映画『クロエの祈り』の概要:赤十字医師としてイスラエルに住みながらパレスチナ難民キャンプ内の産婦人科病院に勤務するカナダ人クロエ。ある日、親しくしているパレスチナ人ランドが産気づくも検問所で足止めをくらい結果赤ん坊は死んでしまう。イスラエル人でもパレスチナ人でもない、部外者であるクロエを通して国際問題の今を知る。
映画『クロエの祈り』の作品情報
上映時間:102分
ジャンル:ヒューマンドラマ、戦争
監督:アナイス・バルボ=ラヴァレット
キャスト:エヴリーヌ・ブロシュ、サブリナ・ウアザニ、シヴァン・レヴィ、ユーセフ・スウェイド etc
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映画『クロエの祈り』の登場人物(キャスト)
- クロエ(エヴリンヌ・ブロシュ)
- 赤十字医師としてパレスチナの産婦人科病院に勤務しているカナダ人。住居はイスラエル側にあり、毎日検問所を過ぎてパレスチナ側に通う生活を送っている。ある日、パレスチナ難民キャンプ内で暮らす孤児、ユーセフがイスラエル軍のトラックによって轢き殺されたことをきっかけに自分に出来ることは何かを模索する。しかし友達のためを思えば思うほど結局自分は蚊帳の外の人間であり、何もすることは出来ないということに直面し苦悩する。
- ランド(サブリナ・ウアザニ)
- パレスチナ難民キャンプで暮らす妊婦。クロエの友人。後に懲役25年を言い渡される夫のジアドとの子供を身籠っている。クロエが働く産婦人科に定期検診を受け、難民キャンプ内のゴミ捨て場で使える物資がないかを探すのが日課となっている。ある日破水してしまうが、検問所で足止めを食い病院へ行くことができず子供を死産させてしまう。そのことをクロエの到着が遅かったせいだと言い張り、自爆テロを起こし自害してしまう。
- ファイサル(ユーセフ・ジョー・スェイド)
- ランドの兄。印刷店を営む。ある日、クロエの好意で許可証をもらい母親の生まれ故郷まで連れて行ってもらうも、今は真っ平らな大地となってしまった故郷を前に「自分たちだけでは何もできない」現実に苛立ち足早に去ろうとする。「ただみんなを喜ばせてあげたかった」クロエに「思い違いだ」と吐き捨てる。
- サフィ(Hammoudeh Alkarmi)
- ランド、ファイサルの歳の離れた弟。1人だけ色素が薄く相手が何かを言っても反応しない。いつも1人で難民キャンプ内のゴミ捨て場をうろつき、イスラエルとの間を挟んでいる大きな壁に向かって石を打ちつけている。
- アバ(シヴァン・レヴィ)
- クロエの友人でイスラエル人。クロエの住むアパートメントの下に住んでいる。兵役のため検問所で毎日身分証明書のチェックをしている。ある日、検問所で身分証明書を出すのを拒んだ男性を仲間が寄ってたかって虐めたのを見てしまう。それをきっかけに兵役のせいで自分の任務を放棄できないことを嘆き悲しむ。
- ミカエル(カルロ・ブラント)
- クロエと同じ病院に勤務する男性医師。クロエがサフィの死を記したポスターを病院内に貼っていることを咎める。クロエがパレスチナ・イスラエル問題に首を突っ込もうとしていることを心配し、注意している。
映画『クロエの祈り』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『クロエの祈り』のあらすじ【起】
イスラエルの繁華街、陽気な音楽が流れる中、グレーのリュックを背負った女性が男の子にぶつかりオープンカフェに入っていく。ぶつかられた男の子は道で籠の中に売られている鳩を観察する。
カナダ人の産婦人科医クロエはイスラエル人で友人のアバと夜の街を歩いて帰る。クロエはおもむろに携帯電話を取り出し、アバにパレスチナに向かって挨拶をしてくれと提案する。渋々挨拶をするアバだが思うような動画は取れず、2人は笑いながら家に帰るのであった。
朝クロエはカナダに住む母親とテレビ電話をしながら身支度をしている。赤十字医師としてパレスチナ難民キャンプで医療に従事する娘を母親は心配している。窓を見やると向かいの建物に住む女が煙草を吸っていた。
難民キャンプ内でランドの妊婦検診を行っているとイスラエル軍が建物のチェックに訪れる。武器をぶら下げ荒々しく建物内をチェックして回る兵士に悪態をつくランド。彼女の日課は難民キャンプ内の、ごみが渦高く積み上げられた場所から他の子供と同じように使えそうなものがないかを探すこと。その様子を黙って見守るクロエ。その時難民キャンプ内で銃声が聞こえ急いでランドの家へと走る。
映画『クロエの祈り』のあらすじ【承】
家に逃げ込むと重傷者が2名出ているとのニュースが流れていた。今回の事件で男性は全員学校に集合し、軍の検問を受けることになった。夜、ファイサルも他の男性と同じく学校に呼び出される。一列に並ばされ「テロ攻撃に賛成か」と検問を受けるのであった。
その夜、イスラエル側の検問所でアバを見かけると様子がおかしい。聞くと身分証明書を見せない男性に対して軍の男たちが取り囲み半裸にさせたという。その場で何も言えなかったことと、兵役で検問所に勤めなければならないことに対して絶望するアバであった。
その日も病院で母親と子供の相手をしていると同僚医師のミカエルから電話があり、今日は危険との理由で診療をストップすることを余儀なくされる。その頃、ランドはごみ溜め場で子供達にユダヤ人の使ったものは要らない、と指示していた。クロエは病院からの帰り道のごみ溜め場で孤児の少年ユーセフと鉢合わせになる。すると少年は向こうから軍のトラックが走ってくるのに気づき、トラックめがけて一直線に走り出す。トラックのボンネットに飛び乗り窓を叩き壊そうとするもひき殺されてしまった。そのまま走り去っていくトラック。クロエはただ茫然としてなす術もなかった。
映画『クロエの祈り』のあらすじ【転】
少年の死を悼み、ファイサル達は少年を棺に入れ、神に召されし殉教者よ、とパレスチナの旗を持ちキャンプ内を行進する。その列に参加するクロエ。次の日の朝、ラジオニュースに耳を傾けるもユーセフのことについては何も報道されなかった。ランドからは白人女、難民キャンプ内では無力な存在だと痛いところを突かれ、クロエは何も言い返すことができない。
クロエは病院でユーセフのポスターを貼るも同僚医師のミカエルから深入りするな、常に忠実であれ、と忠告を受ける。
ある日、アバから許可書をもらってランドの母親の、今となっては廃墟となった生まれ故郷に行くクロエ達。もう来られないかと思っていた故郷の地を嬉しそうに歩き、クロエに感謝する母親とランド。しかし、兄のファイサルだけは「何もなくなってしまった」虚無感を煽るだけだと言い捨てていく。
ただみんなが喜ぶことをしたかっただけなのに、と落ち込むクロエはその夜アバと一緒にディスコへと繰り出す。気が付いた時には見知らぬ男性と中心街から遠く離れたテルアビブのビーチまで来てしまっていた。突然鳴る携帯電話に驚きつつ出ると相手は産気づいたランドからであった。急いで向かうも検問所で足止めされており、クロエが兵士に詰め寄り場所を通してくれと懇願するも「これは戦争なのだ。下がらないと国外退去させる。」と言われてしまう。ランドは車の中で出産し、取り上げた時には時遅く、子供を死なせてしまう。
映画『クロエの祈り』の結末・ラスト(ネタバレ)
子供を死なせてからクロエとランドとの間に距離が生まれてしまう。産後検診で病院を訪れたランドは、クロエがもっと早く到着していれば赤ん坊は死なずに済んだ、クロエのせいで赤ん坊は死んでしまった、国に帰れ、と吐き捨て、クロエはショックを受けてしまう。
イスラエルの中心街で自爆テロが起きる。映画冒頭男の子にぶつかりそのままカフェに向かったリュックを背負った女性はランドであった。鳩が映し出されその瞬間爆発音が起きる。地面には大量の携帯電話が黒焦げになって落ちていた。クロエが急いでファイサルの印刷店に向かうと、コピー機からランドの殉職を表すポスターが印刷中であった。無反応のファイサルと泣き崩れるクロエ。アバは検問所で泣きながら母親に携帯電話で無事を伝えるのであった。
ランドの歳の離れた弟は今日も1人イスラエルとパレスチナを隔てる高い壁に向かって石を打ち付ける。やっと空いた小さな隙間からイスラエル側を覗き込むのだった。
映画『クロエの祈り』の感想・評価・レビュー
人は生まれながらに自由と平等の権限を持っている、という名文句があるが、これは「身の安全」が確保された環境下で初めて唱えられる文句であることを改めて知った。安全が保障されていない人が自由と平等を謳うことができる日は一体いつ来るのか。この作品は日本では劇場未公開であったが(WOWOで放送)クロエと同じく「部外者」の私たちはまず「今」を知ることからしか平和への模索を始めることはできないし、知ることから平和への糸口を探すことができると確信した。(MIHOシネマ編集部)
好奇心や正義感が強い女性が苦手な私。何故かと言うと、私自身が他人に全く興味が無く「どうでもいい」と思っているからです。誰かのために何かしたい、私は一体何が出来るのだろうと考えるのは個人の自由ですが、私の場合「結局何も出来ないだろう」と思ってしまいます。
今作の主人公クロエは自分自身の置かれた立場や環境に苦しみ、悩みながらも自分自身の力を信じて何が出来るかを考えていて人として本当に尊敬出来ました。(女性 30代)
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