映画『君の心に刻んだ名前』の概要:40年にわたる戒厳令が解除された1988年の台湾が舞台となる一作。男子校でブラスバンド部に所属する二人の少年の出会いか、親友になるまで。そして友情を超えた感情に気づいていく過程とその後を描いていく。
映画『君の心に刻んだ名前』の作品情報
上映時間:114分
ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、青春
監督:リウ・クワンフイ
キャスト:エドワード・チェン、ツェン・チンフア、ジェイソン・ワン、レオン・ダイ etc
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映画『君の心に刻んだ名前』の登場人物(キャスト)
- 阿漢 / アハン(エドワード・チェン)
- 理系クラスに所属するおとなしい少年。3年生になり成績不振から文系クラスへの転入が危ぶまれる頃、同じブラスバンド部に所属するバーディと出会う。
- 柏德 / バーディ(ツェン・ジンホア)
- 文系クラスに所属する活発な少年。理系クラスの少年たちから「変態」と揶揄されていた。父親が保護者会会長であり、厳しい環境に身を置いている。
- オリバー神父(ファビオ・グランジョン)
- アハンとバーディが所属する学校の教師。バーディへの感情に揺らいでいるアハンを支えている存在。教職を退いた後はパートナーと共にカナダで余生を過ごす。
映画『君の心に刻んだ名前』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『君の心に刻んだ名前』のあらすじ【起】
1987年、台湾は40年に渡る戒厳令から解放された。カトリック系の男子校に通うバーディとアハンは、同じ水泳の授業で初めて会話を交わす。「バーディ」は映画から影響を受けたニックネームだった。変わり者のバーディと知り合い、アハンは日に日に興味を惹かれていく。
アハンたちの高校は全寮制で、官舎による抜き打ちの荷物検査が厳しく行われていた。ある夜、アハンたちの部屋にやってきた官舎の後ろには、「石鹸を借りに来た」というふざけた様子のバーディがいた。ルームメイトの誘いで女子高の生徒に会うために寮を抜け出す予定であったアハンは動揺を隠せなかった。
ルームメイトたちはむさぼるように女子高の生徒たちに触れる中、アハンだけは気が乗らず上の空である。翌日、ブラスバンドの練習後、無断外出がバレむち打ちの罰を受けるバーディの姿をアハンは見てしまった。シャワーを浴びているバーディに、アハンはそっと薬を渡してあげる。
タイミング悪く、アハンのクラスメートがシャワー室に入ってきた。咄嗟にバーディと同じ個室に逃げ込んだアハンの目の前で、クラスメートクラスメイトに連れられてきた後輩へのいじめが始まる。後輩は同性愛者であることが原因でいじめを受けていた。思わず物音を立ててしまい、声をかけられたアハンはいじめへ加入することを強いられ仕方なくバッドに手を伸ばす。バーディは何も言わず、シャワー室から出て立ち去った。同じ個室に入っていたことを気づかれないようにごまかしながら、アハンも追うようにその場を去るのだった。
映画『君の心に刻んだ名前』のあらすじ【承】
バーディの悪知恵に加担するほど、アハンは惹かれていく。理系クラスに在籍していたアハンだが、成績が振るわずバーディが在籍する文系クラスへの転入を勧められていた。アハンの母親は成績のことで呼び出され、新学期から共学へと変わることを教師から告げられる。
蒋経国総統の追悼式に参加するため台北へ向かったアハンとバーディ。同性愛への抑制に抗議する男性が街頭に立っていたが、私服警官に連行されてしまった。その様子に腹を立てるバーディ。個室で夕食を共にした後、バーディはすぐに眠ってしまった。アハンは思わずキスをしようとしてしまうが、その様子を見かけた店員から抑止されるのだった。
バイクを欲しがっていたアハンだが、文系クラスに落ちてしまったことで父親の承諾が得られなくなった。優しい母親はこっそりとアハンにご褒美としてバイクを買い与える。喜ぶアハンはすぐにバーディを誘い出し、バイクの後ろに乗せて待ちに繰り出した。
一緒に映画を見た帰り道、バーディは映画監督になりたいと語る。その映画のために曲を作ると決めたアハンは、その夜バーディの夢を見る。起きたとき夢精していたことに気づくのだった。
休み中、いつも一緒に過ごしていたアハンとバーディ。ある朝、アハンの母親は二人が一緒に眠っている姿を見つけてしまうが、声をかけることはできなかった。新学期が始まり、共学になったが女子との交流は禁止されていた。理系クラスの生徒から「変態」と揶揄されていたバーディだが、アハンは行動を共にしていた。
映画『君の心に刻んだ名前』のあらすじ【転】
ブラスバンド部にも女子生徒が入部した。一人の教官が男女の席を話すようにオリバー神父に強い口調で言い放つと、バンバンという女子生徒が反論した。バーディもすぐに加勢したし声を荒げる。その様子を見ていたアハンは「女子にあまり使づくな」とバーディに口出しするがいい顔はされなかった。
バーディとバンバンの距離はアハンが想像するよりも遥かに早く縮まっていく。あからさまに嫉妬するアハンに対して、バーディは「いい友達でいよう」と告げた。アハンは気分転換に女子高の生徒とデートをしてみた。楽しいデートではなかったがカップルは「おやすみ(晩安)」を「愛してる」という意味合いで使うとアハンは教わる。早速その夜にバーディへ「おやすみ」とメッセージをした。
バーディにメッセージの意味を聞かれてもアハンは教えなかった。バーディはアハンに付き合ってもらいバンバンのためのサプライズの準備をする。翌日、ブラスバンドの練習中に一つの気球が飛んできた。そこには「おやすみ。マイラブ」とメッセージが付けられている。「メッセージの意味は自分で調べた」とにやけて話すバーディを目の当たりにして、アハンは絶望する。
バーディはアハンに借りたバイクで事故を起こしてしまった。自分の体よりも、バイクの心配ばかりするバーディ。病院で治療を受けたバーディと一緒に寮に戻ったアハンは、痛々しい姿に耐えかねシャワー室へと押し入った。
拒むバーディの手を払いのけ、アハンは無理やり体をあらってあげた。アハンの感情に応えきれずにいたバーディだが、思わずアハンにキスをしてしまう。「ごめん」と何度も謝るバーディをアハンは抱きしめることしかできなかった。
映画『君の心に刻んだ名前』の結末・ラスト(ネタバレ)
バーディは少しずつアハンを避けるようになる。気球の一件でバンバンは退学になってしまったが、父親が保護者会の会長であるバーディは訓告処分であった。学校に乗り込んできた父親に酷く叱られたバーディの姿を前に、止めに入ってしまったアハン。しかしバーディはアハンを避けるように去って行ってしまった。
バーディは事情を説明するためアハンの家に出向いた。「アハンは関係ない」と言い切るバーディだが、アハンは両親の前で同性愛者であることをカミングアウトしようとする。抑止するバーディの手を振りほどき、アハンは家を飛び出してしまった。
後を追ってきたバーディと一緒に誰もいない海にたどり着いたアハン。すべてを脱ぎ捨てて感情を発散させたアハンとバーディ。この日二人は最後のキスをするのだった。
バーディは突如引っ越すことになり、アハンとは1年近く会えていなかった。久々に連絡を取った二人。アハンは自分が作った曲を聞かせ、その曲に込められた想いを受け取ったバーディも電話越しに泣き崩れた。
30年後、アハンは同窓会に初めて参加した。名簿をもらったアハンは参加していなかったバーディに連絡を試みる。しかし、電話口に出たのはバンバンである。後日、バンバンと約束を取り付けたアハンは、バーディとバンバンはすでに離婚していることを知るのだった。
オリバー神父が亡くなり、アハンはカナダの自宅を訪ねた。実は同性愛者であったオリバー神父はパートナーと最期を過ごす選択をしていた。オリバー神父のパートナーからよく通ったバーを紹介されたアハン。そこにはバーディの面影を持つ男性がいた。その日は声をかけられず、数日後アハンは再びバーに訪れたが目当ての男性はいなかった。
店を出たアハンは肩を叩かれた。振り返ると一人の男性が経っており、それはまさしくバーディであった。昔話をしながら、二人はオリバー神父の想いに気づく。飲み直すことなく別れる二人。別れ際に「おやすみ」と何度も言い合うのだった。
映画『君の心に刻んだ名前』の感想・評価・レビュー
大阪アジアン映画祭で日本初公開となった今作。繊細な感情の揺らぎを描くだけではなく、周囲とのバランスという現実における陰影も描いている。同性婚がアジアで初めて合法化された台湾だからこそ、実在の人物を取り入れつつフィクションと現実問題を平行線で扱えるのではないだろうか。LGBTQの状況と同時に紡がれる恋愛感情もまた、普遍的な嫉妬など不器用さで溢れているのが好印象である。(MIHOシネマ編集部)
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