子供たちは児童課だけではなく児童相談所も動き保護できることになった。感情を高ぶらせてしまった槐多は、一人車の中で子供たちに思いを馳せるのだった。
容子からの手紙は数日続いた。動揺から仕事も手につかない美奈子は、意を消して容子に会いに行った。容子はもう長くは生きられないこと、そして槐多はまだ美奈子のことを想っていることを伝えた。美奈子は「辛いです」とだけ告げ家を出てしまう。その夜、容子は槐多にも美奈子と一緒になってほしいことを伝えたが「平凡に生きる為には、美奈子は邪魔だ」と突き返すのだった。
容子の容態を考え、槐多は休暇願を出した。その日、真夫が家を飛び出してしまい、槐多は敏子と一緒に町中を探し回っていた。美奈子が真夫を見つけたとき、槐多も離れた橋で真夫を見つけていた。名字で呼んでも気づかない槐多に高校時代のような呼び方で声をかけてしまった美奈子。振り返る槐多の表情にハッとするのだった。
映画『いつか読書する日』の結末・ラスト(ネタバレ)
容子が亡くなった。葬儀の時、美奈子と槐多はそれぞれ容子のヘルパーから最期の手紙を受けとる。夫として素晴らしい人だった槐多への感謝と、互いに知らんぷりする二人への希望を託した手紙である。それを読んだ美奈子は、まず二人の時間が止まったきっかけを解こうと両親の事故現場に槐多と出向いた。
高校生の時の後悔を告げた美奈子は、容子の言葉を借りてこれまでの気持ちを伝えた。ずっと願っていたことは互いに同じである。二人は初めて互いの身体を求め合った。
新しい朝を迎えた槐多は、散歩中に保護した子供が川へ飛び込むのを見つけてしまった。配達を終えた美奈子が騒ぎに釣られ川へ向かったとき、子供は救助されていた。そのあとすぐに引き上げられた槐多の水死体を目の当たりにしてしまう。槐多の表情は不思議にも笑っていた。
長年の恋に終止符を打った美奈子。途中までしか上ったことのない階段を前に、大きく一息。そして初めて登り切った美奈子は、長らく住んだ町を丘の上から見下ろすのだった。
映画『いつか読書する日』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
不格好すぎるラブストーリーを見た。ここまでの純愛は見たことがあっただろうか?まるでピュアな時間に閉じ込められたような50歳の二人。あえて見て見ぬふりするもどかしさを、病床の妻が全て代弁してくれた。代わり映えのない舞台で、いたって地味な物語にここまで惹きつけられるのは女優・田中裕子の力なのだろう。間合いや目線で感情をひしひしと伝えてくる。「言えばいい」のにあえて「他人ぶる」のが正義である二人の関係に味わいを覚えるのは大人になった証拠なのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)
本作は、高校時代の恋人に想いを寄せたまま50歳まで独身を貫いた女性と彼女の住む町の人々を描いたラブヒューマンドラマ作品。
淡々とした日常の中に潜む中年2人の不器用な純愛。
とにかく田中裕子さんと岸部一徳さんが素敵だった。
特に、大場が毎朝高梨の家に牛乳を届けに行く時の早朝の静けさと瓶の触れる音が印象的だった。
そして、長崎の坂の多い街並みとストーリーがマッチしている点も良く、秘めた恋を応援していただけに結末はかなり衝撃的で切なかった。(女性 20代)
こういう言い方は間違っているのかも知れませんが、田中裕子は幸の薄い役が本当に似合います。彼女がいるだけで作品の世界観に深みが増し、切なさや哀愁が漂うのだから不思議です。そこに岸部一徳の独特の雰囲気が加わると、おじさんとおばさんのすれ違い続きの恋愛がここまでリアルに切なく感じられるのかと驚きました。
全体的に悲しい雰囲気の作品ですが、自分の心を押し殺し、憧れた人生を読書によって疑似体験している女性の姿に感動しました。(女性 30代)
中年の男女が再会するだけのシンプルな話かと思っていたけれど、その裏に隠された過去と想いの深さに心を打たれました。田中裕子さん演じる町子の表情の微妙な変化、佐藤浩市さん演じる公平の不器用な優しさに、ぐっとくる瞬間が何度もありました。過去に彼女が堕胎し、そのことが二人の距離を決定的に変えたという事実が明かされると、切なさが一層増します。静かなラストに、余韻が深く残る作品です。(40代 女性)
映像も演技も控えめなのに、心の奥まで沁みてくる映画。町子の毎日の新聞配達と、そこから始まる小さな再会が、長年の思いをゆっくりと解きほぐしていく様子がとても丁寧に描かれていました。高校時代の恋が“何もなかったこと”として封じられ、それが年月を経てもなお残っていたことが切ない。特に「読書する日が来ると思わなかった」というセリフに、希望と悔いが同居しているように感じました。(30代 男性)
田中裕子さんの抑えた演技が光る作品でした。大きな事件が起こるわけでもなく、人生の“取り返しのつかない過去”を静かに受け止めていく時間が流れている映画。高校時代の思い出、そして長年の孤独が描かれる中、二人が再会し、わずかに心が通じ合う瞬間が本当に尊く感じました。エンディングの余白がまた良くて、「続きが観たい」ではなく「続きは自分で考えたい」と思わせる映画でした。(50代 男性)
こんなにも静かで、こんなにも切ない恋愛映画は初めてかもしれません。誰にも言えなかった過去を持つ町子と、家庭を持ちながらも心の中でずっと彼女を思い続けていた公平。再会の後も、声高に感情をぶつけるのではなく、目と間で語る演技が本当に見事でした。結ばれないけれど、気持ちだけは繋がっていた二人の関係に胸が締めつけられました。(30代 女性)
観終わったあと、何とも言えない寂しさと静かな感動が残る映画でした。町子と公平、それぞれの人生の“後悔”がにじみ出る描写が秀逸。とくに堕胎の事実が中盤で明かされると、今までの二人の距離感や表情が一気に意味を持ってくるのがすごい。人生に「やり直し」はないけれど、互いを思い合う心は変わらないと教えてくれるような作品でした。(60代 男性)
「静かな愛」のかたちを丁寧に描いた良作でした。田中裕子さんの新聞配達シーンが繰り返されることで、町子の日常と空虚さがよく伝わってきて、観ていて胸が詰まりました。公平との再会が彼女の生活に少しだけ光をもたらし、それでもすべてが報われるわけではないところがリアルで好きです。ラストの図書館のシーンが本当に切なくて美しかったです。(20代 女性)
台詞が少ないのに、すべてが伝わってくる。そんな映画でした。高校時代の恋人が、何十年も経っても心のどこかで大切に思っている存在だったという描写に、淡いけれど深い感情がこもっていて胸を打たれました。特に、再会後に2人が並んで歩くだけのシーンで涙が出たのは、登場人物たちの人生がそこに全部詰まっていたからだと思います。(20代 男性)
映画『いつか読書する日』を見た人におすすめの映画5選
東京物語
この映画を一言で表すと?
静かに流れる時間の中で、家族のすれ違いとぬくもりを描いた永遠の名作。
どんな話?
地方に住む老夫婦が、東京に住む子どもたちを訪ねるが、忙しさの中で歓迎されず、やがて母が倒れてしまう。変わりゆく家族の形と、世代間の思いのズレを繊細に描いた小津安二郎監督の代表作。
ここがおすすめ!
『いつか読書する日』と同じく、日常の中に潜む感情の機微や、語られない想いが大きなテーマ。派手さはないが、心に静かに染み入る余韻と、年齢を重ねるほどに深まる味わいがあります。
歩いても 歩いても
この映画を一言で表すと?
すれ違いながらも寄り添う家族の、不器用な愛を描く現代の名作。
どんな話?
亡き長男の命日に実家に集まった家族。普段は会わない親兄弟の間で、積み重なった小さな確執や愛情が顔を出していく。阿部寛、樹木希林など実力派俳優陣による、是枝裕和監督作品。
ここがおすすめ!
人生における「取り返せない時間」や「言えなかった言葉」の重さを、『いつか読書する日』と同様に感じさせる作品。ゆったりとした時間の流れとリアルな人間模様が魅力です。
八日目の蝉
この映画を一言で表すと?
罪と愛の狭間で揺れる女性たちの、深く静かな逃避行。
どんな話?
不倫相手の子どもを誘拐し、自分の子として育てながら逃げる女と、その子の成長後の物語。血のつながり以上の絆と、人生の選択について問いかけるヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
過去の選択に縛られながらも前に進もうとする女性の姿は、『いつか読書する日』の町子にも重なります。切なくも力強い女性の生き様に、胸を打たれること間違いなしです。
しあわせのパン
この映画を一言で表すと?
日常の食卓と風景が、傷ついた心をそっと包み込む、北海道発のヒューマンドラマ。
どんな話?
北海道の湖畔でパンカフェを営む夫婦のもとに、さまざまな事情を抱えた人々が訪れる。食事と会話を通して、少しずつ人の心がほどけていく姿を四季の移ろいとともに描く。
ここがおすすめ!
日常のさりげなさを愛おしく思える作品。『いつか読書する日』と同じく、派手な展開はないが、温かく優しい眼差しで人と人生を描いています。観た後はきっと、パンとコーヒーが恋しくなるでしょう。
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
“普通の暮らし”から切り離された子どもたちの、残酷な現実と静かな希望。
どんな話?
母親に置き去りにされた兄妹4人が、世間に知られずに暮らし続ける姿を描いた是枝裕和監督作品。最年少の主演で柳楽優弥がカンヌで主演男優賞を受賞したことでも話題に。
ここがおすすめ!
『いつか読書する日』が描く“言えない過去”や“孤独”と通じる感覚を、子どもの視点で静かに描いています。深い悲しみの中にも、かすかな光を感じさせる余白のある作品です。
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