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映画『さまよう刃(2009)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『さまよう刃(2009)』の概要:1人娘を殺された長峰重樹。少年法に守られた未成年犯罪者には、極刑を望めないというこの国の法律に嘆き、犯人である菅野快児と伴崎敦也に復讐を誓う。鬼才の東野圭吾原作の問題提起作品となっている。

映画『さまよう刃』の作品情報

さまよう刃

製作年:2009年
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:益子昌一
キャスト:寺尾聰、竹野内豊、伊東四朗、長谷川初範 etc

映画『さまよう刃』の登場人物(キャスト)

長峰重樹(寺尾聡)
妻を亡くし高校生の娘絵摩と二人で暮らす。最愛の絵摩を殺され、法律では裁かれない犯人二人へ復讐を誓う。
長峰絵摩(伊藤遥)
長峰重樹の一人娘。帰宅中菅野快児と伴崎敦也に連れ去られ、強姦のあげく殺害されてしまう。
織部孝史(竹ノ内豊)
真野の部下であり、絵摩殺人事件を担当する。長峰を容疑者として追う警察に、煩悶し疑問を持つ。
真野(伊藤四郎)
織部と共に絵摩、伴崎殺人事件を担当する。法律に忠実であり、織部の長峰へ同情する気持ちを理解しつつも従うよう諭す。
伴崎敦也(黒田耕平)
絵摩を強姦、殺害したうちの一人。中井の裏切りにより、長峰に殺される。
菅野快児(岡田亮輔)
伴崎敦也と共に絵摩を拉致し、輪姦、殺害する。他にも多くの女性を襲い、その様子をビデオテープに収めていた。

映画『さまよう刃』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『さまよう刃(2009)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『さまよう刃』のあらすじ【起】

長峰重樹は、一人娘絵摩の帰りを待っている。もうすぐ帰るという絵摩の電話を聞き、ご飯の支度をする長峰。

その頃、一人の女子高校生の後ろから怪しい車が迫っていた。乗車していた二人の男は、その少女を車へ連れ込んでしまう。

翌朝、川辺に捨てられた少女の遺体が発見される。それは紛れもなく、長峰絵摩の遺体であった。

刑事である真野と織部に連れられて、絵摩の遺体を目にした長峰。自分の娘の遺体に言葉を失ってしまう。

警察では死因が薬物投与のために起こった急性心不全と判明、そこには強姦の痕跡も見られた。目撃情報によりすぐ捜査が開始される。一方、真野と織部は中井誠という若者に目をつけていた。

長峰は深い悲しみに意気消沈していた。そんな長峰の元へ、一本の留守電が入る。その声の主は、絵摩を殺した犯人の名を告げるものであった。

”絵摩さんを殺したのは、スガノカイジとトモザキアツヤの二人です”そう伝える匿名の電話は、悪戯ではないと繰り返す。何かに縋り付くように、長峰は伴崎の家へ向かった。

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映画『さまよう刃』のあらすじ【承】

伴崎の家で長峰は一本のビデオテープを見つける。そこには、伴崎敦也と菅野快児に強姦され死んでしまった絵摩の悲惨な姿が映し出されていた。その耐え難い映像に、長峰は怒りに任せ帰宅した伴崎を襲う。そして、菅野が長野のペンションにいることを聞き出すのであった。

その後、未成年の伴崎は絵摩を殺した犯人ではなく、殺人事件の被害者として世間へ報道される。一方長峰は、娘を殺された被害者ではなく、伴崎を殺した容疑者として指名手配されることになる。

この、被害者にとって受け入れ難い法律の矛盾に、織部は疑問を持ち始めていた。そんな中、真野と織部は、伴崎達の車を運転していた中井誠が、長峰へ犯人を密告したことを突き止める。

中井誠は元々菅野と伴崎の使い走りであった。長峰ならば、復讐として二人を殺してくれると期待していたから密告したのだろうと推測する織部。事実はその通りで、中井は再び長峰へ密告の電話を入れるのであった。一方、長峰は菅野を追って長野に向かっていた。

映画『さまよう刃』のあらすじ【転】

伴崎を追って長野へ向かった長峰から、警察へ手紙が届く。伴崎を殺したこと、そして生きがいだった娘を殺した犯人が、少年法により極刑を受けず保護される無念さが書かれていた。まだやることがあると締め括る長峰の手紙には、菅野が出頭して、自身の復讐が果たせなくなることを阻止する意図もあったのだ。

織部はこの少年法に対し煩悶していた。警察である意義、そして正義とは何かを問う織部に対し、真野は長峰が事件の容疑者であることを再度思い出させるのであった。

一方、菅野が菅平に居ると再び密告を受けた長峰は、菅平のペンション「クレセント」に宿泊する。宿主の娘和佳子は長峰が指名手配だと気付いてしまう。そして、菅野探しから帰った長峰に復讐を止めるよう説得する。

翌日、長峰は和佳子の父隆明に狩りに誘われる。隆明は長峰に猟銃の使い方を教えたのだ。そして、クレセントへ帰った二人を待っていたのは、和佳子と通報を受けた警察だった。茫然とする長峰に対し、同じく娘を持つ隆明は、猟銃を渡し早く行けと逃がすのであった。

菅野の居所を突き止めた長峰と時を同じくし、警察が現れる。菅野を追う長峰と、長峰を追う織部。織部の思いは届かず、長峰は菅野を追って闇に消えてしまう。

映画『さまよう刃』の結末・ラスト(ネタバレ)

逃走生活で金が底をついた菅野は、中井へ金を渡すよう電話をかける。中井の携帯を逆探知していた警察は、明日川崎駅午後二時に菅野が現れるという情報を掴む。

一方、菅野を見失い諦めかけていた長峰へ、最後の密告電話が入る。それは、同じく明日川崎駅に菅野が現れるという内容だった。長峰は、猟銃を持ち最後の目的地へと向かうのであった。

翌日川崎駅午後二時、ついに菅野が現れる。中井に接触した菅野は警察の姿を見つけ逃走しようとする。しかし、目の前には猟銃を持った長峰が覚悟を決めた表情で立っているのである。

極悪犯罪であるにも関わらず、未成年という理由で極刑を望めない少年法の無情さを説く長峰。その先では、銃を突き付けられ恐怖に言葉を失う菅野と、警察が息を飲んで長峰へ銃を向けている。私が審判を下すと言い、最後の復讐を果たそうとする長峰だったが、引き金を引いたのは警察の方だった。

菅野快児の裁判へ向かう織部は、自身が最後の密告者であった時に聞いた長峰の言葉を思い出す。彼らが更生する唯一の方法は、死にも値する罰を与えることではないのかと。

そして織部は、“長峰さんの銃、空砲だったよ”という真野の言葉も思い出していた。
結局、正義という刃は、さまよいながらどこへ向かっていたのだろうか。矛盾する少年法を訴える今作品は、ここで終結したのである。

映画『さまよう刃』の感想・評価・レビュー

レンタルショップで何気なく借りた1本だったので、観終わった後に沈んだ気持ちになりました。決してつまらない作品ではなく、考えさせられるという意味での沈んだ気持ちでした。映画というよりも、法とは何を守るべきものなのか?少年法の問題点を訴える作品でした。
子を持つ親として、法を守る刑事として、怒りや疑問がストレートに伝わって来る俳優陣の演技は一見の価値ありです。内容的に、見る前に少し覚悟が必要ですが…。(女性 40代)


復讐映画として優れているのは、よくある、復讐が何も生まないとか、死んでしまったっ人はあなたにそんなことを望んでいないとか。ありきたりの定型文で納めてしまわずに、だとしてもこの喪失感をどうするのか。というところに主人公と観客を連れて行くところだろう。何もかもを失ってしまった夢遊病患者のような寺尾聡の瞳がどうしようもなく我々を共感させる。脚本の目指したところも深いが、それを実現できた俳優にも拍手を送りたい。(男性 30代)


法律は何のためにあるのか。もちろん秩序のためだろう。だが、それはこの映画の主人公・長峰にとっては足かせでしかなく、何の意味も持たないだろう。法律とは正義とは、そして少年法とは、解けない問題に胸がざわつく映画だ。

最愛の娘を残忍に殺された長峰が少年法に隠された犯人達を殺そうと復讐をするのだが、長峰を咎めることは誰もできないと感じた。たとえ、犯人達を殺そうとも、それは正義でもあり悪でもある、難しい両極性だ。

ぜひこの映画で自分の価値観を考えを確かめてほしいものだ。(女性 20代)


切なさや悲しさや怒り、様々な感情を持つがどう言葉に表せば良いのか分からない作品。殺人はもちろんどんな理由があってもやってはいけないとは思うのだが、行動を抑えることができなかった長峰重樹の気持ちは理解できる。未成年と言えど、最愛の家族を奪った犯人を許すことなどできないだろう。長峰重樹の復讐と少年法の在り方について苦悩する織部孝史の存在がいたからこそ、客観的に考えながら視聴することができた。(女性 30代)


自分自身が長峰の立場だったら…と考えると長峰の「復讐」に共感してしまいました。何の罪もない娘が少年らの手によって突然殺されてしまったら。少年だからといって人を殺したにも関わらず、軽い罪にしか問われないとしたら。損得の問題ではありませんが、悲しい想いをした被害者側が損をして、犯した罪よりも遥かに軽い刑に処される加害者側が得をしているような歯がゆい気持ちになりました。
どんなに訴えてもこのやり方が変わらないのだとしたら、犯人を自分自身の手で殺すことも考えてしまうのでは無いでしょうか。(女性 30代)

みんなの感想・レビュー

  1. 影山 美穂 より:

    ご指摘ありがとうございます。登場人物(キャスト)の部分、修正致しました。

  2. より:

    キャスト名ごっちゃになってますよ。
    佐藤くんは中居です。

  3. 匿名 より:

    始終暗いし辛い映画なので、あまりお気軽な気持ちで観るには適さない。どちらかというと少年法について考えたいとか、じっくり思想を深めたいと思っている時に覚悟して観るべき作品だろう。楽しいシーンはもちろん皆無だし、最初から最後まで犯人の少年たち(もちろん誠も含め)は、胸糞悪い。

    ただこういう「自分の身に起きてみないと考えない」系のテーマを扱った作品としては良作なので、一見の価値はあると思う。ただし、親になる前に観た方が冷静に観られるかもしれない。

  4. 匿名 より:

    ①おすすめはできないけれど

    とにかく、観ていてつらい。母と観に行ったのだが、母はもうただつらくて仕方なかったようで、どういう話だったとか何を訴えていたのかということに考えが及ばないくらい「つらい」を繰り返していた。おそらくそのくらい子供を持つ(特に娘を持つ)親御さんにとっては、つらい内容になっている。

    ただ、少年法とはなんなのか、といういまだに厳罰化をめぐって議論が割れているテーマを直球にぶつけてくる作品なので、勉強にもなるし考えるきっかけにもなる。被害者になって、被害者の家族になって、初めてその法や現状に疑いを持つ、という棚上げ状態のものに問題提起をするのが東野圭吾は得意で、それをきちんと訴えきった映画となっている。

    ②寺尾聡がすごい

    観ているこちらが気圧されるほどの演技で、特に絵摩の殺害のビデオを観た時の長峰の咆哮は、画面を観ていられないほどだった。さすがとしかいいようがない。ちなみに、この長峰役で寺尾聡は第19回日本映画批評家大賞主演男優賞を受賞している。

    ③お粗末な点も目立つ

    とはいえ、突っ込みどころもないとはいえない。逆探知を仕掛ける電話に偏りがあったり、猟銃を構えている人がいるのに普通に野次馬が居たりと、演出的に「?」がついてしまう箇所はたびたびあった。

    だがそれをあまり気にしている暇がないくらい、なんとも刺さるストーリーである。

    ④終わり方に賛否両論

    長峰が射殺されて終わる、という終わり方は、ある意味「映画」としての枠を超えられなかったのだろうと思った。こういう問題提起をする作品はどうしても「一件落着したけれど今後その問題を考え続ける必要がある」というところで落とすしかなく「ほらやっぱり悪いことが起きて正義は崩れました」という終わり方にはなかなかできないものだ。そういう意味ではあのラストシーンは仕方なかったのだろう。