映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』の概要:18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台に、3人のキャストが立場を変え演じている。構想に3年を要した、日本とポルトガルの合作映画。日本人監督として初めてメガホンを取ったのは舩橋淳。
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』の作品情報
上映時間:139分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:舩橋淳
キャスト:柄本佑、アナ・モレイラ、アントニオ・ドゥランエス、中野裕太 etc
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』の登場人物(キャスト)
- 宗次(柄本佑)
- 鍛冶屋としてインドから連れられた日本人。喉に大きな傷を負ってしまい、言葉を発することができない。理不尽な雇い主に反抗しながらも、メイドのマリアナと恋仲になっていく。
- 四郎(中野裕太)
- 宗次と共にインドから連れられた日本人の使用人。宗次を支える存在であり、一番の理解者。理不尽な雇い主に反抗する宗次を心配に思っている。
- マリアナ(アナ・モレイラ)
- 宗次と四郎が連れられた屋敷のメイド。震災で両親を亡くし、屋敷に救ってもらった。宗次と恋仲になるが、主人に妨害され復讐を試みるようになる。
- 加勢柊次(柄本佑)
- 浜松の小さな工場に人員削減のため出向させられた青年。自分の仕事が原因で幸四郎が命を絶ち責任を感じている。マリナと出会い、唯一心を開くことができる。
- マリナ(アナ・モレイラ)
- ポルトガル出身の女性。夫の幸四郎と共にポルトガルギターのお店を開くため、工場で働きながら週に一度バーで歌っている。
- 幸四郎(中野裕太)
- マリナの恋人。浜松の工場で働きながら、ポルトガルギターのお店を開くという夢に向かっている。心優しく、リストラ候補となった友人の代わりに申し出てしまう。
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』のあらすじ【起】
1755年、巨大地震と津波に襲われポルトガルは危機的状況に陥った。二年後、貴族のガスパールはインドから日本人の鍛冶屋を二人連れて帰国。「エラい所に来てしまった」と嘆く四郎と、話すことのできない宗次は黒人奴隷がひどい扱いを受ける様子を目撃してしまう。
母屋で働くメイドたちは初めて見るアジア人に興味を持った。震災で両親を亡くしたマリアナもまたその一人である。ガスパールは奴隷やメイドを人とは思っていない。反抗する奴隷を容赦なく鞭で叩き殺した。宗次たちは亡くなった奴隷のために椿の実を埋めて欲しいとマリアナに頼むのだった。
ガスパールはインド人よりも高価な日本人を買ったのには訳があった。宣教師であった先祖が日本人により生きたまま火あぶりにされたことを代々受け継いでいたのだ。
仕事をしていた宗次はマリアナにネックレスを贈った。この日を境に宗次とマリアナは徐々に心を通わせていく。マリアナは「二人で椿の木を育て、明るい未来を待ちましょう」と宗次に告げる。
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』のあらすじ【承】
奴隷たちは宗次たちの作業場で夜な夜な交流を重ねていた。その様子を嗅ぎつけたガスパールは、見せしめに熱した鉄を宗次の背中に当て大きなやけどを負わせる。翌日から宗次と四郎も奴隷として扱われることになった。
食事もろくに与えられないまま、復興事業に勤しむ宗次と四郎。弱ってしまった奴隷が作業中に横たわっていると、ガスパールは銃で叩き続けた。その様子に我慢ならなくなった宗次は、ガスパールにたてつき銃殺されてしまう。
哀しみに明け暮れたマリアナは、ガスパールへの復讐を思い立った。寝込みを襲おうと寝室に向かったマリアナは、震災で亡くなった妻のドレスを抱きしめ一人泣くガスパールの姿を目撃してしまう。マリアナの存在に気付いたガスパールは、後を追った。俯きがちに涙するマリアナの姿に見惚れてしまったガスパール。マリアナは「勇気があるなら構わないわ」と告げ、ガスパールを受け止めた。
ガスパールの敬愛を受けるようになったマリアナ。綺麗なドレスを身にまとい、メイドたちとは一線を画した扱いをされる。そしてガスパールは結婚を申し込んだ。しかし結婚式の日、マリアナは宗次と過ごした崖にガスパールを案内し、目の前で椿の種を飲み込み海に飛び込んでしまうのだった。
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』のあらすじ【転】
2011年、巨大地震と津波に襲われ東日本は危機的状況に陥った。10年が過ぎても震災後の不況は続き、浜松に住む移民労働者たちは大きく影響を受ける。その中で日系ブラジル人の幸四郎とポルトガル人の妻・マリナは、ポルトガルギターの店を開くという夢に向かって努力を続けていた。
銀行からの融資を受けられる兆しも見えた頃、幸四郎の職場の工場では東京から来た加瀬によりリストラの宣告があった。柊次に反発した友人・マリオはリストラ候補となり、幸四郎は間もなく辞めるつもりだったと自ら辞職を願い出る。しかし、職を失ったことで銀行からの融資は受けられなくなり、幸四郎はひどく気を落とす。週に一度マリナと一緒に立っていたライブにも出向かず自ら首を吊り、命を絶つのだった。
哀しみに明け暮れるマリナだが、ステージには立ち続けた。そこへ上司の誘いを断った柊次が偶然にも立ち寄る。声をかけられたマリナは、柊次の名刺を受け取り幸四郎の自殺の原因となった男であると気付く。身分を隠し柊次に近づいたマリナは、柊次の苦悩を知り葛藤しながらも惹かれていく。
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』の結末・ラスト(ネタバレ)
工場で大きな爆発があった。リストラによる人員不足により起きたのではないかと責任を感じた柊次は、工員をかばうが「前任面するな」と跳ね除けられてしまう。頭を抱える柊次の姿に、マリナは思わず抱きしめてしまった。その日柊次はマリナにプロポーズするが、マリナは幸四郎の写真を見て我に返ろうと必死だった。
マリナの持っている写真を見てしまった柊次だが、深くは問いたださなかった。翌日、プロポーズの返事をしようと幸四郎との思い出がある海に柊次を連れ出した。全てを打ち明けたマリナだが、柊次の気持ちは揺らがなかった。
幸四郎の幻想に追われ、倒れ込んでしまうマリナ。再び自分の手で柊次に対する復讐を行うと決心をした。翌日、故郷のポルトガルで魅せたい場所があると言い、柊次をとある崖に連れ出したマリナ。対峙しナイフを突き出したマリナを柊次は止めようとする。もみ合いになった二人は崖下に一緒に落ちてしまった。
崖の下には多くの椿の木があった。花びらが舞い、二人に降りかかる。意識を取り戻し、二人は見つめ合うのだった。
映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』の感想・評価・レビュー
ポルトガルと日本、どちらの舞台も実際にあった震災を思い起こさせるようなプロローグから始まる。そして抗うことのできない現実に突きつけられた女性の復讐心を軸として展開する。立場は変わる者の、同じキャストで同じようなプロットが反復されるのが印象的である。主演の柄本佑の演じ分けも見ごたえはあるが、中野裕太の流暢なポルトガル語も見どころの一つではないだろうか。(MIHOシネマ編集部)
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