映画『心と体と』の概要:食肉加工場で働くエンドレは、新しくやってきた品質検査官のマーリアに興味を持ち始める。薬品が盗まれたことから犯人を特定するためのカウンセリングが行われたが、その時、エンドレとマーリアは二人とも同じ夢を見ていることを知る。
映画『心と体と』の作品情報
上映時間:116分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:イルディコー・エニェディ
キャスト:アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レーカ・テンキ、エルヴィン・ナジ etc
映画『心と体と』の登場人物(キャスト)
- エンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)
- 食肉加工場の財務部長。新しくやってきたマーリアに興味を示す。離婚歴があり、成人した娘がいる。左手が不自由。色恋とは数年前から離れている。
- マーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)
- 臨時で雇われた品質検査官。神経質で几帳面な性格。感情を出すのが苦手で他人と関わり合うこともあまり好まない。記憶力がずば抜けて良く、今まで自分の身に起きた出来事や夢の内容などは全て記憶している。
映画『心と体と』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『心と体と』のあらすじ【起】
食肉加工場で働く財務部長のエンドレは、産休の穴埋めとして雇われた新しい品質検査官マーリアを見かける。彼女を面接した同僚の話では、マーリアはかなりの堅物で扱いに苦労しそうだとのことだったが、エンドレから見ても確かに彼女は独特の空気を持っていた。
彼女の緊張をほぐそうとエンドレは気さくに話しかけるが、マーリアは他の女性職員と違って変わり者で、なかなか打ち解けようとしない。エンドレは左手が不自由だったが、そのことを平気で話題にするような女性だった。その性格から、同僚たちも距離を置くようになる。
彼女は品質規定をきっちりと守るため、今まで上質と判断されていた牛肉もマーリアの管理下ではランク落ちした評価を下されてしまった。新人のシャーンドルは女性たちの気を引こうとアピールを欠かさなかったが、マーリアのロボットのような歩き方を見た彼はそれを真似して彼女をからかう。
職場の薬品棚から交尾薬が盗まれる事件が発生する。牛たちを興奮させる薬で、投与すれば瞬時に発情するという。薬品棚に近づける人物は限られており、エンドレもその一人だった。彼は警察に容疑者リストを渡し、速やかな解決をお願いする。担当刑事は早急にメンタルヘルス検診を行うように言うと、クラーラという分析医を紹介した。
映画『心と体と』のあらすじ【承】
やってきた分析医のクラーラはとてもスタイルが良く、エンドレは思わず目を奪われてしまう。彼女はエンドレに性に関する質問をいくつかぶつけた。思いがけない質問内容に彼は驚いたが、やがてクラーラは夢の内容について尋ねてきた。エンドレはよく見る夢があった。その夢の中では自分は鹿で、もう一匹のメスの鹿と森の中を歩き回っていた。二匹で連れ添いながら草を探して食べ、小川で水を飲んだりする夢だ。
マーリアの診断が始まったが、彼女は今までに自分に起きた出来事を全て憶えていた。初潮の時期や病気になった日付などを正確に記憶していたのだ。クラーラはエンドレと同じように夢について質問した。だが、その内容を聞いて不信感を強くする。マーリアが話した内容はエンドレが話したことと全く同じで、自分はメスの鹿でオスの鹿と食べ物を探しながら森を歩いて水を飲んだと説明された。
クラーラは二人が共謀して悪ふざけをしているのではないかと思い憮然とするが、二人は口裏を合わせている訳ではなかった。全く同じ夢を見ていることを知ったエンドレとマーリアはお互いを意識するようになっていく。二人は夢について話し合うようになったが、次第に夢の中の鹿たちは距離を置くようになっていった。小さな湖を挟んで、二匹の鹿は見つめ合うようになる。
シャーンドルに言い寄られているマーリアを見かけたエンドレは、心配して自分の携帯番号を彼女に渡した。マーリアの番号を知りたかったが彼女は携帯を持っておらず聞くことはできなかった。幼少期からの恩師を訪ねたマーリアは彼から助言をもらい携帯を買うことにする。
マーリアには癖があった。品物や人形を使って対話ごっこをする癖だ。それによって自分の心を整理したり、会話のシミュレーションをしたりしていた。彼女はシャーンドルのことを怖いと感じていたが、エンドレのことは心の美しい人だと感じていた。翌日、彼女はエンドレに携帯を買うこと告げ、あなたは美しいと口にする。それはシミュレーション通りの言葉だったが、そうと知らないエンドレは突然の言葉にドギマギしてしまう。
映画『心と体と』のあらすじ【転】
携帯を買ったマーリアから連絡を受けたエンドレ。彼女は同じタイミングで眠りに入ってみないかと提案。その夜、エンドレは彼女に電話すると、僕を怖がらなくても大丈夫だと告げて同時に眠りに入った。二人は夢の中で素晴らしい体験をし、心の距離を縮めていく。
クラーラの診断が終わり、交尾薬を盗んだ犯人が特定された。エンドレはてっきり女好きのシャーンドルだと思っていたが、結果はエンドレと仲の良い同僚だった。彼は同僚に多くを追求せず、二度とするなとだけ告げると事件を終わりにした。シャーンドルに冷たい態度を取っていたエンドレは彼に今までの非礼を詫びた。
マーリアとランチに行ったエンドレは、同じ部屋で一緒に寝てみないかと提案。エンドレの部屋で実践してみるが、緊張した二人は眠りにつくことができない。二人は明け方までトランプをしながら話をし、エンドレはマーリアの記憶力の良さを知って驚いた。
エンドレはマーリアと親密になりたいと思っていた。だが、マーリアはまだ他人に触れられることが怖く、彼の手を避けてしまう。拒否されたエンドレはショックを受け、二人には再び距離ができていく。
だが、マーリアの心は次第にエンドレでいっぱいになっていった。恋に落ちた彼女はこの感情を理解しようと学習に勤しんだ。動物に触れたり、水しぶきを浴びたり、恋の音楽を聴いたりして知識と感覚を身につけていく。
心の準備ができたマーリアはエンドレと再び一緒に眠ってみたいと提案した。だが、彼女の気持ちとは裏腹にエンドレはうまくいかないと思い始めており、友達の関係でいようと言われ拒否されてしまう。
映画『心と体と』の結末・ラスト(ネタバレ)
エンドレに嫌われてしまったと感じたマーリアは、浴槽で手首を切って自殺を図った。そこにエンドレから電話が掛かってくる。彼女は浴槽を飛び出して大急ぎで電話に出た。エンドレはなんとなく電話したかったと切り出したが、終わり際にマーリアへの気持ちを伝えた。私はあなたのことを死ぬほど愛していると。自分も同じ気持ちだとマーリアが告げると、今から会いたいと言われる。
マーリアは病院へ行って手首の傷を治療してもらった。そのまま入院することを勧められたが、彼女はそれに従わずにエンドレの所へと向かって行く。お互いの心と体に正直になった二人は、初めて肉体関係を結んだ。愛し合った二人は心地よさの中で眠りに落ちていった。
翌朝、二人は一緒に朝食を食べた。マーリアは今まで見せたことのない笑顔を見せ、それを見たエンドレは幸せに思った。エンドレは、昨夜は夢を見たのかとマーリアに尋ねた。彼は見たかどうか憶えていなかったが、彼女も見ていない気がすると返事をした。
映画『心と体と』の感想・評価・レビュー
とてもシンプルな内容だが、それ故に分かりやすく見やすい。牛を殺す食肉加工場が舞台というのも面白く、死がすぐそばにあるからこそ性の感情が強くなるのが興味深かった。マーリアの過去についての説明はされないが、見ているだけで十分に想像できるものになっている。主に異性への恋心と愛情、性欲から引き起こされる心と体の動きについて丁寧に作られており、目新しさはないが心地いい時間が生まれている。(MIHOシネマ編集部)
人間の三大欲求を物凄く美しく、幻想的に描いた作品でした。明るく穏やかなエンドレと、 真面目で人とは違う雰囲気のマーリア。2人が同じ夢を見ていると言うのをきっかけに仲を深めていく様子は物凄くロマンチックだったと思います。
初めの感情にどうしたらいいかわからないマーリアがとてもリアルで可愛らしく、怖くないよ大丈夫だよと優しく接し、色々な提案をしてくれるエンドレも素敵でした。
食、睡眠、性の描き方が本当に素晴らしくもう一度見たくなる作品です。(女性 30代)
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