思いがけないキッカケで、かけがえのない友情を手にした経験はないだろうか。本作では、BLで繋がった年齢の離れた2人の女性を主人公に描く。宮本信子と芦田愛菜という、世代を超えた名女優2人が共演する。
映画『メタモルフォーゼの縁側』の作品情報
- タイトル
- メタモルフォーゼの縁側
- 原題
- なし
- 製作年
- 2022年
- 日本公開日
- 2022年6月17日(金)
- 上映時間
- 118分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 狩山俊輔
- 脚本
- 岡田惠和
- 製作
- 沢桂一
鳥羽乾二郎
長澤一史 - 製作総指揮
- 伊藤響
- キャスト
- 芦田愛菜
宮本信子
高橋恭平
古川琴音
生田智子
光石研
汐谷友希
伊東妙子 - 製作国
- 日本
- 配給
- 日活
映画『メタモルフォーゼの縁側』の作品概要
人と人が繋がるということは奇跡的で、美しいことだ。このコロナ流行下、ソーシャルディスタンスが強要される世の中であれば尚更。誰かと繋がることの大切さを改めて感じた人は多いのではないだろうか。そんな、人との繋がりを温かく描いたのが本作。世代の違う2人を繋げたのは、なんと1冊のBL本。しかし、キッカケなど何でもいい。大切なのは、互いが互いを尊重し、思いやる心である。見ていて、思わず誰かと一緒にいたくなる本作。そんな本作を手掛けたのは、過去に『青くて痛くて脆い』などを手掛けた狩山俊輔。2人の女性が心を通わせていく姿に、見ているこちらまで心動かされる。
映画『メタモルフォーゼの縁側』の予告動画
映画『メタモルフォーゼの縁側』の登場人物(キャスト)
- 佐山うらら(芦田愛菜)
- 本屋でアルバイトをする女子高校生。学校ではあまりパッとせず、BLが日々の支え。
- 市野井雪(宮本信子)
- 夫に先立たれた75歳の老婦人。本屋で偶然見かけたBL本に心惹かれ、雪と知り合う。
映画『メタモルフォーゼの縁側』のあらすじ(ネタバレなし)
女子高校生の佐山うららは、いまいちパッとしない毎日を送っていた。そんな彼女の密かな楽しみは、BL漫画を読むこと。本屋でアルバイトをするうららは、その日店のレジを担当していた。そして、彼女のレジに差し出された1冊のBL本。ふと購入客を見ると、そこに立っていたのは白髪の老婦人だった。その老婦人、雪は、BLというものをよく分からずにその本を手に取っていた。ただ彼女は、その美しい表紙に心惹かれてその本を手に取ったのだった。それからというもの、BLに興味を持ち本屋に通うようになった雪。うららと雪は、次第に交流を深めるようになる。そして、2人は何と、即売会への出展を目標に掲げたのだった。
映画『メタモルフォーゼの縁側』の感想・評価
新しい扉
年齢を重ねてからでは、新しい趣味を持つことは難しい。そう思ってはいないだろうか。それは大きな間違い。確かに、これまで自分の中で築き上げられてきた価値観などが邪魔をして、以前と比べて簡単には全てを許容しづらくはなるかもしれない。しかし、反対に言えば、その価値観をリセットし、新鮮な気持ちでいれば、新しい扉はいつでも開かれるのだ。本作の登場人物、雪も、75歳でありながら新たな扉を開く。しかも、その扉とはBL。若い人でも抵抗を示すことのあるジャンルである。彼女を見ていると、いくつになっても新しい世界と出会えることに希望が湧いてくる。
趣味を共有できる楽しさ
自分の好きなものを誰かから理解され、こちらもまた興味を示す、ということは非常に幸せなことだ。勿論、自分一人の中に好きなことを温めておくのもいい。しかし、それについて語り合うというのは、誰かがいないと成立し得ないことなのだ。好きなことについて語っている時間は、非常に幸せなもの。そういった時、人は内から『好き』が溢れ出し、キラキラ輝いて見える。その幸せが誰かに影響し、更なる幸せな気持ちを呼ぶのである。中には、中々一歩を踏み出せず、趣味仲間を作れずにいる人もいるかもしれない。本作が、そんな人達にとってキッカケとなる作品になることを願う。
年齢を超えた友情
人は、同年代としか仲良くなれないのか。答えはノーである。確かに、知り合う可能性の高さや話題の共通性の多さから、同年代同士の方が友人関係になりやすいかもしれない。だからといって、年代を超えた友情が成立しないというわけではない。本作でも、17歳と75歳という、一見祖母と孫に見違えてしまうほど年齢の離れた2人が友情を育んでいく。大切なのは、相手を尊重すること。これは年齢が離れているからというわけではなく、人間関係の基本中の基本である。幅広い世代の人と付き合っていく内に、あなたの世界もきっと広がっていくはず。年齢が違うから、というだけの理由で交流を拒んでいては、あまりにも勿体無い。
映画『メタモルフォーゼの縁側』の公開前に見ておきたい映画
劇場版 きのう何食べた?
BLをテーマとした作品は近年増加傾向にある。以前と比べて、性的マイノリティが受け入れられるようになってきたためだろうか。それに伴い、以前と比べBL作品の在り方も変わってきた。以前は、自身の性に葛藤するといったシリアス路線が多かったが、近年ではよりフランクにBLを扱う作品が増えた。最新作では、人と人とを繋げる架け橋になっているし、本作でもゲイカップルの葛藤は描きつつも、基本的にはほのぼのとした日常をメインに描いている。本作で見所なのは、シロさんが作る美味しそうな料理の数々と、内野聖陽の演技。普段男らしいイメージが強い内野聖陽が、乙女へと変貌する様子は圧巻。
詳細 劇場版 きのう何食べた?
Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
最新作のように、年齢が離れた2人が友情を温めていくストーリーの作品である。本作の主人公は、タイトルからも分かるようにシャーロック・ホームズ。しかし、視聴者の多くがイメージするホームズとは違い、本作で描かれるのは晩年のシャーロック・ホームズ。人間、誰しも歳を重ねる。いくら、史上最高の頭脳を持っていたとしても、いずれ衰えゆくものだ。記憶障害に苦しむ彼を救ったのは、まだ10歳の少年だった。少年に背中を押される形で、シャーロックは心残りとなっていた未解決事件に挑んでいく。80歳近く年齢の違うシャーロックと少年。しかし、そこに確かに友情が存在したのだった。
青くて痛くて脆い
最新作の監督を務める狩山俊輔が2020年にメガホンを取ったのが本作。近年大きな話題を呼んだ『君の膵臓をたべたい』の住野よるが執筆した、もう一つの代表作を原作としている。最新作同様、人と人との繋がりを丁寧に描いた作品。主人公は、他者とのコミュニケーションを得意としていない秋好と田端という2人の若者。他者から浮いているそんな2人が立ち上げた『モアイ』という秘密結社サークル。そのサークルの目的は、『世界を変える』こと。しかし、その最中、秋好が姿を消してしまう。以降、モアイは彼らが元々考えていた方向とは全く違うサークルと成り下がってしまう。それに怒った田端は、モアイを奪還し秋好の願いを叶えようとするが…?
詳細 青くて痛くて脆い
映画『メタモルフォーゼの縁側』の評判・口コミ・レビュー
52.【メタモルフォーゼの縁側】鑑賞🎬
大事なものは大事にしなきゃ。
腐の沼で繋がった歳の差を超えたふたりの友情物語は、好きなものを誰かと共有できる喜びをひしひしと感じることのできる、温もり溢れる超良作であった!
うららと雪のエンディング曲まで含めてホッコリ。#あぷ映画2022 pic.twitter.com/CGWsxuxi7C
— あぷ🍀 (@GB_lovecinemas) June 20, 2022
『メタモルフォーゼの縁側』
マンガの素晴らしい実写化はここにありますよ! 芦田愛菜は『星の子』に続き内側に思いを秘めた演技が抜群。宮本信子も昔から堪らない。「2人の幸せを願っている」、そんな2人の幸せを願いながら観れる作り。『ブリグズビー・ベア』と並べて観たい傑作。 pic.twitter.com/HAZsYoSFEI— ハム丼@映画とアニメと音楽と (@371402_pine) June 19, 2022
Twitterで互いの年齢も知らない同士が好きなもので繋がって語り合ってるのを、そのクリエイターがニコニコしながら見てるような、そんな幸せな光景を可視化したような映画だったよ『メタモルフォーゼの縁側』。素晴らしかった。原作まとめ買いしちゃった。 pic.twitter.com/7aQHOY0j4A
— ナガマサ (@nagamasa_san) June 20, 2022
映画『メタモルフォーゼの縁側』のまとめ
本作を見ていて刺さるのは、『最初の青春、最後の青春』というキャッチコピー。これだけ歳が離れた2人にとっては、それぞれの青春が持つ意味が変わってくるのだ、とハッとさせられる。まだ若いうららには、これから新しい、また違った青春もやってくるのだろう。しかし、彼女にとって初めての青春は今だけ。今後多くのことが起こっていくであろう彼女の人生に、決して消えない思い出として刻み込まれたのだ。もちろん、雪にとっても2人の出会いは特別。夫にも先立たれ、『終わり』に向かっていたところ、突如としてやってきた新しい満ち足りた日々。最初と最後の違いはあれど、2人のかけがえのない日々は、彼女達を救い刻まれていく。
みんなの感想・レビュー