フランスを巡り、90歳の映画監督と35歳の写真家が様々な幸せの形を写真に残していくドキュメンタリー。『タイム誌』が2017年のトップテン作品の1本に選んだ完成度の高い一本。
映画『顔たち、ところどころ』の作品情報
- タイトル
- 顔たち、ところどころ
- 原題
- Visages Villages
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年9月15日(土)
- 上映時間
- 83分
- ジャンル
- ドキュメンタリー
- 監督
- アニエス・バルダ
JR - 脚本
- アニエス・バルダ
JR - 製作
- チャールズ・S.・コーエン
ジュリー・ガイエ
エチエンヌ・コマール - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- アニエス・バルダ
JR - 製作国
- フランス
- 配給
- アップリンク
映画『顔たち、ところどころ』の作品概要
トロント国際映画祭の最高賞にあたる、ピープルズ・チョイス・アワード、さらには第70回カンヌ国際映画祭にて最優秀ドキュメンタリー賞ルイユ・ドールを獲得した世界を揺るがしたドキュメンタリー映画。映画監督であるアニエス・バルダと写真家、JRがタッグを組んだ奇跡の作品。世界を股にかける芸術家二人が、フランスの田舎町を訪れる。そして、そこで暮らす人々の様子を撮影しながら、彼らと共に作品を作り上げていくドキュメンタリー作品。
映画『顔たち、ところどころ』の予告動画
映画『顔たち、ところどころ』の登場人物(キャスト)
- アニエス・バルダ
- ベルギー出身で、パルムドール名誉賞、アカデミー名誉賞を獲得した名映画監督。60年以上にわたり映画を撮り続けている。
- JR
- 都会から紛争地帯まで、あらゆる場所で参加型アートプロジェクトを行なっている男性。
映画『顔たち、ところどころ』のあらすじ(ネタバレなし)
90歳を迎える高齢の映画監督アニエス・バルダ、そして、これまで様々な場所を渡り歩きオリジナリティに富んだアートプロジェクトを行ってきた写真家、JRの二人は、フランスのとある田舎町に降り立っていた。年齢も仕事も異なる二人の天才芸術家がその場に居合わせたのは偶然ではなく、とあるプロジェクトを共に行うためであった。そのプロジェクトとは、その地域に住む人々と共に作品を作り上げ、その様子を写真やフィルムに残していくというもの。アニエスとJRは、一般の人々との交流を通して、彼らが暮らす毎日の中に溢れる幸せの一場面を切り取っていく。二人の天才アーティストは、一般の人々と最終的にどのような作品を作り上げるのだろうか。
映画『顔たち、ところどころ』の感想・評価
一見凸凹な二人が織りなす感動の物語
今作のメインの登場人物はたった二人のみである。一人目はフランス出身の写真家兼アーティストであるJR。もう一人は、ベルギー出身の女性映画監督、アニエス・バルダである。35歳であるJRに対し、アニエスはなんと90歳。60歳近くの年の差がある、出身も職種も全く異なる二人が共にフランスの田舎町を巡るという前代未聞のドキュメンタリー映画。一見凸凹にも思える二人の関係性だが、しかし、やはり第一線で輝き続けるプロ。それぞれの持つ才能が発揮され、それらがマッチすることでより個性的な作品に仕上がっている。また、年齢の異なる二人がタッグを組んだというだけあって、より幅広い世代に受け入れられる作品にもなっている。世界を股にかける一流の才能が目にできる作品。
一見パッとしない、何気ない日々が輝く
今日はつまらなかった、特に何もしなかった。日々を過ごしていて、そう思う時はないだろうか。しかし、そんな一見つまらない、何の変哲のない日であっても、そこには自分が気づいていないだけで様々な驚きや幸せが潜んでいる。今作の大きな魅力の一つは、その人にとって特別な日ではなく、何気ない日常を切り取っている点である。その地域に暮らす人々と共に作品を作り上げ、力強く毎日を生きる人々の何気ない瞬間をフィルムに収めた今作。何気ないはずの日々の中にも笑顔が輝いており、平凡な日々の尊さを改めて感じることができる。今作はフィクションではなくドキュメンタリーである。そのため、その笑顔は作り物ではなく、人々の本心であることが分かる。
疲れた時に見るべき、心が温まるストーリー
今作は、JRとアニエスの二人がフランスの田舎町を旅しながら展開していくロードムービーである。フィクションであるアクション映画やサスペンス映画のように、何か大きな事件が起こるわけでもなく、田舎町ののどかな雰囲気が画面越しに作中を通して伝わってくる。しかし、疲れている時にこそ、そういった穏やかな映画は心に響くもの。田舎町の雰囲気や、そこに暮らす人々の温かさ、そして、JRとアニエスの二人と人々の交流が、忙しい毎日の中疲弊してしまった心を癒してくれる。見終えたあと、どこか旅に出たくなる一本。時間がなくて出かける暇もないという人も、この映画を見て旅行した気分を味わい、少し忙しさから解放されるのもいいかもしれない。
映画『顔たち、ところどころ』の公開前に見ておきたい映画
365日のシンプルライフ
「幸せ」とは何か、その答えを求めさり気ない日常の一場面に焦点を当てたドキュメンタリー映画という点で『顔たち、ところどころ』と共通している作品。ありとあらゆる物に溢れた現代。ある日、彼女に振られたことをキッカケにそんな「物に囲まれた」生活に疲れてしまった男性がいた。その男は、映画監督であるペトリ・ルーッカイネン。そんな彼は、とある実験を始めるのだった。ルールは4つ、1.自分の持ちモノ全てを倉庫に預ける、2.1日に1個だけ倉庫から持ってくる、3.1年間続ける、4.1年間何も買わない。そんな突飛な設定が話題となったドキュメンタリー映画。「自分にとって本当に必要なものは何か」、「本当の幸せとは何か」を追い求めている。
詳細 365日のシンプルライフ
しあわせはどこにある
アニエスとJRという二人の芸術家が世界に飛び出し、そこに暮らす人々の様子を見て幸せとは何かを何気ない日常から見つけ出すのが最新作、『顔たち、ところどころ』である。これと共通のテーマの映画が本作、『しあわせはどこにある』。日々を平穏に生きていた精神科医であるヘクターは、患者の悩みを聞いているうちに、「本当の幸せとは何か」という疑問に思い悩んでしまう。そして、その答えを求めるべくヘクターは旅立ち、様々な人との出会いや体験を通して、「幸せ」について考えていく。ドキュメンタリー作品である『顔たち、ところどころ』とは違い、こちらはフィクション作品。主演を務めた、近年大作に引っ張りだこのサイモン・ペグの演技力も必見。
詳細 しあわせはどこにある
幸福
本作の登場人物の一人である、アニエス・バルダが監督を務めた作品。今作で初めてアニエスを知った人は、彼女の本職が映画監督であることを知らない人も多いのではないだろうか。アニエスはベルギーを代表する映画監督であり、「ヌーヴェルヴァーグの祖母」とも呼ばれる偉大な人物。そんな彼女の代表作ともいうべきが今作。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した今作は、フランソワという妻子を心から愛する男性が、若い女性に恋心を抱いてしまうところから始まる。フランソワにとっての幸せとは何か、そして、フランソワの家族にとっての幸せとは何かという、「幸せ」をテーマにした作品。幸せを探求する新作、『顔たち、ところどころ』とも共通点が多く、その原点とも呼ぶべき作品である。
詳細 幸福
映画『顔たち、ところどころ』の評判・口コミ・レビュー
ヴァルダとJR「顔たち、ところどころ」みてきた。ず〜っと愛おしくて、素敵なドキュメンタリー。ゴダールがゴダールらしい一面みせてたのと、ヴァルダのいっとき見せる緊張感が印象的だった
— アヤ (@bebeofst) 2018年9月15日
UPLINKで『顔たち、ところどころ』
二人の映像作家が訪れた先で人々の話を聴き、写真を撮り、引き伸ばして所縁の場所に貼る。ただそれだけで土地の記憶、人々の普通の生活の豊かさが立ち現れてくる。
つまり現代の俳諧紀行だなと思った。挨拶と祝福と交歓。https://t.co/bwuhyG6HJG— 冬泉 (@etoileerrante1) 2018年9月15日
🎦『顔たち、ところどころ』究極の「インスタ映え」映画。一般人の等身大写真を町に貼って行くなんて、日本じゃ絶対できないアイディア。フランスの人たち、自由すぎ😉ただの遊び心だけじゃなくて、ちゃんとメッセージもあるんだと感じて良い。
— Horikawa Kouhei (@horrycoke) 2018年9月15日
『顔たち、ところどころ』88歳と33歳がカメラを携えて旅をする。田舎をめぐり、そこに住む人たちの悲喜交々を写し出す。やさしい絵本のようなドキュメンタリー映画でした。大好き。 https://t.co/AyuQVhN0EW
— ボン (@eri1_10bit) 2018年9月15日
ヴァルダ監督自身の昔の思い出も交錯しながら、新しく出会う風景とそこに住む人々の顔たちを映像に刻みつけるドキュメンタリー映画『顔たち、ところどころ』いろんな人に会えて、一緒に旅をしてるような楽しさでした。 pic.twitter.com/Xo1eucMAYj
— パラパラ映画 (@paraparaeiga) 2018年9月15日
『顔たち、ところどころ』初日鑑賞、抜群にユニークな傑作ドキュメンタリーでした。こんなに祝福されるストリートアートがありうるのかという驚きと、88歳の少女アニエス・ヴァルダの可愛らしさと、ゴダールさんェ…、と映画オタクも楽しめる万人におすすめの作品です。 https://t.co/YZJOwq6rC7
— Ryoichi Tanaka (@wiggling) 2018年9月15日
映画『顔たち、ところどころ』のまとめ
映画監督と写真家。異なる職業ながらも、いずれも何かを製作し世間に発表する点においては共通している。本作では、そんな物作りのスペシャリスト2人がフランスに暮らす一般の人々と共に作品を作り上げていく様子を描いている。才能ある二人のセンスと専門性が存分に発揮されることは勿論のこと、そこに一般の人のアイディアも加わることで作品はより深みを増していく。様々な地方で、悲しいことがありながらも日々を力強く生きていく人々がいることが分かる。二人の旅を通して、幸せとは何かを考えさせられ、そして、最終的には笑顔になれること間違いなし。
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