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映画『二十六夜待ち』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『二十六夜待ち』の概要:佐伯一麦の同名小説を基に、津波ですべてを失い叔母の家に身を寄せる女性と記憶喪失で過去を失った男性。一緒に働く中で変わる関係性と、町の人たちの交流を描く。監督は越川道夫。

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映画『二十六夜待ち』の作品情報

二十六夜待ち

製作年:2017年
上映時間:124分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:越川道夫
キャスト:井浦新、黒川芽以、天衣織女、鈴木晋介 etc

映画『二十六夜待ち』の登場人物(キャスト)

杉谷(井浦新)
目覚めると見知らぬ山中におり、記憶喪失になってしまった男性。手が覚えていた料理を仕事にし、小さな小料理屋を営んでいる。
由実(黒川芽以)
震災の津波ですべてを流されてしまった女性。福島の叔母の元に身を寄せながら、杉谷の店で働き始める。
木村(諏訪太朗)
記憶を失った杉本をずっと支えている市役所の社員。事情を知っているが、深くは詮索せずに寄り添ってくれる存在。

映画『二十六夜待ち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『二十六夜待ち』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『二十六夜待ち』のあらすじ【起】

一人、食事の準備をする由美。震災の津波で何もかも流されてしまった由美は、福島の叔母の元に身を寄せていた。叔母夫婦は小さな会社を営んでいる。忙しい叔母夫婦に代わり、家事をしながら世話になっていたが、「いつまでも居るべきではない」と東京に住む兄は言う。しかし東北から出たことがない由美は、兄夫婦の元へ行くことを躊躇していた。そんなある日、パート募集の張り紙を見つけ、杉谷という小さな小料理屋を訪ねた。その店の店主・杉谷は寡黙な男であった。お膳出しと会計をお願いしたいと、履歴書もない状態ですぐに採用が決まった由美。翌日から杉谷で働くこととなった。

初日、昼時に賑わう店内。全国各地から集った職人たちが杉谷の料理を求めて来るという。明るい由美はすぐに常連客たちの馴染み、店内には笑い声が連日響いていた。変わらず寡黙な杉谷。毎日入口の一輪挿しに、野花を生けることは忘れないのである。ある日、杉谷はランチだけではなく夜も手伝ってほしいと頼む。「他にすることもないから」と快諾した由美。週に4日、フルタイムで働くことになった。

ある日の出勤前、由美は綺麗な野花を見つけ一輪挿しに生けた。買い出しから戻った杉谷は、先に花が生けてあることに気付き驚く。由美はにこやかに杉谷を迎え、手に持っている花を一緒に生けるのだった。

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映画『二十六夜待ち』のあらすじ【承】

ある日の夜、杉谷が世話になっている市役所の木村が幼馴染の大沢を連れて店にやってきた。あいにく満席の状況であったが、杉谷は2階の部屋へ二人を通した。杉谷の部屋で飲むのは初めてではないという木村。二人は祝いの席で歌われる東北地方の歌を口ずさんでいた。兄が嫌いだったというこの歌が懐かしい由美は、客が帰った後に片付けをしながら口ずさんでいた。部屋の片づけをする由美の元にやってきた杉谷。懐かしい話を楽しそうにする由美は、杉谷に幼少期の思い出を訪ねた。すると杉谷は小刻みに身体を震わせながら由美の手を取った。見たことのない杉谷の表情に戸惑いながらも抱きしめた由美。自分からキスをし、杉谷を再び抱きしめたのである。そのまま二人は倒れ込むように身体を求め、一線を超える。しかし、突然杉谷は顔色を変え何も言わずに一人で1階へ降りていってしまった。何が起こったのかわからない由美。翌日の休み中もしきりに杉谷のことを考えてしまっていた。

ランチ営業のために店に出勤した由美。週末の出来事はなかったように明るく振る舞うが、杉谷はボソッと「すみませんでした」と謝罪をした。自分に悪い点があったのか、と由美が訪ねても、杉谷は何も答えてはくれなかった。不満を抱えたまま帰路についた由美。杉谷は考えこんだ後に、由美を追いかけ抱きしめた。二人はそのまま杉谷の部屋へと向かい、もう一度抱き合った。

映画『二十六夜待ち』のあらすじ【転】

2度目も杉谷は絶頂に至る前に突然由美から離れた。頭を抱えこみ「自分が消えてしまいそうで怖い」と泣き出す。実は杉谷は一度記憶を失っていた。気付くと見知らぬ山中にいた杉谷。右も左もわからない場所で、彷徨い歩いた杉谷は、木村に発見され助けてもらったのである。失踪届も出ておらず、名前もわからない杉谷にまず名前を付けようと提案した木村。山の中でまず目についたものを聞き出した。杉と谷が見えたという記憶を元に、新たな土地での名前は「杉谷」にしようと前を向かせてくれたのである。靴すらも忘れてしまった杉谷に優しく接してくれた木村。その話を聞いた由美は、杉谷の気持ちが落ち着くまで隣に寄り添ってあげるのだった。

木村が夜に飲みに来た時、魚をさばく杉谷の手捌きに見惚れていた。記憶はなくとも手は覚えているという杉谷。杉谷の事情を知った由美は、「どこかに杉谷を待っている人がいるのではないか」と木村に心の内をぶつけた。すると木村は「この街には8年分の杉谷の記憶が詰まっている。」と由美を安心させるのだった。その日、杉谷は由美を送って帰った。月の満ち欠けをずっと数えているという杉谷に対して、由美は震災の後避難所で見た月が忘れられないとこぼすのだった。

映画『二十六夜待ち』の結末・ラスト(ネタバレ)

ある日、叔母が自宅で倒れてしまった。自分が家の手伝いをもっとしていれば、と後悔を隠せない由美。不安をぶつけるように、杉谷の記憶が戻っても一緒に居たいと約束をしようとする由美。その言葉に怯え始めた杉谷は由美に触れられることすらも拒否してしまう。翌日、杉谷は東京の兄に会いに行ったらどうかと、一緒に東京へ行こうと提案をしてきた。叔母のことが気にかかっている由美は、「勝手に決めないで」と辛く当たってしまう。

叔母の見舞いに行ったとき、一人の義足の女性が話しかけてきた。無い方の足にも血がしっかり通っているという話を聞いた由美。途切れた杉谷の記憶にも何か通じるものがあるはずだと、一緒に東京へ向かうことにする

記憶の欠片を探しながら二人だけの時間を過ごす。夜も更け、杉谷は一人窓から外を眺めていた。空には「二十六夜」の月がぽつんと浮かんでいた。以前も同じ月を眺めていた気がするという杉谷。由美はいつかお店でフグも出そうと提案した。杉谷の手に残った記憶を取り戻すためにも。福島に戻った二人の日常は以前よりも少しだけ明るくなっていた。

映画『二十六夜待ち』の感想・評価・レビュー

杉谷を演じた井浦新、由実を演じた黒川芽以。両名共に身体を張った一作であった。記憶を失い不安定な役柄の杉谷だが、今にも消えてしまいそうな空気感が絶妙である。小料理屋の大将という設定上、多く出てくる料理のシーンは吹き替えをせず、井浦新が包丁を握っているというから驚きだ。二人の濃密なベッドシーンや言葉のチョイスは、田舎町独特の閉そく感に追われるというよりも、濃密なラブストーリーをしっかり見た充実感を与えてくれる。記憶を辿る暖かな物語であった。(MIHOシネマ編集部)


本作は、津波で全てを失った由実と記憶喪失で過去を失った杉谷が交流していくうえで変化する関係性を描いたラブヒューマンドラマ作品。
不器用で、色々なものを抱える杉谷さんはとても人間らしくて魅力的だった。
由実との遠い距離感や息遣い、移り変わる感情が手の映像によってありありと感じられた。
そして、淡々と静かに登場人物の心情が描かれていて美しく素敵だった。
人間への、あるいは生きることへの執着みたいなものを感じずにはいられなかった。(女性 20代)

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