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映画『おはん』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『おはん』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『おはん』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『おはん』の結末までのストーリー
  • 『おはん』を見た感想・レビュー
  • 『おはん』を見た人におすすめの映画5選

映画『おはん』の作品情報

おはん

製作年:1984年
上映時間:112分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:市川崑
キャスト:吉永小百合、石坂浩二、大原麗子、香川三千 etc

映画『おはん』の登場人物(キャスト)

おはん(吉永小百合)
商家の娘で古物商の幸吉へ嫁ぐ。夫のことを深く愛し、幸せを願っている。ひたすら控えめで妻の鏡のような人物。愚痴や恨み言は一切口にせず、人様に迷惑をかけないよう常に気遣っている。幸吉の子供を産み育てる。
幸吉(石坂浩二)
古物商の主人。浮気性で芸妓のおかよと良い仲になり、本妻のおはんとは別居。おはんの子供が自分の子供だと知り、よりを戻そうとする。
おかよ(大原麗子)
芸妓の店を経営。自らも仕事をしてがっぽり稼ぐ。気が強く美しい女性。幸吉と夫婦のような生活を続け、養い続ける。
おばはん(ミヤコ蝶々)
幸吉が新たに構えた古物商の隣に住んでいる。気の好い壮年の女性。おはんと幸吉の逢引のために自分の家を度々、貸して2人の連絡係も担ってくれる。

映画『おはん』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『おはん』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『おはん』のあらすじ【起】

古物商を営む幸吉はおはんという妻がありながら、芸者のおかよと恋仲になってしまう。夫婦は相談した結果、おはんは病がちな両親の薦めにより実家へ帰ることになり、幸吉は愛人のおかよの元へ向かうことになった。

7年後、おかよの稼ぎでひものような生活を送っている幸吉。おかよは店を構え芸者を派遣し稼いでいるが、彼女は幸吉との部屋を増築する野望を持ち、今よりもっと稼いでやると意気込んでいるのであった。

女の稼ぎで飯を食うことに心を痛めている幸吉は、自分の店を開けて少しでも稼ごうとするが、古物商がそうそう儲かるはずもない。彼は暇つぶしのために店から出て、橋の上から川を眺めた。その時、背後を横切った女性にはっとする。女性の後を追って、彼女に声かけた幸吉。

女性は妻のおはんであった。噂によると彼女は子供を産んだらしい。恐らく7年前に別れる際、身籠っていたのだろう。生まれた子供は悟という男の子で、学校へ通い始めたと言う。おはんは幸吉から顔を伏せ、言葉少なに去って行くのであった。

しばらく後、幸吉の店におはんが訪れる。彼女は非常に控えめな様子で、近所から姿を見られるのを恐れるような仕草をするのだ。幸吉は隣家のおばはんに事情を話し、部屋を貸してもらう。おはんと2人きりになった幸吉は、子供を産んで匂い立つ色気を醸し出すおはんに心を奪われ、彼女を抱いてしまう。おはんは夫の家庭を壊すのではないかと、恐怖に慄きながら逃げるように帰って行くのだった。

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映画『おはん』のあらすじ【承】

おはんと抱き合っていた最中、幸吉の店におかよが来たとおばはんに聞いた幸吉。帰宅した彼は浮気がばれるのではないかとハラハラしっぱなし。おかよは竹を割ったような性格で、夫を取られる妻が悪いのだと口にして憚らないのであった。

その後、再びおはんが幸吉の店へ。2人は互いに求め合い、再び身体を重ねるもその際、風の強い日に男の子供が毬を買いに来たと話す。すると、おはんは顔色を変え、子供の様子を事細かに聞いてくる。彼女の様子に幸吉はまさかと思い確認すると、男の子はおはんの子供悟だったと明かすのであった。

幸吉は自分の息子へと会いに行き、正体を明かさず欲しがっていた毬を手渡した。少年は母親の躾けが行き届いているのか、知らない人から物をもらってはいけないと言うが、幸吉は大丈夫だと笑って少年が走り去る後ろ姿を見守るのであった。

おはんとの逢瀬を密かに続けていた幸吉は、彼女との間にできた息子の姿を目にし、おはんと子供の3人で暮らそうと考える。ちょうど、おかよの店にも芸者見習いを新たに入れたため、おかよはその子を育てることに夢中であった。故に、そろそろ彼女と別れても大丈夫だと言う。おはんはその話に感動し、うれし涙を流すのである。

映画『おはん』のあらすじ【転】

年が明けて春間近、自分の息子とも仲良くなった幸吉は、おはんと暮らす家の下見へ。竹林に囲まれた静かな佇まいだった。
おばはんが紹介してくれた家で、敷金礼金もいらないと言う。考えてみたら、普通は女房の目を盗み愛人と逢瀬を続けるものだが、幸吉の場合は愛人の目を盗んで女房と逢瀬を続けている。妙な話だとおばはんは笑うのであった。

そんなある日の夜、おはんは幼い息子に実の父親が幸吉であることを明かす。
翌朝、何かを言いたそうな息子を送り出したおはん。その後、おばはんに幸吉へ伝言を頼んだ。引っ越しの荷物を密かに運ぶ算段だった。
人目を避けて山道を越える。息子は叔父が玩具市へ連れて行ってくれているので、昼過ぎに引っ越し先の新しい家へ来る約束をしていた。

だが、昼前になって強い雨が降り始める。悟は何かを思い詰めた様子で、叔父が目を話した隙に逃げ出してしまう。
同じ頃、無事に新居へ荷物を運びこんでいた幸吉とおはん。激しい雨と春雷に息子を心配するも、もよおした幸吉に襲われ身体を許してしまうのだった。

その頃、激しい雨の中を迷いつつも新しい家へ向かっていた幼子は、山道の窪みに足を取られ崖下の川へと転落してしまう。

それにしても、悟はいつになったらやって来るのか。あまりに遅いため、おはんは息子を心配し雨が弱まったのを見計らって探しに向かった。
しばらく後、新居へ慌てた様子のおばはんがやって来る。彼女は幸吉に悟が転落して亡くなったことを話すのであった。

映画『おはん』の結末・ラスト(ネタバレ)

ショックを受けた幸吉は、急いでおはんの実家へ。息子の亡骸を前に夫婦は酷く嘆いた。川から引き上げられた息子の袂には、幸吉が初めてあげた毬が入っていたと言う。恐らく幼子は、実の父親と暮らすのを嬉しく思っていたに違いない。
そこへ、悟を玩具市に連れて行った叔父が現れ、幸吉に怒り狂って殴り倒してしまう。あわや、殴り殺してしまったかと思われたが、幸吉は意識を失っただけで命に別状はなかった。

その頃、おかよの元にも知らせが来る。彼女はおはんと幸吉のよりが戻ったと聞き、憤懣やるかたない。おかよは幸吉を引き取りにおはんの実家へと向かうのであった。
そして、とうとう妻と愛人の対面が叶う。横になって休む幸吉を間に、3人は話し合いを行った。

おかよは静かな怒りを湛え、幸吉と7年過ごし築いた絆は簡単に切れないと言う。おはんはそれを聞き、逆に頭を下げるのであった。
その後、彼女は息子の毬を亡くなった場所へ投げ込み、寂しげに立ち尽くす。

その後、おかよは新人芸妓のお披露目もそっちのけで、酒に溺れる毎日を送っている。芸妓の世界では男を取られるのは、取られる方が悪い。まさか自分が取られるとは思っていなかった。そこへ、新人芸妓が外へ出た折、おばはんがおはんから預かったという手紙を渡される。幸吉宛てだったが、彼はおかよに気を遣って中身を見ようとはしない。おかよは一緒に見ようと幸吉と共に手紙を開いた。

手紙には実家を出るという挨拶と、2人への真摯な謝罪、そして亡くなった息子のこと、更におかよには自分の分も夫のことを愛して欲しいと書いてあった。
幸吉はその手紙を読み、ふらりと外へ出て行く。おかよはおはんの包み込むような深い愛情に敗北感を覚え、脱力してしまう。おはんは決して、恨み言を口にせずただ、ただ2人のことと夫が幸せでいることを願っているのであった。

映画『おはん』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

ひたすら一途で控えめな本妻おはんと、芸妓の店を構え一人でも生きていける愛人おかよの間で、うだつの上がらない夫幸吉が行ったり来たりする。
そのせいで悲劇が起こるのだが、おかよが凛と立つユリなら、おはんは岩場に咲く野花のような印象。

悲劇の後、おはんの深い愛情に胸を打たれる。まるで妻の鏡のような女性だが、控えめ過ぎるために結婚生活も長続きしなかったのではないかと思われる。対して、おかよは常に強気なのである意味、幸吉にとっては究極の選択だったに違いない。(MIHOシネマ編集部)


どうしようも無い浮気男と、その男を愛した女たちの物語。いつの時代にも「浮気性」の男っているんですね。しかもそういう男って優しくて、穏やかで、「モテ要素」を持っているから厄介なんです。
浮気男を演じた石坂浩二。彼のダメっぷりが最高です。クズ男なのに、どこか可愛く思えてしまう「母性本能」をくすぐるような雰囲気に思わず見入ってしまいました。
実際こんな男は許せませんが、一つの作品としてとても面白かったです。(女性 30代)


昭和の日本映画らしい重厚で静かな人間ドラマ。おはんとおかよ、二人の女性の視点から描かれる愛と執着がとてもリアルでした。特に、夫・喜助がどちらの女性にも中途半端な態度をとり続けたことが、最終的に悲劇を招いた構図が心に残ります。子どもが川に落ちて亡くなる場面は、あまりにも衝撃的で、そこからの展開で見せるおはんの決意に涙がこぼれました。(50代 女性)


市川崑監督の映像美と、吉永小百合の静かな強さが印象に残る作品。時代背景の中で女性の選択肢が限られていたからこそ、おはんの覚悟には重みがありました。子を失った母としての哀しみ、そして過ちを断ち切ろうとする姿には強さと切なさが共存していて、とても心を打たれました。(40代 男性)


静かな演出ながら、心に残るセリフや視線の交錯がとても効果的でした。おかよの嫉妬や哀しみも伝わってきますし、おはんが最後に見せた表情には、言葉では語れない情感がありました。夫・喜助がどうしようもなく優柔不断なのがまたリアルで、こういう人に人生をかき乱される女性の苦悩がにじんでいます。(30代 女性)


昭和の日本映画らしい、情緒あるゆったりしたテンポが心地よかった。吉永小百合の和装がとにかく美しく、画面に映るだけで絵になる。とはいえ、内容はかなり重く、子どもの死をきっかけにすべてが崩れていく展開は見ていて胸が苦しくなった。終盤、おはんがすべてを背負っていく姿に感情を揺さぶられました。(60代 男性)


吉永小百合と大原麗子の共演は本当に贅沢でした。女性同士の静かな戦いという感じで、派手さはないけど見ごたえがあります。恋に苦しむ女の切実な気持ちが丁寧に描かれていて、特におはんの自己犠牲的な決断にはぐっときました。こういう作品がもっと今の時代にも見直されてほしいと思います。(30代 男性)


石坂浩二演じる喜助に対して「どうしてこんな男に…」と思わずにはいられませんでした。でも、だからこそおはんやおかよの葛藤がリアルに伝わる。市川崑監督の演出が美しくて、静かな中に怒りや悲しみが滲む構成はさすがです。特に子供を失ったおかよの姿は胸に残ります。(50代 女性)


台詞ではなく「間」で語る映画。余計な説明がないからこそ、俳優の目の動き、ちょっとした仕草に全てが詰まっている。吉永小百合の演技は控えめなのに圧倒的で、彼女の沈黙にはすごく重みがありました。子どもの死というテーマは重いけれど、それをきっかけにおはんが人生の節目を迎える流れが切なくも美しい。(40代 女性)


大人向けの人間ドラマで、若い頃には理解しきれなかった感情が今になって沁みました。家庭の中にある、声に出せない思い。おはんが取った最後の選択は、優しさでもあり、別れの決意でもある。哀しみと強さを同時に感じさせてくれる映画です。ミヤコ蝶々の存在が一服の清涼剤になっていたのも印象的でした。(60代 男性)

映画『おはん』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『おはん』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

細雪(1983)

この映画を一言で表すと?

美しき四姉妹が織りなす、失われゆく日本の情緒。

どんな話?

昭和初期の大阪と東京を舞台に、没落しつつある旧家の四姉妹が、それぞれの人生と結婚をめぐる葛藤の中で生き抜いていく姿を描いた谷崎潤一郎原作の文芸映画。しっとりとした情感が流れる家族劇です。

ここがおすすめ!

『おはん』と同じく女性の繊細な心の機微を丁寧に描いており、着物や季節の移ろいといった日本の美意識がふんだんに盛り込まれています。静かな演出の中に、強く凛とした女性像が息づく一作です。

浮雲(1955)

この映画を一言で表すと?

愛に溺れた女がたどる、ひとすじの哀しみの道。

どんな話?

戦中・戦後の混乱期を舞台に、人妻ゆき子と技師の富岡の破滅的な愛を描く成瀬巳喜男監督の名作。何度も別れと再会を繰り返しながらも離れられない二人の愛の行方が哀切に映し出されます。

ここがおすすめ!

『おはん』同様に、愛にすがる女性の孤独と不安を繊細に描いており、高峰秀子の鬼気迫る演技が心を打ちます。男女のどうしようもない関係性を真正面から描いた、昭和映画の金字塔です。

雨月物語(1953)

この映画を一言で表すと?

夢と欲望が交錯する、幻想と現実のはざまに生きる人間ドラマ。

どんな話?

戦乱の時代、名を上げたい陶工の男が妖艶な女に魅了されていく中で、自らの家族を顧みず、幻想に溺れていく姿を描いた溝口健二監督の代表作。幽玄な雰囲気と人間の業が交錯する傑作です。

ここがおすすめ!

『おはん』と同様、情念や執着を静かな演出で際立たせており、日本的な情緒と心理描写の美しさが際立ちます。画面構図や光の使い方も芸術的で、文芸作品としての完成度も非常に高いです。

夜叉(1985)

この映画を一言で表すと?

愛と過去に縛られた男と女の、静かな地獄絵図。

どんな話?

元やくざで今は漁師の男が、東京からやってきた謎めいた女性と関わることで、封じていた過去と向き合うことになる。高倉健主演による哀愁漂うハードボイルドドラマ。

ここがおすすめ!

『おはん』のように、過去に引きずられる人々の葛藤や再生がテーマ。静けさの中に凄みがあり、人物同士の心理戦が濃密に描かれています。不器用な愛の形に惹かれる方にはたまらない一作です。

千年の恋 ひかる源氏物語(2001)

この映画を一言で表すと?

美と愛に生きた男と女の、千年に語り継がれる恋模様。

どんな話?

紫式部と光源氏の物語が交錯しながら進む、幻想的な構成のロマン大作。愛すること、失うことの儚さが、雅やかな装束と色彩美の中で鮮やかに描かれていきます。

ここがおすすめ!

『おはん』と同様、女性の情念や未練、そして哀しみを中心に描かれた作品で、美術や衣装、所作の美しさも見どころ。日本文学と映像美の融合を堪能したい方にぜひ観てほしい一作です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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