映画『路上のソリスト』の概要:ロサンゼルスを舞台にホームレスとして暮らす天才チェロ奏者と新聞記者の男が紡ぐ人間ドラマ。出演はジェイミー・フォックス、ロバート・ダウニー・JR。ジョー・ライト監督の2009年米国映画。
映画『路上のソリスト』 作品情報
- 製作年:2009年
- 上映時間:117分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、音楽
- 監督:ジョー・ライト
- キャスト:ジェイミー・フォックス、ロバート・ダウニー・Jr、キャサリン・キーナー、トム・ホランダー etc
映画『路上のソリスト』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『路上のソリスト』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『路上のソリスト』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『路上のソリスト』 あらすじ【起・承】
ロサンジェルスの新聞社で働く、記者のスティーヴ・ロペス(ロバート・ダウニー・JR)。彼は、元妻メアリー・ウェストン(キャサリン・キーナー)と離婚したばかりで、仕事への情熱も失いかけていた。
ある日、ベートベンの彫刻が置かれた公園で、弦が2本しかないヴァイオリンを演奏する、ホームレスのナサニエル・エアーズ(ジェイミー・フォックス)と出会う。
彼は優しく、ベートベンを愛する青年。
彼の音楽に感動したスティーブは、ナサニエルについて調べ始めた。彼は名門ジュリアード音楽院で学ぶが、2年で退学した。天才チェリストであることが分かるが、なぜホームレスとして暮らしているのか分からない。
ナサニエルの過去を姉フロ・エアーズに訊いた。ナサニエルは、統合失調症を音楽院在学中に発病し、ある雨の日、突然チェロだけ持って、実家を飛び出してしまったと言う。それから家族とも音信不通になったらしい。
スティーブは、ナサニエルについてコラムの連載を始めた。すると、コラムを読んだ読者から反響があり、チェロが送られてきた。スティーブは、ナサニエルがアパートに住むことを条件に支援センターでチェロを弾けるように環境を整えた。
映画『路上のソリスト』 結末・ラスト(ネタバレ)
ところが、ナサニエルは、”俺は病気じゃない!路上で弾きたいんだ!”と抗議してしまう。それでも、久しぶりにチェロを手にした彼は輝いていた。
次にスティーブは、ロサンジェルスフィルの首席チェリスト、グラハム・クレイドン(トム・ホランダー)にレッスンを依頼した。2人はバッハの「チェロ無伴奏組曲」を練習した。
ナサニエルは、次第に昔の感覚を取り戻し、素晴らしい演奏ができるまでになった。コラムのおかげで、名前が知られるようになったナサニエルのために、リサイタルが計画された。
リサイタル当日。集まった聴衆を目にして、ナサニエルは動揺してその場から逃げ出してしまう。スティーブは、ナサニエルに再び音楽の世界を取り戻して欲しいと努力するが、返ってナサニエルにとって大きな負担になってしまう。
その後、ナサニエルは施設に戻った。ある日、ナサニエルの姉が訪れ、彼の身元保証人になった。スティーブは現在もナサニエルと友情を育み、時々2人で演奏会に出かけます。
これからも支援や治療は続いてゆく。
映画『路上のソリスト』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『路上のソリスト』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
愛を奏でて~エゴではない支援と統合失調症への理解を求めて
「路上のソリスト」には、ベートベンの交響曲第3番やバッハの「無伴奏チェロ組曲」などたくさんの音楽に溢れています。音楽がこれほどまでに心に響き、”透き通った食べ物”になる映画は他にないと思います。
実話を基にした本作は、路上生活者である天才チェリストが世界的に有名になる物語ではありません。才能がありながら、なぜ彼が路上生活者になったのか?彼を襲った”統合失調症”という病気について知る必要があります。
”統合失調症”には大きく3つの不調が現れます。1つ目は、”陽性反応”と呼ばれるもので、幻覚や幻聴、妄想がひどくなり、日常生活を送ることが困難になります。
2つ目は、”陰性反応”。意欲が低下して、引きこもりがちになります。3つ目は、”認知機能障害”。臨機応変に対応することが難しくなり、パニックを起こしてしまうそうです。
本作のナサニエルは、”陽性反応”がひどくなり、実家を飛び出してしまいました。また聴覚が敏感になりすぎてしまうこともあるので、アパート暮らしではなく路上生活の方が落ち着くと思っているのかもしれません。
”統合失調症”の原因はまだ分かっておらず、情報やストレスに過敏に反応した時、脳のネットワークが上手く働かなくなるために起こるのではと考えられています。もし、自分の身や家族に起きたら怖いですよね。
劇中で、新聞記者のスティーブが彼を助けたい一心で、アパートを提供したり、演奏する場所を設けようとします。本人に病気という自覚がないので、何がナサニエルのためになるのか支援も難しいんです。
スティーブの”助けたい”という思いが、ナサニエルの人生をより良い方向へ進めることを願っています。
ベートベンやバッハを聴こう!
劇中には、ベートベンをはじめとして多くの楽曲が使用されています。特にジョー・ライト監督の音楽センスは鋭く、ここぞというシーンに上手く音楽を乗せていると思います。
筆者が気に入った曲は、バッハの「無伴奏チェロ組曲」。ロサンジェルスフィルの首席チェリスト、グラハム・クレイドンを個人教授として練習するシーンで弾いています。
チェロという楽器は、オーケストラで演奏してもあまり目立たない存在で、ソロ・パートの演奏自体が少ないのです!特に「無伴奏チェロ組曲」は難易度が高い作品。
深い音の響きとどっしりした感じがいい。また多彩な音の広がりを体感できる点が魅力です。クラシック音楽を聴くと右脳が活性化されたり、深いリラックス効果を得られます。
ぜひ、あなたも聴いてみてはいかが。
映画『路上のソリスト』 まとめ
”勇気は汝を正しい道に導く”という、ベートベンの言葉があります。この言葉が、天才チェリストのナサニエルに届くといいなぁと思います。音楽で誰かの心を動かせるのなら、病を抱える人にもいい影響を及ぼすのではないか。
そんな希望がこの作品にはあります。ジョー・ライト監督は、音楽のセンスがいいだけじゃなくて、ロサンゼルスのスラム街の様子を俯瞰的に切り取っています。
ロサンゼルスの輝かしい場所だけでなく、旅行者が訪れることのない負の部分にも目を向ける価値があるのではないでしょうか。
また主演2人の演技が素晴らしく、人を助け成長してゆく尊さが感じられます。この作品で素晴らしいクラシック音楽に出会う喜びも体験して下さい。
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