映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の概要:水城せとなの人気漫画「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」2作を原作とし、行定勲がメガホンを取った一作。優柔不断な男性が、大学時代の後輩と再会し同性愛に溺れていく様子を紡ぐ。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の作品情報
上映時間:130分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:行定勲
キャスト:大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ etc
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の登場人物(キャスト)
- 大伴恭一(大倉忠義)
- 広告代理店に勤める29歳。大学卒業後、結婚しているが子供はいない。他人の好意を拒絶できず受け入れてしまうため、不倫を繰り返していた。
- 今ヶ瀬渉(成田凌)
- 大学時代、大伴と同じサークルだった2つ下の後輩。初めて会った時から大伴に好意を寄せている。興信所の調査員として、大伴の妻から依頼を受け再会を果たす。
- 岡村たまき(吉田志織)
- 大伴の部下。些細なことに気が付き、熱心に仕事をこなすタイプ。大伴を慕っていて、上司以上の感情を持っている。複雑な家庭環境を背景に持つが、大伴にだけ明かしている。
- 夏生(さとうほなみ)
- 大伴と今ヶ瀬のサークル仲間。大伴とは大学時代に付き合っていたが、卒業を機に別れた。気の強いタイプの女性で、流されやすい大伴に飽き飽きとしていた。再会した大伴がバツイチであると知り、再び連絡を取るようになる。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のあらすじ【起】
広告代理店に勤める大伴。仕事もプライベートも順調に過ごしていたある日、会社に大学時代のサークルの後輩・今ヶ瀬が訪ねてきた。探偵をしているという今ヶ瀬は、大伴の妻・知佳子に依頼を受けた浮気調査について話をしに来たのだ。大伴には妻の他に体の関係が続いている女性がいた。浮気の事実を口止めしてもらうため、今ヶ瀬を高級寿司店に連れていくのだった。
「知佳子のために」浮気を隠し通したい大伴は、今ヶ瀬の交換条件をのむことにした。それは「キスだけ」してほしいということ。ホテルの一室に招かれた大伴は、強張りながらも今ヶ瀬を受け入れる。想像以上に大胆だった今ヶ瀬に驚き、嫌がるのだった。
知佳子の信頼を取り戻そうと、あからさまに尽くし始めた大伴。しかし、浮気相手との関係は切れずにいた。再び今ヶ瀬に浮気現場を見られた大伴は言い訳を続ける。そんな大伴の矛盾を見透かした今ヶ瀬は、キスだけに留まらず大伴の下半身も求め始めた。
知佳子と久しぶりにデートをした大伴。楽しい時間を過ごしていたつもりだったが、食事中に知佳子は泣きだし、1年以上交際している浮気相手がいること明かす。浮気調査の結果何も綻びが出なかった大伴だが、離婚を申し出られる。今ヶ瀬に連絡し、知佳子から何か聞いていないか問いただす大伴だが、今ヶ瀬の背後から他の男性の声がすることに気付き電話を切った。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のあらすじ【承】
独り身となった大伴の元に今ヶ瀬が訪ねてきた。流されやすい大伴は、脅しの材料がなくなっても積極的な今ヶ瀬のペースに巻き込まれていく。しかし、浮気相手と仕事で再会した大伴は再び関係を持ってしまう。些細な変化にも気付く今ヶ瀬は、大伴の携帯を隠れて見ていた。浮気相手との関係を問いただされた大伴は「別につき合っているわけでもないのに」と今ヶ瀬を突き放してしまう。
少し距離を取った今ヶ瀬に、大伴は自ら連絡を取るようになっていた。いつしか二人は一緒に居るのが当たり前になっていく。大伴は仕事中に大学時代の恋人・夏生と再会する。後日食事に行く約束を取り付け、二人はその場で別れた。
大伴と夏生が食事をしている店に、偶然を装った今ヶ瀬が元恋人と一緒に現れた。明るく夏生に声をかけた今ヶ瀬。相席することになり戸惑う大伴は、トイレで今ヶ瀬に携帯を見たのか問いただすがキスをされ誤魔化されてしまった。先に帰宅した今ヶ瀬と元恋人。残された大伴は飲みすぎてしまい夏生に送ってもらうことになるが、帰宅すると迎え出たのは今ヶ瀬だった。
夏生はその後も大伴に連絡をし続けた。一度虚勢を張った今ヶ瀬は大伴と追い詰めないように接するが、次に仕掛けてきたのは夏生である。今ヶ瀬を呼び出し、大伴との関係を問い詰めたのである。8年越しの恋をようやく形にした今ヶ瀬は当然引く気もなく、冷静に夏生へ言葉を返していく。そこへ大伴が現れ、空気が一変した。
夏生は「女と男」の選択肢を大伴に託し、自分と今ヶ瀬のどちらを選ぶのか詰め寄った。今ヶ瀬と過ごす時間に心地よさを見出しながらも、世間の目が気になる大伴は今ヶ瀬に「俺は、お前を選ぶわけにはいかないよ」とだけ告げ、夏生と店を出るのだった。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』のあらすじ【転】
夏生とラブホテルへ向かった大伴だが、今ヶ瀬のことが頭によぎり何もできなかった。夏生に謝罪し帰宅した大伴は今ヶ瀬に自らキスをする。激しい雨の夜に、二人は初めて身体の繋がりを持つのだった。
大伴の提案で今ヶ瀬は自宅を引き払い一緒に暮らし始めた。まだ外での目線を気にする大伴だったが、今ヶ瀬の誕生日には生まれ年のワインをプレゼントし翌年の口約束も交わした。喜びを隠し切れない今ヶ瀬だが、大伴は同時に部下のたまきにも心を惹かれ始めていた。
ある朝、常務と同じタクシーから降りてくるたまきを見てしまった大伴。不倫関係かと勘繰った大伴だったが、常務に昼食に誘われる。「どう見えた?」と問いかける常務はたまきが内縁の娘であることを明かす。その矢先常務は急死した。娘でありながら一社員として葬式に参列したたまきは、雨の中泣いていた。その姿を見た大伴は、いたたまれなくなりたまきを抱きしめてしまうのだった。
上司と部下としてではなく男女として距離を縮めていった大伴とたまき。喪服にファンデーションがついていたことで新たな女性の存在を勘づいた今ヶ瀬は、疑心暗鬼になりあらぶった感情をぶつけてしまう。大伴はただ「終わりにしよう」と告げ、今ヶ瀬は泣き崩れるのだった。
最後のドライブに行った大伴と今ヶ瀬。「男の家に上がり込んで、コトコト長く煮込む料理を作るような女が向いている」と笑いながら話す今ヶ瀬。大伴は「次はもっと情の深いタイプにしとけよ」と今ヶ瀬に伝えるのだった。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の結末・ラスト(ネタバレ)
大伴はたまきと男女の関係になっていた。たまきは大伴の部屋に灰皿があることに疑問を抱く。大伴は相手が男性であることは明かさず、「前の人が置いて行った」と今ヶ瀬の話をした。たまきの愛情の深さに安堵しながら、今ヶ瀬への感情を整理できずにいる大伴。ゲイバーへ立ち寄るも今ヶ瀬の姿などなく、涙をこらえ切れなくなり店を後にした。
たまきとの結婚を決めた大伴だが、ストーカーのように付け回す今ヶ瀬の姿に気づいていた。大伴は声をかけ、結婚することを報告する。今ヶ瀬は「身体の関係はなくても、月一回、半年に一回でいいから会ってほしい」と大伴にすがるが、「おまえはもういらない」とだけ答えるのだった。
大伴の自宅に夕食を作りに来たたまきは、二人で選んだカーテンが届いていることを喜んだ。しかしそれは1週間近く前に届いていたという。「コトコト煮込む料理は作らないの?」とたまきに問いかける大伴はどこか浮ついている。たまきは戸棚の下に隠された灰皿と一緒に、たばことライターが置かれていることに気付き、その日は泊まらずに帰宅することにした。
たまきを送り届けた大伴は、自宅の前に止まっている車をのぞき込む。そこには今ヶ瀬が待っていた。たまきが帰ったことを告げ、自宅に今ヶ瀬を招き入れた大伴。これまで今ヶ瀬がリードしていた二人の関係は、いつからか逆転し大伴が今ヶ瀬を求めるようになっていた。
「だっさいカーテン」と今ヶ瀬は笑い、「だろ?」と大伴は同調する。一瞬の間が空き、大伴は「いっしょに暮らそう」と今ヶ瀬を抱きしめ眠ってしまった。大伴が目を覚ますと、今ヶ瀬の姿はなかった。ゴミ箱に捨てられた灰皿を見た大伴はたまきとの別れを決断する。
「前の相手が戻ってきた」と大伴は、今ヶ瀬を待つ覚悟をたまきに告げた。相手がまたいなくなったのならばいっしょに居たいと粘るたまきだが、大伴の気持ちは揺らぐことが無かった。帰宅し、灰皿を洗う大伴。一方で他の男に身体を委ねていた今ヶ瀬は、無表情に揺られ突然泣き出してしまう。今ヶ瀬がよく座っていた椅子に腰を掛けた大伴が、自分の帰りを待っているとは知らず、大伴を想って泣き続けるのだった。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の感想・評価・レビュー
行定監督は過去にも『ピンクとグレー』で中島裕翔、『ナラタージュ』で松本潤を主演に迎えている。今作は男性同士の恋愛というテーマにも関わらず「アイドル」である大倉忠義を主演に起用している。挑戦的にも思えるキャスティングは、役に染まる成田凌の起用も相まって見事なバランスを保っているように思えた。「相手に流されて」恋愛する大伴が次第に能動的になっていく様子と、粘着質な今ヶ瀬の孤独や不安をとても丁寧に紡いでくれている今作。「同性愛者のまねごと」を越え、とても都会的で人間らしい時間を魅せてくれた。(MIHOシネマ編集部)
大倉忠義がアイドルの域を超えて、体を張っています。主体性が無く流されやすい、しかし非常にモテる男性、大伴恭一を自然体で演じています。そして、成田凌の演技が流石なんです。彼の目つき、仕草、表情一つ一つ、可愛くて強かで切なくてまるで恋する少女でした。手にとるように気持ちが伝わり、気づけば一緒に一喜一憂していました。BLと一言で片付けてしまうのは、勿体無いです。性別を超越した、二人の恋愛として何度でも見たいと思いました。(女性 30代)
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