映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』の概要:27歳の若さで逝去したロックシンガー、ジャニス・ジョプリンの半生を追うドキュメンタリー作品。ジャニス本人による手紙や、身近にいた人々のインタビュー映像を用いて、監督エイミー・バーグが手掛けている。
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』の作品情報
上映時間:103分
ジャンル:ドキュメンタリー、音楽
監督:エイミー・J・バーグ
キャスト:ジャニス・ジョプリン、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー、クリス・クリストファーソン、ボブ・ウェア etc
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』の登場人物(キャスト)
- ジャニス・ジョプリン
- 個性的な声が評判を呼び、1960年代後半からアメリカで人気を博したロックシンガー。幼いころから容姿にコンプレックスを抱えていた。キャリアを積むと同時にドラッグやお酒におぼれていく。
- サム・アンドリュー
- ギタリストとしてジャニス・ジョプリンを支え続けた人物。ジャニスが最初に加入したバンド「ビッグ・ブラザー」の起案者であり、「ザ・コズミック・ブルース」でも一緒に活動している。
- カントリー・ジョー・マクドナルド
- ジャニスが加入したバンド「ビッグ・ブラザー」と共に「シスコ・バンド」として全盛を極めた「カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ」のメンバー。
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』のあらすじ【起】
パワフルは歌声で世界を魅了してきたロックシンガーのジャニス・ジョプリン。27歳の誕生日を迎えたとき、2年前とは大違いの環境に身を置いていた。成功への鍵は「野心」だと語るジャニスは「大勢からの愛」が欲しいのか自分に問いかけていた。
ジャニスと共にアメリカ・ポートアーサー幼少期を過ごした幼なじみのカーリーンは、「幸か不幸か子供らしく振る舞うことのできない子供だった」と語る。聖歌隊の属していたジャニスだが、団体行動が苦手で問題ばかり起こすため追い出されてしまったという。
個性を追求し波風を立てれば周囲の注目を集められると勘違いしたまま成長したジャニス。石油会社に勤める仕事一筋な父親と自由にさせる母親の教育方針により、ジャニスは兄弟とは違い自由奔放に過ごしていた。
高校に入学後は男子とつるみたがったというジャニス。トラブルメーカーであったが、この頃からレコードそっくりに歌う特技を身に着けていた。音楽の溢れるテキサス州・オースティンに興味を持ったジャニスはよく出向くようになり、大学へ進学した。
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』のあらすじ【承】
ブルースを歌うようになったジャニスは、「ウォーラー・クリーク・ボーイズ」というバンドに加入した。しかしフォークソングを好む者にはジャニスのブルースは評判が悪く、大学でいじめに遭ってしまう。
本や哲学を好む友人と出会い、ジャニスの興味は作家へと移行する。サンフランシスコに移り住んだジャニスはブルースを極めるシンガーたちに浸透し、生き方を真似するだけでなくドラッグにも手を出してしまう。
ステージでの称賛だけと恋人のピーターの存在がジャニスの支えになっていた。ドラッグの影響でやせ細ってしまったジャニスは、ピーターと一緒に幸せになるためにドラッグを絶とうと一度帰郷する。ジャニスの両親にも挨拶を済ませていたピーターだが、ある時から手紙の返信が滞るようになる。それは他の女性を妊娠させてしまったからであった。
ジャニスの歌声に魅了されたメンバーからバンド・ビッグ・ブラザーに誘われ、ジャニスはボーカルとなった。音楽での成功を夢見て、仲間との時間を楽しむジャニス。他のアーティストからも多大な影響を受け順調に歩みを進めていたように思えたが、ジャニスは悩み始めていた。音楽の先を見込んだプロデューサーの話やレーベルの誘いに魅力を感じ始めていたのだ。
ビッグ・ブラザーのメンバーも状況を理解できないうちに、レーベルと契約をしてしまったジャニス。それはジャニスだけではなくビッグ・ブラザー自体も束縛する契約であった。
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』のあらすじ【転】
モンタレーで開催される初のポップ・フェスティバルへの出演が決まったジャニスたち。主催者の一人はThe Mamas & the Papasのマネージャーである。ノーギャラ同然で快諾した出演者たちだが、突如映画出演に関する契約書へのサインを求められたという。ビッグ・ブラザーは出演を拒否したが、映画にはジャニスの出演が必要だと強い説得を受けるのだった。
映画出演を機にビッグ・ブラザーは「シスコ音楽の新生」として注目を集めた。はみ出し者として扱われることが多かったジャニスはこれまで感じたことのない感覚に満たされ、次の目標も見つけることができた。コロムビアと契約し、「シスコ・サウンド」を多く生み出していくのである。
ビッグ・ブラザーはゴールドディスクも受賞した。ロサンゼルスを拠点に、ニューヨークと行き来し精力的に活動した。しかし、周囲の人間やファンが求めたのはジャニスの才能である。ビック・ブラザーを辞め、新しいバンド「コズミック・ブルース」を組むことにしたジャニスは、この頃から自分ではなく期待される「ジャニス・ジョプリン」を演じるようになっていた。
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』の結末・ラスト(ネタバレ)
コズミック・ブルースは結成早々にヨーロッパツアーに出向いた。見事に全公演を成功させ、バンドメンバーとの絆を深めていったジャニス。ステージの上では薔薇色の世界を実感するジャニスだが、ステージを降りるたびアルコールやドラッグが手放せなかった。
再びバンドを解散させ、マネージャーと二人きりになったジャニス。ブラジルに放浪したジャニスはデイヴィットと出会い、恋に落ちる。ドラッグを絶ち本来の自分に戻ることができたが、デイヴィットが仕事でジャニスと離れると寂しさから隠れてドラッグに手を出してしまったという。
すっかり落ちぶれたジャニスに、世間の目は厳しかった。再び歌で成功したいと願ったジャニスはドラッグを絶ち、これまでとは違う発声にも積極的に取り組んでいく。さらにジャニスはウーマンリブの象徴としても脚光を浴びたのだった。
しかし、ジャニスは孤独に打ち勝つことができなかった。ドラッグではなくアルコールが手放せなくなる。自信作の曲を収録するはずの日、ジャニスはスタジオに現れることなくベッドで亡くなっていた。
ホテルのフロントに預けられた電報には家族や関係者への気持ちがつづられていた。3か月後、アルバム「パール」が発売。世界的なヒット作となるのだった。
映画『ジャニス リトル・ガール・ブルー』の感想・評価・レビュー
ジャニス・ジョプリンと聞くと、パワフルな歌声と60年代後半のカウンターカルチャーの象徴という印象がまず浮かぶ。しかし今作は、ジャニスが家族に送った手紙やインタビューを通じて一人の女性としての人生の一部をみることができた。最後に明かされる死の間際に遺した電報が特に印象的である。忙しくとも家族を想う寂しがりな一面は共感する人もいるのではないだろうか。スターダムに乗ったジャニスの心の内を少しだけ見られる今作はとても貴重である。(MIHOシネマ編集部)
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