映画『最初で最後のキス』の概要:愛情深い里親の下で新たな生活を送る少年。小さな田舎町の学校で出会った友人との日々を追う物語。一瞬の判断が関係を大きく変える青春の脆さを描いた一作は、アメリカで実際に起きた殺人事件をもとに展開する。
映画『最初で最後のキス』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:イヴァン・コトロネーオ
キャスト:リマウ・グリッロ・リッツベルガー、ヴァレンティーナ・ロマーニ、レオナルド・パッツァーリ、トマス・トラバッキ etc
映画『最初で最後のキス』の登場人物(キャスト)
- ロレンツォ(リマウ・グリッロ・リッツベルガー)
- 早くに唯一の親族である母親を亡くし孤児となってしまった少年。愛情深い里親に迎え入れられ新生活を迎えるが、一瞬の判断が楽しかった日々を壊してしまう。
- ブルー(バレンティーナ・ロマーニ)
- 同級生たちの身勝手な噂により学校では孤立してしまっている女子生徒。転入してきたロレンツォの初めての友人であり、誰よりも理解して寄り添う存在。年上の恋人がいる。
- アントニオ(レオナルド・パッザッリ)
- バスケットボール部のエースでありながら、あまり友達がいない。猟師の父親と心配性の母親の元、愛情には溢れているがどこか孤独を抱えている。ブルーに好意を寄せながらも行動に移せずにいる。
映画『最初で最後のキス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『最初で最後のキス』のあらすじ【起】
いつも不服な表情で退屈な学校生活を送るブルー。颯爽とバイクに乗り帰路に就くブルーの姿を、アントニオはバスケットボールをしながら偶然見かけていた。ブルーが乗るバイクとすれ違うロレンツォは、里親の家へ向かう途中であった。個性的なファッションと音楽が大好きなロレンツォは、北イタリアに住む里親と新たな人生を始める。広い自分専用の部屋と優しい両親に見守られながら迎えた登校初日。お気に入りの柄シャツとスニーカー、サングラスを纏い新境地に足を踏み入れたロレンツォだったが、小さな田舎町では個性は仇になってしまう。登校初日から、「オカマ」とからかわれてしまうのだった。しかしロレンツォはそんなことは気にせず、隣の席になったブルーに話しかけた。最初は不愛想だったブルーだが、ロレンツォの他人の目を気にしない姿勢に共感し二人は意気投合した。
その日、授業に遅れてきたアントニオ。ロレンツォは挨拶こそできていないが、一目惚れしてしまった。実は同性愛者であるロレンツォ。その日のうちにブルーには打ち明けた。同級生と違い、先入観で人を差別しないブルーはもちろん受け止め、二人はすぐに友情を深めるのだった。
友達ができたロレンツォだったが、保守的な担任には受け入れられなかった。父親が学校に呼ばれてしまい、ロレンツォのネイルや個性的なファッションが授業の妨げになると文句を言われたのである。しかし校長は担任の主張を受け入れず大事にはならず済む。ロレンツォの個性を気に入って受け入れた両親は、担任への反抗は後悔していないと胸を張ってロレンツォに伝えるのだった。
映画『最初で最後のキス』のあらすじ【承】
田舎町では浮いた存在であるロレンツォを同級生たちは目の敵にした。誹謗中傷するホームページができ嫌がらせはあったものの、ブルーは心の支えになってくれた。そんなブルーもまた学校では浮いた存在だったのである。年上の彼氏がいたブルーは、一晩の過ちがあっという間に学校中に知れ渡り遊び人だと卑下されていた。お互いの心の内を明かした二人の絆はより深くなるのであった。
以前からのブルーのことを気にかけていたアントニオも実は部活で孤立していた。そんなアントニオに恋するロレンツォの気持ちを知っているブルーはいいアシストを続け、いつの間にか3人で過ごすのが当たり前になっていた。
負けず嫌いなロレンツォは嫌がらせする同級生たちに仕返ししようと、ネット配信で秘密を暴露しようと計画していた。行き過ぎたイタズラになるのではないかと心配する両親をよそに、気合十分なロレンツォ達。3人で過ごす時間は嫌なことを忘れられるので周りのことなど気にならなかったのである。しかし翌日学校に向かうと、秘密を暴露された同級生たちの怒りはすでに頂点に達していた。
映画『最初で最後のキス』のあらすじ【転】
逃げるように街へ繰り出した3人は、何にも邪魔されることなく自由な時間を過ごすのであった。ある日、ブルーは携帯を見て表情を曇らせた。作家志望の母親が、自分のことまでもコラムに書き始めていたのである。今の自分を否定するような内容をネットに晒し上げられ、怒りが抑えられなかったブルーは学校を飛び出した。母親のパソコンを壊し、夜中までロレンツォと語り明かすのであった。翌日、学校に行くと暴露された生徒たちからの仕返しを受けた3人。事件の発端となったことで3日間の停学となってしまった。すぐにそれぞれの両親にも連絡が入り、各家庭に暗雲が漂い始める。母親との確執が深くなっていくブルーと、進学を心配されるアントニオ。本質が見えないロレンツォの素行に対して、どう接するか頭を抱える里親。そんな親たちの苦悩を、3人は疎ましく思ってしまうのだった。
停学中も集まって過ごす3人。一緒に川に行ったときに、思わずアントニオの身体に触れてしまったロレンツォだったが、アントニオは思いっきり拒絶してしまった。どうロレンツォの好意に応えていいかわからないアントニオは、その日以降二人を避けるようになる。
映画『最初で最後のキス』の結末・ラスト(ネタバレ)
そんなアントニオの行動が納得いかないブルーは、きちんと話をしにアントニオを訪ねた。すると、アントニオは「君が好きだった」と今まで言えなかった心の内を明かしてしまう。突然の告白に動揺を隠せないブルー。3人の関係は大きく崩れ始めてしまった。
何とか関係を修復しようと、アントニオに誕生日プレゼントを渡しに行ったロレンツォ。しかしアントニオの気持ちは固く暴力を持って拒否するのであった。その頃、ブルーは帰省した恋人との再会を喜び、貴重な時間を過ごしていた。しかし、恋人の卒業パーティーの際に起こったトラウマが呼び起こされる事件があり、精神的に追い込まれてしまうのであった。
アントニオは渡されたプレゼントを開けてみた。中には3人で写った写真が入っていたのである。孤独に苛まれたアントニオは、ロレンツォの元を訪ね不意にキスしてしまった。好きな人と気持ちが通じたと喜ぶロレンツォ。殴られたことを忘れたように浮かれたまま学校へと向かうのだった。精神的に揺れ動いたまま学校に向かったアントニオは、父親の銃を持っていた。狙いは自分の気持ちを乱すロレンツォである。夢でウサギを仕留めたように、アントニオは撃った。その頃、母親と一緒に恋人とその友人の暴行を訴えに警察に出向いていたブルー。事件を知り気付かず内に友情が形を歪ませていたことを悔やみ、涙を浮かばせながらバイクで学校に向かうのだった。
映画『最初で最後のキス』の感想・評価・レビュー
時折入る、ロレンツォの妄想タイム。落書きのようなポップでカラフルな妄想は一見、ありきたりな青春ストーリーを彷彿させる。しかし、展開は見る者の予想を大きく裏切る。イタリアの小さな田舎町で起こった不運な出来事は、たった一つの行為が引き起こしたことなのだろうか。ゾッとするラストはそれまでの無邪気な彼らの笑顔を忘れさせてしまうほどの衝撃であった。できるなら、想像の中と同じ笑顔をもう一度見たいと願ってしまう一作であった。(MIHOシネマ編集部)
この作品が実際に起こった事件をベースに作られていると知り、ゾッとして鳥肌が立ちました。友達の個性や考え方はなるべく理解してあげたいし、違いがあるのはお互い様だと思います。しかし、それが友達としてではなく愛情として好意を向けたり、向けられたりしてしまうと関係性が大きく変わってしまうのだと感じました。
一つの「間違った」行動と捉えるか、愛ゆえの行動と捉えるかで見方がだいぶ変わってくると思います。(女性 30代)
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