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映画『リリーのすべて』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『リリーのすべて』の概要:「博士と彼女のセオリー」や「レ・ミゼラブル」、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」といった話題作に引っ張りだこの俳優、エディ・レッドメインが次に挑戦するのは性に悩む青年。非常に難しいテーマを見事に演じ切った彼の演技力から目が離せない。

映画『リリーのすべて』の作品情報

リリーのすべて

製作年:2015年
上映時間:120分
ジャンル:ヒューマンドラマ、ラブストーリー
監督:トム・フーパー
キャスト:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィカンダー、ベン・ウィショー、セバスチャン・コッホ etc

映画『リリーのすべて』の登場人物(キャスト)

アイナー・ヴェイナー / リリー・エルベ(エディ・レッドメイン)
画家として成功していた男性。ある日、性的倒錯状態に陥り人生が変わっていく。
ゲルダ・ヴェイナ(アリシア・ヴィキャンデル)
アイナーの妻で肖像画家。変わっていくアイナーに不安を感じている。
ハンス・アクスギル(マティアス・スーナールツ)
アイナーの幼なじみ。密かにゲルダに想いを寄せている。
ヘンリク・サンダール(ベン・ウィショー)
舞踏会でアイナーが出会った男性。リリーに惹かれる。

映画『リリーのすべて』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『リリーのすべて』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『リリーのすべて』のあらすじ【起】

舞台は1926年のコペンハーゲン。コペンハーゲンではアイナー・ヴェイナーという風景画家が活動していた。彼の絵は民衆に受け入れられ、彼は画家として安定した生活を送っていたのだった。アイナーの妻、ゲルダもまた画家として活動していた。彼女の専門は風景画ではなく肖像画。二人は非常に仲の良い夫婦だったが、なかなか子供を授かることができなかった。

その頃、ゲルダは新たな肖像画に取りかかろうとしていたが、絵のモデルを務めるはずだった人物にキャンセルされてしまう。困ったゲルダは、何とアイナーをその人物の代わりにしようと考えたのだ。ゲルダの頼みを断れず、アイナーはタイツを着用しポーズをとる。するとアイナーは、何処か言いようもない感覚に陥るのだった。

そして、ある日ゲルダが舞踏会に誘われた。ゲルダは何とアイナーに、女装して一緒に行こうと提案するのだった。そしてアイナーはリリー・エルベと名を変えアイナーの従兄弟として舞踏会に赴くのだった。

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映画『リリーのすべて』のあらすじ【承】

女装した”リリー・エルベ”は美しく、サンダールという男が彼女に声をかけて来た。そして何と、サンダールはリリーに口づけを落とすのだった。咄嗟のことに混乱するリリーだったが、たまたまその場面をゲルダに見られてしまうのだった。彼女と喧嘩になってしまうアイナーだったが、それからというものどうしても女装をやめられなくなってしまう。

アイナーはリリーとしてサンダールの家に通うようになる。しかしある日、とうとうサンダールに正体がバレそうになったアイナーは慌てて自宅へと逃げ帰るのであった。アイナーはゲルダに全てを打ち明ける。女装がやめられないこと、サンダールと会っていること、その前には他の男性とも密会していたこと。

ゲルダは、そんなアイナーを病院へと連れていく。アイナーは病院で様々な検査を受け、そしてある日、とうとう彼の診断結果が郵便で届くのであった。そしてその診断書には、アイナーが性的倒錯状態にあると記されていた。

映画『リリーのすべて』のあらすじ【転】

ちょうどその頃、リリーとなったアイナーを描いたゲルダの肖像画は高く評価され、パリで個展を開かないかという大きな仕事の話が舞い込んでくる。ゲルダはアイナーを連れてパリへと旅立つが、アイナーは最早リリーから戻れなくなっていた。

そして、ゲルダはハンスという男と再会する。ハンスはアイナーの幼なじみであり、ゲルダに密かに想いを寄せている男性だった。ゲルダを誘うハンスだったが、ゲルダは自分はアイナーの妻であると彼の誘いを断る。しかし、既にこの世からアイナーは消え去り、完全なリリーという新しい存在に生まれ変わってしまった。

ゲルダが「夫と話したい」と伝えても、リリーは「もう戻れない」と断るばかり。そんな現状に耐えきれず、ゲルダは思わずハンスの元に走り去ってしまうのだった。しかし、アイナーにはまだゲルダを愛する気持ちが残っていた。そしてアイナーは、愛するゲルダのため、なんとか解決策を見つけようともがくのだった。

映画『リリーのすべて』の結末・ラスト(ネタバレ)

それから、リリーは様々な医者を巡っていく。そしてようやく最後に辿り着いた医師に、性転換手術を提案されるのだった。しかし、性転換手術を受け本格的に女性になるということは、ゲルダとの別れを意味する。ゲルダは自分のスカーフをリリーに渡し、2人はそれぞれの道を歩みだすのだった。

そしてリリーは性転換手術を受ける。見事手術に成功したリリーは、デパートガールとして第二の人生を歩みだす。しかしリリーとして過ごすうちに、リリーはより女性らしくなりたいという願望を捨てきれなくなる。しかし、この当時の性転換手術は決して安全なものとは言えなかった。1回目の手術はともかく、2回目となるとかなりの危険が伴うのである。

しかし、リリーは女性になるため手術を受ける決意をする。そして手術が終わった時、リリーは衰弱しきっていた。ハンスとゲルダがそんなリリーを見守るが、リリーは命を落としてしまうのだった。デルタとアイナーが別れた際に交わしたスカーフが、静かに空を舞っていくのだった。

映画『リリーのすべて』の感想・評価・レビュー

世界で初めて性別適合手術を受けたアイナーを描いた本作。エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの演技により、とても美しく力強い作品となっている。エディが演じるアイナーがあるきっかけで自分の性に疑問を抱く過程やそんなアイナーの変化を始めは戸惑いながらも次第に受け入れ支えるアリシア演じるゲルダ。二人の確かな演技がこの映画を特別なものにしているように思う。愛のかたちについて考えさせられる作品である。(男性 20代)


エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの繊細な演技が光る作品。世界で初めて性適合手術を受けたリリーが主人公だが、夫が男性から女性へ変わっても支え続ける妻エルベ、夫のあるエルベに想いを寄せるハンス、男性が好きなヘンリクなど、様々な愛の形が描かれている。

また衣装や美術の素晴らしさにも注目したい。特にゲルダがパリに移ってからの1920年代ファッションや、彼女の描くアール・デコの絵画はエレガントで目の保養になる。音楽も美しく人生の機微に寄り添っていた。(女性 40代)


セクシュアリティの変化は誰にでも起こり得ることだが、昔はもちろん、現代もその事実はあまり知られていない。もしかしたら、リリーとして生きたいと願うアイナーを、利己的な人間だと感じる人もいるかもしれない。しかし、人間の性の揺れというのは、本人の意思に関係なく、突然やって来るもので、その後一番傷つくのは本人なのだ。
リリーの側にゲルダがいたことは本当に幸せなことで、ゲルダの存在はリリーにとって救いそのものであったと感じる。リリーとゲルダの愛は、形こそは変わったものの、両者を繋ぐ絆は永遠に途切れることはないだろう。(女性 20代)


俳優や衣装、デンマークの風景などの映像の美しさは、まるでデンマークの画家ヴェルヘルム・ハンマースホイの絵の世界に入ったような気持ちにさせてくれる。
そういった映像美だけでなく、エディ・レッドメイン演じるリリー・エルベの女性らしさと彼女自身の内面との葛藤によって、より一層ストーリーに引き込まれていく。
彼の役者としての幅広さと演技力には、毎回驚きを隠せない。

それぞれの人生があり、様々な愛の形がある。
彼らの深い愛が鑑賞後も心に沁みる、素晴らしい作品だ。(女性 20代)


とても考えさせられる映画だった。実話を元にした作品で、本来であればもっと過酷であろうものが映画として見やすく、わかりやすくなっている。きっかけは些細なことであっても、それを機に2人の関係が変わっていく。どちらが悪いわけでもないのにすれ違い、葛藤する様は観ていて胸が苦しくなった。
ゲルダの葛藤が特に印象的だった。愛していた夫が突然女性になってしまったとき、自分であればどうするだろうと考えさせられる。ゲルダは悩んだ結果、アイナーの背中を押した。それは確かに愛だったと思う。
夫婦という関係が、ひとつのきっかけから静かに綻びていく、美しく切ない映画だ。(女性 20代)


世界で初めて性適合手術を受けた人の話というだけで十分過酷な人生だったことは察するに余りあるが、事実はさらに過酷だったというからさらに驚く。映画としては何はともあれエディ・レッドメインの演技だ。ストレートの男性として生きていた時期から、自分の性的アイデンティティに疑問を持ち始め、やがて女性としての認識を持っていく内面の揺らぎを見事に演じた。そしてストーリーとしては、そんな夫の世界で初めての変化を世界で初めて受け入れた奥さんの心情に視点が向いた。(男性 40代)


こんなにも深く誰かを愛せるだろうかと、強く心を打たれました。
男女の関係を超えた絆で結ばれているアイナーとゲルダ。たとえアイナーがリリーに生まれ変わっても、二人は「夫婦」であったと思います。
アイナーの葛藤も見ていて辛いし、ゲルダの無償の愛には涙が止まりませんでした。
生涯リリーの絵を描き続けたゲルダ。その日々が幸せであったことを願うばかりです。

エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの演技も素晴らしく、霞がかかった街の風景や芸術的な衣装の美しさにも目を奪われます。映像美、ストーリー、演技、すべてが申し分のない作品です。(女性 40代)


芸術性、ストーリー、ビジュアル全部が美しくて繊細だった。トランスジェンダーといえば最近だと『ミッドナイトスワン』を観た。こういうテーマは、LGBTQ映画の中でも比較的扱いが少ないイメーあるけど、本作は更に奥深いところまで追求してあって心に刺さった。

リリーの内面の絶妙な変化と葛藤を、ある種の芸術のような形で描いているところがなんとも素敵な映画である。彼女に理解を示す妻の存在もとても魅力ある人物として描かれていたので好きになった。(女性 20代)

みんなの感想・レビュー

  1. tamei より:

    本作は、世界で初めて性別適合手術を受けた人を題材にしている。主人公を演じるエディ・レッドメインの演技が、ただただ美しく儚い。名演技である。性同一性障害を自覚する前後の演技を比較すると、さらにエディ・レッドメインの演技力の凄さが分かるだろう。

    本作のもう一人の主人公は、主人公の妻であるゲルダだと感じた。愛する人は目の前にいるのに、愛する夫ではない喪失感。そんな喪失感を抱えながらも、無性の愛を捧げるゲルダの姿は、誰もが心を揺さぶられるだろう。

  2. 匿名 より:

    この映画は、史実を元にしたフィクションの映画化であり、モデルとなったリリー・エルベの人生は、もっと壮烈で泥沼である。

    映画では2回の手術後、回復する事無く亡くなっているリリーだが、実際のリリーは、4度の手術を受けただけでなく、
    手術中に医師が未発達の卵巣を発見するなど、『なるべくして女性になった人間』である事が判っている。

    ゲルダも、映画の様に献身的かつ毅然とリリーを支えたわけではない。
    彼がモデルを辞めた後は、落ちぶれ、二束三文でグリーティングカードを描き続ける人生を送っていた。
    そんな史実の惨さを排除した映画と言える。

  3. 匿名 より:

    この映画が、難しい題材にも関わらず品よく仕上がったのは、一重に俳優たちの育ちの良さと名演にあると思う。
    主演のエディ・レッドメインや、助演のアリシア・ヴィギャンデルの演技は言うまでもない。

    自分のありのままを肯定してくれる事の難しさと苦難を、監督のトム・フーパーは、『英国王のスピーチ』、
    『レ・ミゼラブル』に続き描ききったのではないかと思う。

  4. 匿名 より:

    その点を弁えると、性的マイノリティを乗り越えたリリーよりも、この時代彼(彼女)を献身的かつ、
    快活に支え続けたゲルダに映画を観ている人間が感情移入する事は拒めない。

    薄々夫の性的思考に気づきながらも、最初は芸術家の遊びと割り切り、最後は受け入れる。
    ラストは、夫の故郷を夫の初恋の相手と訪ね、空に舞い上がるリリーのスカーフを掴まえようとする、
    ハンスの手を止める。

    それは天国に召された夫の自由を誰よりも祝福する母にも似た愛情ではないだろうか。

  5. 匿名 より:

    この映画が示す所は、生まれた時に判断された性別、能力と、自分自身のアイデンティティの差に悩む人が、
    自分らしく生きる方法を模索するという事である。

    リリーに限らず、ありのままを肯定してくれる人間が周囲にいるからこそ、人々は前に進める。
    その一方で、自分を覆い隠さなければ生きていけない環境に長い間追いやられていたり、そうしなければ
    生きていけない人こそ、この映画でリリーとゲルダが抱える苦悩には、同情できるのではないだろうか。