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映画『ニンゲン合格』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『ニンゲン合格』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ニンゲン合格』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『ニンゲン合格』の結末までのストーリー
  • 『ニンゲン合格』を見た感想・レビュー
  • 『ニンゲン合格』を見た人におすすめの映画5選

映画『ニンゲン合格』の作品情報

ニンゲン合格

製作年:1999年
上映時間:109分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:黒沢清
キャスト:西島秀俊、役所広司、菅田俊、りりィ etc

映画『ニンゲン合格』の登場人物(キャスト)

吉井豊(西島秀俊)
14歳の時自転車で交通事故に遭い、昏睡状態のまま10年間眠っていた少年。奇跡的に目を覚まし、空白の時間と家族を取り戻すことに奮起する。
藤森岩雄(役所広司)
豊の父親の大学の同級生。豊を退院時から世話していたが、違法な仕事が仇となり追われてしまう。不器用ながらに豊のことを大切に思っている存在。
吉井真一郎(菅田俊)
豊の父親。ツアーのインストラクターとして世界中を転々としている。息子の豊が奇跡的に目を覚ましても仕事に追われ、一緒には過ごせずにいる。
岩谷幸子(りりィ)
豊の母親。夫・真一郎とは離婚しバリバリと働くキャリアウーマン。10年ぶりに目覚めた息子ともすぐに打ち解け愛情を注ぐ。
吉井千鶴(麻生久美子)
豊の妹。強気なタイプで家を飛び出し、恋人の加崎と暮らしている。父親の財産を目当てに豊に近づいたが、居場所がなく一緒に過ごすようになる。
加崎(哀川翔)
千鶴の恋人。スポーツカーを乗り回しているのに、金銭的に余裕がなく家を手放してしまっている。家族に憧れがあり、豊が築いた関係を羨ましく見ている。
室田(大杉漣)
豊を轢いてしまった加害者。10年間反省し続け、苦悩してきた。豊の奇跡的な回復で一旦解放されたように思えたが、幸せそうに暮らす豊を見て復讐心に駆られてしまう。

映画『ニンゲン合格』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『ニンゲン合格』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ニンゲン合格』のあらすじ【起】

昏睡状態から目を覚ました豊。「ぐっすり寝た」という豊は10年間眠っていたのだった。奇跡の回復ながら、14歳で豊の時間は止まってしまっていた。もう一人、10年間生きた心地がしていない人間がいる。それは豊を轢いてしまった加害者の室田である。室田は「これで終わりにしてくれ」と50万円を差し出すのだった。

豊を迎えに来た藤森。豊が困らないように10年間に起こったニュースや撮りためたビデオを見せてくれるが「取り戻しようがない」と他人事のように豊は返答するのだった。退院した豊は家に帰ることを拒んだ。藤森が電車で居眠りした隙を見て、逃げ出そうとするが連れ戻されてしまうのだった。

藤森は家に作った釣り堀と産業廃棄物の処理で生計を立てていた。変わった街並みに戸惑い、何をすることもできない葛藤し始める。まずは藤森の手伝いをしながら、かつてあったポニー牧場がなくなった詳細を尋ねた。3年前に豊の両親から家を譲ってもらったというが、その時にはポニー牧場はなかったことしかわからなかった。

中学の同級生・上田に会いに行った豊。10年ぶりの再会だというのに違和感のない二人の時間。子供の頃に来た遊園地に行った豊は、上田に同窓会をやろうと提案するのだった。早速、豊は招待状を作り始めるが、藤森は止めるのだった。その夜、藤森は豊を無理矢理ソープランドへ連れていく。「そこそこ」だったという豊。2度目はないと成人の世界を拒絶するのだった。

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映画『ニンゲン合格』のあらすじ【承】

引き続き招待状を作る豊は、庭に一頭の馬がいることに気付く。その日、父・真一郎が家を訪ねて来た。オランダに居たという真一郎は豊と距離を縮めようとよく話しかけた。ジュースを買いに行くのにも付いていくが、豊はどう接していいのかわからないまま過ごすのだった。

大学の同級生である、藤森と真一郎。豊のことを一任しようとする真一郎に対して、藤森は怒り散らすのだった。翌日、真一郎は北海道に旅立つと言い、豊に別れの挨拶に来た。母親の住所を教え、また戻ってくることを約束するのだった。

藤森は豊に車の運転を教えた。真一郎にもらった住所を尋ねたが、誰も住んでおらずとぼとぼと帰路に就く。道中、馬の飼育の本を買い帰宅すると、馬が連れ去られそうになっていた。盗んだと勘違いされてしまった豊だったが、藤森に頭金を借りて馬主から馬を買い取るのだった。

スポーツカーの助手席に乗った妹・千鶴が訪ねて来た。てっきり真一郎が居ると思っていた千鶴は豊の存在に驚くのだった。千鶴を乗せてきてくれた恋人・加崎は藤森の手伝いをしに出掛ける。豊は千鶴から家族の状況について教えてもらう。千鶴は母親の住所を知ってはいるが、会いたくないと言うのだった。親が残した家と土地を売り、生活費に充てようとしていた千鶴。ポニー牧場を再建したいと考えていた豊は激怒し、大喧嘩になってしまう。

映画『ニンゲン合格』のあらすじ【転】

千鶴に聞いた電話番号に連絡し、豊は母親・幸子の職場で再会した。真一郎との再会とは異なり、10年前と変わらず過ごせることに安堵するのだった。幸子の生活に気を遣って職場で会った豊だったが、次は自宅に招待してもらう約束を取り付け浮かれて帰るのだった。

豊はポニー牧場の再建に本格的に始める。藤森と仲間の力を借りて昔の姿を取り戻した時、タイミング良く真一郎が戻ってきた。ポニー牧場と同時に家族の再建も願っていた豊は、父親と一緒に過ごせる時間を楽しんでいた。しかし、父親は再び豊の元から離れてしまう。土地の権利所や子供達のための預金を豊に託し、千鶴と分けるよう言い残すのだった。

豊が計画した同窓会は想像よりも盛り上がった。帰り道、よく万引きをした思い出の古書店の前を通ると、豊は古書店の暗証番号を覚えていると言い出した。中学生の時のようにマンガを盗み、夜な夜な読み明かす大人になった3人。少しだけ時間を共有できたことで、豊の気持ちは晴れるのだった。

藤森が帰宅しない日が続く。ある日、不法投棄の手伝いをしているという疑いで、環境保全課の人間が藤森を訪ねに来た。何も知らない豊は、特に口出しもせず見送った。釣り堀は休業し、ポニー牧場で生計を立てようとする豊。その矢先、幸子が豊の様子を見に来た。無理に拘束することを諦めた豊は「母さんも自由にして」と判断を委ねるのだった。

幸子と暮らし始めた家に、千鶴と加崎が戻ってきた。行く当てのない二人も一緒に暮らし始め、家に少しだけ温かさを取り戻ってきた。豊は「ほんの一瞬でいいから、みんなが揃う日が欲しい」と幸子に本音をこぼすのだった。

映画『ニンゲン合格』の結末・ラスト(ネタバレ)

リビングに揃ってテレビを見ていると、アフリカ行の船が沈没したというニュースが取り上げられていた。なんと読み上げられた行方不明者の名前には真一郎の名前がある。心配する豊達だったが、次の速報でインタビューを受ける真一郎の姿が映った。加崎は安堵する家族の姿を遠めに見守るのだった。

豊は加崎に釣り堀を託そうとするが、「家族」ではないことに固執する加崎は出ていく決断をした。そして千鶴も一緒に家を出るのだった。さらに幸子も元の生活に戻っていくのだった。再び、豊は牧場とミルクバーを一人で経営することとなった。

偶然、近くの工事現場で働いていた室田は豊の姿を見かけ声をかけた。「俺の店です」という豊に苛立ちを覚えた室田は、夜チェーンソーを持って復讐にやってくるのだった。トーンを変えず、室田の言葉に対応する豊だったが、馬を狙うことだけは許せず室田を止めた。「一人だけ幸せになるのは不公平だ」という室田の言葉で自分の置かれた状況は夢なのではないかと思い始めた豊。自らの手で大事な牧場を破壊するのだった。

たくさんの冷蔵庫を積んで何事もなかったように戻ってきた藤森。いけないことであるとはわかっているが、知らないフリをして庭でスクラップにするのを承諾するのだった。作業後、再び家を離れようとする藤森について行く豊。馬を残すわけにいかずトラックに乗せるため、軍手を取りに行った豊。運悪く、高く積んだ冷蔵庫が崩れ落ち豊は下敷きになってしまったのだった。助けようとする藤森に、「俺って存在した?」と問う豊。命を落とす間際まで、夢と現実の境界線を彷徨い続けていた。

「家族全員が家に揃う」という願いは、皮肉に豊の葬儀で叶うのであった。

映画『ニンゲン合格』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

「生きている」とこの真意を考えてしまう一作であった。家族という絶対的な存在は普遍的ではないということ。そして身近な信用できる存在にも秘密があること。幸せの在り方は人それぞれだからこそ、浮き沈みないワントーンな豊の言葉は見るものに余白を与え、考えさせてくれるキーになっているように思えた。一家の話に収まらず、加害者と部外者も含まれることで視野の広いファンタジーを堪能できた時間であった。(MIHOシネマ編集部)


黒沢清監督の独特の空気感が全編に漂う作品でした。3年間の昏睡から目覚めた男・吉井良介(役所広司)が、再び“人間として生きる”ことを模索する姿は静かで重い。家族との再会も再生も、どこかぎこちなく、温度が低いのに深く刺さる。生と死、罪と赦しを淡々と描くその手法が見事。特に、彼の目線を通して描かれる“他者との距離”が痛いほどリアルで、観終わっても余韻が抜けません。(30代 男性)


「死んだように生きてきた人間が、もう一度生き直す」というテーマが心に響きました。黒沢清監督らしい抑制された演出の中で、役所広司の演技が光ります。派手な展開はないけれど、日常の静けさの中に潜む恐怖や哀しみが丁寧に描かれていました。特に息子・トオルとの関係が、少しずつ変化していく過程に胸が熱くなりました。人間の再生を静かに見つめた珠玉のドラマ。(40代 女性)


黒沢清監督と聞くとホラーを想像するけれど、この作品は“生きることの怖さ”を描いた心理劇。目覚めた男が見つめる世界は、どこか現実離れしていて、それが逆にリアルに感じました。役所広司の表情には言葉にならない感情が滲み、時に温かく、時に絶望的。淡々としていながら心に沁みる。まるで自分の人生を見つめ返すような不思議な時間でした。(20代 男性)


この映画の“間”の使い方が本当に美しい。沈黙の中に感情が渦巻いていて、何も起きないようでいて、すべてが起きている。昏睡から目覚めた吉井が、過去の罪や後悔を静かに受け入れていく姿に涙が出ました。家族の絆が再生されるわけでもなく、ただ「人として生き直す」というテーマが淡々と描かれているのが良い。静かな名作です。(50代 女性)


黒沢清監督の作品の中で、最も“優しさ”を感じる一本。役所広司が演じる吉井の眼差しには、死と生の狭間で揺れる繊細な人間の感情が映し出されていました。世界は彼を待っていなかったけれど、彼はそれでも歩き出す。そんなラストの余韻に胸を打たれました。人生をリセットすることの難しさと、それでも前に進む勇気を教えてくれます。(40代 男性)


最初は何も起こらない映画に見えるけど、じわじわと胸を締めつけてくる。特に家族の中での“違和感”の描き方が絶妙で、現実よりも現実的。黒沢監督のカメラがまるで幽霊のように静かに人物を見つめていて、観ている自分も“生き返る”ような感覚を味わいました。人間の心の再生をこんなにも繊細に描いた映画はなかなかありません。(30代 女性)


観終わってから時間が経つほどに心に残る作品でした。特に印象に残ったのは、吉井が息子に「お前は生きているのか?」と問いかけるシーン。人間が生きるとは何か、家族とは何かを突きつけられる瞬間です。黒沢清監督らしい冷たい映像と静謐な空気感が、逆に人間の温もりを際立たせています。哲学的で、詩的な映画体験でした。(20代 男性)


“死者が生者の世界に戻る”という設定なのに、恐怖ではなく静かな優しさに満ちているのが印象的でした。特に、吉井と妻の会話には長年積もった思いが滲んでいて、涙がこぼれました。人生の後半に見るとまた違った意味を持つ作品。派手さはないけど、心に深く染みるヒューマンドラマです。(60代 女性)


黒沢清作品の中でも異色の“再生ドラマ”。眠りから覚めた男の視点で描かれる日常は、まるで夢のように現実味がない。それでも人の優しさや孤独が丁寧に描かれていて、不思議な温かさがありました。人間が“生き直す”というテーマに、黒沢監督らしい死生観が感じられます。観る人の心の状態で印象が大きく変わる作品です。(30代 男性)

映画『ニンゲン合格』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ニンゲン合格』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

アカルイミライ

この映画を一言で表すと?

虚無の中を漂う若者たちの孤独と希望を描いた、黒沢清監督による静かな衝撃作。

どんな話?

冴えない青年・雄二と友人・守の奇妙な関係を軸に、現代社会の閉塞感と若者の喪失を描いた作品。淡々とした日常の中で、突然訪れる死と再生の物語が展開されます。物語は説明的でなく、観る者が“生きるとは何か”を感じ取る構成になっています。

ここがおすすめ!

『ニンゲン合格』同様に、黒沢清監督の「静かな絶望」と「希望の断片」が繊細に描かれています。現代社会の虚無を漂う若者たちの姿は痛々しくも美しい。何気ない映像の中に哲学が宿り、観る人の心に長く残る作品です。

トウキョウソナタ

この映画を一言で表すと?

家族崩壊の中に見える“ささやかな希望”を描いた、社会派ヒューマンドラマ。

どんな話?

リストラされたサラリーマンが家族にその事実を隠しながら生活を続ける中で、家族それぞれが抱える孤独と秘密が明らかになっていく物語。現代の東京に生きる“普通の人々”が、崩壊と再生を繰り返す姿をリアルに描いています。

ここがおすすめ!

黒沢清監督の作品の中でも、人間ドラマとしての完成度が非常に高い一作。『ニンゲン合格』と同様に、“人はどうすればもう一度生き直せるのか”という問いが全編に流れています。ラストの希望の光に涙すること間違いなしです。

海よりもまだ深く

この映画を一言で表すと?

“うまくいかない人生”を静かに見つめ直す、大人のための優しい映画。

どんな話?

かつての文学賞作家が今は探偵としてくすぶりながら生きる中、離婚した妻と息子、母との関係を通して、自分の人生と向き合う物語。是枝裕和監督ならではのリアルな会話劇が心を打ちます。

ここがおすすめ!

『ニンゲン合格』と同じく、“過去を抱えた人間が、再び生きる意味を見つけようとする”姿を描いています。何気ない日常に潜む愛と喪失が丁寧に描かれ、観るたびに胸が締め付けられる。静かな時間の中で人生を見つめ直したくなる映画です。

歩いても 歩いても

この映画を一言で表すと?

“家族”の中に潜む痛みと優しさを、穏やかに描いた名作。

どんな話?

亡くなった長男の命日を迎えた家族が一堂に会し、それぞれの本音や葛藤が少しずつ露わになっていく物語。家族の何気ない会話の中に、長年のわだかまりや愛情がにじみ出ていきます。

ここがおすすめ!

是枝裕和監督の人間観察眼が光る作品。『ニンゲン合格』が描いた“生き直し”のテーマを、家族という小さな共同体の中で繊細に表現しています。何も起こらないのに涙が出る――そんな静かな名作を求める人におすすめです。

復讐するは我にあり

この映画を一言で表すと?

生と死、罪と赦し――人間の本質を暴き出す伝説的サスペンス。

どんな話?

実在の連続殺人犯・榎津巌をモデルに、彼の逃亡劇と、彼を追う警察、そして取り巻く人々の心の闇を描く。事件を超えた“人間そのもの”への問いを突きつける深いドラマです。今村昌平監督による重厚な演出が光ります。

ここがおすすめ!

『ニンゲン合格』が描く“罪を背負った者の再生”というテーマを、より過酷で社会的な視点から描いた傑作。役所広司とは異なるアプローチで、“人間とは何か”を問いかける。見終えた後の静かな衝撃が忘れられない名作です。

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この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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