映画『ローレライ』の概要:福井晴敏が書いた『終戦のローレライ』という小説が原作である。特撮などで有名な樋口嗣が監督を務めた。主演は妻夫木聡。他、役所広司、柳葉敏郎、香椎由宇が脇を固める。
映画『ローレライ』 作品情報
- 製作年:2005年
- 上映時間:128分
- ジャンル:SF、戦争
- 監督:樋口真嗣
- キャスト:役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇 etc
映画『ローレライ』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
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映画『ローレライ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ローレライ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ローレライ』 あらすじ【起・承】
舞台は1945年、世界大戦真っ只中の日本。ナチスドイツが崩壊したため、ある潜水艦が日本軍に譲渡された。伊507というその潜水艦は、強力な主砲だけではなく、ナチスドイツが秘密裏に開発した人間兵器、ローレライ・システムである。ローレライ・システムとは、超高感度のアンテナのようなもので、水中のありとあらゆるものを感知することができる。その能力を持った人間が水中を索敵することで、敵の攻撃を避け、有利に戦うことができるというシステムだった。
海軍の絹見少佐は、司令部の浅倉からこの伊507を与えられた。命令は、広島に原爆が落とされた後だったので、この後の原爆攻撃を阻止せよ、というものだった。任務のために、爆撃機の基地があるテニアン島へ出発する伊507は、航路で米軍と交戦、ローレライシステムを使ってなんとか勝利を得た。しかし、ローレライシステムは、特殊な能力を持ったパウラという少女によって動いており、水を媒介にして死にゆく人々の思いまでをも感知してしまうパウラは、戦いの後気を失ってしまうのであった。また、パウラと親交を深めつつあった工作兵の折笠は、N式と呼ばれる潜水艇に閉じ込められていたパウラに空を見せてあげたくて、無断で外に出した。しかし、降ってきた雨から長崎の原爆を探知したパウラが気絶してしまうのだった。
映画『ローレライ』 結末・ラスト(ネタバレ)
伊507の中で、突如反乱がおこる。浅倉大佐にかつて命を救われた者たちが、浅倉の思想に従って起こした反乱だった。そもそも伊507の出撃は浅倉個人の命令であることが発覚、彼の思惑は、ローレライ・システムごと伊507を米軍に渡す代わりに、東京に原爆を落としてもらい、今の腐りきった日本を立て直すというものだったのだ。
折笠や他の船員たちの活躍により、多くの犠牲を払いながらも反乱兵から船を取り戻した絹見たち。しかし、米軍は次なる原爆攻撃の準備を整えているのである。絹見たちは、危険を承知のうえで、原爆の投下を阻止するために当初の目的通りテニアン島へと進軍した。血を流さずに敵艦を沈めることで、パウラへのダメージを阻止しながらテニアン島へとたどり着いた伊507。絹見は、折笠にパウラを託し、二人を逃がした後、伊507は原爆搭載機を撃墜したものの、そこは敵の真っ只中であったため、敵艦隊の集中砲火を浴びてテニアンの海へと沈んでいったのだった。
映画『ローレライ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ローレライ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
男くさい映画
男くさい、というと語弊があるかもしれないが、かなりハードボイルドな気配の漂う映画。昭和の日本軍を描いている映画だからかもしれないが、硬質な手触りのする映画とでもいえばいいだろうか。妻夫木聡が主演だし、香椎由宇も神秘的な美しさを放っているけれど、やはり注目すべきは思想を持った男たちの強烈な熱意があふれている点だろう。浅倉といい、絹見といい、個人的には毒ガスの中死んでいく木崎のシーンが鮮烈な記憶として残っている。誰もが思想のために、信念のために突進していくさまが描かれているから、それを男くさいと感じたのかもしれない。
原作とは大幅に違う
上川隆也演じる作家は、恐らく折笠とパウラの子孫にあたるのだろうけれど、彼が取材をしているシーンが挿入されている。折笠とパウラが無事生き延びたことを示しているのはわかるが、原作には彼の存在はないし、映画自体にもなくてもよかったのでは、と思わなくもない。また、原作は分量の多い小説なので、二時間程度に収めるためにずいぶん削られているシーンもある。原作ファンとしては、そこまで削ったか、という印象を抱いてしまったが、映画としては仕方なかったのかもしれない。忠実にするだけがすべてではないので、映画は映画として完結していたので及第点だろう。予備知識がなくても楽しめる程度には仕上がっている。
香椎由宇が美しい
男くさい映画、と評したが、香椎由宇演じるパウラは本当に美しくて息をのむほどだった。ナチスドイツの人体実験で生み出された薄幸の美少女、という設定がこれほどまでに再現できるとはと驚きだった。武骨な日本軍の兵隊たちの中にひとりいるからこそ、またその純白さが際立つ。ローレライを発動し、気を失ってしまったり、雨から長崎の原爆投下を知って倒れるシーンなどは、悲しいというよりもただただ美しかった。
映画『ローレライ』 まとめ
突っ込みどころはないかといわれると大いにあるけれど、それを補っても余りあるほど人間ドラマがしっかりと詰め込まれている作品。誰が正しいとか間違っているとかいう以前に、思想や信念を持った男たちが、それを守るために奮闘している姿に怒りを覚えることも、涙を誘われることも。希望が感じられるラストになっていることもいい点だ。ただ原作をかなり削って作ってあるので、薄くなってしまった部分があるのは否めないが、二時間にまとめるならこのぐらいか、という印象。
みんなの感想・レビュー
原作を読んでのイメージ、或いは昭和の東宝の戦争映画のイメージを持ってみると失望する。
B級映画としては、こんな物なのといった感じ。
昭和の東宝の特撮で、ドイツからフランケンシュタインを持ってきました。とか、終戦が不満で、万能潜水艦つくっていました路線を楽しんでいた人なら楽しめるのではないかと。
伊507は轟天号よりは、現実よりに見えるけどそういう路線なんだとしか。