ロレンツォはかつて家族で暮らしていたアパートに、たった独りで暮らしていた。娘は父に愛人がいたせいで母が死んだと思い、恨んでいた。息子は金をせびりに来るだけで、ほとんど会話がなかった。そんな時、ロレンツォの家の隣に、ある家族が引っ越してきた。
映画『ナポリの隣人』の作品情報
- タイトル
- ナポリの隣人
- 原題
- La tenerezza
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2019年2月9日(土)
- 上映時間
- 108分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- ジャンニ・アメリオ
- 脚本
- ジャンニ・アメリオ
- 製作
- 不明
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- レナート・カルペンティエリ
ジョバンナ・メッツォジョルノ
エリオ・ジェルマーノ
グレタ・スカッキ
ミカエラ・ラマゾッティ - 製作国
- イタリア
- 配給
- ザジフィルムズ
映画『ナポリの隣人』の作品概要
イタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督作品。ジャンニ・アメリオは本作品で、監督・脚本・原案を担当している。ロレンツォ・マローネ原作の小説『La tentazione di essere felici(幸せであることの誘惑)』を元に制作されている。主演を務めたレナート・カルペンティエリは、「ダビッド・デ・ドナテッロ賞、主演男優賞」「イタリア、ゴールデングローブ賞・主演男優賞」を受賞している。
映画『ナポリの隣人』の予告動画
映画『ナポリの隣人』の登場人物(キャスト)
- ロレンツォ(レナート・カルペンティエリ)
- 元弁護士。不正な裁判を行っていた。数年前に妻は他界している。現在は独りでアパートに暮らしている。
- エレナ(ジョバンナ・メッツォジョルノ)
- ロレンツォの娘。母親が亡くなったのは父に愛人がいたからだと思っており、父のことを恨んでいる。シングルマザー。アラビア語の法廷通訳として働いている。
- ファビオ(エリオ・ジェルマーノ)
- ロレンツォの家の隣に、妻のミケーラと子供達と共に引っ越してくる。
- サヴェリオ(アルトゥーロ・ムセッリ)
- ロレンツォの息子。クラブの経営を行っているが、うまくいっていない。金をせびるために父に会いに行っている。
映画『ナポリの隣人』のあらすじ(ネタバレなし)
イタリア、ナポリ。元弁護士のロレンツォは、かつて家族で暮らしていたアパートに独りで暮らしていた。妻が亡くなってから子供達と関係も悪化し、会話することもままならなかった。娘のエレナは父に愛人がいたから母が亡くなったと思い、恨んでいた。息子のサヴェリオはクラブの経営が悪化し、金をせびりに父に会いに行っていた。
そんなある日、ロレンツォの隣に若い夫婦(ミケーラとファビオ)と幼い子供達が引っ越してきた。ロレンツォはミケーラ達家族と交流を深め、自分の子供や孫とでは得ることができなかった穏やかで幸せな時間を過ごすことになる。
だが、そんな幸せな時間が突然幕を閉じる。ロレンツォが家に帰ると、救急車やパトカーが止まっていた。隣家である事件が起こっていた。エレナ達は父を心配するが、ロレンツォは子供達を拒み隣人の家族のことを心配していた。エレナ達は血が繋がっている家族よりも隣人の家族に心を砕くロレンツォのことが受け入れられなかった。
映画『ナポリの隣人』の感想・評価
イタリアの名匠、ジャンニ・アメリオ監督
ジャンニ・アメリオ監督はイタリア出身の映画監督で、『小さな旅人』(1992)で「カンヌ国際映画祭・審査員特別賞」を、『いつか来た道』(1998)で「ヴェネツィア国際映画祭・金獅子賞」を受賞している。またそれだけではなく、『宣告』(1990)では「アメリカアカデミー賞・外国語映画賞」にノミネートされたことがある。イタリアだけに留まらず、世界中で認められている映画監督である。
ジャンニ・アメリオは本作品で、監督だけではなく脚本・原案も担当している。そして、1947年に創設されたイタリアの映画賞、「ナストロ・ダルジェント賞」の作品賞や監督賞などを受賞している。ジャンニ・アメリオ監督作品は評価が高いが、彼は35年のキャリアの中で長編作品12作品しか公開していない。1作1作に込められる熱い思いと彼の才能をぜひ感じ取って欲しい。
ありふれた家族の物語
主人公のロレンツォは元弁護士だが、不正な裁判を多く行っており誠実だったとは言い難い人物である。さらに、愛人がいた疑惑があり、母が死んだのはそのせいだと責められ娘からは嫌われてしまっている。息子も金をせびりに来るだけで、関係が良いとは言えない。物語の舞台になっているのはイタリアのナポリだが、日本に置き換えても違和感がない、どこにでもいそうなありふれた家族である。
そのため、観客はロレンツォの視点から、娘の視点から、はたまた息子の視点から、それぞれ自分と近い立場の人に立って物語を楽しむことができる。日本の社会でも家族関係の希薄さは問題になっており、ドキッと胸に響く場面がたくさんあると思う。ロレンツォが隣人の家族と楽しそうに過ごす場面は、愛に飢えていたロレンツォの心情が如実に表れているため注目して欲しい。
隣人に突如起こった事件
ロレンツォは隣人家族と幸せな時間を過ごすことになる。だが、ある事件が起こり、幸せな時間が突然終わりを迎えてしまう。その事件が何なのかは映画を見ないと分からないようになっている。しかし、パトカーや救急車が駆けつけているところを見ると、大事件が起こったのは間違いない。隣人家族に起きたこの事件が、物語に緊迫感と非現実的な部分を付け加えている。
娘は隣人家族に心を砕く父が受け入れられず責めるのだが、ロレンツォは「私の気持ちがお前にわかるか」と言葉を返す。その部分にロレンツォの孤独さが凝縮されているように感じる。この事件を通じてロレンツォは娘と心を通わすことができるのか、それとも関係がより悪化してしまうのかが注目のポイントになっている。
映画『ナポリの隣人』の公開前に見ておきたい映画
小さな旅人
ジャンニ・アメリオ監督の代表作。ジャンニ・アメリオはサンドロ・ペトラリアやステファノ・ルッリと共に脚本も担当している。孤児院に送られることになった姉弟の姿が描かれており、選考で選ばれた移民の子供達が演じることになった。
イタリア、ミラノ郊外。11歳のロゼッタは母親と弟のルチアーノと共に、団地で暮らしていた。その団地は大勢の移民達が暮らしている場所で、ロゼッタの母親もシチリアからの移民だった。母親はロゼッタに売春をさせてお金を稼いでいたが、警察に見つかり捕まってしまう。ロゼッタ達兄弟は孤児院に送られることになった。憲兵のアントニオはロゼッタ達を孤児院に連れて行くが、受け入れを拒否されてしまう。彼らはシチリアの孤児院に行くため、長い旅を行うことになった。
詳細 小さな旅人
ポプラの秋
ヒューマンドラマ作品。父を亡くした少女と不思議な大家さんとの交流を描いた作品。湯本香樹実原作の小説を元に作られており、2012年には関西テレビでドラマ化もされている。本田望結が父を亡くした少女を演じ、中村玉緒が大家のおばあさんを演じた。Every Little Thingのボーカルでもある持田香織が主題歌を担当している。
大好きだった父を亡くし悲しみに暮れる星野千秋と母のつかさは、「ポプラ荘」と呼ばれるアパートに引っ越すことになった。そこの大家さんは「凄い秘密」を持っていた。その秘密とは、天国に手紙を届けることだった。千秋は父への手紙を書き、大家さんに託した。大人になった千秋は、大家さんが亡くなったとの知らせを受け「ポプラ荘」に足を運んだ。葬儀には千秋と同じように、大家さんに手紙を預けた人で溢れ返っていた。
詳細 ポプラの秋
マギー
ホラー×ヒューマンドラマ作品。ゾンビウイルスに感染してしまった娘と彼女を救おうと奮闘する父親の親子愛が描かれている。主演を務めたのは、『ターミネーターシリーズ』で有名なアーノルド・シュワルツェネッガー。アーノルド・シュワルツェネッガーはプロデューサーとしても作品に携わっている。
伝染病が発生して数か月、世界は大打撃を受けていた。マギー・ヴォーゲはその伝染病に感染してしまい、隔離所へ行かなければならなくなる。病気が進行すれば、マギーは飢えて凶暴化してしまうのだ。しかし、父のウェイドは娘と離れることができず、収容所から連れ出すことを決断する。マギーは自分が愛する家族を襲ってしまうかもしれないと、恐怖に怯えていた。果たして、ウェイドはマギーを守りきることができるのか。
詳細 マギー
映画『ナポリの隣人』の評判・口コミ・レビュー
”『小さな旅人』で親と引き離された子を、『家の鍵』で子を手放した親を描いたイタリアの名匠ジャンニ・アメリオ。その新作は親子が親子であること、家族が家族であることの苦さと貴さを、確執のある父娘の感情のざわめきの中にとらえた傑作である。”
★★★★★ 日本経済新聞 古賀記者#ナポリの隣人 pic.twitter.com/VC4wDCYfjE— 映画『ナポリの隣人』2/9公開! (@napoli_movie) 2019年2月8日
ジャンニ・アメリオ監督最新作『ナポリの隣人』は、長年疎遠になっている父と娘を軸に、誰もが思い当たる節があるに違いない家族の絆の危うさをあぶり出す。美しい映像は物語をより残酷に見せ、自分が一番解り合いたいのは誰なのか?と自問させられる。 pic.twitter.com/Dw5g36MTG3
— 帆足由美 (@yumihoashi) 2019年2月8日
今日からジャンニ・アメリオ監督の「ナポリの隣人」の上映が始まりました。初日の劇場で、お客さまと共に、久々に鑑賞。
現代社会の片隅で孤独に生きる老人の、隣人達との出会いと安らぎ、そして悲しい別れが描かれている。家族とは? 心の繋がりとは?
色々と考えさせられる、厳しくも美しい作品。— Rico (@nucigusui) 2019年2月9日
『ナポリの隣人』、試写会にいきました
移民の迎合を経たナポリの地で、孤独な老人が家族と断絶し、隣人に越してきた家族と疑似家族を築くかと思いきやサスペンスが始まってしまう。人間性の何もかもを仕組みに吸収され、縺れるように帰着したラストシーンのなんともいえなさが心に深く沈み残っている pic.twitter.com/kzq0h6DaoA— 田中円吾 (@tanakaengo) 2019年1月31日
『ナポリの隣人』面倒さや甘えから言葉数が少なくなる家族、イタリアはマンマを大事に笑顔と太陽と美味しいものがいっぱいの陽気な国🇮🇹という一面もあれば、家族がいても気づいたら疎遠。。。今の時代どの国でも変わらないのかも😔孤独が長くて心の開き方を忘れたら、とりあえず指で口角を上げましょ❣ pic.twitter.com/jEZL5txL8X
— きゃも (@kyamokyamo) 2019年2月1日
映画『ナポリの隣人』のまとめ
この作品に登場するのは、親子関係がうまくいっていない、どこにでもありふれた家族である。父のロレンツォが寂しそうに独りで暮らす場面は本当に切なくたまらない気持ちになり、隣人家族と幸せな時間を過ごす場面は温かな気持ちになった。予告編にも登場するが、「血の繋がりだけで、心は繋げない」という言葉は重い言葉だなと思う。ロレンツォのように血が繋がった家族とはうまくいっておらず、隣人や友人の方が仲が良いという人も多いのではないだろうか。改めて自分の家族のことを考えさせられる作品だと思う。
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