映画『mellow/メロウ』の概要:街一番のお洒落な花屋「mellow」。店主は独身で花好きの夏目誠一。馴染みのラーメン屋の2代目である女性に好意を寄せるが、互いに気持ちは言えずにいる。二人を軸に様々な愛情が交差する物語。
映画『mellow/メロウ』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:今泉力哉
キャスト:田中圭、岡崎紗絵、志田彩良、松木エレナ etc
映画『mellow/メロウ』の登場人物(キャスト)
- 夏目誠一(田中圭)
- 生花店「mellow」の店主。独身で誰にでも優しい性格から、好意を寄せる女性が多い。実は想っている相手はいるが、口にできずにいる一面を持っている。
- 古川木帆(岡崎紗絵)
- 夏目が想いを寄せる相手。父から受け継いだラーメン店を営んでいるが、自分の夢を諦めきれずにいる。冷めた思考の持ち主だが、夏目の言葉で少しだけ変化する。
- 浅井宏美(志田彩良)
- 夏目の店の常連。美容室の娘でお店に飾る花を買いに行っている。バスケ部に所属する中学生で、後輩からの人気も高い。木帆のラーメン店の常連客。
映画『mellow/メロウ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『mellow/メロウ』のあらすじ【起】
洒落た佇まいの生花店「mellow」。店主の夏目誠一は客の話を聞きながら、相手を想像して花束を見繕ってくれる。大人しそうな女の子が来店した時も、余計なことは聞きださず1000円だけ受け取り恋の成就を願うのだった。
行きつけのラーメン屋に足を運び、亡くなった主人の仏壇の花を変えてあげる余裕もある。偶然、別れ話をするカップルと居合わせてしまった夏目。女性は「私より好きな人、一生できない」と捨て台詞を言ってラーメン屋を出ていった。一部始終を聞いてしまった夏目は涙を流す。その様子を見た木帆はそっとティッシュを差し出すのだった。
夏目の姪っ子・さほは学校に行くのが苦手で、時折店で預かってもらうことがある。夏目の仕事ぶりを見て「男なのになんで花が好きなの?」と問う。夏目が明確な理由を答えられないでいると、常連の宏美が店を訪ねてきた。宏美は母親の営む美容室に飾るための花を買いに来るのだ。宏美が店に戻ると、麻里子が相談をしに母親を訪ねてきていた。麻里子は夫がいる身ながら、別の男性に恋してしまったことを悩んでいるのだった。
映画『mellow/メロウ』のあらすじ【承】
木帆のラーメン屋にさほと出向いた夏目。二人が女同士の会話で盛り上がる様子に、夏目は表情をほころばせる。帰り道、「木帆は夏目が好きだろう」とさほの憶測を聞きなお一層ニヤニヤとしてしまうのだった。
ある日宏美は1学年下の女子生徒・陽子から告白を受けた。その女子生徒が手渡した花束は夏目が見繕ったものである。宏美はバスケ部のエースで、学校内では人気が高いのだ。すぐに花束なmellowで買ったものだと気づく宏美は、花を介して夏目を思い出していた。その様子を陰ながらもう一人の女子生徒が覗いているのだった。
結婚式で花を担当して以来、定期的に麻里子の家に出向き玄関の花を生けている夏目。いつも通り訪ねると、ただならぬ雰囲気の夫がリビングへ招いた。実は麻里子が想いを寄せている相手は夏目だった。さらに、夫には前もってそのことを話していたのである。気持ちを確かめたがる麻里子夫妻を前に、困惑する夏目。おかしな状況に対応できない夏目の様子は、夫を苛立たせてしまい「これ以上麻里子を傷つけないでくれ」と追い出されてしまうのだった。
車で夏目の戻りを待っていたさほ。「自分の都合ばっかりで大人は嫌だ」と呟きタバコを吸う夏目の姿を見て「仕方ないこともある」と慰めるのだった。
映画『mellow/メロウ』のあらすじ【転】
独り身の夏目は麻里子の一件について誰にも話せずにいた。木帆の店に昼食を食べに行ったとき、思わず一部始終を話してしまった夏目。共感してくれた木帆と初めて恋愛について話題になるのだった。会計時、木帆から店を畳むことを聞かされた。閉店について特に掲示もしていない木帆は「終わりが分かってくる人は愛情ではなく“情”だから」と夏目に話す。「急になくなったら悲しむ人もいる」と告げ、店を出るのだった。
実は木帆は店を閉めたあと留学するつもりだった。想いを寄せる夏目にも言わずに出国する予定だったが、友人からせめて「海外に行くことだけは伝えたら?」とアドバイスを受け気持ちが揺らいだ。まず木帆は幼い頃に通った美容室に向かった。そこは宏美の母親が営む店である。ラーメン屋を閉めるお知らせができた木帆は少しだけ軽やかな表情をして美容室を出るのだった。
Mellowには宏美と陽子が来ていた。実は、宏美は夏目に告白をしようと思っていたのだ。二人が知り合いであることに驚いた夏目。宏美は上手く言葉にできず、夏目の初恋について聞き出し多だけで店を出るのだった。帰宅した宏美を、後輩の佐藤が待ち構えていた。宏美と良好な関係の陽子を見て、勇気を出し告白しに来たのだ。フラれてしまった佐藤だが、3人はご飯を食べに行く約束を交わすのだった。翌朝、宏美は一人でmellowを訪ね夏目に告白した。「ありがとう、でもごめんなさい」と丁寧に断ってくれた夏目の言葉に安堵し、ヒロミは学校へ向かう。
映画『mellow/メロウ』の結末・ラスト(ネタバレ)
木帆のラーメン屋は最終営業日を迎えた。来店してくれた客に1輪の薔薇を渡したいという願いを聞いていた夏目は、朝一番に薔薇を届けた。最後の客としてラーメンを食べようとした夏目だったが、別の客が入ってきてしまい譲るのだった。木帆の父親を知っていたその男性は、ラーメンも薔薇も喜んで店を出た。
木帆の父親とは長い付き合いの夏目。実はフランス料理のシェフだった木帆の父横は、腱鞘炎で料理を諦めようとしたとき片手でラーメンを作る屋台の亭主と出会ったという。知らなかった父親の過去を知り、「どうりで叶わないわけだ」と木帆は呟いた。そして留学することを夏目に告げるのだった。
帰り際の夏目に、木帆は一通の手紙を渡した。その中にはこれまでの感謝と夏目への気持ちが綴られていた。そして、夏目も木帆の父親から託された手紙を置いて店を出ていたのだった。その手紙にはたくさんの感謝と夢を追う娘の背中を押す言葉が詰まっていた。涙を浮かべて父の言葉を大事に読み上げる木帆と、知ることのなかった本音を受け取った夏目。
翌朝、店の片づけをする木帆の元には、白い花束を抱えた夏目が訪れるのだった。
映画『mellow/メロウ』の感想・評価・レビュー
群像劇という打ち出しであったが、主は夏目と木帆の感情である。エンディング曲の歌詞が当作の主題を詰め込んだような内容であった。今泉力哉監督作品は、終盤ぎゅっと見せ場を詰め込むことが多いと思う。当作もそうであった。ファンタジーのようにふわふわとした空気感が続いたのちに、一気に感情が加速する。地上波で目にしにない日はない田中圭を起用しながらも、インディーズ感溢れる一作であった。当監督の過去作出演者がちらほらと登場するのも印象的。(MIHOシネマ編集部)
何でもない日常を切り取ったような、穏やかな空気感の恋愛映画。田中圭演じる夏目がとにかくモテて、告白されまくるのだ。クスっと笑えて可愛らしい、ささやかなドラマに心がほっこりとする。今泉監督の描く人との繋がりや「好き」の形は、とても純粋で温かさを感じられる。
自分の気持ちが枯れない内に、相手と向き合って真っ直ぐに気持ちを伝える大切さや、後悔しないように今を生きる儚さの込められた良作である。(女性 30代)
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